文科省・新着情報

1.日時

令和3年11月10日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 特定研究大学制度(仮称)の構築に向けて(1 ガバナンスについて、2 規制緩和等について、3 指定・評価について)
  2. その他

4.出席者

委員

  (座長)金丸恭文座長
  (委員)上山隆大委員、太田誠委員、篠原弘道委員、高橋真木子委員、橋本和仁委員、林隆之委員、松尾豊委員、山本佳世子委員
  (オブザーバー)国立研究開発法人科学技術振興機構 濱口道成理事長
 

文部科学省

  (事務局)池田研究振興局長、増子高等教育局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局担当)、森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、植木大学研究基盤整備課長、堀野国立大学法人支援課長、馬場大学研究力強化室長 他
 

5.議事録

【馬場室長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、世界と伍する研究大学の実現に向けた制度改正等のための検討会議の第3回を開催いたします。
本日は、御多忙の中、御参加いただきありがとうございます。会議の冒頭は事務局が進行させていただきますので、よろしくお願いいたします。
本日の会議は全ての委員に御出席いただいております。また、前回に引き続き、有識者として、科学技術振興機構(JST)の濵口理事長にも御参画いただいております。
本日も、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、オンラインでの開催となっております。音声などに不都合がある場合は、随時事務局まで御連絡をお願いいたします。
最初に、オンラインでの会議を円滑に行う観点から、事務局より何点かお願いがございます。まず、発言時以外はマイクをミュートにしていただくこと、また、御発言に当たっては、挙手ボタンを押していただく、またはカメラに映りやすいように手を挙げていただくこと、最後に、資料を参照する際には、資料番号やページ番号など、該当箇所を分かりやすくお示しいただくなどの御配慮をお願い申し上げます。
なお、検討会議は原則として公開で行うこととしております。本日は、事前に登録いただいた方にYoutubeのメクストチャンネルで動画を配信していますので、御承知おきいただければと思います。
それでは、以降の進行は金丸座長にお願いしたいと思います。座長、よろしくお願いいたします。

【金丸座長】 ありがとうございます。それでは早速、議事に入らせていただきます。
議題1でございます。特定研究大学制度の構築に向けた検討事項のうち、まずはガバナンスについて、法制度ワーキングチームの設置につきまして事務局より説明をお願いいたします。

【植木課長】 かしこまりました。大学研究基盤整備課長の植木でございます。よろしくお願い申し上げます。
資料1-1を御覧ください。こちらにつきましては、前回第2回の本検討会議におきまして、上山委員から、ガバナンスの改革については、学問の自由あるいは大学の自治などとの関係で、法律的にもきちんと押さえておくべきであって、法律の専門家を入れて、他の組織との比較でありますとか大学の自治の問題について検討すべきであるといった旨の御意見をいただいたところでございます。そこで、取り急ぎ事務的に検討させていただきまして、本検討会議の下に法制度ワーキングチームを設置する案を御提案するものでございます。
資料を御覧いただきますと、今申し上げましたとおり、本検討会議の下に、法制度に関する専門的・技術的な事項について検討を行うため、法制度ワーキングチームを設置する。その上で、その検討状況につきましては、適宜、本検討会議に報告するものとする。最後に、検討が終了したときには廃止するものとするといった内容でございます。
なお、本日、まずはこのワーキングチームの設置自体についてお諮りをし、御了解をいただければ、具体的な人選につきましては事後に、追って御案内することとしたいと考えております。
以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

【金丸座長】 ただいまの御説明について、御意見、御質問等あればお願いいたします。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、本検討会議として、法制度ワーキングチームの設置を決定したいと思います。
それでは続いて、ガバナンスに関して、特に合議体について、政策文書や各委員からいただいたこれまでの御意見を事務局でまとめておりますので、説明をお願いいたします。

【植木課長】 かしこまりました。資料の1-2、1-3を御覧いただけますでしょうか。
特定研究大学のガバナンスにつきましては、そもそもなぜガバナンスの一環として合議体が必要となるのか、これにつきましては、これまで、内閣府CSTIの専門調査会の先般の中間とりまとめなどにおいても一定の整理はなされておりますけれども、この点につきまして、大学関係者をはじめ、外部からの問合せが多数寄せられているところでございます。そこで、その中間とりまとめをはじめとして、これまでこの合議体をめぐって整理されてきた考え方のほかに、本検討会議におきましても過去2回にわたり、本件に関していただいた意見を整理させていただきました。これらを踏まえながら、本検討会議として、改めて合議体の必要性等について御意見を賜りたく存じます。
資料の1-2と1-3を分けておりますけれども、資料1-2のほうは、関連する他の会議等における考え方をまとめたもの、続く資料1-3につきましては、本検討会議における主な御意見でございます。
資料1-2から参ります。時間も限られておりますので、アンダーラインを付した部分を中心に、かいつまんで確認をさせていただきます。
こちらのページが1ページでございますが、「世界と伍する研究大学の在り方について」と題して、今年7月にCSTIの専門調査会で取りまとめられた中間とりまとめからの、ガバナンス、特に合議体の部分の抜粋でございます。
ローマ数字の1、世界と伍する研究大学の目指す姿といたしまして、アンダーラインにありますように、大学の知を集結させて取り組むべき課題の解決や日本が世界を凌駕する成長分野の創出に向けた貢献など、産業界や学術界、地域、行政など多様な主体を巻き込みながら、各大学が我が国の大学の誕生の歴史や特性を踏まえつつ、グローバル社会の変革をリードしていく活動を展開することをミッションとして明確化していくことが必要である。このミッションを実現していくためには、世界をリードする諸外国の研究大学と同等レベルに外部資金を獲得し、事業成長3%程度を果たすことが大前提となる。また、自律性と強靱性を兼ね備えたガバナンスの下、大学が自己を取り巻く社会環境や産業・経済システムと対話し、その共感を引き出しながら、自らの戦略を学内外の英知を結集して明確化、可視化することができる、持続可能な経営体に進化する必要があるとされております。
その上で、ローマ数字の2でございます。世界と伍する研究大学におけるガバナンスの在り方といたしましては、その基本は、1つ目が意思決定、2つ目が執行、3つ目が監査、4つ目がステークホルダーに対するアカウンタビリティーとその関与であって、世界と伍する研究大学としては、1つ目、大学の経営方針の策定や執行部の選考等を行う最高意思決定機関、2つ目、その大学の成長を実現する執行機関としての大学の長、プロボスト、CFO、3つ目、モニタリングを行う監事、4つ目、ステークホルダーに対する情報公開とその関与について、明確にすることが求められるとされております。
そのうちの意思決定機関といたしましては、合議体によるガバナンスの必要性と題しまして、1つ目の丸、組織としての意思決定においては、ステークホルダーの意思を反映することが必要である。特に、世界と伍する研究大学のミッションに照らせば、関連する産業界や地域、卒業生、公的機関などの学外関係者が国内外問わず幅広く想定される。こういったステークホルダーのうち特に経営に関与するのがふさわしい者が参画した合議体を置くべきである。中長期の成長戦略にコミットするためには、安定的・継続的な経営方針を維持することが望ましく、そのためにも意思決定機関は相対的に安定した合議体であることが求められる。それは経営戦略の安定性だけではなく、長期的視点での研究や人材育成の観点からも望ましいとされております。
その上で、例えば合議体の役割につきましては、大学のミッション、それに基づくビジョンや事業・財務戦略の決定、その執行担う大学の長の選考や解任、執行に関する監督などの大学経営に関する重要事項を決定することであるといったようなことであるとか、その下のかぎ括弧でございます、合議体の構成員に期待される資質と持続的な質の向上などについても言及されておるところでございます。
その後、読み上げにつきましては割愛させていただきます。
次のページ、4ページを御覧ください。こちらは今年3月に閣議決定されました第6期の科学技術・イノベーション基本計画からの抜粋でございます。この計画の第2章、Society5.0の実現に向けた科学技術・イノベーション政策と題しまして、2ポツ、知のフロンティアを開拓し価値創造の源泉となる研究力の強化といたしまして、(3)大学改革の促進と戦略的経営に向けた機能拡張ということで、(b)あるべき姿とその実現に向けた方向性といたしまして、下段になりますけれども、多様化する大学の中で、世界と伍する研究大学のより一層の成長が促進され、卓越した研究力の強化の実現を目指すとされております。特に国立大学については、国だけではなく、学生や卒業生、研究者、産業界、地域をはじめとする多くのステークホルダーに対する説明と結果責任を果たすようなガバナンスへと大胆に転換し、自らの裁量を拡大し、社会と常に対話を行う環境を実現するとされておるところでございます。
次のページに参りますと、文部科学省の下に設けられておりました国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議におきまして、昨年12月に最終とりまとめがまとめられております。その中からの抜粋でございます。
2ポツとして、国立大学法人と国との関係(自律的契約関係)の一環として、(8)高い自律性と厳しい結果責任を求める新たな法的枠組みといたしまして、中段になりますけれども、世界最高水準の研究を推進するため、国立大学法人については、より高い自律性と厳しい結果責任とが要求されることとなる。同時に、大きな経営自由度や裁量的経営資源を持たせることと併せて、社会変革の駆動力として戦略的な変容力を発揮するにふさわしいガバナンスを適用することが必要不可欠であるとされております。
次の段でございますが、大学ファンドの創設の動向も踏まえ、ガバナンスの在り方やその実行性を高める方策について検討することが必要である。具体的には、学長の上位に重要な意思決定等を行う強力な会議体を設けるなどにより、経営監視と執行との責任分担を図り、学長の強い経営リーダーシップを実質化させるとともに、ステークホルダーガバナンス理念に立脚したモニタリング機能や徹底した情報公開を担保させ、外部資金の獲得増等を実現すべく新たな法的枠組みの検討を行っていくべきであるとされておるところでございます。
以上が他の会議等における考え方をまとめたものでございます。
引き続きまして資料1-3でございます。こちらが、まさに本検討会議において、各委員からこれまでいただいた主な御意見、特にガバナンス、合議体の部分について抜粋をさせていただいているものでございます。
1つ目のインデックス、位置付け、権限についてでございますが、1つ目の丸、特定研究大学というのは、高い自由裁量権を持っており、その裏返しとして高いガバナンスが必要だということ。次は、2つ目の丸、基本的な発想としては、10兆円ファンドという巨大な投資を大学に対して出すわけであり、そのような公的な投資を社会的なニーズを踏まえて検討できるような仕組み、構造をつくろうということと理解している。3つ目の丸、新しい国立大学の姿というのは、社会課題を解決するための拠点になる。特定の大学の長の個人の考えではなくて、要は事業成長することを共に考えてくれるような、そういう人たちが入って大学の成長戦略を考える、そういう合議体をつくろうという仕組みである。
次の丸でございます。合議体は、大学としてのミッションやビジョンを受け止め、それに関して現在の執行部が行っていることを常にウオッチしていくような人たちであるということ、大学外の方たちが大学をうまく導いていくような組織体ということ、そして大学の学内への決定に関して、高い見地から常にウオッチして、言葉を投げかけてくれるような、そういう組織体ということ。今の経営協議会ではなくて、給与も一部もらいながら、責任もある程度共有しながら、そこに対してコミットできる、そういうことも含めて、日本独特のガバナンスの在り方というのがあるのではないかといった御意見。
次の丸でございます。学長を誰かがウオッチして、よい方向に行っていないということを指摘することで、むしろ学長をサポートするようなものが学外の合議体としてあるべきであったような御意見です。
次のインデックスでございます。構成員について。合議体のメンバーは、ある程度の緊張関係が保たれるよう、学内と学外のメンバーが、例えば半々程度は必要なのではないか。2つ目の丸、最低でも過半数は学外がいなければいけないのではないか。次の丸の最後のほうでございます。合議体のメンバーには学内者が一定数いなければならないということではなくて、むしろ中立的な役割とか公平性・公正性、あるいは政治と現場との間のバッファー、防波堤役というようなことを考えると、学外者を中心にすべきではないか。次の丸、合議体のメンバーについて、外部の経営的なセンスのある方が大事だということだと思うが、企業的な経営の方ばかりではいけないと思うといった御意見。
3ページでございます。1つ目の丸、合議体の議長は学外のメンバーであるべきではないか。次の丸、最初の合議体のメンバーはどうやって決めるのかというところが課題である。次の丸、合議体の具体的なメンバーについて、学長なり総長なりの上でしっかり意見が言える方というのはあまりいないのではないか、本当に長期視点で大学を支えてくれる方が確実に集められるのか。次の丸、大学の長や合議体に入る方というのは、成功された経営者の中にはたくさんいると思うので、候補はいるのではないかといったような御意見。
責任についてでございます。責任と権限というのは必ず裏腹であり、権限に合わせた責任についても、どこかの場で明記しておく必要があるのではないか。次の丸、合議体に参加する学外のメンバーに対しては、責任を持たせる裏返しとして、しっかりお金を払うべきであるといったような御意見。
その他でございますけれども、プロボストやCFOというトップがいかに優秀であっても、それを現実に実施していくためにはスタッフ機能も重要である。優秀な事務職員やURA等の研究支援者を確実に確保することが重要であるといったような御意見。次の丸の最後のほうでございますが、事前に研修や勉強する場も必要ではないか。次の丸でございます。これも最後のほうでございますが、ガバナンスの構造を考えるときに、大学という組織が、他の組織体のガバナンスとどこが違っているのか、どういう形であるのかということを、法律的にもきちんと押さえたほうがよい。
次の丸でございます。ガバナンスというのは実際にガバナンスが有効にワークしているかどうかが大事であり、私学についても、そのガバナンスに実効性があるかどうかといった評価尺度というのは、特定研究大学については考慮していく必要があるといったようなもの。次の丸でございます。名目的には、長というのは先生方の中から出して、実権として実際に変えていくところで力を握って動かしていきたいという面もある気がする。本当にこういう形がいいのかどうかというのは、具体的にやる人の立場になってヒアリング等ができるとよい。最後の丸、現場の言うことばかり聞いてしまうと何の改革にもならないが、こうあるべきだと言うと全然現場が受け入れられないといったような考え方を意見としていただいております。
これらを踏まえながら、合議体によるガバナンスの意義あるいは必要性につきまして、改めて御意見を賜りたく存じます。
以上、よろしくお願い申し上げます。

【金丸座長】 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について、御意見等をお願いいたします。かなり本質的な論点だと思います。
山本委員、お願いいたします。

【山本委員】 すみません、こんな形でまとめられるのに、もっと早く発言すればよかったと、ちょっと反省しています。追加の案件で申し訳ないですが、お伝えします。
国立大の学長選考について学内意見が割れる件について、今までこの会議では発言が出ていないので、やはりお伝えしたいと思います。
近年、複数の研究大学で、学長選考会議による選考において、学内の意見投票とかけ離れた結果になっているという現場の声が、特に複数の研究大学で上がっているということは大きいと思います。選考の会議のほうは、法に沿った手続によっているという主張であり、それはそれで正しいとは理解しています。ですけれども、ガバナンスが、組織の意思決定、執行の仕組みと定義されています。ですので、コンプライアンス、法令遵守でちゃんと手続しているよというのは当たり前であって、それだけでは、大学のガバナンスは違うんじゃないかという気がやっぱりします。
それは、学内に対して、説明と対話で全体の合意を得る努力をもっとできるんじゃないか、もっとできるのに今のトップはしていないんじゃないかということを、やはり一般社会の人も感じているのではないかなと思います。研究大学、トップクラスのガバナンスを議論する中において、このことはもう少し重く捉えるべきじゃないかなと思っています。CSTIの報告書のほうでも意思決定の過程の公開と透明性や緊張感ということが出ておりますので、これは忘れないで今後の議論の中にも入れていっていただきたいなと思います。
以上です。

【金丸座長】 学長の選び方については、ガバナンスの大きな一環の中の重要な要素を占めるんだと理解をしております。御意見ありがとうございました。
それでは、ほかに御意見ございますでしょうか。
太田委員、お願いいたします。

【太田委員】 今説明いただいたように、これまでの議論の中で論点はかなり網羅されてきているように思います。これをどう理解するかということだと思うのですけれども、私個人の理解としては、目的である世界と伍する研究大学をつくっていく上で、我が国の大学に何が足りないかということですけれども、これまでの議論を見てきますと、成長戦略であると思います。言い方を変えれば、研究力を伸ばして、それによってさらに収入、資金力を増やして、これを好循環させていくようなサイクルを構築する自律的経営ということだろうと理解をしています。この成長戦略のために必要な要素というのが、これも既に出ている話ばかりですけれども、経営力であったり、あるいは国際力であったり、もちろん教育研究力であったり、これらの総合力を発揮することができるようなガバナンス体制が必要だというのが、ガバナンスの議論だろうと私は理解をしているところです。
また、その成長戦略の中身として、施策についてもいろいろな議論が出ています。今日もWPIの話が出るようですけれども、人材としての研究者をどうやってリクルートするか、育成していくか、テニュアトラックの話ですとか、あるいは国際公募であるとか、あるいは研究補助者の確保をするといったような施策がある。あるいは、学際的な連携をどうやって確保するか。学際というのも、分野にとどまらず、国際的な連携という話もありましょう。あるいは産学連携であるとか地域連携であるとか、こういう施策を総合的に取り込んだものが成長戦略になるということだろうと理解をいたしました。
翻って、例えば国立大学法人の制度を見ますと、学長1人に権限が集中する仕組みになっていまして、これは学長の裁量幅を広げたり、学長の指導力を発揮するという意味では効果があるのでしょうけれども、併せて設置されている経営協議会や教育研究評議会が経営に直接関与するような仕組みになっていないものですから、今申し上げたような総合力を発揮する成長戦略をつくるという意味では、これはなかなか難しい体制になっているのではないかと思います。経営とか国際とか、あるいは教育研究、こういった力を持った人たちを集めて経営方針を充実していく仕組みが必要だということが、このガバナンス議論の本質ではないかというように考えているところであります。
それから、合議体の必要性というのは今申し上げたようなところですけれども、もう一つ、ちょっと切り口を変えますと、国立大学法人制度もそうですし、学校法人もそうなんですけれども、既存制度というのがかなり出来上がったものとしてあるのですが、これに今議論しているようなガバナンス体制を持っていこうとすると、かなり大がかりな制度改正にならざるを得ないと考えています。前回も試案を御紹介させていただいたところですけれども、例えば国立大学法人法を見てみますと、指定国立大学というのがありまして、これは何かというと、教育研究上の実績、管理運営体制及び財政基盤を総合的に勘案して、世界最高水準の教育研究活動の展開が相当見込まれるものが指定国立大学であると。
さて、この表現だけ見ると、世界と伍する研究大学というのをそのまま置き換えたような表現になっていますけれども、では制度として、この指定国立大学とどういう関係に立たせて、どういう組み方をしていくのか。既存制度に手をつけない形で、屋上屋を重ねていこうとすると、どこかに無理が生じたり、ねじれが生じたりということになろうかと思います。思い切った制度改革をやっていく必要がありますし、特に文科省、局長もお見えですけれども、やはり制度全体像のアウトラインというのを、より深く検討していただいて、早期に示していただけるような、関係局2つありますけれども、両局長のリーダーシップの下で検討が進められることを期待したいと思います。私からのコメントは以上です。

【金丸座長】 ありがとうございます。
山本委員、太田委員の御発言について、文科省から何かレスポンスありますでしょうか。

【増子局長】 すみません、高等教育局長の増子です。太田委員から指定国の話がございました。指定国立大学法人、今9つあります。多分最終的には10校ぐらいになると思いますけれども、基本的には研究力とか社会貢献とか、あるいは国際連携ですね、そういうもので既に国内の中では最高水準のレベルを持っているという中で選んできております。また、選ばれると、それなりのメリットがある仕組みにしております。
そういう意味で、かなり幅広い視点から選んでおりますが、多分この特定研究大学というのは、かなり研究力を重視して選んでいくということになると思うんですけれども、当然、予断をもって言ってはいけませんけれども、少なくとも指定国になっている機関から選ばれるような気が、正直しております。ただ、この指定国立大学法人制度というのは、導入してまだ時間たっていませんので、特定研究大学との差別化を図る必要はあると思いますが、特定研究大学制度ができたから指定国立大学法人制度をやめるとか、そういうことにはならないと思っております。
取りあえず以上です。

【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは、ほかの委員の方。橋本委員、お願いいたします。

【橋本委員】 橋本です。今日、ここでは、たくさんの大学関係者の方々がお聞きになっていると思いますので、ぜひそういう意味で皆さんが懸念していることの確認をしたいと思います。資料1-2の2ページ目、1.意思決定機関に<合議体の役割>の記載があります。ここは説明がありませんでしたが、実はすごく重要だと思いますので確認したいと思います。
合議体の役割は結局、大学経営に関する重要事項を決定することであると書かれています。そしてその次が大変重要なんですが、「その際、この合議体が日々の具体の業務への過度な介入などマイクロマネジメントを行うことがないよう」云々と書いており、3行目に「教員や研究者の教育研究上の自由は尊重される必要があり」云々と書いてまして、最後のところで、「例えば個々の研究内容や教育課程の編成といった教学事項については介入すべきではない。」ということが明確に書かれています。
実はこれはすごく重要です。説明の中では読まれませんでしたので、私からあえて指摘させていただきましたけれども、個々の研究教育内容について合議体が口を出すものではないということを明確に言っています。それと、これはどこかに書いているかも分かりませんけど、併せてもう一つ強調したいことは、個々の教員人事に対して口を出すものではないということ。これは我々コンセンサスの下で議論している、少なくとも私はそういう認識でおりますので、この部分は一度確認したいと思います。特に教員人事に対してこの合議体が口を出すものではないということは、明確に言っておく必要があるのではないかと思います。
以上です。

【金丸座長】 ありがとうございます。では文科省、よろしいでしょうか。

【植木課長】 おっしゃるとおりでございまして、先ほど、すみません、時間の関係で読み上げませんでしたが、おっしゃるとおり、その際の合議体の役割については、個々の研究内容、教育課程の編成といった教学事項については介入すべきではない。それから、今ちょっとにわかには出てまいりませんが、個々の教員の人事に対しても、特にそこについては関与すべきではないといった記載もこの中間とりまとめの中にございますので、その辺りおっしゃるとおりで確認をさせていただきます。ありがとうございます。

【金丸座長】 ありがとうございます。これは重要事項を決定することであると書いてあるので、議論が進展していって、制度設計の詳細を考えていく中で、この重要事項とは何かというのは、文科省から言う話なのか、大学の中でその重要事項というのを、合議体に諮る重要事項を決めるのかというのは、これは検討すべき項目ではないかと思いますけれども、これから検討ということですか。

【植木課長】 おっしゃるとおりで、大学経営に関する重要事項というのが実際にどういう事項なのかというところまで具体的に踏み込んだ形での中間とりまとめはされておりませんので、それは……。

【金丸座長】 今後ですね。

【植木課長】 はい、そうです。大学の自主的な判断ももちろんありますでしょうし、国が特定研究大学制度を進めるに当たって必要な重要事項というのも出てくるかと思いますけれども、それは今後引き続き検討していくことになろうかと考えています。

【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは、ほかの委員の方、よろしいでしょうか。高橋委員、お願いします。

【高橋委員】 ありがとうございます。私も、このガバナンスと合議体の機能に関して、確認的な質問をさせていただきたいと思います。前回第2回の資料なんですけれども、資料3の3ページ、申し訳ありません、前回のものです。口頭で申し上げます。分かりやすいポンチ絵がありました。2つありまして、最初にページの3では、特定研究大学(仮称)におけるガバナンスのイメージということで――今日取りまとめていただいたメモのポイントのところですね、合議体でやることというふうに項目出しが4点されています。それは今日のメモと、文言としては一致するものだと理解しています。
質問は、議論を簡単にするために、現在の国立大学の体制を例に取って申し上げると、前回の第2回の資料3の11ページのほうに、現在の国立大学のガバナンスの仕組みということで、分かりやすい、これまたポンチ絵があります。そこには、既に先ほどの委員のコメントにもありましたが、経営協議会と教育研究評議会のファンクションが書いてあります。、ちょっと私自身分からないかなと思うのは、とりわけ経営協議会の機能と、我々が今現在議論している合議体の機能というのが、かなり似た部分があるかなというふうに思っています。違うのは、学長が議長として主催するというところと、学長選考を教育研究評議会と経営協議会、一緒にやるという部分が明確に違うと思うんですが、それ以外の、経営に関する重要事項の審議というのは経営協議会がすると現在既になっていると理解しています。
ここら辺を今後、もちろん変えることは変えていくべきだと思いますし、必要な機能があるのであれば2つの枠を今後も継続してつくることは可能だと思うんですが、大きな方向性として、なるべく意思決定をスムーズに組織経営をしていくという観点から、現在のガバナンスの仕組みと合議体の位置付けというのをどういうふうに整理していくのかというのを。これは今のところの状況、事務局の方でも、CSTI側で議論なさっている方たちでも結構なんですけれども、御教示いただければと思います。
以上です。

【堀野課長】 国立大学法人支援課長の堀野でございます。

【金丸座長】 では、堀野課長、お願いします。

【堀野課長】 御指摘のように、現在の経営協議会については、基本的には全ての意思決定権限が学長にあるという前提の下で、意見を聞く相手方ということになっております。それに対して今回の合議体については、重要事項については、主に経営的なものが多くなると思いますが、それは合議体が意思決定をする、そして学長は執行役になるという位置関係になります。そういう意味では、経営の大きな事項について決定権を合議体が持つという意味では、従来の経営協議会とは位置付けが違う。それから、新しい合議体の役割としてここで提案されているのは、学長の選考を行う、法人の長の選考を行う。そして監督して、解任が必要ならそのチェックも行う機能があるという意味で、経営協議会と異なるということでございますので、その辺は制度の中できちんと整理されるようにしていきたいと思います。

【高橋委員】 ありがとうございました。そうすると、確認ですけど、例示としていわゆる民間企業における取締役会がイメージとして近いというこれまでの議論も今のところに通じる話というふうに理解すればいいんですかね。

【堀野課長】 そうですね。

【高橋委員】 いわゆる経営者を決定するという。

【堀野課長】 はい。考え方としては、大きな意思決定をして、執行責任者を選ぶということでは近いかと思います。

【高橋委員】 まずは理解しました。ありがとうございました。

【金丸座長】 それでは、上山委員、お願いいたします。

【上山委員】 今日の御説明の中で、1点だけ追加的に申し上げたいなと思うのは、大学が成長しなければいけないということの表現として3%と書いてあります。事業成長を基本的には進めていかなければいけないという前提に書かれているんですけれども、これが、組織として単に成長、経済的に見て成長していくということだけを単一の目的とするものではなくて、その成長によって、学内における自由裁量権のある、使途の制約のない資金を生み出していくこと、そのことが翻って大学の内部における学問の在り方やアカデミアの成長につながっていくという、そういう意識があります。なぜならば、アカデミアの本質は、今まで知られていないことを知っていこうとする研究者たちの意欲ですが、そのフロンティアは常に変わっていく。そのときには、どのようなフロンティアをつくっていくのかということがアカデミアの経営にとってとても重要な意思決定になりますけれども、その際に使途の制約のない、自由裁量権のある資金が大学の中でなければ、それを行っていくことができないだろうというふうに考えております。
アカデミアあるいは大学そのものが、ある種の、非常に複雑の生命体のような存在ですから、その生命体がずっと伸びていくときに、どのような形で先方投資をしていくことができるのか、そのようなときに、自由裁量権のある資金をやっぱり自らが持っていかなければいけないだろうと。この3%の成長というのは、単に経済的な成長というだけではなくて、そのような意味でのアカデミア自体の成長を担保することができるような、その資金をつくり出す根源という意味であって、そこのところは誤解を呼ばないようにしていただきたいなと思います。
もう一つは、今の大学の学長選考に関してですが、今は学長選考会議というものがしばしば設置されて、そして学内の意向投票と、その選考会議の意思とが食い違うケースが確かに出てきていることは事実ですが、その合議体というのは、そのような学内の意思をちゃんと酌み取れているかどうかということも含めて決定をしていくと、そういう力を持っているということでありますから、わざわざ、意向投票の結果と学長の任命、最終的な決定が食い違うということを対立関係と捉えるのではなくて、合議体がその学内の意向も含めて考えていく、意向投票なしでも構いませんが、それを経営者である学長に対して進言していくという決定権を持っていくと、そういうことだと考えていけばいいかなというふうに思っております。
以上です。

【金丸座長】 補足的な御説明ありがとうございました。
それでは、篠原委員、お願いいたします。

【篠原委員】 細かな話ですが、先ほどの高橋先生の御質問を伺っていて、私なりの考え方が正しいかどうかですが、先ほどは、いわゆる経営協議会とこの合議体との関係がどうなのかという話だったと思いますが、私が知る限り、今の経営協議会というのは、先ほど御説明があったとおり、何かを判断する、決定するという権限がないだけではなく、ほとんど実行性がないものではないかと思っています。私はこのような、しっかりした合議体をつくっていくのに大事なことは、その中でしっかり実行性を持たせることだと思っていますし、それに加えて、そこで議論した内容というのは必ず公開されなければいけないと思っております。
そのようなことから、私の考え方では、この新しい合議体ができれば、経営協議会というのはなくていいのだろうと思っています。だから経営協議会との役割分担ではなく、経営協議会をはるかに、いわゆる実行性のあるものに変えていくために、今回このような新しい合議体にするという理解なのですが、違っていますでしょうか。

【金丸座長】 文科省、よろしいですか。

【堀野課長】 その辺りについては、法制度の全体を議論する中で、完全になくすのか、役割が変わるのか、まだ決まってはおりませんけれども、新しい合議体というものの機能が最大限発揮されるようにという観点から、また整理をさせていただきたいと思います。

【金丸座長】 全体を設計しながら、今御指摘いただいた論点については、いずれクリアにしなければいけないんじゃないかなと思います。
それでは、林委員、お願いいたします。

【林委員】 ありがとうございます。今議論もありましたけど、今の国立大学の経営協議会は、学長が任命し、審議しかしないという、それは国立大学法人全体に通ずる問題でもあります。それから、先ほど文科省の方からの御説明にも出てきた国立大学法人の戦略的経営実現の会議でも、国立大学、多様なステークホルダーとのエンゲージメントということが言われているので、そうすると、多様なステークホルダーが入った意思決定をするというのは国立大学全体に望まれる課題であるということは言えると思います。
ただ、ちょっと確認しておきたいのは、今回我々が議論しているのは、やはり特定研究大学であって、何が違うかといったら、やっぱり10兆円ファンドからの大きなお金が入ってきて、それはやはり特定の個人、学長が決めるということではなくて、そういう大きなお金が入ってくるからこそ、より重要性を持って、多様なステークホルダーが意思決定をするという仕組みを先んじて入れていかなければいけないということで我々は議論していると私は理解しています。先ほどから指定国立の話もありましたけれども、やはり指定国立で、ある種特区のようにできるようになっていることが、次第に国立大学全体に入っていっているということもあります。
今回の特定大学で求められているような構造が、もしかしたらそのうちに、うまくいったのであれば、ほかの国立大学とかにも入っていくということは十分あり得ることだと思っています。恐らく聞いている大学の方も心配されているのは、全ての国立大学に一気にこんな話が入ってくるわけではなくて、やはり10兆円ファンドから大きなお金が入ってくる大学に関してはこういう仕組みがまずは必要だということで我々議論しているという、そういう理解を私はしているんですけれども、それでよいかというのがまず1つ目の質問です。
それから、もう一つやはりポイントになってくるのは、自律的な経営といったときに、今までどうしても文部科学省からの監視というか指示とか、それで動いているところはあったわけですけれども、こういう合議体をつくることによって、学長のカウンターバランスを取るチェックの相手というのが合議体のほうになって、合議体が学長の執行のパフォーマンスがうまくいっているかをチェックするという、そういう構造になってくれば、まさに大学法人が、あるいは私立も含めてですけれども、そういうのが自律的な経営、文科省からの指図ではなくて自律的な経営ができるようになるということだと思いますので、後ほどの議論で、評価とか、そういう論点が議題に上がっていたと思いますけれども、やはりその合議体がどういう機能を持って、それで文科省と大学との関係がどう変わるかということもきっと併せて考えて、合議体の役割、必要性というのを議論する必要があるのかなというふうに私は理解しています。
以上です。

【金丸座長】 文科省、よろしいでしょうか。

【堀野課長】 今、林先生御指摘のとおり、全ての大学をどうするかということは、それはもう、もっと大きな風呂敷で議論しないと、そもそも時間をかけてやらないとできない話でありまして、まさに今、我々、ファンドがあるということで、そういう特別な資金が提供される大学については、こういうガバナンスがないと大きな税金を投入することはできないんじゃないかという観点から議論しているということでございます。

【金丸座長】 ありがとうございます。
それでは、松尾委員、お願いいたします。

【松尾委員】 ありがとうございます。私、最近、岸田総理の新しい資本主義実現会議のメンバーにさせていただいて、会議に出させていただいているんですけれども、今週の月曜にありました第2回の会議でも、緊急提言をするということで、岸田総理が発表されましたが、それの冒頭に、一番最初にこの大学ファンドの話が来ているということで、非常に期待も高いと思いますし、当然やっぱり国民からも何が起こるんだろうというふうに思われているんだというふうに思っています。同時に、この会議にもずっと参加させていただいて、議論を聞かせていただいていますので、温度感が若干違うなというふうに思っていて、今のような議論で本当に国民の期待に応えられるものになるのかというのは、ちょっと心配だなというふうに思っています。
そういう点から、そもそも論になってしまうかもしれませんが、2点ほど述べたいと思いますが、1つは、この話が、誰が、どういう経営者がどういうふうに大学を変えていきたいのかという具体的な像を抜きに話していることに、やっぱり違和感がありまして、例えば3%の事業成長といったときに、それをどう達成するんですかと。それを経営的な素養のある方が、一体どういう方がどのようにして達成していくのかというのをもう少し明確にしていただかないと、仕組みの議論ばかりしているんですが、そこが見えてこないなと。大学の側もそういうふうな、仕組みの話ばかりで中身が見えていないと、ちょっと不安だなという気もしますというのが1点目です。
それからもう一つは、そういうふうに大きな改革をしていこうとしたときに、当然そのファンドからのお金があるという前提の下だと思いますが、それを、例えば東京大学とか、非常に大きな大学がいきなりやるというのは、本当に実現できるのかなというか、実現可能性にかなり疑問がありまして、どうしても、今までとあんまり変わらないようなことで何とかやっていこうということにしかならない気がするんですね。大きく変えていくんだとすると、まずは機動的に動ける、意欲のある大学が大きく変わってもらって、その成功を見てもう少し広げていくというような形にしたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。
というので、そもそも論になってしまうかもしれませんが、そのように思いました。
以上になります。

【金丸座長】 すごく重要な問題提起をいただいたんですが、今この場で文科省も、納得のいく回答をするのは結構難しいんじゃないかと思いますが、今後の議論の中で、今の問題提起を受け止めさせていただきたいと思います。
では、上山委員、よろしいでしょうか。

【上山委員】 今の松尾さんの御発言を受けて、CSTIでこの議論をしてきた立場からすると、一言申し上げないといけないかなというふうに思いました。

【金丸座長】 お願いいたします。

【上山委員】 文科省のこの会議体は、特定研究大学をどのような基準で選んでいくのかとか、それに実行性があるのかということを議論する場ということではなくて、このガバナンスの構造に関して、法的な制度化が文科省として受け入れることができるのかどうか、それは法制局との間でどのような合意に達することができるのかを議論していただく場というふうに考えておりました。一方で、今の松尾さんの議論というのは、新しい資本主義の会議体の中で、果たして10兆円ファンドというような巨額なお金を使って大学の現場が本当に変わっていくのだろうかという疑問が出されてきていると、そういう御指摘だと理解しました。
今までCSTIの大学ファンドに関する専門調査会を、かなり長い時間をかけて議論をして、もちろんその背後では、あり得べき、想定すべき大学というのは当然あるわけで、どのような可能性がどのような大学で存在するのかということをある程度シミュレーションした上で、果たして我々が考えているような世界に伍する研究大学が出てくるのか、あるいは、そこにおいてはどのような経営層というのが既に育っているのか、またあるいは、仮にトップスクールの幾つかの研究大学であっても、そのようなことをきちんと引き受けることができるような体制を組みつつあるのかということを念頭に置いて、議論をしてきました。
松尾さんおっしゃるように、そういう大きな研究大学ではなくて、実験的にどこ小さな大学でやればいいんじゃないかという議論もございました。なぜかというと、それのほうがすごくはっきりと明確に見えますし、それに国として手を入れやすいからということです。一方で、我が国におけるトップ研究大学とは、諸外国と比べて、組織構造的にも、あるいは研究者たちの意識構造においても、やっぱり世界と競争していかなければいけない、その負託を受けなければいけないという存在でもあると思います。
ですから、この10兆円ほどの基金を使いながらトップ層の大学が変わっていく仕組みをどのように作ることができるのかをずっと議論してきたんです。しかし、その新しい資本主義の会議体の中のほとんどの方々は、その可能性のシミュレーションのかなり細かいところも含めて恐らく御存じないと思います。その可能性のシミュレーションのかなり細かいところも含めてですけれども、残念ながら我々の専門調査会に松尾豊さんはおられなかったので、細かいところの空気感は御存じないかもしれませんけれども、実は金丸座長も専門調査会におられて、あるいはここの何人かの先生方がその専門調査会の中で、今おっしゃっていたような危惧を全般として引き受けながら、これまで大学ファンドが配分されるような大学のガバナンス構造、マネジメント構造に関して議論をしてきたということがあります。
もちろん、それでやったからといって、本当にトップスクールがその責務の負託に応えることができるのかどうかというのは、当然ながらそれはきちんとフォローしていかなければいけませんけれども、新しい資本主義の会議における温度感の差があるとすれば、その間の齟齬を埋めていく努力が必要だと思います。CSTIとしてはその責務があると思いますから、広報も含めてそれをやっていきたいと思いますし、あるいは、選ばれるかもしれない大学との間の密なコミュニケーションを通して、本当にそれが可能なのかを判断していくという立場にもあるとは思っております。
そのようなことをずっと続けているということを御理解いただいて、ぜひともこの法制度のあり方を文科省のほうで御検討いただきたいなというふうに考えております。
以上です。補足させていただきました。ありがとうございます。

【金丸座長】 ありがとうございました。今、上山委員から全体の御説明をいただいたんですが、変わらなきゃいけないことだけは確かで、変わるためには何が必要かということで、御苦労されて10兆円ファンドの創設までこぎ着けていただいたという理解で私はいます。その環境整備が整う一環として、大学のガバナンス、未来のガバナンスの制度設計というのをまずつくっておかないと、これからも有望な、牽引してくれそうな大学が登場するとは限らないので、まずはその制度設計を優先しようということがこの会議体のミッションだと、こんなふうに理解をしています。
一方で、松尾先生が御指摘された、東大で今、実務的に3%成長に資する、かなり有望な研究室でいらっしゃるので、その松尾先生が、東大は変わらないんじゃないかという、これはもう本音だと思うんですね。だからそういうことも受け止めながら、ぜひ文科省は、この全体をさらに、無視しないで、ちゃんと聞きおいていただいて、前に進めていただきたいと思います。ありがとうございました。
本日皆様からいただいた御意見を踏まえまして、事務局において論点をまた再整理していただき、CSTIへの報告や本検討会議の取りまとめに向けて、引き続き議論を行っていきたいと思います。
それでは、時間がちょっと過ぎていますので、次の議題に移らせていただきます。
次の議題は、規制緩和等についてでございます。事務局より説明をお願いいたします。

【堀野課長】 国立大学法人支援課長の堀野でございます。資料2を御覧ください。前回、規制緩和について、幾つかのリストで御議論いただきましたけれども、文字だけで、あまり、イメージが分かりにくいであろうという資料だったこともございまして、今回幾つかのものについて、具体的にどんなことが起きていて、どういう要望があるのかということを御説明させていただきたいと思います。
1つ目、3ページですけれども、規制緩和事項については、ほとんど規制があるのが国立大学法人の関係なので、国立大学法人の説明をさせていただきます。基金の積立てを可能とする仕組みの創設ということで、左側にありますとおり、このページは前回と同じですけれども、寄附金や特許料収入等などの自己収入から生じた利益について、中期目標期間を超えて繰り越すためには、目的積立金として文部科学大臣の承認が必要だということでございます。右側のところで、特定研究大学におきましては、中期目標期間を超える繰越承認の手続を簡素化した基金を設けるなど、長期にわたって運用が可能な制度にすべきではないか、こういうような提案でございます。
次の4ページを見ていただきますと、国立大学法人の場合の制度というのは、左側にありますように、教育研究の実施に必要な支出額、それから収入である運営費交付金と自己収入、計画どおり教育研究を行えば損益が均衡するという考え方に立っています。一方で、右側の部分で、そうはいっても、費用、コストが削減されたとか、あるいは収益が、自己収入を増やしたという場合には、その部分で利益というものは、これは経営努力の結果としての利益であるというものが出されまして、それは中期目標期間の繰越しには文科大臣の承認が必要だという考え方に立っているわけです。
これにつきまして、一番下に書いてありますように、会計基準上、期中の時点で、将来の支出に備えて戦略的に自らが稼いだ資金を積み立てることを前提とした仕組みにはなっていないというのが現行制度でございます。したがいまして、特定研究大学については、この利益というものを計算する前に、将来の支出に備えた内部留保分といったものを会計上も積み立てておけるような仕組み、そしてそれについて文科大臣の承認といったプロセスが省略できるような仕組みができないかということを検討するということでございます。
なお、5ページ目ですが、6年間の中期目標期間をまたぐ場合に、そのとき積立金が残っている場合の繰越しの承認というものがございますけれども、このページの資料は、6年前、第2期の中期目標期間から第3期になるときに、その繰越しが認められるメルクマールといったものを通知で出しておりました。ここにありますように、キャンパス移転、病院再開発など云々とあって、例示がありまして、キャンパス移転事業に係る用地購入費ですとか、病院再開発に係る移転費、それから学生支援等々のための宿舎整備費、長期修繕計画に基づくライフライン等整備費。2番のところも、例示に挙がっているのは寒冷地での施設整備のための云々等々ということで、ここに書いてある繰越しが認められるメルクマールというのが、ほとんどハードじゃないと認められないのではないかと思われるような例示になっていると。
実際には、2期から3期にわたっては、申請があった全ての積立金について繰越しが認められておりますけれども、紙の上ではこういうことになっていると、次どうなるんだろうという不安が起こると。繰越しが認められないんじゃないかという不安があると、期間内に使い切ってしまったほうがいいんじゃないかというような動きになりかねませんので、今回、来年からの第4期に移るに当たりまして、赤い字の部分、卓越した研究の強化・充実のためのプロジェクト経費ということで、ソフトについても認められますよということを、財務省と協議の上、認められましたので、このことについて大学に先日お知らせをして、繰越しについては安心して、今から使い切らなくても大丈夫であるということをお知らせしたところでございます。
それから次に、長期借入金・債券発行の要件緩和でございます。
御覧のとおり、まず実例からいきますと、9ページにございますとおり、昨年政令改正をいたしまして、東京大学がソーシャルボンド、通称、東京大学FSI債というのを、40年間200億円ということで債券を発行しております。次のページにありますとおり、たくさんの投資表明者ということで、投資家の関心をかなり集めていると。そして、その200億集めた資金でどういう事業をしているかといいますと、11ページからにありますとおり、ハイパーカミオカンデの建設ですとかアタカマ天文台の計画、それから12ページにありますとおり、キャンパスのサイバー化、スマート化、あるいはウイズコロナ、ポストコロナ社会に適合した施設の整備、それから、右肩にありますような土地の取得、こういったものに債券を発行した金額で事業を行っていると。
それで、8ページ目に戻っていただきまして、もともとどうしてこれができなかったのかということですけれども、もともと債券発行につきましては、この改正の概要の一番上にありますように、償還確実性の観点から、債券発行の対象を附属病院、施設移転、宿舎、産学連携施設に要する土地等に限定をして、その償還財源は、その土地等から来る収入、もともと収入を生み出すような土地、施設設備について認めていました。
これについて、前回の規制緩和というのは、その次にありますとおり、対象事業としては、国立大学等における先端的な教育研究の用に供するということで、土地から来る収入云々ということだけではないと。それから、償還財源としては、その土地・施設・設備を用いた収入だけではなくて、国立大学法人全体の中から出てくる余裕金で返せるということであれば構いませんという規制緩和をしたわけでございます。
今回、さらに要望がございますのは、先ほどの上の対象事業の「国立大学等における先端的な教育研究の用に供するために行う土地の取得等」となっております。この土地の取得等というのは、土地・施設・設備までいいわけですけれども、これを土地・施設・設備以外のところにも広げてもらえないか。さらに償還期間が最大40年、もっと長く必要ではないかという大学からの要望があるということでございます。
これについては、前回も申し上げましたので、7ページの右側にありますとおり、現在、債券を発行して、40年間で返していくということになりますけれども、じゃ、それが将来世代にわたって、ファイナンスの手法として、今たくさんのお金を使うとした場合に、それが将来世代にとって借金だけということにはならないのかという観点も必要かと思っております。
そういう意味で、この右側にありますように、多額のイニシャルコストがかかって、投資効果がさらに40年を超えて裨益するというようなもので、なおかつ、土地でも施設でも設備もないということに資金を使いたいというのがどういうものがあるんでしょうかということを要望大学にお尋ねして、今やり取りをしているところです。これで、なるほどというものが出てくれば規制緩和の議論を進めたいと考えております。
それから、最後に、土地、大学所有資産の認可の緩和でございますけれども、14ページにありますとおり、現行制度としては、国立、国から受け継いだ土地ですけれども、当面使用する予定がないものについては貸付けを行うことが、文科大臣の認可を得て貸付けを行うことができるということで、この認可を不要として届出にするということを検討してはどうかと。
そして、15ページが現在の認可基準ですけれども、国立大学法人は、申請書と契約書案など必要な書類を文科大臣に提出して、財務省と協議の上、認可を行う。その場合の留意事項、契約書において定める留意事項というものは、貸し付ける場合の判断基準として、業務遂行に支障がないか。貸付期間がどうなっているか、あるいは、違反があった場合にどういうことが取り決められているか。貸付料が幾らか、こういったことが契約でしっかり行われていますかという認可をしているわけですけれども、これについての認可を不要にできないかという議論でございます。
あと、16ページ以下に、幾つかの例として、東京医科歯科大学が老朽化した建物を廃止して、民間に貸している例ですとか、広島大学がキャンパスの一部が駐車場として貸している例ですとか、京都大学の農場。これは第三者が再生可能エネルギーによる発電事業に貸し付けるですとか、こういった様々な取組が始まっているわけですけれども、こういったものを特定研究大学については認可を不要とできるかということを議論していこうということでございます。
説明は以上でございます。

【金丸座長】 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について御意見、御質問等があればお願いいたします。
山本委員、お願いいたします。

【山本委員】 山本です。規制緩和の各項目について確認です。近年、国立大学全体ですとか指定国立大に対しては、こういう形の規制緩和があるのかとびっくりするような、割と大きなものが進められてきたと思います。それからすると、今回出たのはちょっと細かいなという印象を聴講者の皆様も多分お持ちかと思います。確認なんですけども、今回は、数大学と言われる特定研究大学向けの国立大学についての規制緩和だと。そのために、現在の指定国立大学など研究代表からリクエストが寄せられているものに注目していると。そうであるために細かくなってくるのは当然なのかなと理解しているんですが、よろしいでしょうか。

【堀野課長】 お答えします。恐らく細かいものになっているというのは、大きな規制緩和はかなり既に手をつけてやってきたということで、残されている課題が今、議論しているものであるということで、あまり特定のところから出てきたから、球が大きい、小さいみたいな捉え方は特段しておりませんでした。

【山本委員】 分かりました。ありがとうございます。

【金丸座長】 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
橋本委員お願いいたします。

【橋本委員】 ここについての意見というか、考えを述べる前に、先ほど松尾委員の発言に対して、上山委員が言ったことに関連してなんですけども、これを聞いておられる方も、ここの会議体と、内閣府でやっている会議体の関係性を理解するのは難しいのではないかと思います。それで、そこを文科省からもう一度きちんと説明していただいたほうがいいと思います。ここの会議体だけ聞いていると、先ほどの松尾委員のような疑問は湧いてくるんですよね。一方で、CSTIで行われている委員会とやはり両方聞いていただかないと分からないと思います。実はCSTIの委員会もここに至るまで、たくさんの議論があり、その上で成り立っているものなので、最初にどういう議論があったかという説明はしていますが、途中から聞くとなかなか分からない部分はあるのですが、いずれにしても、少なくともこの会議体とCSTIで今行われている会議体、これは同時並行で行われていて、役割分担して行われているわけです。その点については最初に説明いただきましたが最初に説明しただけでは皆さん分からないと思います。なので、やはり必ずそこは説明していただく必要があると思いますね。先ほどの議論を聞いていて強く思いました。
その上で、山本委員からもご発言があったように、各論になっているのではないかというようなご指摘に関連することですが、逆に私は、これはもっと各論のことまで踏み込まないといけないのではないかと思います。実は、先ほど上山委員が言われた、この10兆円資金で何を期待しているかということですが、使途の制約のない資金、自由裁量権のある資金を各大学が持つためにやるということです。そのために様々な努力を大学がやらないといけないのですが、その際に引っかかるのがこの規制です。全部規制に関わってくると思っていいです。そうではないものは、ある意味で、できています。現在大学はいろいろ努力していますから、いろいろな努力をやって、自由裁量権のあるお金を得ようとしています。例えば、私は、大学ではありませんが国研も同じように様々な努力をしています。しかし、やはり規制というか、ルールがあって、そのルールの中でしかできません。このルールを越えたいと思っても、これは越えられません。なので、先ほどの合議体の話もそうですが、これはまさに10兆円基金の成否を決める一つの非常に重要な話です。どういうことをやると、その3%成長、かつ、自由裁量権のある資金を得られるのかという、具体的な方策に絡んでくる話です。
従いまして、ここで議論するのはすごく難しいので、各論よりも、どのようなことのためにそういうことをやるんだということを決め、その上で、今、分かっていることを詰め、今後分かってくることを入れられるようなものにしないといけないと思います。なので、先ほど申し上げたCSTIで行っている議論で、どのような具体的な方策をやると3%成長でき、かつ、それが自由裁量権のあるお金としてなっていくのか。そのためにはどのような方策が必要なのかということをもっと議論しないといけないと実は思っています。その議論をやる過程で、そのためにはこういう規制緩和が必要ですねという話につながっていくと思います。そういうものが後から来たときに受けられるような、そういうような仕組を法体系的に入れておかないといけない。大変難しいことだけど、そういうことをここで議論しているんだというふうに私は理解していますので、ぜひこれは文科省で、規制緩和についてやるときに、こういう具体的な個々のものだけではなくて、今申し上げたようなことを考え、かつCSTIのほうでやっている委員会の議論も取り入れながらつくっていくというようなことにぜひやっていただきたいと思います。
以上です。

【金丸座長】 文科省、お願いします。

【植木課長】 ありがとうございます。先生御指摘のように、当初、CSTIの専門調査会と、それから、私どもで今回立ち上げさせていただいた検討会議の役割分担については、簡単には御案内申し上げましたが、ここで改めて確認させていただきます。
CSTIの専門調査会においては、これまで世界と伍する研究大学に期待される姿を議論いただいて、これがいわゆる「特定研究大学(仮称)」という形で議論されております。今までも中間取りまとめの中では、世界と伍する研究大学の実現に向けた方策等ということで、どのような要素を満たすことが必要かでありますとか、獲得した外部資金を最大限活用して、経営する大学に求められるガバナンスはどのようなものかといった議論がなされて、それが中間取りまとめという形で取りまとめられております。
引き続き、このCSTIの専門調査会におきましては、大学ファンドからの支援の基本的な方針といたしまして、支援対象大学としての必須の要件、例えば研究力の考え方でありますとか、評価すべき視点をはじめ、ファンド支援対象の数であるとか、支援機関、あるいはモニタリング評価の方法、支援の規模、使途の範囲等々について、引き続き、現在、検討が進められております。
中間取りまとめを受けまして、私ども、この検討会議のほうでは、具体的な制度改正の内容については、別途、関係省庁、文部科学省において検討を進めて、このCSTIの専門調査会の最終報告に反映することとされておりますので、この検討会議におきましては、中間取りまとめの内容を踏まえた制度改正、大学改革の内容について突っ込んだ形の御議論をいただいて、その御議論の取りまとめを最終的にはCSTIの専門調査会にフィードバックして、そこでCSTIの専門調査会の最終取りまとめの中に整理がされるという考え方で進めさせていただいているところでございます。
以上でございます。

【金丸座長】 御説明ありがとうございました。
よろしいでしょうか。高橋委員、ありますか。

【高橋委員】 ありがとうございます。では、手短に。具体的なところです。資料2のページ3の「基金への積立を可能とする仕組みの創設」のところです。現行制度と今回の制度の変更点を書いてくださっているんですが、ここなんですけれども、これでは、特定研究大学が新たに受けるファンドのお金と、既存の、これまでほかの国立大学等と一緒に受けている、いわゆる運営費交付金等の2つの管理を別のルールでやらなくちゃいけないように見えます。具体例を申し上得ると、中期計画の単位を超えて繰越しが簡素化されると書いてあるんですが、ここは、難しいところではあるかもしれないんですけれども、まず、この日本語自体が修飾語がかかっていまして、「今後継続的な事業成長が見込まれる特定研究大学については」ですし、あくまでも、中計を超える繰越しの承認は引き続き手続が必要と書いてあります。ここはもう少し、先ほどもガバナンスのところで議論したような理念を実行するためには、もう一段垣根を外す必要があるのではないかと思います。
こういうことを具体的にやっていくことが、非常に大きなチャレンジを推進することかと思います。最初からこの2つのお財布を管理し、しかも、合議体、外の人を含めて意思決定していくとなると、あまりにもマネジメントが難しいのではないかなと懸念します。
例えば当初の10年に限って、というような形の時限適応を折衷案とするようなことも含め、もう少し全体の持っている資源をフレキシブルに使えるような、そういう制度をつくっていくことが大切ではないかと思います。
以上です。

【金丸座長】 ありがとうございました。時間も過ぎておりますので、御意見として承らせていただきます。
それでは、本日、皆様からいただいた御意見を踏まえ、事務局において関係部局との調整を行っていただき、CSTIへの報告や、本検討会議の取りまとめに向け、引き続き議論したいと思います。
それでは、続いて、特定研究大学制度の構築に向けた検討事項のうち、指定・評価について、事務局より説明をお願いいたします。

【馬場室長】 それでは、事務局より、資料3に基づいて、特定研究大学(仮称)の指定・評価について御説明いたします。
表紙をおめくりいただき、2ページ目です。こちらは第1回でお示しした資料の抜粋ですが、特に本日は、青色にしている部分、「世界と伍する研究大学」としてのミッションであったり、国の関与の仕組みについて御説明したいと思います。
その前提として、3ページ目を御覧ください。こちらはCSTIの世界と伍する研究大学専門調査会の中間取りまとめの抜粋となっております。
一番上の部分、世界と伍する研究大学における教育研究システムの在り方として、記載のとおり、「教育研究面で世界と伍していくためには、教育研究環境を充実させ、研究力の源である教員や研究者等の人材を世界マーケットから獲得していくことが必要である。その際、特に優秀な研究者へのインセンティブ付与や博士人材及び若手研究者の待遇改善が喫緊の課題である。また、研究支援人材や大学の事務職員などについても、研究者の負担軽減や大学の経営能力向上という観点から、必要な人材を外部から積極的に獲得することや、育成していくことが求められる。」といったことが記載されているところでございます。
具体的には1ポツ、優秀な研究人材の確保として記載されておりますが、世界的な研究者マーケットでの研究者の獲得であったり、優秀な博士課程学生の獲得であったり、また、4ページ目に移動していただいて、若手研究者の育成と、厳格な評価の実施、研究支援者の積極的登用、プロボストの役割、それぞれについて求められる事項が記載されているところでございます。
今回は、5ページ目に移りますが、前回、第2回の検討会議の最後に、濵口理事長より、世界に伍する研究のイメージであったり、教育研究システムの事例として、WPI世界トップレベル研究拠点プログラムの取組を調査、レビューしたほうがいいのではないかという御指摘を踏まえ、今回御紹介させていただくものです。
なお、誤解をされないよう、あえて申し上げますが、今回、WPIを事例として紹介するのは、大学ファンドの運用益でWPIを支援するということではなく、研究力向上や大学改革に向けて、あくまでもWPIで培った経験や知見を生かせる部分があるのではないかというような趣旨で御報告することを申し添えます。
それでは、このページで御説明します。このWPIプログラム、御存じの方も多いかもしれませんが、世界トップの研究水準、融合領域の挑戦、国際的な研究環境、研究組織の改革、そのようなミッションの達成に向けて、「国際頭脳循環のハブ」を目指す拠点を10年間にわたって集中的に支援するものでございます。高い研究水準と国際水準の研究環境により、第一線の研究者がぜひそこで研究したいと世界から多数集まってくることで、優れた研究者のCritical Massを形成し、世界から目に見える研究拠点の形成を目指すもので、2007年度に発足以降、これまでに、日本地図に一覧があるとおり、全国4つの拠点が選定されているところでございます。
これまでの実績としては、右下にも記載していますが、トップ10%補正論文、こちらは被引用回数が各年、各分野で上位10%に入る論文の抽出を補正したものにはなりますが、WPI平均で見ると約20%となっております。また、国際共著の論文割合は約50%、また、外国人研究者の割合も約40%となっており、いずれも日本の平均を大きく上回る実績となっているところでございます。
6ページ目を御覧ください。こちらはWPIと国内外の大学等のトップ10%補正論文数割合、Q値と言っておりますが、こちらを図示したものになっております。左側の図において、青色が日本の大学、オレンジ色がイギリス、緑色がドイツの大学を示しており、X軸が論文数、Y軸がQ値、トップ10%補正論文数の割合をプロットしたものとなっております。
図の青色に囲まれた部分が日本の大学の位置を表しております。御覧になってお分かりのとおり、日本の大学、例えば右端の東大であったり、京大であったり、このX軸の論文数を見れば、例えばイギリスのオックスフォード大学であったり、ケンブリッジ大学、そういったところと比較しても遜色ない実績となっていることが分かるかと思います。
一方、日本の大学、この青色全体ですが、総じて、このQ値、Y軸がイギリス、ドイツと比較しても、相対的に低い状態になっているということが分かるかと思います。
他方、WPIにより形成された拠点は、赤色でプロットしておりますが、論文数は少ないものの、Q値、このY軸に関しては、イギリス、ドイツのトップクラスの研究大学に比肩していることが分かるかと思います。
WPIプログラム自体、右側の図のように、WPI拠点を中核として、ロケットのように、ホスト機関である大学の研究システムを改革し、ひいては、日本全体への波及効果を期待して創設されているところでございますが、現状は、大学全体、また、日本全体を引き上げるには、例えばこの青色の部分をイギリス、ドイツレベル、オレンジ、緑色に引き上げるといったところまでにはたどり着いておらず、道半ばであるというところが分かるかと思います。
7ページ目を御覧ください。こちらは採択された拠点における輩出論文の経年変化を表したものとなっております。右側の図は、東京大学のIPMU、Kavli数物連携宇宙研究機構の経年比較を図示したものとなっております。このIPMU自体、ゼロから立ち上げられた組織ですが、海外のベンチマークされた機関、例えばスタンフォードであったり、マックスプランク、そういったところと比較しても、WPIに採択された拠点は、世界トップレベルの研究機関と比肩する論文成果を着実に輩出していることが見て取れるかと思います。
8ページ目を御覧ください。実績の3番目として、過去の大型の寄附金、投資等の獲得状況の事例をまとめたものとなっております。このWPI自体、基礎研究を主に扱っていますが、民間財団、企業等から大型の寄附金投資を得るまでに至っているところでございます。例えば1つ目の大阪大学では、中外製薬と10年間で100億円の大規模な共同研究契約を締結していますが、その契約をひな形として、その後、ダイキン工業から10年間で56億円の資金提供を受ける包括連携契約を大阪大学として締結するなど、大学全体に波及している事例も見受けられるところでございます。
最近でも、今年の9月に発表されておりますが、10年間で230億円を助成する日本財団、大阪大学感染症対策プロジェクトにもこの拠点が参画をしているところでございます。また、ほかのWPIでも、例えば、米国のKavli財団による基金の設置をはじめ、国内外から共感を得て、安定的な助成を受けるなどの取組が見られるところでございます。このKavli財団、まさにアメリカで財団を基金として持っておりまして、その運用益によって、このIPMUが自由裁量がある資金を得ることによって、大学の活力にもつなげているということが見て取れるところかと思います。
続いて、9ページ目を御覧いただければと思います。こちら、優秀な研究人材の確保に向けた取組の例でございます。WPI拠点においては、国際的かつ競争的な環境の下で、研究者が自立的に研究するための体制の整備が進められております。左側、国際化のための先駆的な取組としては、例えば『Science』、『Nature』、御覧になっていただいている方は御存じだと思いますが、常に国際公募の広告が出ております。こういったものを通じて国際公募を徹底したり、英語を公用化し、事務担当職員としてバイリンガルの職員を配置するなど、国際的な研究環境を実現しています。
右下に好事例として2つ記載しておりますが、東京大学、金沢大学、そういったところでは、配偶者や家族へのサポートも含めた手厚い支援を実施することにより、海外から優秀な研究者の獲得に成功しているところでございます。
続いて、10ページ目を御覧ください。若手研究者の育成と厳格な評価の実施、優秀な博士課程学生の獲得に向けた取組例となっております。例えば左上にありますが、金沢大学では、Jr.PI制度を設けており、国際公募による優秀な若手の手にテニュアトラック制度を設けています。そこではスタートアップ経費として、研究費だけではなく、研究スタッフやスペースを措置するなどにより、外国人研究者だけではなく、海外にいる優秀な日本人研究者の獲得にも結びついているところでございます。
11ページ目、こちらは現在のWPIにおけるフォローアップ体制を示したものです。一番上にプログラム委員会がありますが、この委員会は15名、うち海外委員が7名で構成されております。加えて、拠点ごとにワーキンググループ、いわゆる作業部会が設けられております。こちらはPO、プログラムオフィサーを主査として、当該拠点が対象とする分野の専門家、6名程度で構成されていますが、半数程度は外国人となっており、毎年、サイトビジットが行われるなど、きめ細やかなフォローアップが行われているところでございます。
12ページ目、こちらは前回、第2回特定研究大学の指定・支援、モニタリング評価について説明した資料の抜粋なので説明は割愛させていただいて、13ページ目に移っていただければと思います。
こちらのWPI、13ページ目でございます。WPIの経験や知見を踏まえて、今後、特定研究大学の指定や支援に当たって生かせる部分について何があるかということについてまとめたものになっております。
1つ目の矢羽根です。記載のとおり、WPIの各拠点は、卓越した研究成果を輩出しているものの、大学全体の波及効果が限定的ではないかということです。今後、特定研究大学においては、当然ながら大学内の一部の拠点にとどまらず、大学全体として、世界トップクラスの研究者が結集できるだけの規模、Critical Massのみならず、それを支える事務局、研究支援体制、これは研究者だけではなく、研究支援体制として、URAであったり、支援スタッフの措置はもちろん、学内だけでなく、学外から優秀な人材の確保に努める必要があるといった観点であったり、事務局としてもグローバル化する覚悟が必要ではないかということを記載しております。
2つ目の矢羽根です。こちら、一部の大学では、先ほど説明したとおり、持続的な成長を可能とする取組が見られますが、やはり支援期間終了後の発展可能性が不透明であるということが挙げられます。その中で、やはり大学として、まさにこれは合議体の議論ともつながりますが、知の適切な価値づけや多様なステークホルダーとの対話を通じて、国内外からの安定的な寄附の獲得や、企業等との長期的な包括連携契約の締結などを促進し、外部資金の獲得拡大を図る必要があるのではないかという点です。
そのためには、当然ながら、研究者だけでなく、マネジメント体制を高度化することに加え、大学独自基金を充実することなど、自主財源を多様化し、財政基盤の強化と運営の自立化を図ることが重要ではないかとしております。
3つ目の矢羽根、若手研究者の活躍の促進です。こちらはWPIにおける取組が参考になるかと思いますが、Critical Massの世界トップクラスの研究者により育成され、新しい領域開拓に挑戦する若手研究者には、グローバルな経験や流動性の確保が不可欠であることは論を待たないと思います。そのためにも国際公募を原則とし、また、既得権益にならないよう国内外のレビュアーの参画等による厳格な評価に基づくテニュアトラック制度を徹底すべきではないか。その際、安定的で自由度が高いスタートアップ経費の措置であったり、共用設備の提供等を通じて、若手研究者が研究に専念し、切磋琢磨できる環境を整備すべきではないかということを記載しています。
続いて、14ページ目を御覧ください。まず博士課程学生の位置づけの明確化です。こちらはほぼ中間取りまとめの方向性を踏まえたものとなっておりますが、博士課程学生を研究グループの主要メンバーと位置づけ、欧米水準のRA制度等の処遇を充実し、独創性・自主性を涵養することが重要ではないかとしております。魅力的な教育研究環境を実現し、英語を公用語として言語の壁をなくすことにより、世界トップクラスの多様な学生を呼び込むべきではないかとしております。
言うまでもなく、世界のトップ大学は、グローバルに優秀な人材をかき集めておりますし、大学のみならず、グローバル企業も含めて、例えば松尾先生のAI分野をはじめ、人材の獲得競争というものが大変激化しているというところがあるかと思います。そのような中、特定研究大学においては、博士課程を世界標準にすることにより、研究者を再生産する教育研究システムを構築し、世界トップクラスのサイエンスの持続的成長ということをつなげていくことが必要ではないかとしております。
(2)特定研究大学のモニタリング評価です。こちらは「世界と伍する研究大学」に求められるフォローアップ体制というのはどういったものかということになります。こちらについては、WPIのやり方をそのまま参考にすることは難しいのではないかと考えております。先ほど御説明したとおり、WPIにおけるフォローアップは、プログラム委員会の下、拠点ごとに作業部会を設置し、毎年、現地視察を実施するなど、きめ細かなフォローアップをしておりますが、やはり大学においても大きな負担がかかっているのはあるかと思います。
今後、世界と伍する研究大学においては、繰り返し申し上げています合議体、そういった高度な自立性を求める観点から、プロポストの下、自律的な体制整備を学内で求めることとし、国側、この国のアドバイザリーボードについては、コミットメントの達成状況を客観的指標に基づいて行うことを主眼としてはどうかということを記載しております。
以上になりますが、当然ながら、これまでのWPIの取組は自然科学系が中心となっており、社会科学や総合知の重要性の高まりであったり、コロナ禍のDXの進展など、社会の醸成が大きく変化していることを踏まえる必要はあるかと思っています。
また、これもこれまでの議論もありましたが、大学の中の1拠点1組織であるWPIと、今回、大学ファンドの狙いとしている大学全体、大学を経営体として、事業成長も含めて、世界と伍する研究大学を実現することの違いもあるかと思っています。今回御紹介したのは研究力向上であったり、大学改革の今後の議論の参考になるかと思い、紹介させていただいたところでございます。
事務局からは以上でございます。

【金丸座長】 御説明ありがとうございました。
それでは、よろしければ、まずは、WPIのプログラム委員会の委員長を務めていらっしゃる濵口理事長から御意見があればお願いいたします。

【濵口オブザーバー】 貴重なお時間いただきまして、ありがとうございます。私は、このWPIに随分長いこと、関わってきていまして、実際に、先ほど松尾さんが言われた機動的に意欲のあるチームをしっかりサポートしていけば、世界を突破できると実感しています。実際に、これは実例になっていると思います。チームによっては、オックスフォードなどのレベルをはるかに超えるだけの成果を出しています。その例の、実はシークレット・オブ・サクセスがあるんです。それが、今お話しいただいたようないろんなポイントなんですけど、基本的なポイントは、研究者の働きやすい、研究に専念できる環境をいかにつくるかということに集中しております。
あと、人材を国際的に流動化させて、海外から呼び込む。例えば、今年、非常に大きなトピックは、北海道大学のWPIのメンバーの中に、リスト先生がおります。今年のノーベル化学賞を受賞しておられます。リスト先生はもう数年前から北海道大学で兼任しておられるんですね。こういうシステムが実際、今、日本の中で動いているんですね。ただ、非常にその活動がまだ小さなサイズに終わっている。これをいかにして、Critical Massを広げるという戦略で大きくできれば、何年か後には、実際にWPIは10年たって、ここまで来ているわけですから、十分、大学は変わっていくだろうと。アメリカやヨーロッパの大学と伍するだけの大学はつくれるだろうと実際、私は実感をしております。そのための制度改革をきっちり進めていただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

【金丸座長】 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様からも御意見、御質問等お願いいたします。
山本委員お願いします。

【山本委員】 山本です。今回、その特定研究大学のイメージとして、WPIを事例にいただいたというのはすごく分かりやすくて、よかったと感じます。これは視聴されている皆様とも共有できてよかったなと思います。WPIは、研究大学で12のところが経験あるわけです。特定研究大学が本当に数大学ということで、選ばれなかったとしても、そうか、新時代の研究大学というのはこういう仕組みを全学展開するということなんだということがイメージできました。
それから、外部資金獲得というと、一般には産学連携が強いから応用研究側だよね、基礎研究は難しいよねという気持ち、私も持っておりました。けれども、基礎研究であっても、このような社会からの賛同、特に海外からですけども、国際的な賛同を得て成長することを考えられるんだということが非常に印象づけられました。特定研究大学の制度は、数大学のためだけの話ではなくて、やはりより多くの大学が前に進める形を一緒に実現するという観点に即していいなと思いました。感想です。
失礼します。

【金丸座長】 ありがとうございます。
橋本委員、お願いいたします。

【橋本委員】 今、WPIを目指せば良いのではないかというご指摘がありました。WPIは大変すばらしい取組でNIMSにも支援をいただいていましたので、私もそのすばらしさは大変よく分かっております。WPIからは年間約13億円の支援をいただいておりました。また、6ページの絵を見ていただいたら分かるように、世界と伍するどころか、世界の上を行けるようなものができます。だから、決して日本の大学が弱いわけではない。
このことから支援対象にお金を入れるというのは非常に有効なツールであるということは明確に示されています。また、例えば10兆円の3%ですと年間3000億円になります。これをちまたで言われているように、例えば6大学で割ったら、1大学当たり500億円です。この500億円という金額はWPIの支援額である13億円の40倍に当たります。
しかし、今回の世界と伍する研究大学について、支援する大学にこのような40倍の支援をして大学全体の研究力が上げて世界と伍する大学にすることを狙っている、ということではないということを明確に申し上げたい。それだけではないということを、そしてそのような議論からこの話が出てきているのではないということを明確に申し上げたい。WPIから学んで、このように研究力を上げることは間違いないですし、そうだと思います。しかし、何が足りないかというと、これは先ほど文科省の説明にありましたように、13ページ目の2つ目の矢羽根に書いていますけど、「持続的な成長を可能とする取組も見られるが、WPIの支援期間終了後の発展可能性が不透明」、ここに尽きます。これは実はこの13億円が入っているうちに、この13億円で持続的になるような仕組みを導入しないといけない。それができているものもあります。阪大の事例は大変すばらしいです。このような成果が出ているのはすばらしいですが、しかし、非常に限られています。記載されている2つ目の矢羽根の2行目から「国内外からの安定的な寄附の獲得や企業等々の包括連携などを通じて外部資金の獲得拡大を図る必要。」とありますが、それだけではうまくいかないと思います。阪大は大変すばらしくやっていますが、これが40倍の大きさになったとき、1大学で、あるいは国全体でそれが何十倍にもなったときに、このような取組だけでは絶対に足りないです。
そのため、先ほど申し上げたように、やはり新たに大学が努力して、自由に使えるお金を集める仕組みが必要です。もちろんここに書かれているような包括連携や寄附の獲得というのは有効で重要ですが、それだけでは足りないはずなので、様々な努力をしないといけない。それが先ほど申し上げた規制改革の話などにもつながっていくので、ぜひそれはCSTIの委員会で今後も議論して、どのようなことでどう稼いでいくのかという事例をつくっていかないといけないと思います。
そういうのと併せてやっていくんだということ。ここで私が申し上げたいのは、WPIのようにお金を配ってやっていくだけですと、聞いておられる大学の方、みんな本音は喜ぶ一方だと思います。しかし、それでは困ります。そのお金を活用して、ぜひ自分たちで持続的に発展できるような仕組みを一緒にその中でつくってもらわないといけない。そのことを明確にしておきたい。この制度はそういうことを意図して始まりCSTIでは議論が行われているということを共有したいと思って申し上げました。
以上です。

【金丸座長】 ありがとうございます。
上山委員、お願いいたします。

【上山委員】 今、橋本先生からおっしゃってくださったことが基本的なラインですが、我々の専門調査会のところでは、この10兆ファンドは、WPI的なものをつくるということではないという形で、基本的に合意をしています。なぜかといいますと、WPIは確かにうまくいっているケースですが、個別のような研究分野を選び出して、そして、それを文科省の差配の中でそれを動かしていくというものであって、今回の10兆円のようなお金を入れるということは、その母体である大学のシステムが自律的にそれを自らつくっていけるような、そういうシステムを作るというのが最大の目的なので、個別のWPIを選んで、それを幾つか増やしていきましょうというものは、10兆円ファンド以外の大学の中でもたくさん生まれてくるでしょう。それは文科省の従来の政策の中できちんとつくっていっていただくということは出てくると思います。
しかしながら、この10兆円ファンドで狙っているものは、特定研究大学という大学のシステムそのものをどう変えるかという根本的な議論をしているので、WPIの延長では全くないということが我々の中の基本的なコンセンサスだと改めて付言しておきたいと思います。
最初の松尾先生のお話は、そんなこと、果たしてできるんですかということだと思うんですよね。これはよく分かります。なぜかというと、それほど非常に難しいものだからですね。だから、10兆円ほどのお金を入れてやろうとしているという努力を、これはやっぱりアカデミア全体がそれをつくっていかなければいけないと思うんです。、松尾先生も大学の中で、全体システムが変わらないといけないということを発言されていくんでしょう。単なる個別の領域が強くなっていくだけじゃ駄目なんだよと。恐らくは個別の特定大学として選ばれた大学の中でそういう声が上がっていくんでしょう。
なぜかといえば、それが基本的にシステムの持続可能性ということにつながっていくので、それを目指さない限り、日本の大学に対して、将来、多くの方々がサポートしてくれるような声が上がってこないだろうと考えているということであります。
以上でございます。

【金丸座長】 濵口委員、お願いいたします。

【濵口オブザーバー】 すみません。度々お時間いただきますけど、最初に文科省からも断っておられたと思いますけど、我々は別にWPIを特定研究大学院に拡大しろと言っているわけではないんです。誤解されないようにしていただきたいと思います。全く違うことであります。サイズが全然違いますから、WPIのやり方をそのまま全体に適用することはできないですね。
でも、日本の大学でマネジメントをきちっとやれば、世界と十分伍するだけのシステムがつくれるという実例を今日お示ししたわけであります。その実例の中にシークレット・オブ・サクセスがあるんです。その中には、幾つか大学全体としても、これを使えば活力が出るなというのが見えるんです。それをきちんと議論して制度設計の中へ入れていただきたいというお話をしているだけで、WPIに全部、金を投じろなんていうことは、とんでもない。思っていません。私どもは、JSTで今、ファンディングの運用をスタートしていますから、これは大変な作業であります。リスク管理だけでも3線構造で、さらに運用監視委員会を入れて、がっちりとした組織、50人体制を準備しておるわけですけど、この10兆円ファンドを動かすというのは、WPIを10個、20個つくるのとは全く違う世界であります。だけど、全く違う世界にどういうルールをつくっていかなきゃいけないかということは、WPIどころの作業ではなくて、もっとしっかりした準備をしないと、ただお金をつぎ込んだだけで終わりますよということは、私は警告しておきます。
以上でございます。

【金丸座長】 ありがとうございます。
高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】 ありがとうございます。あえて申し上げると、私の理解では、特定研究大学というのは、WPIのようなものを生み出し続けるメカニズムなんだと理解しました。2点、WPIから大きく学ぶことがあるかと思います。一つは、人材の重要性、既に説明の中で御指摘いただきましたが、研究支援人材は、ある種この15年ぐらい政策的にキャッチーだったと思いますけども、それ以外にもCFO等の新しいファンクションをやっぱり生かすような、取締役会的なものを導入するんであれば、それをワークするようなスタッフ組織というのがとても重要だということを改めて申し上げたいかなと思います。
2点目です。やはりWPIがこれだけ大きなチャレンジができたのにはやはり時間が大切だったのではないかと思います。もちろん途中で評価は入ったと思いますが、10年レンジで物を見られるということは、やはり組織経営上、とても重要な観点ではないかと思いますので、指標とか、どういうものを選定していくかというときに、時間軸ということを、できる限り長めに持っていくのは大切ではないかと思いました。
以上です。

【金丸座長】 ありがとうございます。
松尾委員、お願いいたします。

【松尾委員】 ありがとうございます。上山先生、橋本先生にいろいろと御指摘いただきまして、ありがとうございました。私の理解が至らなかった部分もよく把握することができました。それから、今の濵口先生もWPIの件も、特に資金をどういうふうに使っていくかという観点では非常に重要な示唆が含まれていると感じました。
それで、先ほど上山先生がお話になったところで、恐らく私の持っていた疑問が自分なりに少しクリアになった気がしたんですけれども、例えば3%の成長をするといったときに、例えば、先ほど特定研究大学では、土地の利用、施設の利用等に関して、現行制度を変えていくというような話がありました。こういった件が積み上がって3%の毎年の成長に至ると思うんですが、それがどの辺まで計算できていて、どの辺から先が計算できていない。要するに、各大学に頑張って創意工夫で何とかしてもらわないといけない部分なのかというところが少し明確になってくれば、これがどのぐらい大変なことなのかというのが分かるのかなと。それによってやっぱり各大学がどういった変革を起こしていかないといけないのかということももう少し肌感覚として分かってくるのかなと感じました。その辺りを少し明確にしていただけるとよいのかなと思いました。
以上になります。

【金丸座長】 ありがとうございます。それは誰かへの質問ですか。文科省?

【松尾委員】 専門調査委員会のほうでもしそういった議論がされているのであれば知りたいですし、そこはなかなか不透明なんだということであれば、文科省にまとめていただければありがたいです。

【金丸座長】 分かりました。

【植木課長】 よろしゅうございますでしょうか。

【金丸座長】 はい。

【植木課長】 恐縮です。今の御質問について御指摘ありがとうございます。基本的には3%事業成長に向けた中長期的な試算等々については、内閣府のほうでされていると伺っておりますが、それがこういう会議体の場でお示しできるような制度なのかも含めて、文科省のほうでも確認させていただいて、適宜、できる範囲で御案内はしたいと考えております。
以上でございます。

【金丸座長】 ありがとうございます。
橋本委員は手が挙がっておりましたでしょうか。よろしいですか。はい。
活発な御意見ありがとうございました。私は座長として、今日御紹介いただいたWPIの成功事例から学べるものは学んで、参考にしつつ、全体設計を推進していきたいと、こんなふうな理解をいたしました。
ほかに全体を通じて、どなたか、まだ言い足りないこととかございますでしょうか。特にないでしょうか。
それでは、ありがとうございました。特定研究大学の指定評価については、専門調査会における議論も踏まえつつ、事務局において、CSTIへの報告や、本検討会議の取りまとめに向け、引き続き論点等を整理していただければと思います。
それでは、本日の検討会議はここで閉会とさせていただきたいと思います。活発な御議論ありがとうございました。
最後に事務局から何かありましたらお願いいたします。

【馬場室長】 事務局より3点御連絡させていただきます。まず本日、時間の関係で御発言できなかったことや、御不明な点などある場合には、事務局まで御連絡をお願いいたします。
次に、本日の議事録につきましては、運営要綱に基づき公表を予定しております。事務局において議事録の案を作成の上、委員の皆様に確認させていただきますので、よろしくお願いいたします。
最後に、次回、第4回の検討会議につきましては、11月25日の開催を予定しております。また、正式に議事等が確定次第、傍聴の方を含め、開催案内を公表させていただく予定ですので、御承知おきください。
事務局からは以上でございます。

【金丸座長】 それでは、第3回検討会議を終了いたします。皆様、本日は御多忙のところ、どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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