外務省・新着情報

冒頭発言

JICAが管理するODAの無償資金協力支払前資金にかかる改善策

【吉田外務報道官】冒頭私の方から一点ご報告させていただきます。
 10月20日に、財務省の財政制度等審議会で、JICAが実施している、ODAの無償資金協力案件の資金について、御指摘があった件についてです。
 JICAが実施していますODA、無償資金協力の資金は、外務省からJICAに交付されて、JICAが相手方の政府にその資金を支払うまでの間、JICAにおいて管理するということになっています。この資金のこと「支払前資金」と呼んでいますけれども、その総額が、2020年度末時点で、約1,960億円に達しているという御指摘が財政制度等審議会でございました。
 お手元に資料が配布されていると思いますので、その内容に沿ってご説明させていただきます。この1,960億円のうち、約6割に当たります約1,215億円につきましては、プロジェクト自体は完了していますが、最終的に瑕疵検査というものが行われますので、この瑕疵検査待ちの状況になっておりまして、JICAがその瑕疵検査が終わるまで、年度をまたいで案件ごとに管理している資金であります。
 他方、この1,960億円のうちの4割に当たります約744億円、これにつきましては、新型コロナや政情不安、それから入札が不調、不落になったとか、そういった事情等によって、開発途上国を現場とするがゆえの各種事情によって、事業の遅れが生じており、想定された期間を超えてJICAが管理していると、こういった資金であります。
 こうした約744億円の事業の遅れ等によって管理されている資金の、案件全体の約8割は既に工事が完了して、瑕疵検査待ちの状態になっているか、または完了に向けて進捗中であります。
 こういった状況ではありますけれども、財政制度等審議会において御指摘もございましたので、事業の遅れにより生じた支払前資金のJICAでの長期滞留、これを減らして適正化を図るために、まずは速やかに着手可能な措置を取るということにしたいと考えます。
 一つ目は、閣議決定の翌年度末までに政府間で行われる交換公文、それとJICAと非援助国政府の間で交わされる贈与契約、これが結べない案件、また、二つ目として、中断が長期化する等して、閣議決定から5年が経過し、かつ、具体的な案件終了の見通しが立たない案件等は、原則として打ち切りを検討します。その上で、被援助国政府と協議を行うということにしたいと考えます。
 それから、この贈与契約、JICAと先方政府の間で締結される贈与契約が定める資金供与期限というものがありますが、これを迎えた案件につきましては、期限の延長の要否を厳格に審査をして、案件の打ち切り及び国庫返納の可能性も含めて検討することとします。
 以上の改善策につきましては、今後新たに実施する案件のみならず、現在実施中の案件にも適用し、全ての実施中の案件について網羅的な点検を行うこととします。
 また、今後は、案件の実施前に、これらの新たな方針について被援助国政府に書面で説明を行って、理解を得ることとしたいと考えます。
 これらの改善策をとることによって、事業の遅れにより生じたJICAが管理する支払前資金、まずは100億円程度の規模で減らすことを目指したいと、このように考えます。
 更に、日本の中の関係者が緊張感を持つのはもちろんですが、被援助国政府の関係者に対しても、プロジェクトの迅速かつ円滑な実施について、より一層の問題意識を持っていただき、無償資金協力の効果的・効率的な実施につなげていきたいと考えます。
 支払前資金を削減して、財政資金を効率的に活用するための改善策について、財政制度等審議会における御指摘も踏まえ、実施機関であるJICA、それから、財政当局とも議論を継続していきたいと考えます。私の方からの報告は以上です。

JICAが管理するODAの無償資金協力支払前資金にかかる改善策

【日本経済新聞 溝呂木記者】今ご紹介いただいた支払前資金についてですが、表の2、3に当たるところですね、この額が増え始めたのはいつだったのか、これもう、どんどん増えてきているものだと思うんですけれども。いつ頃が増えていったとか、過去がどうだったのかというのを、簡単にご紹介いただけないでしょうか。

【吉田外務報道官】この2、3というのはあれですか、この表に書いてある。

【日本経済新聞 溝呂木記者】そうです、744億円というのは、2と3の合計ということだと思いますけれども、外務省さんが問題視されていて、今回も提起されたのがこの2、3のことだと思うんですが、これが過去どうだったのかということです。

【吉田外務報道官】過去ですね。過去の具体的なデータというのは手元にないので、要すれば、担当部署に照会していただければと思いますけれども、この無償資金協力の支払前資金、これがだんだん積み上がってきているという実態は実はありまして、先ほど申し上げた、全体として1,960億円になっているという指摘があったということを申し上げましたけれども、これの全体の額として言えば、既に十数年前から、だんだん増えてきているという状況はございます。また、増加傾向にあるということも言えるかと思います。
 他方、ご指摘のあったその2、3に相当する744億円、特に問題がある案件が停滞をしているというものについては、これから精査をしていきますけれども、それぞれの案件によって、何故滞留しているかと、遅れているかというのは事情が異なります。先ほど申し上げたようにコロナで案件が止まっていたというものもございますし、そのコロナ禍における案件の停止というのは、ほとんど現在は再開しています。
 それから政情不安であるとか、治安が悪化したとか、こういった事情があるので、その時々、各国の状況に応じて違いがありますけれども、近年は、増加傾向にあったということは言えるかと思います。

【日本経済新聞 溝呂木記者】追加でもう一点ですが、先日の財務省の財政制度等審議会で指摘されたのが1,960億円だったというところで、外務省として、指摘される以前から、この2、3に相当する部分というのは、いつか何か対策を打たねばならないというふうに考えていらっしゃったということでよろしいでしょうか、経緯としてご説明いただけますか。

【吉田外務報道官】今回、財政制度等審議会において指摘があったということもあるので、改善策をこのように検討して発表したわけですが、従前からこういった傾向にあるということは認識をしておりましたので、当然、無償資金協力をスムーズに円滑に実施していく、しかもこの原資は、税金、財政資金でありますから、それを効率的に活用しなければいけないという問題意識は、従前から持っておりましたし、実施機関であるJICAとの間でも、様々検討はしておりました。
 今回こういうご指摘があったことを踏まえて、従来からの検討も踏まえて、新たに改善策をとるということにしたということであります。

【北海道新聞 古田記者】JICAの絡みで確認ですけど、こういった見直しをかけるのは、まず初めてになるのかという点と、あと、これは財政審が指摘したということで、今回着手するのかという、その経緯をはっきりさせたいんですけど、よろしくお願いします。

【吉田外務報道官】改善策について、今回の改善策そのものは今回新たに打ち出したものだというふうにご認識いただいたら良いかと思います。当然、援助現場におきまして、それぞれのプロジェクト、案件ごとに、JICAと外務省と、緊密に連携しながら、相手国政府との間で、効率的執行をしていく、原因を究明していくというような対応は、従前から行っておりましたけれども、全体に網をかけて、改善策を行い、これをまた、被援助国政府との間で議論していくということにしたというのは、今回が初めてだと、ご認識いただいたら良いかと思います。
 今回の改善策そのものが、契機というのはどういうことかというお尋ねではありますけれども、まず、先ほどのご質問に対してもお答えしたように、我々として問題意識は、当然、従前から持ってきたと。そういう中において、財政制度等審議会で指摘がございました。外務省、JICAとして、十分この問題に対して対応していると、あるいは対応を強化していく、ということをお示しするという考えで、今回の改善策を発表させていただいたということです。

アフガニスタン情勢(岡田駐アフガニスタン大使のカブール訪問)

【テレビ朝日 澤井記者】アフガニスタンの件でお伺いします。先ほど報道発表がありまして、昨日まで岡田大使が、現地を初めて訪れられていたということで、今、一時閉鎖している大使館を、タリバーン側には安全が確保された場合には再開するということを伝えていたという報道もありますけれども、その事実関係と今後の見通しを教えてください。

【吉田外務報道官】まず、ご指摘いただいた報道発表ですが、既にご認識いただいているかと思いますが、ご説明させていただくと、11月21日から24日にかけて、現地時間ですが、岡田駐アフガニスタン大使がカブールを訪問して、タリバーン幹部との間で実務的な協議を行いました。アブドルガニー・バラーダル氏、タリバーン側の発表では第1副首相代行に該当すると、それからアブドゥル・カビール氏、タリバーン側の発表によれば第3副首相代行に相当すると。これを初めとして、タリバーンの幹部と会談をして、アフガニスタンに滞在する邦人、それから現地職員等の安全確保、それから、希望者の迅速かつ安全な出国の実現についてはたらきかけを行いました。また、人道アクセスや援助関係者の安全の確保、それから女性・少数民族を含む全ての人々の権利の尊重、包摂的な政治体制の構築、アフガニスタンをテロの温床とさせないことなどについても働きかけを行いました。
 この他、カルザイ元大統領や、アブドッラー前国民和解高等評議会議長、それから国連の関係者とも会談を重ねて、アフガニスタン情勢について意見交換をしたということです。
 今回の岡田大使の出張、カブール訪問については、協議の性格から、現地にいる邦人や、まだ出国を希望して残っている現地職員等、安全確保や、安全状況、こういったものに影響を与える可能性が否定できないので、やり取り、これ以上の詳細については、控えさせていただくことにしていますけれども、今ご質問のあった、日本大使館の再開の見通しについては、引き続き情勢を注視する必要があるというふうに考えておりまして、現時点で大使館を再開するという具体的な予定はありません。

発信元サイトへ