厚労省・新着情報

日時

2021年(令和3年)7月13日(火) 16時00分~

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール14E
(東京都千代田区内幸町1丁目3-1 幸ビルディング14階)

出席者

 

  • 安藤 至大
  • 大久保 幸夫
  • 鎌田 耕一(座長)
  • 武田洋子
  • 山川 隆一

議題

  1. (1)議論のとりまとめ案について(公開)
  2. (2)その他(公開)

議事

議事内容
○事務局 ただいまから、第17回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会を開催いたします。皆様、御多忙のところ、御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は、阿部委員、中田委員が、所用のため御欠席です。
 本日の検討会は、報告書案について御議論いただきたいと思います。議事に入りますので、頭撮りはここまでとさせていただきます。御協力をよろしくお願いいたします。
 では、以後の議事進行は鎌田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田座長 議事の進め方ですが、本日は報告書案について、事務局から御説明いただき、その後、議論の時間を取ることにしたいと思います。それでは、御説明をお願いいたします。
○事務局 お配りしている「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会 報告書(案)」について、御説明いたします。
 第1 総論。我が国の労働市場において、仕事を探す者と、人材を探す企業等との間を取り持ち、労働力の需要供給を調整する機能を持つ雇用仲介は、企業における雇用の維持や雇用保険をはじめとするセーフティネットの整備と並んで、労働市場をより機能的かつ効率的なものとするという雇用政策の主要な役割を担うものであり、時代の要請に応じた対応が大きな課題とされてきた。
 これまでの雇用仲介に関する政策は、雇用関係の成立をあっせんする「職業紹介」を中心とするものであり、戦後、基本的に国の運営する公共職業安定所が独占してきた職業紹介を、平成11年の職業安定法改正により民間等へ開放し、官民の協力によりサービスの質を高めてきている。
 労働市場における雇用仲介は、職業紹介のみでなく、募集情報等提供等の様々な形態によりサービスが提供されているが、近年、(1)雇用形態や人々の職業キャリアに対する意識の多様化といった労働力の需要側と供給側の双方における変化、(2)IT技術やグローバル化等の急速な進展による経済活動や事業展開のスピードの変化、(3)利活用できるデータ量、データの分析技術の変化、(4)利用者がスマートフォン等のデバイスを簡易に取得し、利用することができるという変化等の影響を受け、サービスの内容が急速に変革されている。
 労働市場を俯瞰すると、1995年以降、15歳から64歳の人口は減少を続けているものの、2013年以降は労働力人口の増加が続いており、雇用者数もおおむね増加傾向にあった。他方、リーマンショック以降の労働市場においては、人手不足の状況が続いており、2020年以降に労働力人口が減少に転じるとの推計を踏まえれば、今後もその傾向は継続することが見込まれる。
 また、個人個人が自らの職業キャリアを大切にする意識が醸成されてきていることにより、個人のキャリア実現に果たす雇用仲介サービスの役割も大きくなってきている。さらに、企業も個人の多様なキャリア意識を尊重しなければ、優秀な人材を確保できないことから、人事管理・労務管理の在り方にも変容が生じている。
 こうした人手不足という課題や、キャリア意識の多様化、事業展開の加速を支える即戦力の人材を迅速に確保する必要性により、いわゆる終身雇用、新卒一括採用といった日本的な雇用システムが従前のように機能しなくなっている面もあり、より多様性のある採用や様々な雇用仲介サービスを活用しての人材確保の動きが活発化してきている。
 このような変化を受け、雇用仲介サービスは、単にマッチングを行うだけではなく、仕事を探す者をよりサポートするサービス、あるいは企業の採用コストを少なくするサービスというように多様化してきている。こうした多様化の動きを技術の面から加速させているのが、利活用できるデータの量の変化であり、また、そのデータの量の変化をもたらしているのが、利用者が雇用仲介の世界と簡単につながることができるスマートフォン等のデバイスの普及である。いまや、大量のデータを簡便に分析・利用することができ、これまでにない雇用仲介の機能向上をもたらしている。
 新型コロナウイルス感染症の影響は、労働市場における官民の持つ情報の共有や連携の必要性を再認識させたのみならず、上記の変化を加速させ、これまで以上に雇用仲介サービスの在り方が多様化していくものと考えられる。さらに、新たに仕事を探す者や改めてキャリアを見直す者が増加しており、一人一人の職業選択・職業生活の充実と労働力の供給を支え、職業の安定に貢献する雇用仲介サービスの役割はますます大きなものとなってくる。
 本研究会では、仕事を探す者の様々な入職の状況について必ずしも把握できていなかったことや、これまで想定してきたようなモデルでは捉えきれない雇用仲介の実態が生じていることを受け、現状を見つめ直し、雇用仲介サービスの利用者が安心してサービスを利用できる環境整備の観点から、雇用仲介サービスが労働市場に参画するために必要となるルールや、将来に向かってより機能的・効率的な労働市場の実現に貢献できるような、雇用仲介サービスの在り方を模索して精力的に議論を行った。
 第2 今後の雇用仲介の在り方について。Ⅰ.基本的考え方。IT技術等の発展やインターネットの普及により、多種多様なサービスを提供している求人メディアや新たな雇用仲介サービスが労働市場において果たす役割を積極的に評価し、労働市場において需給調整機能の一翼を担うものとして位置付けることが適当である。
 少子高齢化による就業構造の変化、働き方や職業キャリアに対する意識の多様化、新型コロナウイルス感染症の影響による人材の移動の必要性等を踏まえ、職業安定機関は、労働市場全体の需給調整機能を高め、実効性のある雇用対策を講じることが重要であり、求人メディアや新たな雇用仲介サービスを行う者とも情報の共有や連携を進めていくことが適当である。
 労働市場における雇用仲介サービスの位置付けを確固たるものとし、仕事を探す者の立場に立って、利用者が安心して雇用仲介サービスを利用できる環境とするため、雇用仲介サービスを行う者が依拠すべきルールを明確にすることが適当である。その際、雇用仲介サービスがIT技術等を駆使し、機能を高めていることや、サービスの進化・展開が速いことを踏まえ、雇用仲介サービスを利用する仕事を探す者にとって有益なイノベーションを阻害しないよう留意すべきである。
 Ⅱ.労働市場の整備。1 雇用仲介サービスの法的位置付けについて。職業安定法に位置付けられている職業紹介事業及び募集情報等提供事業以外にも、伝統的なイメージを超える多様な雇用仲介サービスが展開されていることを踏まえ、雇用仲介サービスを労働市場における需給調整機能の一翼を担うものとして位置づけるに当たって、仕事を探す者や企業等が安心して利用できるようにするとともに、利用者の安心とイノベーションを両立する観点から、法的位置付けも明確にしていくべきである。その際、以下の点を考慮し、その対象を検討することが適当である。
 労働市場に流通する募集情報、仕事を探す者の情報等について、雇用仲介サービスを行う者は、正確な情報を労働市場に流通させるべきであること。雇用仲介サービスの発展のスピードが速いことを踏まえ、実態を広く把握し、仕事を探す者等の保護を図る必要があること。仕事を探す者の情報を取り扱う場合には、仕事を探す者本人が労働市場には流通させたくない情報も含まれ得ることから、より慎重な対応が求められること。雇用仲介サービスからの情報提供と職業紹介におけるあっせんとの違いについて、既存の区分基準・判例等と現状の雇用仲介サービスの実態との関係を整理し、職業紹介に該当するサービスを明確にすることが事業活動における予見可能性を高めること。
 また、多様なサービスが登場している中で、募集情報や仕事を探す者の情報を取り扱うことが常態となっているような場の提供等、これらの情報の流通を促進しているものについては、サービスの類型にかかわらず、雇用を仲介する機能を持つものとして整理を行っていくことが適当である。
 なお、雇用仲介サービスの法的位置付け、サービスの態様等については、サービスを提供する事業者だけではなく、サービスを利用する者にとっても明確なものとし、自分がどのようなサービスを受けることとなるのか、納得して利用できるようにすることが適当である。
 2 公共の役割。少子高齢化による就業構造の変化と、働き方や職業キャリアに対する意識の多様化を受けて、職業生活の充実や労働力の有効活用が一層重要となることに加えて、今般の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、労働市場における需給調整機能を迅速に発揮させる必要性の観点からも、職業安定機関が、公共職業安定所や職業紹介事業者だけでなく、雇用仲介サービスを行う者が把握している労働力需給の状況等を含め、労働市場全体の情報を把握できる仕組みを構築し、機動的・総合的な雇用対策を推進する役割を担っていくべきである。
 その基盤を整備するため、雇用仲介サービス等を職業安定機関と連携する主体として位置付け、厚生労働大臣が労働市場に関する情報を収集する際に必要な協力を行うこととすることが適当である。
 公共職業安定所は、セーフティネットとして、ハローワークインターネットサービスや各種支援策の充実等により労働市場におけるマッチング機能の強化を図るとともに、特に就職困難者への対応を充実させ、全国的にその知見を共有し、職業の安定に対する役割を強めていくことが適当である。雇用仲介サービスと、公共職業安定所が効果的に連携することができるよう、職業安定機関が雇用仲介サービスを行う者に関する情報や労働市場に関する情報を提供していくこと等が適当である。また、雇用仲介サービスのみならず、就職困難者が支援する関係機関や職業訓練機関との連携の基幹的な役割を果たしていくことが適当である。
 3 新しいサービスの把握等。求人メディアや多種多様となっている新たな雇用仲介サービスについて、日本の労働市場における役割が大きくなってことから、労働市場における需給調整機能の一翼を担うものとして位置付けることが必要である。労働市場におけるマッチング機能の向上と雇用対策の有効な実施等を図るため、参入を阻害しないよう配慮しつつ、求人メディアや新たな雇用仲介サービスを提供している事業者を把握できるようにすることが適当である。
 その際、雇用仲介サービスを利用する者の利用動向からも雇用仲介サービスの実態の把握を行うことができるよう検討することが必要である。
 雇用仲介サービスを利用する仕事を探す者や企業等が、より優良なサービスを利用することができるよう、職業紹介事業や労働者派遣事業における認定制度を参考に、求人メディア等の雇用仲介サービスについても、優良な事業者を認識することができる方策を検討することが必要である。そのためにも、対象の法的位置付けを明確化し、対象となる事業者を把握することが適当である。
 4 職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備。職業安定機関は、マッチング機能の向上や個々人のリスキリングのため、職業情報提供サイト等の職業情報を一元化するインフラの整備を進め、充実を図ることが適当である。その際、利用者の意見を基にその機能を向上させるとともに、実際に職業情報を活用する企業や関係団体の意見も踏まえつつ、情報の内容を充実・更新していくことが適当である。
 募集者や雇用仲介サービスは、労働条件に限らず、上記の職業情報との関連を含め、職業選択を助け、職業生活の充実に資するような情報を積極的に提供していくことが適当である。
 Ⅲ.雇用仲介サービスの取り扱う情報について。1 情報の的確性。どのようなサービスの態様かに関わらず、仕事を探す者の触れる募集情報等について、雇用仲介サービスを行う者は、仕事を探す者に誤解を与えることのないよう、的確な表示を行うべきである。その際、募集情報等に責任を持つ企業等が募集情報等を事前にかつ的確に明示することができるよう、雇用仲介サービスを行う者は必要な支援を行うことが適当である。
 労働市場において募集情報等を流通させる立場として、雇用仲介サービスを行う者は、提供する募集情報等や仕事を探す者の情報を、正確かつ最新のものに保つための措置を講じることが適当である。また、雇用仲介サービスを行う者は、提供する募集情報等や仕事を探す者の情報について誤り等があった場合、早急に訂正等を行う責任があることから、募集を行う企業等や仕事を探す者からの苦情を受け付ける体制を整備し、適切に対応することが適当である。
 2 個人情報等の保護。仕事を探す者の個人情報を分析し、マッチング機能を高めるサービスが登場していることを踏まえ、仕事を探す者が、個人情報を自分にとって不利に取り扱われることのないよう、雇用仲介サービスを行う者は業務の目的の達成に必要な範囲内で、その目的を明らかにして個人情報を収集、保管、使用することが適当である。
 日本の労働市場の特性を踏まえれば、雇用仲介サービスが本人の同意を得て個人情報を利用する場合においても、どのように同意を得るべきかを明確にしていくことが適当である。
 また、原則収集してはならないとされている個人情報に加えて、求職活動や採用活動に当たって、差別につながるおそれのある情報や個人の私生活に関する情報など使用されるべきでない個人情報等をより明確化していくことが適当である。
 注16において、「また、研究会においては、雇用者としての合理的配慮の義務を果たすために配慮すべき個人情報でも収集が必要となるものもあり、採用における収集と区別すべきとの意見や、人権の侵害につながるような個人情報を収集してはならないとの意見もあった」ということで、付記しております。
 Ⅳ.雇用仲介サービスの役割・仕事を探す者の保護等。1 雇用仲介サービスの役割。新たな雇用仲介サービスの中には、これまで雇用仲介サービスを行ったことのない事業者が多数参入していることを踏まえると、雇用仲介サービスの透明性と従事する人材の質(知識・技能・職業倫理等)を確保することが肝要である。このため、雇用仲介サービスを行う者が、自らの事業に関する情報について利用者に説明を尽くし、市場にも積極的に公開していく等、企業や仕事を探す者等の雇用仲介サービスの利用者において、利用しようとする雇用仲介サービスがどのような事業を行っているか、そのサービスに従事している者が職業や雇用に関する必要な知識を保有しているかを認識できるようにしていくことが適当である。
 さらに、雇用仲介サービス自らの取組だけではなく、雇用仲介サービスに寄せられた苦情や、その処理の状況について、個人情報に配慮しつつ業界団体における公開を促すとともに、雇用仲介サービスを行う者からの事業に関する情報の提供を受け、職業安定機関がそれを市場全体に公開することで、仕事を探す者や企業等の利用者の選択に当たって、事業の透明性を確保することが適当である。
 2 仕事を探す者の保護。職業安定機関は、職業紹介事業者に関する情報だけでなく、それ以外の雇用仲介サービスに関する情報や、労働市場に関する情報を提供し、仕事を探す者が安心して労働市場に参加できるようにしていくことが適当である。
 職業紹介事業等の既存の雇用仲介サービスにおいても、業務の効率化とマッチング機能の向上のために、AIやマッチングアルゴリズム等の技術が利用されている。これらの技術の利用により、アンコンシャスバイアスを排除することができる可能性も踏まえつつ、仕事を探す者が不利になることのないよう、雇用仲介サービスや業界団体が基本的な考え方を示すことを検討していくことが適当である。
 仕事を探す者に対して、保有する情報の量や求職活動に関する知見において雇用仲介サービスが優位な立場にあり、市場原理が働きにくい面もあることを踏まえると、職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が、原則として仕事を探す者から手数料を徴収できないという現行の規定や慣行は、現時点においては維持することが適当である。
 他方、少子高齢化の影響を受ける日本の労働市場において、働き方やキャリア意識の多様化により、雇用仲介サービスの役割は大きくなってきている。雇用仲介サービスを行う者は、仕事を探す者に寄り添う形での事業運営を強く意識すべきであり、また、雇用仲介サービスの問題のある事業活動に対して行政機関は適切な指導・監督を行うべきである。
 3 業界団体の役割。雇用仲介サービスにおける先駆者を会員とする業界団体は、法令の規定よりも高いサービス水準を策定し、会員企業の提供するサービスの質を担保しつつ、これまでと同様、業界全体のコンプライアンスの推進と、その啓発の役割を果たしていくべきである。
 職業安定機関は業界団体との連携を緊密にし、雇用仲介サービスの把握と高いサービス水準を確保するための施策を推進していくことが適当である。
 また、業界団体は、引き続き、事業者に対する仕事を探す者のニーズや苦情に中立的な立場から対処する役割を担っていくことが適当である。
 4 雇用以外の仲介について。業務委託等の受発注者等、雇用以外の仕事を仲介するようなサービスについては、現時点において、職業安定法の射程を超えるものも存在すると考えられる。他方、態様として雇用仲介サービスと類似しているサービスが提供されていることや、非雇用者とされている人でも労働者性のある人や交渉力の低い人が存在することを踏まえ、雇用以外の仕事を仲介するサービスについても、雇用仲介サービスを行う者が守るべきルールに倣うことができるように周知を図るべきである。
 本文は以上で、本研究会開催要綱と、御参画いただいた委員のお名前、開催経緯、参考資料を添付しております。事務局からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田座長 ただいまの説明に対する御意見や、本日が最終回ですので検討会全体を通して、委員の皆様の御感想等がございましたら、御発言をお願いします。
○武田委員 事務局においては、分かりやすく報告書を取りまとめていただきまして本当にありがとうございます。報告書の内容については、賛成の立場です。その上でコメントをさせていただきます。
まず、今回は新しいサービスやビジネスの創出を妨げないということと、求職者側の個人情報等を守るためにはどうしたらいいのか、また、求職者側に雇用仲介サービスに関する情報などを適切に伝えていくにはどうすべきかなど、求職者の立場に立った視点で議論ができたと考えております。
 今後は、まず、本報告書の中で検討することが必要とされた部分について、速やかに検討に着手していただきたいと考えております。その背景としては、新たなサービス提供、サービス形態の変化のスピードが加速する中で、状況がますます変わっていく可能性がございます。まずは、速やかに検討し、着手・実行していただきたいと考えます。
 また、一定期間経った後には、更に考えていくべきことはないか再検討することが今後も必要になるのではないかと思います。これが1点目です。
 2点目は、スキルの情報の整理に関し提言してきたわけですが、こうしたことが先行き1歩でも2歩でも進むことによって、これからの日本経済や産業構造の変化に労働市場がうまく追い付くこと、現状延長では発生の可能性が高いミスマッチを回避し、スムーズにマッチングを実現していくこと、こうした問題の解決に貢献することを期待しております。
 ただ、情報基盤を整備していく、スキルを見える化していくことは、労働市場全体のマッチング効率を高めるための最初の一歩の取組と思っております。スキルの施策とうまく結び付けたり、民間のイノベーションともうまく組み合わせることによって、技術変化の中で、労働需給の構造変化にうまく適応できる社会を日本で築いていくことがゴールであることを、改めてコメントさせていただきたいと思います。
 最後になりましたが、本研究会では、ヒアリングに応じてくださった多数の企業・関係者の皆様、また、コロナ禍でも、ハイブリッドで極めてスムーズな運営をしてくださった事務局の皆様に、改めて御礼申し上げるとともに、毎回非常に難しい議論が多かったように思うのですが、これをうまくまとめてくださいました座長と、様々な視点を頂いた委員の皆様に、この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 
○安藤委員 今回準備していただいた報告書の案について異論はございません。今まで議論してきた中身が的確に反映されたものだと思っております。
 ここに挙げられた求められている取組の中には、すぐにできそうなものもあれば、少し長期的な課題になりそうなものなど、様々な度合いのものが含まれていて、これを更に具体的な形にしていくということが今後大事なことだと思っております。
 また、今回の報告書の範囲では、考察にとどまっているもののうち、更に深める必要があるような論点については、この報告書が世に出たことを踏まえて、様々な反響と言うか、意見が出てくることも予想されます。そのようなことも踏まえて、今後更に、この問題に対する議論が深まっていけば、社会にとってよろしいことかなと思っております。
 例えば個人的に関心がある物事としては、個人情報の保護について、差別につながるおそれがある情報や求職者が知られることを望まない情報があるという問題があったときに、そういった情報をオープンにしてはいけない、又は保護しなければいけないとすることによって、一見求職者にとって望ましい社会が訪れるかと思われますが、制度には予想しない波及効果のようなものが存在しえます。それも考えなければいけないということは、重々私たちは理解する必要があると思っています。
 今回の研究会では触れませんでしたが、経済学の分野で、2017年ぐらいから次々と論文が出ている研究テーマとして、2010年頃からアメリカで取り上げられた「Ban the Box」という運動があります。これは採用時に、差別につながるからという理由で、犯罪歴を履歴書に書かせてはいけない、聞いてはいけないという活動です。
 その運動が実を結んで犯罪歴を書かせてはならないとなったら、実際に何が起こったかと言うと、犯罪歴のある人をできれば採りたくない採用側が、統計的差別を行うようになりました。犯罪歴があるかどうかを聞くことができないので、統計的に、特定の人種の男性は平均的に犯罪率が高いということから、採用されないという差別的取扱いを受けるようになってしまったのです。このように意図せざる副作用が発生したということが非常に注目されて、複数の論文が書かれて、議論を巻き起こしました。
 今回の雇用仲介の話についても、一見すると、様々な取組が求職者のためになり、市場を透明化し、取引を円滑にするように思われていたとして、場合によっては、意図せざる副作用があるかもしれない。そういうことに対して我々は謙虚にならないといけないと思っております。今回の議論の中身が実際に政策に結び付いたとしても、その後、定期的に今回の取組が望ましかったのかどうかを、現場からの声として聞きつつ、また、統計資料やデータなどを見つつ、常に検証して、望ましくない帰結をもたらしたようなものについては、見直しも行われるべきだという観点から、ここに書いた内容を、ある程度一歩引いて、今後は中立的に見ていくことが必要かなと思っております。
 
○大久保委員 報告書の取りまとめ、本当にお疲れさまでございました。17回も研究会が開催されると私は思っていなかったのですけれども、本当にたくさんの議論を積み上げてきた結果がまとまったということで、大変すばらしい成果ではないかなと思っております。
 17回の議論をやっていく中で、ずっと考え続けてきたのですけれども、私自身が雇用仲介というか、求人の取扱いをする事業に携わってから、もう40年近く時間がたっています。最初は、紙の求人情報誌で、1個1個の求人広告を、企業取材をして、募集要項を書いて、その会社の良いところ、キャッチフレーズ、キャッチコピーを書いたりして表現するという仕事をずっとやっていたところから始まります。そのときから、実際に仕事を探している人たちというのは、見る観点が一人一人本当に違うのだなということを実感しております。
 これは後に、私自身の研究の中でも検証してきたことなのですけれども、特に日本の労働市場では、転職する人たちが実際に求人を見るところは、ばらつきが大きいのですね。他国では、やはり報酬とかに関心があり、かなりフォーカスしているのですけれども、日本はそうでもなくて、会社の職場環境とか、人間関係とか、仕事のやりがい、あるいは労働条件とか、見るところが多岐にわたっていて、かつ大事にしているポイントが個人個人で違うということで、そういう人たちのニーズにうまく応える情報提供をしていかないと応募者が集まらないのです。
 この40年間、随分進化したと思います。特にテクノロジーが出てきたことによる進化がとても大きかったと思います。以前は実際に見られる求人情報の数というのは本当に少なくて、そうすると、一番頭から順番に求人を見ていって、気になる所があれば付箋を付けていって、後で比較検討して応募するみたいな感じで、新卒でも中途でも同様でした。それに対して今は、求人情報、求人件数からいくと、見られるものの数は、本当に何百倍、何千倍というぐらいに増えてきた。でも、それだけ豊かな求人情報に接することができるようになったから自分の転職先を思うように選べるのかというと、実はそうでもなく、たくさん情報があるのだけれども、転職を考えている人たちというのは、自分に合った仕事とか、自分の条件に合う会社や求人がどれなのかというのをなかなか見付けることができなくて、膨大な情報の山に接しても分からないということで、そこで一旦足を止めてしまって、そのままになってしまう人が多いと思うのです。
 これは以前から私たちが調査をやったときのデータにも出てくるのですけれども、今すぐにでも転職したいと思っていながら、でも求職活動はしていないと、具体的にアクションを取っていないという人が多数いて、そういう人が転職希望者のままずっと残っているのです。なぜ、すぐに転職したいのに行動しないのだろうと、以前は疑問に思っていたのですけれども、やり始めても、結局分からなくて足が止まってしまうのだと思うのですね。そういう人たちに、どうやって寄り添って最適な職業を提示してあげられるのかということを、これは官民取り組んできて、現在に至っているということなのだろうと思います。
 ただ、それにうまくたどりつけているかというと、今でもまだまだという状況ですから、今後テクノロジーを使ってどこまで進化していけるかというチャレンジをしていかなければならないと思います。そういう意味では雇用仲介サービスはこれからも変化すると思います。その変化を良い方向への変化となるようにうまく促すようなルールが必要だと思いますし、そこで情報の的確性や個人情報の問題で道をずれているところは、きちんとコントロールされるようなルールにすることは重要な議論だったのではないかと思います。
 そういう中で、既存のサービスが十分に応えきれていなかったから新形態みたいなものが出てきたのだと私は思いますし、それは、先々どういうところに収束していくのだろうかと考えています。本当は、キャリアコンサルタントみたいな人が、全ての転職を希望する人にサポートで付いて寄り添ってあげられればいいのだと思いますけれども、現実的にはそこまではなかなか難しいと思うのです。そうすると今度は、それに類する機能を持ったテクノロジー、AIなどが転職をサポートしているという未来になるのかもしれません。いずれにしても、より転職者に寄り添ったサービスというものを、テクノロジーを使ってどこまでできるかということのチャレンジということになるのかなと思います。
 今回、募集情報等提供事業と、プラス新形態と呼んでいたところ全体を改めて法的に位置付けるというのは大きな一歩だと思いますけれども、その次は、まだあるなと思っています。つまり、例えて言うならば、職業紹介自体がかなり変わっていくのだろうと思うのです。従来のような職業紹介事業者がビルの一室で登録者を迎えて、1対1で面談をして紹介していくという姿は、多分、それほど遠くない将来、形が変わっていくのだろうと思っていまして、ほぼオンラインになっていくだろうと私は思います。
 ですから、オンライン職業紹介がスタンダードな姿で、そこにまた多様なキャリアコンサルタントを含めた周辺サービスがセットされるという状態が、イメージする近未来なのかなというように思ったときに、では、オンライン職業紹介というのはどういうルールによって運営されるべきなのかということは、これは次の課題として検討すべきテーマなのかなと思います。大きな進化を遂げている途中段階だということで、その中で今回の整理は大変すばらしい第一歩だったと思うことと、次への宿題もたくさん残っているぞというようなことを、ちょっと感想として述べさせていただきました。
 
○山川委員 今回の検討会で非常にいろいろな情報に接することができまして、新しい仲介ビジネスの姿を知る良い機会になりました。また、報告書案の内容につきましても、異論はございません。
 今後は、個人的な関心としては、職業紹介あるいは募集情報等提供の法的な位置付けに関して、おそらく法制的な観点から、更に詰めていくことが必要になろうかと思います。また、その際には、実効性確保の方法あるいは、その規律の法的な効果も視点に入れながら整理を行っていくということが必要になるのではないかと思います。
 あとは、この報告書を前提にした今後の、言わば将来的な課題のようなことですけれども、1つは、最初のときにも少しお話したのですが、国際的な仲介ビジネスというものをどのように把握していくかということです。例えばオンラインでできるようになってきますと、どこで活動をしても余り変わらないような状況になってきますが、法的な規律の手法がどのようなものであるかによって対応が変わってくるかもしれませんので、国際化への対応というものを、実態を見つつ更に検討していく必要があるかなと思っております。
 もう1つは、やはりICTとかAIの発展に対応するということです。雇用仲介サービス関係では今回も報告書に盛り込まれていますけれども、前も話題になりましたように、人事管理一般のいろいろな局面にわたってこの問題は関わりがあることですので、諸外国の動向なども見ながら、雇用仲介サービスに限らない形で、いろいろな新技術の活用について注視していく、場合によっては改めて検討を行うということが可能性としては出てくるのではないかと思っております。
 あとは、公共の役割について、今回、盛り込めたことは非常に結構なことではないかと思っております。厚生労働行政が日本の労働市場に果たす役割というのが、特にコロナ禍ということもありますし、いろいろなところで改めて認識されているということを実感しております。そういう意味では、雇用仲介サービスという点に関して、公共の役割ということが改めて明確になったのは大変結構なことだろうと思います。
 あとは、それを超えた領域をどうするかという視点で、先ほど武田委員からお話がありましたけれども、恐らくは能力開発の関係も出てくるのだろうと思っています。今回は雇用仲介サービスですので、マッチング機能の充実ということですけれども、マッチングの対象になる企業の質と、求職者の質、それぞれの質が上がっていくという観点が必要と思います。マッチングそのものと、それからマッチングの対象になる関係者の質が向上していくということは連動してくるのではないかと思っております。両者が連動して向上していくと、最終的には日本の経済の質の向上、あるいはそこで働く人の生活の質も含めた向上ということになると思いますので、公共の役割としては、そうした能力開発とか、企業、求職者の質の向上とマッチング機能を接合させる、今後そのようなことが重要になっていくのではないかと思っております。今後もいろいろ検討することはあると思いますが、今回の雇用仲介サービスを中心とした課題については、このような形で報告書がまとめられて、大変結構なことだと思っております。ありがとうございました。
 
○鎌田座長 ありがとうございました。
 それでは、最後となりましたので、本研究会の座長として、私個人の感想を含め、お話したいと思います。まず、委員の皆様方におかれましては、半年で17回というハイスピードの研究会に御参加いただき、それぞれ専門分野の視点をいかして、大変貴重な御意見を頂けて、このようにすばらしい報告書をまとめていただいたことに、御礼を申し上げたいと思います。また、事務局の皆さんもサポートしていただいたことに御礼を申し上げます。
 思い起こせば、1999年に職業安定法が改正になっておりましたが、そのときの改正に当たっての研究会の委員を私は務めておりました。それまで労働市場のコントロールは国が行うのだ、国家が独占的に労働市場というのを管理するのだという考え方でずっときたわけですが、1999年の段階で職業安定法が改正になりまして、民間事業も国と並んで、この労働市場で共にプレーヤーとして活躍するのだという、そういう基本的な方針を立てたわけです。その研究会はその前段でそういった方向性というのを打ち出したわけです。私は、まだ若い委員として、それに参加していたのですけれども、ただ、そのときに民間企業が労働市場の中で活躍するというように言われても、一体どのように労働市場の中で民間サービスが活躍していくのか、公共、特にハローワークとの関係というのはどうなるのだろうかと、たくさんの宿題が残っていたように感じておりました。
 それが私の頭の中にずっとあって、今後の労働市場、これからの労働市場というのは、民間と公共とどのようにしていくのがいいのだろうということを研究しておりましたけれども、今回の報告書というのは、正に私がその際に思った宿題といいますか、労働市場に対する在り方、そして、そこで働く雇用サービスの人たちの方向性、そういったことが示されたのかなと思います。一言で言うと、仕事を探す人、それから、雇用仲介サービスを利用する企業・求人者、そして、その中で就職に困難をもたれている方々、そういう人たちに少しでも仕事を効率的に紹介し、情報を提供していくという、そういった方向が示されたのかなと思っています。
 20年近くかかったのですけれども、思い起こしますと、ドイツの哲学者のヘーゲルという人が、法の哲学という本の中で、「ミネルヴァの梟は黄昏時に飛ぶ」というように言っています。これは何を言っているかというと、時代の流れというのは、現実はどんどん進んでいくけれども、それが人間の頭の中で理解され、意識され、そして、それが概念として理解されるのは、黄昏時というか、ずっと後になってからようやく分かるのだという意味だと私は理解しています。今回の報告書というのは、職業安定法が1999年に改正されて、こういう労働市場の形が現れてきて、これからの日本の労働市場はどのようになっていくのか、どういう課題が更にあるのかということを概念化した、見える化したという、そういう非常に重要な報告書というようになるのではないかと、そのように私としては思いたいという気持ちがあります。そういうことですので、報告書の内容については、もう細かいことは皆さんがおっしゃいましたので、私としては言うことはありませんが、是非この重要な報告書の内容を、厚生労働省の皆様に、今後の雇用政策に活かしていっていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、この報告書の内容について修正等の御要望はなかったというように私は理解しておりますので、この報告書案をもって本検討会の最終報告書とし、公表したいと考えております。それでよろしいでしょうか。
 (異議なし)
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、委員の皆さんにお集まりいただくのは今回が最後となりますので、田中職業安定局長から御挨拶を頂きたいと思います。お願いいたします。
 
○田中職業安定局長 それでは、一言、御礼の御挨拶を申し上げたいと思います。本研究会は、少子高齢化に伴います生産年齢の人口減少や、働き方あるいは職業キャリアに対する人々の考え方の変化といったもの、それから、足下で起こっております新型コロナウイルス感染症による様々な構造変化の中で、労働力の需給調整機能といったものに対する新たな要請が強まってきたということを受けまして、委員の皆様に御参集いただき、実に17回という多数回、本当に短い期間に多くの議論をしていただき、報告書をまとめていただいたということでございます。本当にありがとうございました。
 報告書では、雇用仲介サービスの在り方につきまして基本的な考え方を整理いただいた上で、多様な雇用仲介サービスの法的な位置付けの検討を含めた労働市場全体の整備、募集情報の的確性や個人情報の保護など雇用仲介サービスの取り扱う情報の特殊性、雇用仲介サービスを行う者や業界団体の役割などを多岐にわたって御議論いただきました。
 この研究会の報告書につきましては今後、労働政策審議会労働力需給制度部会における具体的な制度の議論に速やかにつなげてまいりたいと考えております。
 また、アフターコロナを少しずつ見通せる状況が出てきていると思います。コロナ以前から進めてまいりました働き方の多様化あるいは人材ニーズの多様化といったものは、こうしたアフターコロナに向けて、より構造変化として否応なく加速化されていくと考えます。
 そうした中で、労働市場におきましては、御指摘がありましたような労働需給のミスマッチでありますとか、雇用の不安定性でありますとか、また大きな課題である失業の発生等、こういった問題を解決する重要な政策課題として今回議論いただきました労働市場の整備、機能強化の取組ということがあろうかと思います。
 特に我が国においては、未成熟であります外部労働市場の機能強化・整備については、たくさんの課題があると考えております。今回は雇用仲介事業というテーマを中心に議論いただきましたけれども、そこで見渡せる範囲におきましても、労働市場の様々なプレーヤーが存在いたします。それぞれのプレーヤーがその役割あるいは機能というものを明確に意識しながら様々な形で連携・協力し、役割を果たしながら労働市場というものをしっかりと機能させていかなければと考えております。そのための制度づくりやルールづくりが非常に重要な段階に至っており、また、新型コロナウイルス感染症の影響によって、その取組はより喫緊の課題になっているというように考えております。残された課題も多いわけですけれども、できるところからしっかりと議論をして、具体的な対応につなげてまいりたいと思っております。
 その結果として、労働市場がしっかりと機能し、その中で雇用仲介サービスが求職者等の保護ということをしっかりと踏まえながらも求人者、求職者等のニーズに応じた、より質の高いサービスの提供ができるような形を、関係する業界とともに、官民協力しながら創っていきたいと、そのためのしっかりとした議論を進めてまいりたいと思っておりますので、今後とも委員の先生方の御指導をよろしくお願い申し上げます。以上、簡単ですが、御礼の御挨拶としたいと思います。どうもありがとうございました。
○鎌田座長 ありがとうございました。それでは、以上をもちまして、労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会を終了いたします。皆さん、どうもありがとうございました。

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