文科省・新着情報

1.日時

令和3年9月27日(月曜日)15時~17時

2.開催方法

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1) 第1回中間チェックアンドレビュー目標とアクションプランの進捗状況との連関について
(2)「第2回中間チェックアンドレビュー」に向けた課題抽出について
(3)令和4年度核融合関係概算要求について
(4)原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について

4.出席者

 原型炉開発総合戦略タスクフォース

 笠田竜太主査、坂本瑞樹主査代理、伊神弘恵委員、今澤良太委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、坂本隆一委員、中島徳嘉委員、蓮沼俊勝委員、東島智委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

 有識者

 今川信作核融合科学研究所教授

 文部科学省

 岩渕秀樹研究開発戦略官、田村泰嗣室長補佐、川窪百合子核融合科学専門官、長壁正樹科学官、近藤正聡学術調査官

5.議事録

【笠田主査】 定刻となりました。本日は御多忙のところ,御参加いただきまして,皆様ありがとうございます。第24回原型炉開発総合戦略タスクフォースを開催いたします。
今回も,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から,オンラインにて開催いたします。
それでは,議事に入る前に,事務局より,定足数の確認,配付資料の確認をお願いいたします。
【川窪専門官】 事務局の川窪でございます。
本日の委員の御出欠ですが,奥本委員が御欠席です。それ以外の方は出席されていますことを御報告いたします。
次に,本日の配付資料についてですが,議事次第の配付資料一覧のとおりです。今回は,委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに事前にメールにて配付資料を送付しておりますので,会議中,遠隔会議システム上では資料を表示しません。各自お手元で御確認いただければと思います。
以上です。
【笠田主査】 ありがとうございます。
本委員会は,委員会運営規則に基づき,議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され,ホームページ等で公開されます。
本日は,議題5の説明者として,核融合科学研究所の今川信作教授に御出席いただいております。
それでは,議事1「第1回中間チェックアンドレビュー目標とアクションプラン進捗状況との連関について」に入ります。岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料1-1に基づきまして,御説明いたします。タイトルは「第1回中間チェックアンドレビュー目標とアクションプラン進捗状況との連関」です。第1回中間チェックアンドレビュー目標の達成状況に関する議論が8月の核融合科学技術委員会でありました。その際,委員会においては,今年1月の原型炉タスクフォースから委員会への報告,すなわち,アクションプラン進捗状況の文書を基に審議を行いました。今日資料1-2として配布しているのが,今年1月27日付けでタスクフォースから委員会に提出されたアクションプランのフォローアップ・レポートです。
これに基づき,第1回中間チェックアンドレビューの達成目標が達成されているかという点について,おおむね達成されている,という議論が委員会において行われたところです。ただ,このチェックアンドレビューのプロセスを一般の皆様にも分かりやすく整理をして提示する,第1回中間チェックアンドレビューの目標が達成されたかをより分かりやすく説明することが大事ではないか,といった趣旨の議論がありました。
こうした観点から,中間チェックアンドレビュー目標の達成状況と,アクションプランの達成状況とを分かりやすく比較対照する連関表を作成してはどうかということが委員会からタスクフォースへのチャージとなっていました。そこで,事務局の方で資料1-1という形で連関表を作成し,本日タスクフォースの議論の材料として提示いたしました。今日御議論いただき,タスクフォースとしてよいということであれば,これを次回の核融合科学技術委員会に提出する形になります。
資料1-1の構成ですが,左側からチェックアンドレビューの項目,そして,左から2つ目の列は,平成29年12月に核融合科学技術委員会が決定した,第1回中間チェックアンドレビューまでに達成すべき目標を書いています。
左から3列目は,アクションプラン進捗状況調査結果です。今年の1月にまとめたものを補う形で今年の7月のタスクフォースでも少し御議論いただきましたので,そうした議論についても加筆した上で左から3列目を書いています。
左から4列目は評価軸/視点です。左から2列目の達成目標をかみ砕くとどうなるか,どのような評価軸,視点があるのかを少し分かりやすく解説するべく書き足しました。
右から2列目は現状分析です。アクションプラン進捗状況調査結果に書かれた内容を評価軸/視点に基づいてかみ砕くとどうなるのか整理したものです。
最後の列,第1回中間チェックアンドレビューまでの目標の達成状況は,今日の御議論の結果として,左から2列目に書いてある達成目標を達成していると評価をして良いのか,これをタスクフォースとして御議論いただければと思います。
個々のチェックアンドレビュー項目について一つ一つの内容を説明することは省略いたしますが,例えば一番上の①の中間チェックアンドレビュー項目であれば,達成目標は,ITERの技術目標達成計画の作成ということでした。これが達成できたかどうか。これはアクションプラン進捗状況の18ページ,左から3列にあるようなプランの記述があるわけです。これを改めて達成目標の言葉に基づき書いてみると,現状分析の欄にあるように,ITERリサーチプラン,ITER支援研究に関するJT-60SAリサーチプランという2つの文書が策定され,具体的な達成計画が策定されているという現状分析がなされております。こう考えると,①番の達成目標は一応達成されていると判断して良いのではないか,そのように読むということです。
②以下⑦までの説明はここでは省略いたしますが,今年1月あるいは7月にタスクフォースでアクションプラン進捗状況調査結果として書かれたものをチェックアンドレビューの達成目標という単位で再構成をしています。この連関表につきまして妥当性を御議論いただければ有り難く存じます。
【笠田主査】 それでは,ただいまの御説明に対し御質問等がございましたら,お願いいたします。参加者のリストの右下に「手を挙げる」挙手ボタンがありますので,そちらを使っていただいてもよろしいですし,特に,ほかになければ直接発言されても結構でございます。いかがでしょうか。
委員の皆様方からは特にございませんか。これまでのものをまとめ直したというところもございますので,それを確認していただいていることになると思います。ここで新しく出てきた表現は存在しませんので,特に間違いがないとかそういったところを確認いただけていると思いますけれども,大丈夫ですかね。
【横山委員】 横山です。今,一般の人に分かりやすく説明ということで,確かにこれを砕いて説明するというのが難しい内容だと思いますが,どの辺りの方にどういう形で届けたいかということがちょっと私には見えにくかったので,御説明いただきたいと思います。
【岩渕戦略官】 文部科学大臣の諮問機関が作る科学技術・学術審議会の政策レポートですので,一義的には文部科学省において政策決定を担っている者が読者として想定されています。しかし,それに限らず,こうした技術政策について御関心を持っている核融合分野以外の専門家が読んでも分かりやすいように意識しています。
【横山委員】 ほかの分野の方は難しいかもしれませんが,専門家の方に分かりやすい文章ということでこれが作られたと考えればよろしいということですね。ありがとうございます。
【笠田主査】 ほかにございますか。木戸委員,お願いいたします。
【木戸委員】 この現状分析のところの日本語として,大部分のものが「図られている」とか「確立」とかそういう言葉になっていて,一部「取りまとめ」という言葉で止まっているものがありますが,これは「取りまとめられた」,いわゆる完了しているという表現で書かれているのでしょうか。ここだけ,これから取りまとめるのか,取りまとめたのかがちょっと分からなかったので,御質問させていただきました。
【岩渕戦略官】 事務局としては「取りまとめた」という完了形のつもりで作成しました。分かりにくいようであれば,主査と御相談して少し日本語を修正する必要があると思います。
【木戸委員】 一応完了したということですね。分かりました。
【笠田主査】 ありがとうございます。後ほどまた検討して,委員の皆様方には確認していただくことになるかと思います。
ほかにございますか。今澤委員からお願いいたします。
【今澤委員】 今回拝見させていただきましたこの連関表ですが,チェックアンドレビュー項目が7つ挙がっていますが,この7つが特に挙げられている理由は何でしょうか。
【岩渕戦略官】 このチェックアンドレビュー項目は,平成29年12月の核融合科学技術委員会におきまして,チェックアンドレビューの達成目標を表としてまとめたものです。右下に,以前この委員会で決めた項目があり,委員会でかつてまとめた項目に忠実に評価を行うという趣旨で各項目をそのまま引用しています。
【今澤委員】 分かりました。ありがとうございます。
【笠田主査】 戦略官,御確認ありがとうございます。この辺り,核融合は非常に長く詳細な検討をしてきて,こういった形でチェックアンドレビューするという流れがございます。こういったものは我々核融合研究コミュニティーでもきちんと共有して,若い人たちにもきちんと受け継いでいくことが大事で,そういったこともアウトリーチの一つだと思います。
ほかにございますか。福家委員からお願いいたします。
【福家委員】 ④の現状分析のところの(2)ですが,「に」を「を」に直すところがあると思いますので,そこは適宜御修正ください。よろしくお願いします。
【岩渕戦略官】 修正いたします。
【笠田主査】 私も今確認しました。ありがとうございます。
委員の皆様ありがとうございました。それでは,次の議題に移りたいと思います。
次に,議事2「第2回中間チェックアンドレビューに向けた課題抽出について」に入ります。本議題は,核融合科学技術委員会から原型炉タスクフォースに対する付託事項に関するものですので,その点について岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 核融合科学技術委員会からの依頼事項について簡単に御説明いたします。
前回8月2日に開催された核融合科学技術委員会において,原型炉タスクフォースの笠田主査から核融合における各国動向の分析評価,そして,アクションプラン進捗状況に関する追加的調査,この2点についてタスクフォースでのこれまでの検討結果を報告いただきました。これはタスクフォース,あるいは委員会で行っている第1回中間チェックアンドレビュー,この作業のうち,各国動向の分析,チェックアンドレビュー報告書の第3章,そして,チェックアンドレビュー1回目の段階で求められている達成状況の評価,チェックアンドレビュー報告書の第4章になりますが,この辺りの議論ということでした。
こうした議論が進んできたことを踏まえ,新しい付託事項として委員会からタスクフォースに対して次のような検討依頼がありました。原型炉タスクフォースにおいて,第2回中間チェックアンドレビューに向けた課題抽出に関して御議論を頂いた上で次回の委員会で御報告を頂き,その報告を基に,第2回中間チェックアンドレビューに向けた課題について委員会としても議論したいということでした。
先ほど資料1-1で述べたのは,現在行っている第1回中間チェックアンドレビューまでの達成状況のお話でしたが,新たに付託を受けた事柄は,第2回中間チェックアンドレビューに向けた課題について議論をしてほしいということ。そういうチャージが委員会から新たにタスクフォースに来たということです。
第2回中間チェックアンドレビューまでまだ数年の時間的な余裕もあるわけですが,そこまでに達成すべき課題には,技術的な課題,非技術的な課題が含まれるだろうと思います。そうした両者を含むような議論をタスクフォースとして行うことが今日求められていると理解しています。
【笠田主査】 それでは,第2回中間チェックアンドレビューに向けた課題の抽出について,まずは戦略官からおっしゃったことを受けて問題意識を申し上げたいと思いますが,様々な課題が当然ございますので,技術的観点と非技術的な観点に分けてお話しいたします。
まず,技術的観点ですけれども,前回委員会で栗原美津枝委員から次のような御発言がありました。「次の第2回中間チェックアンドレビューに向けてこの5年間で行うべき概念設計というのが,従来のロードマップで考えられている概念設計のままで良いのか。それとも,次に向けて加速するということ,あるいは取組方針で書かれていたようなことがもう少し具体化すると,次が変わる,ロードマップなりアクションプランがより変わるのではないか」。
この栗原美津枝委員からの御意見を受けて,また,米国や英国においても最初の核融合発電の実現時期を前倒ししようという動きがあることを踏まえれば,日本における核融合発電の発電実現時期を加速することができるか,その可能性を検討する価値は高いと考えました。日本の原型炉については,QSTを事務局とし,産学が連携する原型炉設計合同特別チームが基本設計をしています。そこで,QSTの東島委員に,核融合発電の実現時期を加速することができるか,その可能性についてごくごく初期的な検討を行っていただくようお願いいたしました。本日はその検討状況について,後ほど東島委員に簡単に御説明を頂きます。
その前に,2つ目として非技術的観点です。チェックアンドレビューの項目の1つに社会連携がございます。第2回中間チェックアンドレビューまでの社会連携の達成目標は,アウトリーチ活動の推進と社会連携活動の実施とされています。こうした社会連携活動の進め方に関しても,近年の社会情勢を踏まえていくことが必要です。例えば国際情勢です。米国,英国においては,核融合発電の実現時期の前倒しが検討される中で,核融合関係の企業群の組織化や,立地や技術安全の問題に関する検討も開始されているところです。
核融合エネルギーが国民に選択され得るエネルギー源となるには,社会との不断の対話が必要という観点から,日本でも既に関係機関の協力により,アウトリーチヘッドクォーターを設立し,活動を始めています。こうした取組を振り返り,社会連携活動のさらなる発展の方策について議論を深めていく必要があります。そのような観点から,おって,岩渕戦略官に御説明をしていただきます。
以上,問題意識について説明させていただきました。
それでは,この問題意識を踏まえて,技術的観点,非技術的観点からの課題提供を東島委員,岩渕戦略官に続けて説明していただきます。まず技術的観点について,東島委員,お願いいたします。
【東島委員】 東島です。それでは,資料2に基づき,お話しいたします。まず,主査の問題意識を踏まえた形で,技術的な観点から検討いたしました。その結果,今日は問題,課題の提起をさせていただきたいというふうに考えています。
まず,1枚目おめくりいただいて,現在のJA-DEMO,これは設計概念の基本設計が終了したものですが,もともと核融合科学技術委員会での原型炉の目標は,数十万キロワットの電気出力があって,実用に供し得る稼働率があって,燃料の自己充足性に見通しが得られるような基本概念であることというのが必要条件でした。
これに合わせて,先ほど御説明があった特別チームでは,基本パラメーターを,そこで置いていますような,例えば核融合出力として1.5ギガワット,発電単出力で0.64ギガワットというような値で設計を進めてきています。そういう意味で,この設計については,もともと第1回中間チェックアンドレビューに間に合わせるということで検討してきたものです。ということで,これまでのこういった設計の概念は,核融合炉開発に向けたアクションプランや原型炉研究開発ロードマップに沿って着実に進めてきたものというふうに認識しています。これまではどちらかというと,アクションプランに書かれているような課題を1つずつちゃんとクリアしながら着実に物事を進めていって,原型炉へ移行していくという考え方です。
先ほど主査から問題提起を頂きましたが,実際に原型炉の発電の時期を加速,前倒しをしたときに一体どういう論点があるのか,技術的な観点から論点や課題があるのかというのを想定してみました。
まず加速,前倒しする発電開始時期は一体いつと想定するのか。これによって,その時期までにそろえられる許認可に必要なデータや,開発できる技術に何かしらの制約があるだろうと考えます。もちろん我々が今目指しているのは,先ほどお見せしたJA-DEMOです。
ここで,もしそうだとすると,段階的に原型炉の性能を上げていく,言い換えれば,例えば段階的に運転領域を広げていくというようなことを想定してはどうか。ここではアップデートという言葉を使いましたけれども,後々機器の中でアップデートできるものは後でアップデートすればよく,できないものについては,最初からそろえて,各種条件がそろったら運転領域,性能を上げていくと想定しようということです。
その場合に,例えば,今,JA-DEMOで目指しているのは,最終的には定常運転です。ですけれども,例えば初期の段階では,パルス運転を想定しても良いのではないか。しかし,もともと定常運転の設計になっていますので,何回もパルス運転を繰り返すと,結果的に疲労試験をやっていることと同じになりますので,そういう意味ではパルス運転の回数は何らか制限をする必要があると思いますけれども,こういう比較的初期の段階では技術的な要求を下げても良いのではないか。
そのときには,発電実証に主に重きを置いてはどうかと。だとすると,先ほど1.5ギガワットと申し上げましたけれども,一旦核融合出力や発電量というのは一時的に初期の段階では下げてもよいのではないか。
また,重要な課題でありますけれども,三重水素増殖比は今1.05を狙っているわけですけれども,初期の段階においてはこれを,例えば,ほとんど1を狙っても良いのではないか。
また,規制申請の準備や規格基準の整備も,この段階的な原型炉の進め方に合わせて整えてはどうかと。
これに伴って制約が解決できたものから,例えば,加熱装置などを速やかにアップデートして,性能を上げる,運転領域を広げるということで検討してはどうかと思っています。
ですが,例えば段階的に性能を上げるといっても,どのように上げていくのが適切なのか。これも,いつの時期に何ができていないといけないのかという議論が必要かと思っています。
そういう意味でこのように考えたわけですけれども,必要となる許認可データや開発していく技術について,現時点で加速の見通しが少なくとも得られていなければこの検討をやってもしようがないので,まずは加速できるかという観点から,今までは全てのデータをそろえて,それで次に行こうという考え方だったわけですけれども,初期に必要な原型炉像を明らかにして,それに必要なものを順番にそろえていくというふうにしていったときに,そういった加速が得られるのかというところを考えていってはいかがかと思っています。
だとすると,そろえるデータの順番などが変わります。そろえる技術が変わると思いますので,現アクションプランやロードマップは,最終的に更新する必要があると考えています。
以上です。
【笠田主査】 東島委員,ありがとうございました。意見交換は追って時間を設けます。
次に,非技術的観点からの課題提起について,岩渕戦略官,御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 それでは,非技術的観点に関して御説明いたします。参考資料として配布した「アウトリーチヘッドクォーターの活動報告」は,去年の10月の核融合科学技術委員会でお配りした資料です。2回目のチェックアンドレビューに向けての達成目標の中に社会的連携の課題,目標もあると,主査から御指摘いただいたとおりですが,そこに関して今はどういう活動を行っているのかというのがこの参考資料です。
参考資料の3ページにあるアウトリーチ活動推進計画,これは令和2年度に行った活動をまとめた表ですが,現時点において社会連携の関係で行っている活動は,3ページに書かれているとおりです。非常に幅広い活動を行っています。設立したヘッドクォーターにおいてこうした様々な活動に取り組んでいるということ自体,第1回チェックアンドレビューの時点での評価としては達成目標を満たしていると考えます。
それでは,第2回に向けた課題は何か。今後数年間にわたって取り組むべき特に大事な課題は何か。先ほど主査からの問題提起も幾つか頂きましたが,特に核融合が今後,研究の時代から発電の時代に進んでいくという大きな時代の流れを踏まえたときに,例えば参考資料3ページを見ますと,小中学生・高校生,あるいは一般市民の方を対象にした取組は様々ありますが,産業界向けのアウトリーチ,経済界向けのアウトリーチの観点でみると,活動は比較的手薄だったという印象も否めないと思います。やはり研究の時代から発電の時代に進むとなると,少し本腰を入れて行うべき課題と感じます。
先ほどの主査の御発言もありましたが,例えば米国では,核融合に関わる産業界・経済界の皆様が団体をつくり,いろいろな意見交換をされている,経済界の組織化のようなことが行われています。あるいは,安全についての議論も,今,米国と英国の政府の中でも取り扱っていて,核融合発電を行う1号機の建設という話の中で,そうした社会連携の課題について本腰を入れるべきという雰囲気がある。例えば,そうした活動は,今後取り組むべき課題としてあるのかもしれません。
英国の場合には,核融合発電を行う1号機の立地地域の選定ということも行われています。こうしたことから,核融合の技術を巡る規格,立地を巡る安全性,こうした面の議論を進めていく,そういう場が必要なのかもしれません。そこのタスクフォースは文部科学省の審議会ですけれども,その議論にどういう場が適切なのかは,いろいろな議論があり得るところです。いずれにせよ,そうした部分は今後の取組における課題として挙げられると感じます。

【笠田主査】 戦略官,ありがとうございます。それでは,まず技術的観点の方,こちら,東島委員の御説明を踏まえて意見交換をしたいと思います。皆様,御意見ございましたら,よろしくお願いいたします。
藤岡委員,お願いいたします。
【藤岡委員】 先ほど東島委員の報告,提案をお聞きして,確かに原型炉を少し技術的なハードルを下げて段階的に進めていくというアイデア自身は,非常に現実的で魅力的だとは思いました。しかし,一方でこの手のことは危険性もあって,原型炉という単語をネットで検索しますと,やっぱり定常炉であるとか,三重水素増殖を実証するであるとか,そういう文言が記録としてもう既に残っているので,パルス運転であるとか,三重水素増殖比1みたいなものを原型炉といってしまうと,それは,核融合コミュニティーが自分たちの判断で勝手に目標を下げたという誤解を招くのではないかという危惧を持っています。
やはり原型炉と呼ぶべきものは今の定義で維持すべきで,それに至る前段階として,どういう呼び方をするのが適切かどうか分かりませんが,原型炉ではない呼び方で定義して,それがパルス運転だったり,三重水素増殖比1だったりというふうな形にするのが妥当ではないかと思いました。今回の御提案のものを全てひっくるめて原型炉というと,非常に危険ではないかという感触を私は持ちました。
【笠田主査】 藤岡委員,ありがとうございます。東島委員から何か御意見伺った方が良いですかね。
【東島委員】 そういう意味では,おっしゃったようなことというのは当然私も考えました。簡単に言うと,我々がある意味,原型炉に対しての魅力を下げていることになります。ですので,この点は当然何か考えないといけないと思っています。それは,従来の原型炉だとこういうことは言ってなかったけれども,例えば,要は,早く発電をすることに重きを置くことと,例えばもう少し違った付加価値をつけることで,そういうことも含めてできるようなものを早く取り組みたいというロジックにするのかなと私自身は思っています。
何が良いのかということでは,いろいろな考えがあるわけですけれども,例えば水素製造とかいろいろな物事をこれも考えて良いと思います。それも併せて議論していただいた上で,できる限り早く従来言っている原型炉にたどり着くというところが技術的には重要と思っています。
【笠田主査】 ありがとうございます。やはり藤岡委員の御指摘は非常に重要な点だと思いますし,技術的な成立性もそうですが,多分,段階を経てプロジェクトを進めていくとなると,かなりプロジェクトマネジメントが複雑なものになっていくことが予想されると思います。そちらの対応が技術的観点といって良いのか,非技術的観点といって良いのかよく分からないですが,その辺りをどのようにお考えでしょうかね。東島委員,その辺りについて何かありますか。要するに,最終目標は変わらないけれども,それまでに段階的にやっていくとなると,かなり工程が複雑になるというのは,それはJT-60SAとかで経験を積むという理解でよろしいですかね。
【東島委員】 そういう意味で工程が複雑にそれほどなるとは思っていないです。例えば加熱方法も,今は定常のNBIを想定しているわけですけれども,最初はそれを例えばECHで最初の発電ができないかと思ったときに,そのポートは,最初はECHに使っているけれども,できるだけ早くNBIに置き換えていくという意味での工程は確かに複雑になります。ですけど,ECHそのものはもともとあります。なので,基本的には置き換えることも含めてやっていくと思えば,私はそれほど複雑にはならないというふうに思っています。むしろ,おっしゃった技術的でない方の課題は,私の中ではまだちょっと整理し切れてないところです。
【笠田主査】 ありがとうございます。ほかにございますか。
坂本委員,よろしくお願いいたします。
【坂本(隆)委員】 段階的に進めることは賛成です。最終的な目標がぶれてなかったら良いと思いますが,1つ少し心配な点は,三重水素増殖比の目標を下げる点に関しては慎重になるべきだと考えています。これは技術的な問題以前に,ITERに比べて原型炉の三重水素燃焼量はとても多くなるので,増殖と消費のバランスが負になってしまえば,その無くなり方は非常に速くなるので,その後の原型炉に対する三重水素の供給がより難しくなって,原型炉の運転が成り立たなくなる可能性があります。したがって,三重水素に関しては,目標を下げるのは難しいと考えています。
【笠田主査】 ありがとうございます。東島委員,いかがでしょう。
【東島委員】 三重水素の確保という意味では,おっしゃるとおりです。ですけれども,パルス運転を例えばどのくらい初期にやるのかというところで,例えばですけれども,ヨーロッパが言っているように,2時間運転して20分休んで,2時間運転して20分休んでという,こう繰り返してやると,おっしゃるようなことが起こると思います。
我々としては,まず技術的なことを確認して,できれば速やかに先に進みたいと思っているわけですから,極端な話,1日に1発,最初のうちは2時間打ったらその日はお休みと。それで,必要な技術が得られているかどうかというようなものの確認に回しても良いと思います。その代わり,速やかにもともと言っているところに移るというふうに思えば,三重水素増殖比そのものも,もちろん1.05は最初から満たせている方が良いわけですけれども,必ずしもそこでなくても良いのかなという,そういう意味でのほぼ1と私は申し上げました。
【坂本(隆)委員】 もしその場合,ブランケットの設計がどうなるかということを僕はちょっと懸念しています。確かに東島委員が言われたように,初めはそういうスタートでも良いですが,そのときブランケットの設計が三重水素増殖比1以上は目指せないものを設置していたら,それを交換しないと次のステップに行けなくなると思います。ブランケットの設計がしっかりできて,将来的には1.05を目指せるものだが,実際には1しか達成できないのならば,もちろんそれは許容できるかとは思います。そこが多分決断として難しいところかと思います。
【笠田主査】 ありがとうございます。今の点,東島委員,補足するところがありますでしょうか。
【東島委員】 そういう意味でブランケットの設計そのものは1.05が目指せるような設計でスタートしているけれども,いろいろな許認可上の条件等に対し,最初からそういった高い中性子フラックスを想定するのかどうかというところで,そんなに高い中性子フラックスを想定しないと思うと,場合によっては1.05というのは満たせないような条件になると思っていますので,最初の段階ではほぼ1でも良いと思っているということです。
ですから,おっしゃるとおり,ちゃんと全ての中性子が利用できていれば,パルス運転であっても1.05が満たせるわけですけれども,後段の三重水素の回収系まで含めて全ての部分で1.05を上回れるかと言われたときに,そこがちょっと難しいのではないかなと思っているということです。ですので,ブランケットの設計そのものは1.05を目指せるようなものにしておくべきだと私も思います。
【坂本(隆)委員】 ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。パルス運転の回数によってはなかなかシステム全体が定常になるかどうかという観点もあるでしょうから,多分そういった御指摘だと思います。ありがとうございます。
それでは,横山委員,お願いいたします。
【横山委員】 ありがとうございます。横山です。内容は詳細のことは私もよく分かっていないですが,段階的に進めるということになると目標がはっきりしてくるという点では良いことと思います。ただ,それが,その目標が達成できないようなことが発生する。大きく計画を立てておくと,その中で順番を入れ替えるということができるような気がしますが,細かく段階的にやっていくと,これが達成できなかったということになってしまうという問題は発生しないか,制限がかかってしまうということはないのかという点を1つ心配しています。
【笠田主査】 ありがとうございます。東島委員,お願いします。
【東島委員】 最初のうちには必要なデータをそろえていないところでスタートしますので,そういう意味では,運転領域に制限がかかっているという認識です。今日は申し上げませんでしたが,例えばブランケットの構造材料についてのデータをきっちりそろえて,今は80dpaまできっちりデータをそろえて前に進もうということになっているわけですけれども,それがそろわないという条件になる可能性があって,そうすると,当然実際のデータを示せてないわけですから,そういった領域までの運転ができないと思っています。
ですけれども,それをやりながらデータを実際にはそろえて進めていくと。今の例示でいきますと,ブランケットの交換時期の議論になりますが,ブランケットを頻繁に交換しないと最初は運転できないわけですけれども,実際には設計もできているし,ちゃんと物もできていて,その物がちゃんと耐久性がありますよということが途中で証明できれば,運転領域は広げられると思います。
そういう意味で,今,実は非常に挑戦的なことを申し上げていますが,そういった方向にしていかないと,核融合炉のような一品物と申しますか,先駆的なものについてはやり方が難しいと思います。ですから,もう技術が成熟している通常の火力発電や原子力発電と同じようにするのではなく,段階的にといったときには,そういった規制も含めて段階的にお認めいただくような方向で行かないと,核融合の場合は難しいと思っています。
【横山委員】 ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。この辺りかなり技術と非技術的な観点のクロスする部分で,次の議論でも関係してくるところだと思います。坂本瑞樹委員の方からお願いいたします。
【坂本(瑞)主査代理】 前倒しに関する詳しい御検討ありがとうございました。原型炉開発の加速という観点では,段階的な取組を行うことで最終的なところも少し前倒しになっていくと思いますが,例えば原型炉の最終版が今までの予定どおりできたとしても,その後,最初に試運転があり,壁の放電洗浄とかいろいろなものをやった後で,だんだんDTに移ってくると思います。それがこの段階的な取組によって,パルス運転というか,それでもかなり長い時間,そういうものをつけるためには試運転等をやりながらやっていって,それと並行して最終版のものも造って許認可も得ていくということになっていくとすると,最終的には段階的に進めることによって,最終的な目標が前倒しになる可能性があると考えられるでしょうか。
【笠田主査】 東島委員,お願いいたします。
【東島委員】 私自身は,まず発電実証をできるだけ早くやりたいと思っていて,その後できれば速やかに,必要なものがそろったら速やかに今言っているJA-DEMOの中身を実施するというふうに思っています。ですので,当然,後ろも含めて前に倒したいと思っています。
ただし,その中で,一体何年前倒せるのかという部分はもちろん議論が必要だと思います。ある程度QST内でも議論してみましたけれども,やはり幾つかのターゲットがありそうで,ここについては,どのくらい前に倒すということが,非技術的な要請からも多分来るでしょうし,技術的な要請からも来るでしょうし,一体どの辺を我々として,今は今世紀中葉としているわけですけれども,社会的にも認めていただいて,かつ技術的にも開発できてという線がつくれるのは一体どこなのかという議論を,できればこのタスクフォースでやっていくのが良いと思っています。
【坂本(瑞)主査代理】 ありがとうございます。先ほど藤岡委員が言われたのはやはり大切な観点で,今まで私たちの最終的な目標としていたものが,この段階的なもので更に少し前倒しにできるような説明ができると説得力も増すと思います。私の想像では,段階的にやることは最初に試運転等も前倒しでやれるわけだから,最終的なものも早くなると言えるのかなという意図でした。ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。こういったところはかなり非常に慎重な議論,技術的な検討というのがやはり時間かかるものだと思いますので,じっくりと検討する必要があると思いました。
今澤委員,お願いいたします。
【今澤委員】 段階的に進めていけるのであれば,間違いなくそれが良いと思います。三大トカマクからITERに向かったときのギャップよりも,ITERからDEMOに行くときの技術ギャップは大きいはずですので,段階的に進められるのであれば進めるべきだとは思いますが,段階的に進められないから,今まで2035年にITERの結果を見て原型炉への移行判断をするという判断だったのではないでしょうか。
今回,2035年の移行判断を待たずに,原型炉と呼ぶかは別にして,何らかのパイロットプラントみたいなものを造って原型炉の研究を進めていくという大きな話というのは,この場で議論できるのでしょうか。それが親委員会から求められていることでしょうか。
【笠田主査】 私の方からちょっとだけ先に発言させていただきますと,まずやはりITERからDEMOへ,そして,実用化へというようなロードマップはかなり以前に,まだ私が子供の頃から国の方策として決められたロードマップに乗ってやってきたものであり,当然その当時から社会的な要請とか技術的な成熟度とかの明確化とかそういった背景が変わってきているという観点が,親委員会からの要請につながっていると私は認識しています。
こちらは岩渕戦略官から補足していただいた方がよろしいですかね。
【岩渕戦略官】 主査がおっしゃったとおりと思います。今回この議論が出てきたのは,この1年間で米国及び英国において新たな核融合発電の構想が出てきていて,例えば米国のエネルギー省の諮問委員会は,2040年代に最初の発電実証を行うと,パイロットプラントの構想を出してきました。こういう新しい状況を踏まえたときに,何もできないのか,あるいは加速,前倒しについて何か検討の余地があるのかという,非常に大きな問題意識の投げかけが委員会からあったということです。その着地点について今我々が見えているわけではないので,そこは技術的に着実な検討の下で,何か変更するのであれば変更するべきものと思っています。
【笠田主査】 ありがとうございます。よろしいですかね。
【今澤委員】 分かりました。そうであれば,段階的に進めていくということについて,非常に幅広く議論すべきだと思いますが,今回の議論1回で何かまとめて親委員会に報告してしまうのでしょうか。
【笠田主査】 いえ。今回の議論のとおり,やはりこれはしっかりと技術的な観点,あるいはこの後議論させていただく非技術的な観点も踏まえて,じっくり考えていくべきではないかと私は考えています。
【今澤委員】 分かりました。
【笠田主査】 それでは坂本隆一委員,お願いいたします。
【坂本(隆)委員】 原型炉を段階的に進めるというのは,今までの原型炉とは違う装置を1つの段階としておくということになるのですか。僕の認識だと,最終的な原型炉をどのようにに運転するかの問題だと思っていましたが,今の話を聞くと,原型炉の前に1段階増やして,新しい装置を1つ造るということだと思いますが,どちらかということを,はっきり理解したいと思いました。
【笠田主査】 私はそうは取ってなくて,やはりDEMOは1つのDEMOだと思っていますが,東島委員が御検討されたことはどうでしょう。
【東島委員】 私が検討したものも,前倒すことによって得られない技術の部分は代替技術で置き換えていこうという考え方です。ですから,置き換えられないものは,具体的には例えば原型炉のDEMOの真空容器みたいなものは多分最初から同じものでないと駄目だと思います。この真空容器みたいなものは交換できないので,それに対して交換できるものは,ここではアップデートという言葉を使いましたが,アップデートできるものは後でアップデートしても良いのではないかと思います。
それよりも,やはり社会的な要請として,今世紀中葉ではやっぱり遅いというのが世の中の今,圧倒的な御意見かというふうに思いますので,それを早めるとしたら,我々核融合の専門家は何が提示できるのかというところでの検討だというふうに思っています。
【坂本(隆)委員】 ありがとうございます。それでは,原型炉の運転の仕方として段階的に進めるというような認識でよろしいでしょうか。
【東島委員】 そうですね。運転といったときに,最初に整備している装置という言い方をすると運転だけではないのかもしれませんけれども,基本的にはプラズマから見たら,同じ装置の中でプラズマが段階的によくなっているというふうに御理解いただきたいと思います。
【坂本(隆)委員】 ありがとうございます。
【笠田主査】 よろしいですかね。やはりこの辺り非常に難しい議論が今後も必要だと改めて思った次第です。ありがとうございます。
では次に,非技術的観点について,岩渕戦略官の御説明を踏まえ意見交換をしたいと思います。最後の部分はかなりこの辺りにも関わってきたと思いますが,御意見等ございますか。
やはりアウトリーチヘッドクォーターというのが設置されて以来,いろいろ塊感のあるアウトリーチは可能になってきているというのは感じていますが,戦略官の御指摘のあったとおり,産業界ですね。今までいわゆる核融合産業というか,核融合炉の核融合装置を造るメーカーさんとのコミュニケーションはできてきたと思いますが,やはり産業界は非常に多様で,いろいろな産業界がITER計画に興味を持って参画,協力しているといった状況があると思いますが,なかなか触れ合う機会がないと思います。私のような大学から来ている人間からすると,例えば学生さんがそういった産業界に対してアプローチしていくという意味のアウトリーチもあるでしょうし,そういったところを今後きちんとやっていく活動が非常に重要だと思います。
ただ,その際にやはりここは技術と切り離せないところですけれども,安全性あるいはリスクコミュニケーションといったことも含めて議論を深める必要があると思いますが,なかなかヘッドクォーターの範囲,あるいはこのタスクフォース,あるいはさらには規制ということまで行くと,核融合科学技術委員会でも所掌から外れる部分があると思いますが,今後そういったものをどう話していくかというのが非常に重要だと私は思っていますけれども,そういった観点で御意見等ございますか。
戦略官から何か追加することや,強調しておくべき点等ございますか。
【岩渕戦略官】 リスクコミュニケーションの議論が大事になってきます。米国の例を申し上げれば,今,核融合炉の規制についての議論が政府内で始まっており,その際,技術についてよく分かる産業界の方々が相当こうした議論を手伝い,官民一緒に検討がなされています。ITERはフランスでつくっていますが,原型炉は日本でつくることになるでしょうから,日本独自の法規制をしていく上で,産業界・経済界の役割は大事かと思います。こういう観点から,アウトリーチというか社会連携の活動を発展させる方法について,少し議論を深めていく必要があると思っています。
【笠田主査】 重要な点をまとめていただきました。
それでは,本日皆様から頂いた御意見を踏まえて,今回のこの議事に関しましては,次のようにまとめさせていただきます。
まず,最初の技術的観点についてです。こちらは,核融合科学技術委員会では,従来原型炉の目標として,21世紀中葉までの核融合エネルギーの実用化に備え,数十万キロワットを超える定常かつ安定した電気出力を実現することなどを掲げてきました。今回の第1回中間チェックアンドレビューについては,先ほど議題1で審議いただいたとおり,今世紀中葉を目指した達成目標とアクションプランの進捗状況結果の連関について,核融合科学技術委員会に報告することとします。
一方,第2回中間チェックアンドレビューについては,幾つかの国が核融合発電の実現時期の前倒しに関する構想を発表している中,我が国においても同様の前倒しが可能なのか議論を深め,第2回中間チェックアンドレビューで期待する達成目標自体を見直すことも検討する価値が高いのではないかと考えます。
ただ,こうした検討は様々な技術的観点からの検討を伴うものですし,また,他国の戦略などの社会情勢の見極めも必要であるため,第1回中間チェックアンドレビューの後,一,二年をかけて検討するべきではないかと考えます。
続きまして,2番目に,非技術的観点についてです。こちらに関しては,アウトリーチヘッドクォーターが設立され,活動推進計画が立案されて,関係機関によって様々な取組が行われています。それらの取組を今後更に発展させていく必要があるということだと思います。
2つ目が,産業界については,核融合が研究のフェーズから発電のフェーズに移り行くに従って,核融合関連の産業界の組織化などが進みつつあります。この際,これまで核融合にあまり関わりのなかった企業に対しても,核融合の持つ重要性を認識していただくことが重要になります。今後,多方面の企業に関心を持ってもらえるような活動に取り組むことが重要ではないでしょうか。
また,核融合が発電に近づくに従って,技術と安全性の関係について議論を深めていくことも重要になります。
これらの点は,必ずしも文部科学省傘下の審議会である核融合科学技術委員会や原型炉タスクフォースの役割に収まらない課題かもしれません。幅広い関係機関による今後の議論の深まりについても期待したいところです。
このように次回核融合科学技術委員会に報告することについて,御意見などがあればお願いいたします。よろしいですか。
特段なければ,委員会への報告については,以上の趣旨で私,主査一任としていただければ幸いです。よろしいでしょうか。
それでは,今後の議論の進め方,中間チェックアンドレビュー2目標改定のスケジュール感などについては,岩渕戦略官から御説明いただきます。戦略官,お願いいたします。
【岩渕戦略官】 第2回チェックアンドレビューに向けたスケジュール感ということで,今後数年間の議論の仕方についてです。今御議論を頂いた点は非常に大きな課題でありますが,第2回チェックアンドレビューの目標改定,特に核融合発電の我が国における実現時期の前倒しが可能なのかどうか,こうしたことに関する検討,特に技術的観点から時間を要する検討になると考えています。
今日のタスクフォースの審議結果を,笠田主査から次回の核融合科学技術委員会の方に御報告を頂きますが,その後,様々なプロセスが必要だと思っています。まず現場での技術的な課題の検討が必要だと思いますので,QSTを事務局として産学連携で今,構成している原型炉設計特別合同チームで,現場レベルの検討を始めていただくことになると考えます。
そして,第1回中間チェックアンドレビューを取りまとめた後になると思いますが,現場での検討結果をこのタスクフォースあるいは核融合科学技術委員会に上げていただきながら,そこで御議論を頂き,まとめていくことを想定しています。具体的な作業の進め方については,核融合科学技術委員会の方で議論をした上で決定するというふうに事務局としては考えます。
【笠田主査】 それでは,次の議事に移りたいと思います。議事3「令和4年度核融合関係概算要求について」に入ります。こちらも岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料3に基づきまして,御説明いたします。資料3,タイトルは「令和4年度核融合関係概算要求の概要」です。2ページ目を御覧ください。
ITER計画等の実施というタイトルで,財務省等に今,概算要求をしています予算の説明を記載しております。核融合関係の文部科学省の予算ですが,令和3年度は,219億円という予算規模で研究開発を推進しています。令和4年度の要求・要望額,財務省に現在提出していますものは314億円で,約100億円増という予算を現在要求しているところです。
今年の概算要求のポイントは,やはり各国において核融合発電に向けた新しい動きが出てきているということです。これまで国際協調ということで進めてきた核融合ですが,いよいよ発電に向けては,主要国の間の国際競争,産業競争が始まりつつあるという中で,核融合発電に向けた様々な機器開発,これを今,ITERプロジェクトの中で日本企業の皆様と一緒に進めているわけですが,こうした機器開発を加速し,核融合産業力の強化を図るということ,このための予算であるという位置づけで要求をしているところです。
そのような位置づけになるわけですが,要求項目自体は,ITER計画の中で我が国が調達義務を負っている各機器,この物納調達のための活動です。左下の方にITER計画の予算,令和3年度178億円,令和4年度234億円と書いていますが,超伝導コイルの最終的完成のほか,ITERのファーストプラズマ以降に必要になってくる機器,例えばダイバータなどの機器の製作について,これを本格化するための予算を要求しています。こうした点で技術を獲得することが今後の我が国の核融合産業競争力強化にとって非常に大事であることから,こうした開発を急ぐ,加速するということで予算要求しています。
また,右側,BA活動については,令和3年度が41億円,補正予算もありますので実際はこれより大きい規模で運用しています。令和4年度は79億円で,JT-60SAの加熱運転に向けた準備などに必要な経費を要求しています。また,この全体の数314億円の相当数ですが,LHD計画など,大学共同利用機関,NIFSの関係の予算,こちらも文部科学省としては要求をしています。
【笠田主査】 戦略官,ありがとうございました。ただいまの御説明に対し,御質問等がございましたらお願いいたします。
それでは,次の議題に移りたいと思います。
続いて,議事4「原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について」に入ります。皆様御存じのとおり,本議題については前回の原型炉タスクフォースで御説明いただきましたが,その後NIFSで実施いただいている共同研究について採択結果が出ましたので,前回以降の追加情報について御説明いただきます。今川教授,御説明をお願いいたします。
【今川教授】 それでは,資料4を御覧ください。
最初のページが,公募テーマと応募・採択数の一覧になっています。今年度,6件の課題指定型の公募を行いまして,応募はそれぞれ1件,1件,1件,1件,1件で,(6)の課題については応募がなかったという状況でございます。課題提案型が1件,応募がありまして,全体で6件の新規の応募がありました。予算を踏まえた上で,NIFSの委員会で審査を行いまして,課題提案型1件を含む3件を採択いたしました。
次のページが,継続も含めて,新たに3件の採択を行って,合計7件の共同研究の課題一覧となっています。3年目のものが2件,2年目のものが2件,今年度3件を採択したという状況でございます。説明としては,課題提案型につきましては,理論・シミュレーションの項目のものが課題提案型として提出されまして,内容を審議した上,採択ということになりました。
【笠田主査】 ただいまの御説明に対し,質問等ございましたらお願いいたします。
採択率は大体50%ということですかね。
それでは藤岡委員お願いいたします。
【藤岡委員】 今回応募があって,ブランケットが2つで,1つも採用されていないですかね。こういうのは,何か全体的な計画の遅れにつながるものでしょうか。
【今川教授】 全体というのは,原型炉設計の全体ということですね。
【藤岡委員】 そういうことです。
【今川教授】 なかなかそこは答えにくいところがありますが,要するに,予算が限られているものですから,必要なものということで今回6件公募をかけていますので,予算があれば全件採択したいところではありますが,予算の制約の上,評価の高かった計画,応募内容が優れていると思われているもの3件を採択したということになります。
なので,採択されなかったものにつきましては,来年度改めて公募する方向で今審議が行われようとしているというところです。そういう意味では予算の関係で,遅れるという言い方はあまり多分適切ではなくて,要するに,限られた資源をどういうふうに優先配分するかというような観点になろうかと思います。NIFSの場合は,大学側から提案をするもの,大学の観点で審査を行っていますので,そういう意味では人材育成の面とか,あとはもちろんアクションプランにおける重要度とか,そういうものを踏まえた上で総合判断をさせていただいています。
QSTさんの方の公募は,よりアクションプランに直接書かれていて,なおかつQSTで進めるものにふさわしいものということで公募・採択をしていますので,そこは緊密に連絡を取りながら,来年度の公募課題を決めるという手続の中で調整をしていくものということでございます。
【藤岡委員】 今回不採択になったものに対して,何らかのフィードバック等はありますか。何かそんなに競争しているような感じもしないので,今,1件応募で0件というふうな採択ですから,本来の公募というのはそういうことをやってはいけないと思いますが,こういうタイプの,コミュニティー全体で1つのものを造り上げていこう,そのための要素研究をしていこうというときには,やっぱり採択する立場の方から,アドバイスがあっても良いのではないかと思います。
【今川教授】 ありがとうございます。それにつきましては,採択されなかったものにつきましても,委員会の意見をお返ししています。なので,次,新たに応募するときには,その委員会の意見を踏まえた上でブラッシュアップしたもので応募していただくということを期待しています。
【藤岡委員】 分かりました。
【笠田主査】 藤岡委員,ありがとうございます。大事なところだと思います。やはりこれ,これっきりで終わりじゃなくて,今後継続的に,NIFSの方で募集していただいている原型炉共研は,比較的長期的な,原型炉の後半に期待されるようなものが課題として多いと思いますが,そういった意味ではやはり人材ですね。若い人にこういったものに興味を持っていただいて参画していただくという観点も多分大事なのかなと私個人的には思います。
ほかにございますか。よろしいですかね。
今川先生,どうもありがとうございました。
【今川教授】 ありがとうございました。
【笠田主査】 本日用意していた議事は以上ですけれども,このほか特に報告,審議すべき案件はございますか。
本日の原型炉開発総合戦略タスクフォースはこれで閉会いたします。御多忙の中,御出席いただきありがとうございました。これにて失礼いたします。

―― 了 ――
 

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