財務省・新着情報

  1. 開会
  2. 最近の関税政策と税関行政を巡る状況
  3. 輸出入申告データの利活用について
  4. 特恵関税制度について
  5. 国際コンテナ戦略港湾政策について
  6. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 阪田関税局長
委員 伊藤 恵子 小宮審議官
金原 壽秀 泉審議官
河野 真理子 中澤総務課長
木村 福成 河西関税課長
坂元 龍三 福島参事官
佐藤 英明 加藤参事官
清水 順子 小多業務課長
杉山 晶子 米山監視課長
高橋 裕子 松田調査課長
高山 一郎 井田経済連携室長
田村 善之 鈴木事務管理室長
永沢 裕美子 荒巻税関調査室長
根本 敏則 近田原産地規則室長
野原 佐和子 松田特殊関税調査室長
春田 雄一 石川知的財産調査室長
三石 誠司 外務省 泰松経済局国際貿易課長
専門委員 阿部 克則 大西経済局経済連携課長
大橋 弘 国土交通省 奈良港湾局港湾経済課長
国松 麻季
佐々木 伸彦
末冨 純子
藤岡 博
宮島 香澄
村上 秀徳

 

午前9時58分開会

森田分科会長 皆さん、おはようございます。少し早いようですが、おそろいになりましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様には、御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。

 まず、事務局の構成につきましては、本年7月に人事異動がございましたところ、お手元の座席表をもって御紹介に代えたいと存じます。

 続きまして、7月に新たに着任されました阪田関税局長から一言御挨拶を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

阪田関税局長 ありがとうございます。この7月に関税局長を拝命しました阪田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 委員の皆様におかれましては、本日御多忙中のところ御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、日頃から関税政策、税関行政につきまして格別の御指導、御協力を賜りまして、心より感謝申し上げる次第でございます。

 本日は、今後の審議の参考として、最近の関税政策と税関行政を巡る状況等につきまして担当から御説明させていただくほか、関係省庁から幾つか御報告を予定しておりますが、冒頭私からも一言申し上げたいと思います。

 私が関税局勤務になりますのは入省したての頃から三十数年ぶりとなりますが、税関を取り巻く環境は当時とさま変わりしたと実感しております。まず、経済や物流の在り方が大きく変化しています。近年は、電子商取引の拡大に伴い小口急送貨物を中心に航空貨物の輸入申告件数が増大しており、コロナ禍でその流れがさらに加速しております。ポストコロナにおいてもこうした傾向は継続すると見込まれます。また、新型コロナ感染症の蔓延により旅客数は一時的に大幅に減少していますが、今後、新型コロナウイルス感染症が収束に向かい、世界的に人の移動が再開することとなれば、いずれ人流が元の水準に戻り、さらには新型コロナウイルス感染症の流行前の水準を凌駕していくことが予想されます。

 こうした中、来年、税関は150周年記念の年を迎えます。この大きな節目を関税局・税関という組織の新たな時代を切り開く契機とすることが重要であると考えております。税関を取り巻く環境が大きく変化する中で、昨年、スマート税関構想2020を取りまとめましたが、新型コロナウイルス感染症の流行の長期化や、それに伴うデジタル化の急速な進展など、新たな環境変化や新たなニーズが出てきております。こうした課題にも対応するため、来年に向けてスマート税関実現のための取組をさらに推進させていきたいと思います。

 本日お集まりいただきました皆様からもぜひ貴重な御意見等を頂きながら様々な課題の解決に向けて取り組んでまいりたいと思いますので、何とぞ御審議を賜りますようお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。

 ありがとうございました。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、早速ですが、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。

 本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。まず、今後の審議の参考といたしまして、「最近の関税政策と税関行政を巡る状況」につきまして中澤総務課長から御説明をお願いしたいと思います。

 では、よろしくお願いします。

中澤総務課長 ただいま御紹介いただきました総務課長の中澤と申します。よろしくお願いいたします。皆様の貴重なお時間頂きまして、この資料1に基づきまして、最近の関税政策と税関行政を巡る状況について御説明させていただきます。

 まず、1ページ目を御覧下さい、本日の構成でございます。1点目が最近の税関行政・関税制度、2点目が国際関係、3点目に令和4年度の関税改正でございます。

 2ページ目を御覧下さい。こちらは日本の輸出入の最近の動向でございまして、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響が輸出の動向にも表れております。左側に輸出額の対前年同月比の推移、右が輸入額のものでございます。太線が世界の数字、青の細線が中国、緑が米国となっております。ここでは、左側の輸出額の推移を御覧いただきたいと思います。この太線を見ていただきますと、2020年前半の新型コロナの影響による輸出の落ち込みを確認できると思います。また、21年に入りまして回復しているところがこの太線の動きで確認できるかと思います。一方、青線を御覧いただきますと、中国の輸出は昨年7月から明確に回復傾向が見てとれるところでございます。なお、四角の注書きに書いてございますが、コロナの影響前となります令和元年8月と今年8月を比較しましても対世界の輸出額はプラス7.6%となっており、輸出額はコロナ前の水準を今上回っていることが御確認いただけるかと思います。

 3ページ目を御覧下さい。税関では、東京オリンピック・パラリンピックへの対応といたしまして、テロ関連物資の密輸阻止のため、貨物、国際郵便物の検査に集中的に人員を投入いたしまして、関係機関と緊密に連携を図りながら水際対策をしてきたところでございます。写真も御覧いただきながらになりますが、一方で、円滑な通関の観点から、感染症対策に留意しつつも、大会関係者や大会関係者の物品を事前に把握しまして、税関検査場でも専用レーンを設置するなど必要な体制を整備してきたところでございます。こういった取組によりまして、税関としても大会が無事に終了を迎えたことに貢献できたものと考えているところでございます。最後に、下段を御覧いただきたいと思いますが、昨年この場で御審議いただきました令和3年度関税改正により実現したキャッシュレス決済、これにつきましては本年7月19日からスマートフォン決済アプリを利用した関税のキャッシュレス納付を成田、羽田をはじめ6空港で開始しているというところでございます。

 1枚おめくりいただきまして、新型コロナウイルス感染症への対応でございます。税関におきましても、新型コロナウイルス感染症へ対応しているという一例をここで掲げているところでございます。税関におきましては、マスク、防護服など物資の迅速通関を図っているほか、新型コロナワクチンの輸入に関しましては、予備審査制度を活用するなどして輸入許可が即時に可能となる体制を構築してきているところでございます。

 5ページ目を御覧下さい。最初に左下のグラフを御覧いただきたいと思いますが、ここでは、SP貨物を含め航空貨物全体の輸入件数が急増していることが見てとれるかと思います。冒頭、輸出入額の推移を御紹介いたしましたが、一方で税関の業務について考えてみますと、件数が処理単位になっております。その中で輸入件数が急増している状況でございます。この背景には、恐らくコロナ禍の巣籠もり需要を含めまして、電子商取引、Eコマースの急速な拡大があり、その中で輸入貨物の小口化が進展し、SP貨物の輸入が急増しているのではないかと考えているところでございます。ここで右下のグラフを御覧いただきたいと思います。令和2年の不正薬物の密輸手口といたしましては、旅客の戻りが低調な中で摘発件数の9割をSP貨物または国際郵便物が占めております。税関の職員の数が限られている中、不正薬物の密輸防止に加えましてテロ対策の観点からもSP貨物や国際郵便物の取締りの強化が必要となっているところでございます。

 6ページ目を御覧下さい。スマート税関構想2020の進捗でございます。こちらにつきましては次回の関税分科会で別途御報告の場を頂けるようでございますので、詳しくはそちらで御説明をしたいと思いますが、先ほど紹介しましたキャッシュレス納付またチャットボットの導入、ビッグデータ解析など可能なものから前倒しで実施してきているところでございます。一方で、冒頭、局長の阪田からも話がありましたとおり、スマート税関構想2020を取りまとめた以降もいろいろな環境変化がございますので、そういうニーズにもしっかり対応していく中で、スマート税関をさらに推進していくべく、局を挙げて今取り組んでいるところでございます。

 7ページ目を御覧下さい、不正薬物の摘発状況でございます。令和2年における不正薬物の押収量は5年連続で1トンを超えておりまして、2トンに迫る状況でございました。一方、今年1月から6月につきましては全体として押収量は減少が見られておりますけれども、大麻リキッドを含む大麻樹脂、MDMA等の麻薬の押収量は増加してきているところでございます。国際機関の報告によりますと、世界的にはコロナ禍であっても薬物の密輸というものは途絶えておらず、最近ではむしろコロナ禍以前あるいはそれ以上の水準になったと言われているところでございます。また、国内に目を移しますと、若年層における大麻乱用の拡大の影響などから、大麻事犯の検挙人数が4年連続で過去最多を更新するなど、大麻乱用期とも言われる状況です。このようなことを念頭に置きながら、関係機関と連携を密にしつつ、引き続き厳格な取締りを実施していくというところでございます。

 8ページ目を御覧下さい、金密輸取締りに対する取組でございます。関税分科会で御議論いただきまして、平成30年に関税法を改正しまして関税法の罰則を強化したところでございます。この影響からと思われますが、金密輸の摘発件数、押収量ともに大幅に減少してきております。令和3年上半期におきましても摘発件数また押収量は減少傾向にあるところでございます。一方、右下で少し紹介してございますが、貨物での巧妙な隠匿事案もあります。また、金の価格自身が高止まりしておりますので、この金の密輸に対しましては引き続き厳格に対応する必要があると考えているところでございます。

 1枚おめくりいただきまして、9ページは、知的財産侵害物品取締りの取組でございます。こちらも、昨年秋の分科会でも御議論いただき、4月の総会の後の分科会でも御紹介させていただきましたが、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害と位置付ける改正商標法等が今年5月に成立しております。商標法等の改正を受けまして、昨年答申を頂きましたとおり、水際取締りを実施するための必要な制度改正につきまして次回以降当分科会においても御審議いただきたいと考えているところでございます。

 続きまして、国際関係の話に移りたいと思います。

 11ページ目を御覧下さい。我が国EPA等の現状でございますが、右下の数字を御覧いただきたいと思いますけれども、昨年11月にRCEP協定の署名がなされたことを受けて、日本の貿易総額に占めるEPA等が発効済み・署名済み等の国との貿易額の割合は8割を超え、80.4%になっております。

 12ページ目を御覧下さい。地域的な包括的経済連携協定、いわゆるRCEP協定についてでございます。RCEP協定は、2012年から8年にわたる交渉を経まして昨年11月に署名されたところでございます。日本では今年4月に国会で承認がなされており、事務局に批准通報を行っているところでございます。また、署名国間では来年1月の協定発効を目標としているところでございます。この協定の発効要件が定められておりまして、ASEAN10か国のうち6か国が批准通報し、ASEAN以外の5か国のうち3か国が批准通報する。それがなされた後、60日後に発効となっております。現在は日本のほかシンガポール、中国、計3か国が批准手続を完了している状況でございます。

 1枚おめくり下さい。以上のように、EPAの利用機会が非常に拡大することが見込まれている中で、EPAがより一層活用されるような取組が必要だと考えております。このため、説明会の開催、輸出相談窓口の設置、また、EPAを解説したパンフレット、YouTubeの動画作成などを現在行っているところでございます。引き続きEPAの利活用の推進に向けた取組を続けてまいりたいと考えているところでございます。

 14ページ目を御覧下さい。TPP11に最近少し動きがございましたので紹介いたします。1つが英国のTPP11加入に向けた動きでございます。2月1日にイギリスがCPTPPへの加入要請を提出しているところでございます。現在、日本が議長を務めておりまして、加入作業部会が先月28日、29日に開催されたところで、赤く囲んだところが現在英国の加入手続で進んでいるところでございます。この英国のTPP11の加入に当たりましては、TPP11のルールを遵守することが加入の大前提となっておりまして、第1回会合ではルール面での確認作業が行われ、現在は専門的な確認作業が進められているところでございます。また、他の国の動きとして、中国が9月16日、また台湾が9月22日にそれぞれ加入申請を提出しているところでございます。繰り返しになる話でございますが、TPP11は市場アクセスの面でもルールの面でも非常に高いレベルの内容となっておりますので、我が国としましては、中国及び台湾がこうした高いレベルを完全に満たす用意ができているかどうかを見極めるとともに、他の参加国ともよく相談をしつつ、戦略的な観点、また国民の理解も踏まえながら対応していく必要があると考えているところでございます。

 1枚おめくりいただきまして、新型コロナウイルス感染症の世界貿易への影響でございます。これは、つい先日10月4日に公表されたWTOのプレスリリースを紹介しているところでございます。左側下のグラフを御覧下さい、この細い点線がコロナ危機前のトレンドですが、今回見直し改定がされる中で少し上方修正がなされており、過去のトレンドに戻りつつあるところが見てとれます。一方、四角の中の3つ目の丸で紹介しておりますが、コロナの流行が最大の下方修正リスクとなっている、ワクチンへのアクセスに関する世界的な不均衡が地域間の経済回復格差を増幅させているという指摘がなされているところでございます。

 16ページ目はWCO(世界税関機構)の最近の取組でございます。新型コロナウイルス感染症への対応といたしましては、例えば支援物資の通関迅速化に係るガイドラインの策定、偽造ワクチン、不正薬品等の取締りに加盟国が取り組むオペレーションの実施など、引き続きコロナ禍における円滑な貿易の確保に取り組んできているところでございます。また、急増するEコマースへの対応のため、Eコマース基準の枠組みが策定され、本年6月の総会ではEコマースへの対応が最優先課題であるとの共通認識が醸成されているところでございまして、我が国といたしましてもWCOの動きを支援していきたいと考えております。

 1枚おめくりいただきまして、関税技術協力でございます。関税技術協力につきましては、原則対面で行ってきたところでございますけれども、令和2年度においてはコロナ禍であってもオンラインを活用してしっかり実施しており、36件を実施してきたところでございます。具体的な例は下を御覧いただきたいと思います。

 最後に、今回紹介します3番目でございますが、令和4年度関税改正でございます。

 詳細は次回以降の分科会で御説明し、また皆様に御審議いただければと考えているところでございます。暫定税率の見直し、個別品目の関税率の見直し、また沖縄に係る関税制度上の特例措置、最後に海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締り強化、この4つの課題につきまして今後御審議いただきたいと考えております。

 私からは以上でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、「輸出入申告データの利活用」につきまして河西関税課長から御説明をお願いいたしたいと思います。

 なお、議題(1)に関する御質問、御意見等は議題(2)の説明の後でまとめて頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、河西課長、お願いいたします。

河西関税課長 ありがとうございます。御紹介いただきました関税課長の河西でございます。

 それでは、資料2に沿って御説明させていただきます。

 1枚おめくりいただきまして、「輸出入申告データの利活用に向けた取組」というページで説明をさせていただきます。輸出入申告データの利活用につきましては、国税庁において進んでいる税務大学校との共同研究という形での税務データの活用の取組も参考にさせていただきながら、昨事務年度から、政府全体のオープンデータ基本指針も踏まえまして、財務省の施策の検討に資するための学術研究に輸出入申告データを活用する観点から、根本分科会長代理をはじめ学識経験者の方々のお力もお借りしながら精力的に検討を進めてまいったところでございます。

 直近の状況でございますけれども、共同研究方式についてパブリック・コメントの手続きを行った上で、財務省全体の取組として、総合政策課を事務局として、財務総合政策研究所と関税局も参画しながら有識者会議を9月に立ち上げております。パブリック・コメントにおきましては、多くの研究者からポジティブなコメントを頂き、高い関心を頂戴したところでございます。共同研究方式につきましては、資料中央の参考の説明にもありますように、財務省として研究テーマを公募させていただき、審査プロセスを経た上で選ばれた研究テーマについて、研究者の方々には財務総合政策研究所の客員研究官に任命し、国家公務員法上の守秘義務を課させていただいた上で、財務総合政策研究所との共同研究という形で輸出入申告データの利用をしていただくこととなります。

 今後の予定といたしましては、10月4日から既に研究公募を開始しており、有識者会議での審査プロセスも経まして来年2月に共同研究を開始する予定でございます。今回の取組は1回限りの取組ということではなくて、来年以降も継続的に進むことを念頭に置いたプロジェクトでございますので、よりよい制度となりますように、有識者会議の先生方の御協力、御指導をはじめ、分科会の皆様の御理解も頂きながら持続的な形で進めていければと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。

 また、共同研究方式に加えまして輸出入申告データのさらなる利活用の可能性についても部内において検討を実施していきたいというふうに考えております。

 私からは以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明に限らず、関税政策、税関行政につきまして、幅広く御質問、御意見等を頂きたいと思いますので、御発言を希望される方は挙手をお願いいたします。

 それでは、オンラインで伊藤委員が御発言を希望されていらっしゃるようですので、伊藤委員、お願いいたします。

伊藤委員 2点コメントさせていただきます。

 1点目はTPPに対する中国、台湾の加入申請の部分についてのコメントです。中国からの輸入がアメリカの経済に与える影響と日本の経済に与える影響はかなり違うといろいろな研究から示されていまして、日本と中国の貿易というのはアメリカと中国の貿易よりも補完的であるといえます。つまり、日本にとっても経済的な面から見ればもちろん中国や台湾が加入してくるということはプラスが大きいわけでして、ほかの東南アジアの国々にとっても中国や台湾の加入というのはやはりプラスが大きい。新聞報道等を見ていますと、中国が加盟の申請をする以前に東南アジアにはかなり事前の根回しがあったようでして、日本も多方面から様々な影響を考慮して慎重に考え、政治的なところももちろんありますけれども、経済的な効果を十分に考慮して様々な国と情報交換をしていただきたいと思います。

 2点目のコメントは、今日のお話と直接的には関係ないかもしれませんが、輸出入申告データが使えるようになることに関連して、今後どこかの機会で議論をしていただけることがあればと思いまして、発言させていただきます。

 経済安全保障に関連して最近いろいろ調べておりますけれども、HS品目コードは、その品目が貿易管理令の対象になっているかということは書かれているのですが、貿易管理令の対象になっているHS品目の中でどういったところが実際に貿易管理の対象なのかは、経済産業省の情報で、文章で改正前、改正後というのが書かれています。そちらの文章を見ながら、どういう品目のどういう部分が貿易管理の対象になっているかを参照しながら審査されている状況だと思います。それはそれでいいと思いますが、今後、貿易管理や経済安全保障を細かく分析したり検証したりしていかなければいけないとなったときに、HS品目コードと詳細な貿易管理の中身がなかなかリンクしていないような状況で、数量的に分析しようと思うと非常に難しいのではないかという印象を受けました。

 一方でアメリカは、貿易管理の対象になっている品目に、HSとはまた別の独自の品目コードのようなものが振られていて、そこにどういう規制になっているかというのが書かれている状況でした。日本の経済産業省の情報の中で、どういう品目に規制があって、どう規制が変わったかということは文章で明記されているわけですけれども、その規制品目コードのようなものはなく、一個一個文章を拾っていかないといけない。今まではその状況でよかったとは思うのですけれども、今後、数量的に貿易管理の影響等を分析していこうと思うと、アメリカのような形でちゃんとしたコードを振るほうが分析等に関してはやりやすいのかなと思いました。今日の議論と直接は関係ないかもしれませんが、今後、貿易統計の情報が研究にも使えるようになり、さらにそれが政策に生かせるという状況になってくると、少し貿易管理に関しても何かデータを整備することを将来的に考えていく必要があると思い、コメントさせていただきました。

 以上です。ありがとうございました。

福島参事官(国際交渉担当) 1つ目の御質問についてですが、日中、日台の経済的な重要性も含めてしっかりと情報を交換していくようにというお話だと思いますが、おっしゃるとおりだと思います。TPPは市場アクセスの面でもいろいろ高いレベルの内容となっておりまして、中国に関してはともかく、台湾については事前にいろいろ準備を進めてこられたこともありまして、日本としては歓迎している立場でございます。いずれにしましても、加入申請を提出してきたエコノミーにつきましては、日本としては他の参加国とよく相談しながら、高いレベルをしっかり満たしているかどうかを確認するとともに、戦略的な観点、ここには恐らく経済的なことも入ってくると思いますが、それも含めて、国民の理解も踏まえながらしっかり対応していくところでございますので、今後、そのあたりをよく確認していくことになるのであろうと思っております。

河西関税課長 2点目に頂戴しました貿易統計の品目コードの話でございます。貿易統計の品目コードにつきましては、物資所管官庁からの要請等を踏まえて、統計品目全体の整合性も考慮しながら設定しているところでございますけれども、経済安保という文脈におきましては、国家安全保障局や経産省などの関係省庁が絡んでいくかと思います。財務省としてもそういった省庁と連携しながら適切な形で関与していくということと思っております。

泉審議官 関税局の審議官の泉でございます。伊藤先生、ありがとうございます。

 特に2点目に関しましては、伊藤先生の御指摘、問題関心というのは、我々としては今後重視していかなければいけないことだと考えております。アメリカの場合は、HSとは別に独自の品目コードを実際に貼っていることが公表されているということについて、私、それ自身は承知しておりませんでしたけれども、実際、貿易管理令の品目は非常に細かく文章で定められております。それを貿易統計上、特に輸出入管理の観点からどうするかというのは、必要に応じて経産省等の関係省庁と関税局で連携をして対応しております。

 1つ、先生がおっしゃったこととちょっと観点はずれますけれども、例えば、この貿易統計のHS品目コードについて、日本の場合は、必要に応じて関係省庁で連携し、日本独自の番号というものを設定して物事を捉える努力をしております。そうした中で、去年でございますけれども、マスクは経済安全保障上重要な物資であり、具体的な輸入量、輸出量というのが把握できるようにするということで、独自に番号を振るといったことをしております。先生のおっしゃった貿易管理令の物品そのものとは違いますけれども、新しい番号を振るということもやっておるということでございます。

 いずれにしても、先生のおっしゃった問題意識というのは重要だと考えております。ありがとうございます。

森田分科会長 それでは、続きまして河野委員、木村委員、宮島委員、春田委員から御発言の希望が出ておりますので、なるべく簡潔にお願いしたいと思います。

河野委員 1点御質問、それから1点コメントでございます。

 御質問は、5ページ目のSP貨物の取締りという点についてでございます。新型コロナウイルス感染症が随分長期化いたしましたし、それに伴って経済社会全体のデジタル化が加速し、人々の買物に関しての行動が随分変化し、それは恐らくCOVID-19の問題が解決した後も継続する大きな変化になると思われます。そうしますと、やはり5ページで指摘しておられるSP貨物の急増、これは今後も続くと考えられます。税関の現場には恐らく大きな負荷がかかるということが予測されるわけですけれども、今後、税関の方々としてはどのようにこの問題に対応していかれるのか、相当真剣に対応方法を考えなければ日本の社会あるいは消費者を守れないと思いますので、その御対応の検討について伺いたいと思います。こちらが御質問でございます。

 それから、コメントは6ページ目のスマート税関構想2020についてでございます。残念ながら、せっかくスマート税関構想2020を作成していただいたにもかかわらず、COVID-19のためになかなか人の移動が増えないわけですけれども、これから少しこの問題が収まってまいりますとやはり人々の国際的な移動が再度増えるかと思います。せっかくこのようにつくられましたので、この2年ほどあまり税関のお仕事が人の移動という意味では大きくなかったと思いますので、この点、人の移動が増えた段階で速やかに御対応いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小多業務課長 ありがとうございます。業務課長の小多と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 SP貨物の急増について御指摘を頂きました。全く御指摘のとおりでございまして、5ページのグラフを見ていただきますと分かりますけれども、COVID-19が始まる前からもう上昇のカーブは始まっておりますので、COVID-19が収まった後もこの傾向というものは続くだろうと我々としても認識しておるところでございます。税関の現場は精いっぱい執行面で工夫をしながら取り組んでいるところではございますけれども、やはりなかなか困難というのは全くおっしゃるとおりでございまして、制度的なところも含めて考えていかなきゃいけないということは重々認識しております。特に、先ほど総務課長からの説明の中でWCOの取組として紹介いたしましたけれども、デジタルプラットフォーマーとかECプラットフォーマーとか言い方はいろいろありますが、そういった新しいビジネスの形、電子商取引の形がいろいろと生まれてきております。こういったものにどう取り組んでいくのかということも、我々としてはまずはしっかりと勉強して対応していかなければいけないという認識を持っているところでございます。

河西関税課長 1点補足させていただきますと、次回分科会で事務局より、SP貨物も含め、スマート税関構想で御指摘いただいた事項につきまして、スマート税関構想のフォローアップの御報告をさせていただくとともに、スマート税関構想の発表後の足元の新たな環境変化も含めて今後の課題について御説明させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

木村委員 短く1点だけコメントです。2つ目に御説明いただきました輸出入申告データの利活用の問題ですけれども、私は有識者会議も呼んでいただいておりますが、これはとても大事なイニシアチブですので、ぜひ分科会としても力強くサポートをしていただければと思っております。輸出入申告データの利用というのは、特に過去10年ぐらいいろいろな国で盛んに行われるようになりまして、特に私がやっています経済学の中でも国際貿易論という分野では、一体どういう属性の企業が輸出したり輸入したり、どういうふうにやっているのかということがとても大事なポイントになっています。これは学術的な研究ということだけではなくて、いろいろな政策形成にも役立っていくことになってきます。ですから、今まで守秘義務等があって日本では使えなかったわけですけれども、これを使えるようになっていろいろな研究が発展していくというのは、周回遅れではあるのですが、とても大事で、これは為替レートとかインボイスカレンシーとか、そういうものにも直接関係してきます。せっかく始まった大切な試みですので、ぜひともサポートをお願いします。

 制度設計も非常に慎重にやっていただいていて、潜在的には悪用する可能性はゼロではないということですけれども、とても慎重な制度設計をされているということもぜひ報告しておきたいと思っております。

 以上です。ありがとうございます。

宮島委員 ありがとうございます。日本テレビの宮島です。

 まず、この期間にオリンピックとパラリンピックがありましたが、本当にいろいろなことがあって、コロナもありましたし、コロナ以外でも事前にはテロとかいろいろ心配されることがありました。ですが、この期間を通じて、税関のお仕事に関わるところで、逆に何一つ私たちが注目するような悪いことは起きず、本当にスムーズにオリンピック・パラリンピックの開催に貢献できたのではないかと思います。これは本当に現場の皆さんの大変な御苦労があったかと思いますので、本当によかったと思います。

 2つ目は知的財産の取締りの強化に関してですけれども、先ほどもありましたように、今、流通の状況が大分変わっておりまして、もう個人売買が個人の使用のためか何かが全く分からなくなっているような流通の形態も増えてきていると思います。負担もかかると思うので、どのようにやっていくかということは非常に難しい部分もあるとは思うのですけれども、これに対して適切に対応することは非常に大事だと思いますし、国民が知財に関して知識を持ってちゃんと意識していくという点においても非常に重要なことだと思いますので、これは次回の議論になりますでしょうか、しっかりやっていく部分だと思います。

 最後に、去年議論しましたとん税に関してです。これは政策効果が上がっているかどうかということをちゃんとチェックしたいと思っております。特にコロナの影響があるので数値的に比較ができなくなっている部分はあると思いますが、逆に、一旦いろいろな物流が止まった後にいろいろな業者が流通を変える可能性もあって、ここはしっかりやっていくチャンスだと思いますので、関税以外の様々な政策効果も含めて、ちゃんと効果を上げているのかということをしっかりチェックしていく必要があると思います。

河西関税課長 ありがとうございます。

 2点目の知的財産についてまずコメントさせていただきます。今回、特許庁で新たな商標法等の改正が行われました。これを受けて、次回以降でございますけれども、しっかり議論させていただいて、それを関税改正の中でも受けていくことが重要でありますので、引き続き御審議をよろしくお願いいたします。

米山監視課長 オリ・パラ対策に関しまして御評価いただきまして、大変ありがとうございます。オリ・パラのテロ対策の水際取締りを担当いたしました関税局監視課長の米山でございます。

 宮島委員が御発言されたとおり、今回のオリ・パラに関しましては、懸念しておりましたようなテロ行為が少なかったというわけでなく、全く発生しなかったことは大変よかったと思っております。先ほど委員から御発言いただいたように、税関職員は長期にわたり大変頑張りました。また、職員の頑張り以外でも、この関税分科会でこれまで累次にわたり御審議いただきまして制度改正を進めてまいりました、物流業者や航空会社等から貨物や旅客の情報を事前に電子的に頂き、それらを税関で分析・活用するということも今回の取締りには大変活かされたところでございます。その他、違法薬物のみならず危険物や爆発物などの検査を、開封することなくできるような検査機器の配備なども進めてまいりました。

今後とも、先ほど河野委員からも御指摘がございましたように、いつ入国旅客が再開してもしっかりと水際取締りを実施できるよう、今からしっかりと準備を進めていきたいと思っております。

 今回、御評価をいただきましたこと、大変ありがとうございます。

奈良港湾局港湾経済課長(国土交通省) 国土交通省港湾局の奈良と申します。

 宮島委員の御指摘、ありがとうございます。関税以外の様々な効果をきっちりチェックしていくということについては大変重要だと思っておりまして、私どもも後ほど、とん税につきまして、今の状況につきましても政策とともに御説明させていただく予定でおります。こうした場でチェックをしていただくことは非常に重要だと思っております。特に、御指摘のとおり、今コロナの影響を受けまして、また世界的にもコンテナ輸送は需給逼迫というちょっと特殊な事態が発生していることもございますけれども、特に荷主さんなどに伺いますと、やはりこの機会に物流のやり方も変えていきたいといったような声がございます。船社さんですとか荷主さんのこうしたお話を伺いながら、我々として何ができるかというのを不断にやっていきたいと思っております。

春田委員 連合の春田でございます。1点コメントで、1点お願いさせていただければと思っております。

 経済連携協定に関してでございますが、日本において貿易総額のEPAに係る部分が8割ということで、直近でも経済連携協定が非常に盛んに進んできているところは日本の国益に資すると思っております。貿易額とか関税ということが結構議論になりがちですけれども、今言われている経済安全保障、環境とか労働、人権、このような観点も少し考えながら経済連携協定を進めていくことが重要と思っています。それが日本の持続可能性、世界の持続可能性につながっていくものと思っております。

 お願いは、このところの経済連携協定が非常に進んできているのはいいと思っていますが、経済連携協定が非常に複雑に絡み合って、例えば、企業が海外進出を考える際にどのように進出していったらいいのか。とりわけ中小企業などでもどこの国に進出したらメリットがあるのか、そういったことを分かりやすく示していく必要があるのではないかと思っております。資料にもありましたとおり、輸出面における個別相談の対応強化等々、取組を進められていると思っていますが、そこの取組の対応強化、特に原産地規則をはじめ非常にややこしい部分もあるかと思いますので、そういったところを分かりやすく示していくような取組も進めていただければと思っております。産業構造の転換が進み、サプライチェーンの再構築が進んでいく中で、経済連携協定が持つ意味というのは国際的、グローバルなサプライチェーンという目で見たときに非常に大きいと思いますので、この点もよろしくお願いしたいと思います。

 加えて、先ほども少し話がありましたけれども、税関体制の整備について、これだけ経済連携協定が複雑になってきている中で、そういった関税業務における体制というものを強化していく必要があるのではないかと。一人一人のマンパワーも限りがありますので、そういったところにあまり負担が行かないように、働き方改革を含め、それを意識して取り組んでいただけたらありがたいと思っております。

大西経済局経済連携課長(外務省) 御質問ありがとうございます。外務省経済連携課長の大西と申します。

 1点目に頂いたコメントの環境、労働、人権といった論点について、経済連携協定でも進めていく必要があるのではないかという御指摘がございました。この点につきまして、こうした課題があることについては私ども外務省といたしましても認識いたしております。今後、経済連携協定、新規あるいは見直し、その他ございますけれども、そういった課題をどのように扱っていけるのかということについては不断に検討していきたいと思っております。

井田経済連携室長 関税局で経済連携室長をしております井田でございます。春田委員、御質問、御指摘、ありがとうございます。頂きました2つ目、3つ目に関しましてお答え申し上げます。

 2つ目でおっしゃられた、EPAが増えて複雑化してきていて、企業の方々にとっても企業活動にどういう影響があるのか。商売にどのような影響があるのかということを踏まえていろいろ支援等をしてほしいという御意見だったと承知しております。説明にございましたとおり、EPAは新規に発効していきますと、新しい原産地規則が出てきたり、ルールが異なってきたりということがありますので、まずは我々としては情報発信することで、貿易関係者の方々にEPAの中身についてよく御理解していただいて、その利用を促進、支援したいということをやっております。同時に、我々は財務省の立場でございまして、通関手続とか原産地規則とかに強みを持っているところでございますが、例えば企業の海外への進出であると経済産業省が強みを持っていたり、JETROがやっていたりということがございます。我々政府としてEPA利用促進を関係省庁で協力して一丸となってやっておりまして、例えば説明会などでも財務省、経産省、農水省、外務省またはJETROといったところと共同で開催して、それぞれの持ち場、強みを生かした情報提供をしているところでございます。委員からの御指摘を踏まえまして、関係省庁とよく相談して、これからも皆さんの御期待に応えられるようにやってまいりたいと思います。

 それから、3点目に御指摘がありました税関の体制整備の話、こちらもありがとうございます。EPAが新たに発効いたしますと、例えば締約国間で貿易量が増える。申告件数が増える。それから、原産地規則に関して手続の対応が輸入者にもありますし、税関としても対応が増える。また、事前教示やEPA支援で一定の業務量が増えるというのは、おっしゃるとおり、事実でございます。他方で、先ほど申し上げたとおり、EPAをせっかく締結しておりますので、貿易関係者の方に広く使っていただくというのが我々政府としての狙いとしているところでございまして、業務量が増えたことに対しては、例えば、業務運営のより一層の効率化を図る、または税関職員に対する研修等を行って内容について周知して適切な業務をしていくというような体制整備もこれまでやってきておりますけれども、引き続き力を入れてまいりたいと思っているところでございます。

 以上でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 関連して佐々木委員から御発言があるようです。

佐々木委員 一言だけ。今JETROについて言及いただきましたけれども、EPAの利用促進につきましては、JETROのホームページを御覧いただきますと、ウェビナー、セミナーの御案内であったり、それぞれのEPAについての利用促進のための様々な情報がございますので、ぜひ御覧いただいて、もし何かありましたらコメントいただければと思います。ありがとうございます。

永沢委員 消費者団体NACSの永沢と申します。私は今回2回目の出席でございます。既にほかの委員の方からもお話がありましたけれども、私どもの消費生活は多くを海外からの輸入に頼っているところ、コロナという今までに経験したことのないような危機下においても、税関のところで何か問題が生じて我々の日常生活が苦労するというようなことが起きなかったことにつきまして、私たちに見えないところでの皆様の御苦労があったということを知りまして、深く感謝いたしておるところでございます。

 また、今後このようなコロナの状況、危機というものはいろいろ起こりうると思いますので、国としてもこの分野にもっと投資をしていくことが必要だということも改めて認識したところでございます。国民や消費者が理解していくことも必要と思いますので、貴省にはより情報発信を頂くとともに、私どものような消費者団体も情報発信についてお手伝いすることができたらと思いました。これが意見として1点目でございます。

 それから、質問が1点ございます。15ページのWCOの取組の下のほうでございます。急増するEコマース、電子商取引への対応のところでございますが、WCOでも消費者保護はテーマとして上がっているのでしょうか。実は、経産省が所管する、ISO関連の電子商取引の国際的なルールについて協議する会議に本日午後に出席する予定なのでございますが、いろいろな役所でこの電子商取引対応が検討されています。こちらのWCOの枠組みの中でも消費者保護に関する課題はテーマとして上がっているのかどうか、それから、役所間の連携についてもお伺いできたらと思います。

 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

加藤参事官(国際協力担当) 国際協力を担当しております参事官の加藤でございます。御質問、ありがとうございます。

 WCOのEコマースに関する議論というのはいろいろなされているところでございます。消費者保護という観点では、実はあまりまだ取り上げられている段階にはございません。他方で、様々、事業者の取組とかいったものが当然Eコマースの中では議論になってまいりますので、そうした中で委員御指摘のような消費者保護といった問題意識も取り込んで検討していかなければいけないということを念頭に置きながら、今後も会議などで取り組んでいきたいと考えているところでございます。関係省庁との連携というのは常に意識しながらやっておりますので、そこは今後とも経産省、その他関係省庁と緊密に連携を取りながら対応していきたいと考えております。

大橋委員 お時間のない中、ありがとうございます。

 今回、スマート税関構想2020を取り上げていただいて、しっかり進めていただいていると伺って大変心強く思っています。他方で、この構想を議論していたときの前提だった中長期的に予想される環境変化は随分変わってしまったということ。あと、技術もこの1年、2年で随分進んできているところもあるなと思っています。事務局からフォローアップしていただけるということなので、そうした点も含めてアップデートを全体にしていくことが重要だと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございます。

末冨委員 ありがとうございます。

 私から一番初めに、伊藤先生から御指摘のあった2点目の安全保障に基づく管理で、製品コードのことについて若干補足させていただければと思います。伊藤先生が御指摘のように、米国では輸出管理の製品のコード化というのが進んでいまして、ECCNコードと言われています。日本の場合はそれが外為法からその下の輸出貿易管理令、外為令、それで貨物省令という下位法に行って細かい仕様が規定されていることになっていますけれども、そこで「項番」というふうに言われていますが、そのいわゆる項番でECCNコードと同じような感じでの管理がされているというふうに理解しております。そういうことについては、もちろん省令等々で詳しく規定はされているのですけれども、経済産業省のホームページでエクセルシートにそれを一覧にしたものがあります。なおかつ、リスト規制品についてはECCNコードのどれと対照するかというのも書いてございますので、それを対照とすることはできるかなというふうに思います。

 しかしながら、御指摘のとおり、いわゆるコード化で、そのコードさえ見れば全てが分かるようなことにはなっておりません。そこは長年の懸案事項であり、業界からの声も非常に大きいところですので、そこの御指摘の課題は的確な御指摘かと思います。

 ただ、輸出管理については大きな条約が4つございまして、それに加盟している限りはそれほど管理している製品等々にも大きな違いがあるわけではないというある程度大まかな前提の下に動いているところはあります。国ごとに分類が異なっている場合には、輸出入管理上の対応が複雑になるところは課題かと思います。しかしながら、米国の分類に全て従ってしまっていいのかというところはジレンマがあるところではないかと考えております。

河西関税課長 末冨先生、ありがとうございます。先ほど泉審議官からも申し上げたように、国家安全保障局を含めて、引き続き連携しながら関税局としても適切に対応していきたいと思います。御指摘、ありがとうございます。

野原委員 私からはコメントを1つと質問を1点させていただきます。

 まず、1つ目は、Eコマース急増に対するスピーディーかつ適切な税関対応、あるいは関税の設定等が重要だということは多くの方が発言されました。私も大変重要な課題だと思いますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 それに関係して質問ですけれども、資料1の16ページにWCOについての資料があります。「コロナ禍におけるEコマースの急増もあり、今年6月の総会で、Eコマースへの対応が最優先課題であるとの共通認識が醸成され」、「総会と連続し、ハイレベルのEコマースカンファレンスが開催され、プラットフォーマーの役割やテクノロジーの活用等について議論」されたということですけれども、「プラットフォーマーの役割やテクノロジーの活用等」について具体的にどのような議論がされたのか御紹介いただけないでしょうか。また、WCOでこの点についてどのような活動が予定されているのか教えていただきたいというのが質問です。

 また、コメントは輸出入申告データの利活用についてです。私はこれまでさまざまなデータ利活用推進についての各省庁委員会等で委員としてコメントしてきたものですけれども、今回の輸出入申告データの利活用についてもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。オープンデータの基本指針にのっとって適切に行っていただきたい。そして、過度にプライバシー等に保守的にならずに、適切な形で積極的に活用を推進することでそのデータの利活用の可能性を拡大していっていただきたいと考えます。

 以上2点、よろしくお願いします。

森田分科会長 関連して根本委員から御発言があるようです。

根本委員 ありがとうございます。

 私もSP貨物、国際郵便物の取締りに関して関連して質問させていただきたいのですけれども、この5ページにあるように、やはり取り締まりには事前情報が非常に重要ということだと思います。事前に教えていただきましたけれども、最近は今まで遅れていた国際郵便に関してもかなり事前情報が取れるようになってきて、お互いにマニフェストの情報を交換できるようになってきたと。これは効率的な取締りには重要なことで、その状況、今後の展望を次回ぜひ教えていただきたいと思います。

ただ、SP貨物と国際郵便を比べた場合、まだ国際郵便はちょっと弱いところがあると思うんです。SP貨物の場合は一貫輸送をやっていますから、輸出者から荷物を受け取るときに、どういうものはこの国には送れないとか、あるいは知的財産を侵害する物品は駄目ですよというのをちゃんと、指導できると思うのですけれども、郵便局の場合は、日本でも中国でもそうだと思いますけれども、受け取るときにはノーチェックというのが普通だと思うんです。ですから、やはり日本と中国の税関が連携して、例えば知的財産侵害物品の定義はこうなっているということを確認して、そしてそれぞれの国の郵便局でも少し指導していくような仕組みづくりもしていかないといけないと思います。事前情報だけではなくて、そういうガイドラインづくりみたいなものもぜひ進めていただきたいというふうに思います。このようなことに関してもWCOの中で多分議論されているのではないかと思うので、そこら辺を含めて教えていただければと思います。

加藤参事官(国際協力担当) 国際協力担当参事官の加藤でございます。御質問、ありがとうございます。

 まず、野原先生の御質問についてでございますけれども、プラットフォーマーというのは、要は電子商取引で売手と買手をつなぐ場を提供している事業者ということで、WCOの中では、6月のカンファレンスなどで、メンバー国だけではなくて、例えばAmazonであるとか、そういった事業者などにも参加してもらいまして、各国の税関当局が、そもそもプラットフォーマーがどういう情報を持っているのか、その情報をどういう形で当局が活用できるのか、そういったことについての問題意識を議論して、今後いろいろ検討していきたいというようなことを検討しています。事業者との連携によりまして適正かつ円滑な通関に資する政策がいろいろ考えられるのではないかという問題意識は我々としてございますので、WCOがそのカンファレンスなどをやることによって、WCO自身が事業者に対して働きかけるわけではありませんけれども、各メンバー国に問題意識を共有していろいろ働きかけていく。そういったことを考えているところでございます。

 それから、根本先生の件でございますけれども、SP貨物、国際郵便などの関係についても様々な会議の場がございますので、そちらでいろいろな定義づくりとかいったものについても含めて検討していくことになると考えているところでございます。

野原委員 ありがとうございます。ぜひWCOの議論を生かして、各国からの働きかけの1つとして、日本でもWCOの議論にも参加しているAmazon等に働きかけて進めていただきますよう、よろしくお願いします。

藤岡委員 今も御議論がございましたけれども、輸出入申告データの利活用に関して1点だけ補足のコメントを申し上げたいと思います。

 本日の資料2の4ページにある、共同研究に使用する輸出入申告データ、これはまさに個々の取引の機微情報そのものでございます。誰が、いつ、誰と、何を、どれだけ、そして、いくらで、取引をしたか、これが、全て固有名詞が具体的に記された書類でございます。極めて機微情報そのものであり、個人情報の保護、企業取引情報の保護に関わるそのものでございます。既に4月13日の本分科会での資料にもございましたけれども、令和2年の年間の輸入許可件数、輸出許可件数、合わせて9,153万件でございます。ごくごく大ざっぱに年間2,000時間と見て、1時間当たり4.5万件の申告が出ている。これは、国境を越えて行われる取引のほぼ全てが、固有名詞で、具体的に、幾らで誰と取引をしたという、機微情報そのものでございます。当然、税関は、一切これを外に明らかにすることはできない。もちろん、直ちに国家公務員法上の守秘義務違反という法律の問題もございますけれども、実体の問題として、長年、税関当局が申告者、輸出入関係事業者との間で培ってきた信頼関係そのものの問題です。一切、税関職員がこのような情報を漏えいしない、あるいは、NACCSシステムのセキュリティを完備し、外部に漏れないということが、すべての前提となっているわけでございます。

 このようなことを鑑みますと、セキュリティの確保、守秘義務の問題というのは、平面的に、形式的なものではなくて、すぐれて税関行政そのものの存立にかかわる問題であると言えます。

 また、Eコマース、個人の取引を含めてでございますが、マニフェスト貨物について付言しますと、マニフェスト貨物は、御案内のとおり、航空貨物で混載貨物運送状に基づく貨物であって一定額以下のものについては簡略した申告となっておりますが、それについても、いつ、誰が、誰と、何を、どれだけ、いくらで、個々に取引したのかという情報は、これは皆様方個人、自分のことを思い浮かべても明らかでございますが、それが漏れることがあっては一切いけないという制度でございます。

 以上の点につきましては、「オープンデータ基本方針」が資料2の最初にございますけれども、有識者会議の先生方の御意見を承りながら共同研究方式という形で、強固にそのような秘密漏えいが行われない形となっております。個人一人一人、企業一つ一つの個々の取引そのものが漏えいすることは、今まで一度もありません。万が一でもこのようなことがあれば、今回行われる共同研究方式の継続は困難になることは必定でございます。ぜひそのような意味で十二分に議論をし、ガイドライン等でもその旨は非常にはっきりと書かれておりますが、第三者による個別の輸出入業者等の識別、個票データから得られる情報の取得が公表の際に可能とならないように、それから、携わった財務省、財務総合政策研究所の職員、また客員研究官の発令を受けられた先生方を含めて、ぜひこの点だけは、形式的に国家公務員の守秘義務という部分は当然に法令遵守の意味で極めて重要でありますが、実態においてもこれは税関行政そのもの、根幹に触れる重要なものであるということを意識して、しかし、このような制度が有効に活用されまして、日本の学術研究がその前提で発展していくことを私は願っている次第でございます。

 以上、意見でございます。

森田分科会長 重要な御指摘、ありがとうございました。

河西関税課長 輸出入申告データの利活用につきまして、野原先生、藤岡先生、そして先ほど木村先生からコメントを頂きまして、ありがとうございました。大きく一般論で申しますと、野原先生がおっしゃったように、オープンデータ基本指針にのっとって利活用を進めていくという視点、もう1つは、まさに藤岡先生がおっしゃったように、輸出入申告データというのは関税法令に基づいて収集された課税のための情報であるということで、まさに営業上の秘密や個人情報を含むものであることから、適切な保護が必要であるということのバランスをいかに取っていくかということかと思います。

 その中で、今回始めようとしている中では、ガイドラインにおいて、まさに藤岡先生がおっしゃったように、国家公務員としての守秘義務だけではなくて、第三者が個別の輸出入業者等の識別ができないようにきちんと加工することも含めて、営業上の秘密や個人情報の保護との関係で、きちんとバランスの取れた形で進めることとさせていただいております。利活用については今後の在り方も含めて引き続き検討してまいりますが、いずれにしても、バランスの取れた形で、よりよい利活用の形があるか引き続き検討していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。このテーマにつきましてはこれくらいにさせていただきます。よろしいでしょうか。

 それでは、次に移りたいと思います。続きまして、財務省及び外務省から「特恵関税制度」につきまして報告を受けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

河西関税課長 ありがとうございます。関税課長でございます。

 それでは、お手元の資料3-1に沿って、外務省から特恵関税制度について御説明を頂く前に、私から昨年の議論について御説明させていただければと存じます。

 1ページ目でございます。特恵関税制度は、開発途上国の経済発展を支援する観点から、先進国が開発途上国の産品に対して一般の関税率よりも低い関税率を適用する制度でございます。こちらについては、昭和43年(1968年)のUNCTADでの合意に基づき、その後のGATTでの承認を踏まえ、日本においては昭和46年(1971年)以降、10年間の適用期限をこれまで毎回5回延長してきたところでございまして、直近では、昨年の令和3年度改正におきまして10年間の延長を認めていただいたところでございます。

 次のページでございますけれども、昨年の分科会の答申を参考までに引かせていただいております。開発途上国の開発支援が引き続き重要であることや、企業の予見可能性を確保する必要があることを踏まえて、10年間の延長が適当であるとした上で、下の3行でございますけれども、まずは特恵関税制度対象国からの輸入の実態や特恵関税制度の政策効果等を分析、検証する必要がある。その上で、必要に応じ、諸外国における運用等も踏まえ、適用期限にとらわれず対応を検討し、制度改正を行うことが適当であるとの御指摘を頂いたところでございます。こうした指摘を踏まえて、現在、関係省庁において、輸入の実態や政策効果等の分析・検証の作業を実施中でございますが、外務省から現状について御説明をお願いできればと存じます。

 私からは以上でございます。

泰松経済局国際貿易課長(外務省) 外務省の国際貿易課長の泰松でございます。今御紹介がありましたとおり、特恵関税制度につきましては50年にわたる制度でございまして、前回、昨年の審議の中で御指摘いただきながらも次の10年についての延長を認めていただきました。ありがとうございます。

 その中で御指摘いただきました諸点について、資料3-2にて現状を御説明させていただければと思います。上部につきましては今御説明を頂いたところでございますので、指摘事項のほうに直ちに入らせていただきたいと思います。

 御指摘いただいた事項の1つ目として、我が国の特恵関税制度の利用率が低調ではないかという御指摘がございました。この点につきましては、前回の資料で、LDCにつきましては利用率が90%と高い一方で、いわゆる一般特恵の部分については7.0%、全体で30%ということを示させていただいておりましたけれども、この部分についての御指摘と思っております。一方で、一般特恵につきましては、近年のEPA等の締結に伴う、いわゆる重畳適用というのでしょうか、重なって適用されることによって利用率が低く見える面があると思っております。制度上、EPA税率が一般特恵税率以下の品目については一般特恵税率が適用されないということを踏まえて、利用率というところに着目しまして計算させていただきますと、78.5%ということで、先生方のせっかくの制度がしっかりと使われているのかという御指摘については、このような数字で御説明ができるかと思っております。

 それから、2つ目の御指摘事項で、複数の制度で、今の御指摘事項の1つ目とも関係するかとは思いますが、制度が複雑化しているのではないかという御指摘もございました。これにつきましては、先ほど春田委員からも御指摘がございましたけれども、特にアジア太平洋地域というのはそうなのかもしれませんが、EPAないしはその広域的な連携といったものがある中で、ある意味、重層的な連携というものがあるのかと思います。この点につきましては、私どもとしては、1つ、多角的な自由貿易体制の構築に資する面もあると思っておりますけれども、御指摘は、どちらかというと、利用サイドから見て、利用に着目するという観点からは引き続き不断に関係省庁とも連携をして対応していきたいと思っているところでございます。

 それから、御指摘事項の3つ目として、他国に比べて厳格な原産地規則が特恵利用を阻害しているのではないかという御指摘がございました。この御指摘につきましては、利用率という観点からは、先ほどの資料にございますとおり、米国、EUとも遜色ないレベルにあるかと思いますけれども、それとは別途、個別の物品に関しましてはジュネーブのWTOの原産地規則委員会などでも指摘があるところでございますし、別途の問題としてジュネーブでの議論ないし関係省庁との対応については適切に進めてまいりたい。改善努力についてはやっていきたいと考えております。

 いずれにしましても、10年という延長を頂きまして、引き続き関係省庁と利用の実態を踏まえつつ政策的な効果等については分析、検証をしてまいりたいと思っております。

 私からは以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの報告につきまして御発言がございましたら手を挙げていただきたいと思いますが、特にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、御報告を承ったということで、次に入りたいと思います。次は国土交通省から「国際コンテナ戦略港湾政策」につきまして御報告を頂きたいと思いますので、国交省、奈良課長、お願いいたします。

奈良港湾局港湾経済課長(国土交通省) 国土交通省港湾局港湾経済課長をしております奈良と申します。関税分科会の先生方には、とん税・特別とん税の特例措置につきまして、制度の趣旨に御理解を賜りまして大変ありがとうございます。

 本日は、とん税特例措置を含めました国際コンテナ戦略港湾政策の現在の取組状況につきまして御報告をさせていただければと思います。資料4を御覧いただければと思います。この資料4でございますけれども、私ども今回が施行後、実質的に初めてのフォローアップ、チェックを頂く機会ということで、18ページの資料を準備しております。10分程度での説明となりますので、かなり飛ばしながらとなりますことをあらかじめ御容赦いただければと思います。

 まず、2ページ目を御覧いただければと思います。世界のコンテナ取扱いを御説明させていただきます。世界でのコンテナ取扱量はこの10年間で1.4倍に増加しております。アジアは1.5倍と全世界を上回るペースでございますけれども、日本においては1.1倍と微増にとどまっている状況にございます。

 次に、日本の港湾におけるコンテナ取扱個数の状況でございますけれども、2019年までは増加傾向でございました。ただし、やはりコロナの影響を受けまして昨年は減少しております。GDPを含めました各種経済指標が落ち込んでおりますので、同様の動きを示している状況にございます。

 4ページを御覧ください。コンテナ船の大型化の推移について示させていただいておりますけれども、こちらの関税分科会でも以前にも何度か御説明をさせていただいております図でございます。要はコンテナ輸送市場においては規模の経済が追求されている中、年々、船型が大きくなっているということを左のグラフでお示しさせていただいているものでございます。また、右側は最近のトピックでございますけれども、MSC ISABELLAという2万4,000TEUの世界最大級のコンテナ船の入港、こうしたものが新しい動きとしてございました。

 5ページ目を御覧ください。こうした中で、まず、国際コンテナ戦略港湾政策全体としてどういった取組をしているかでございますけれども、私ども港湾局としましては、集貨、創貨、競争力強化という3本柱でやっているところでございます。こうした施策を通じて基幹航路――欧州、北米中心でございますけれども、こうしたところの基幹航路を維持あるいは拡充を目指し、企業の立地環境を改善していくところが究極の目的でございます。個々の施策について御説明したいところでございますけれども、赤枠のところが昨年から今年にかけて新しく取り組み始めたところを示しております。

 6ページ目を御覧ください。次に、昨年10月からお認めいただいて施行しておりますとん税の状況について御説明をさせていただきたいと思います。その前に、改めてでございますけれども、この制度の概要についてお示しさせていただいております。具体的には、欧州・北米航路に就航するコンテナ船が国際戦略港湾に入港する際のとん税・特別とん税について、1年分をまとめて納付する場合の税率の特例、こちらを現状のとん税・特別とん税とも、ここに赤字で書かせていただいておりますけれども、従前の額の半分で措置をしていただいているところでございます。

 7ページ目を御覧ください。施行後の状況でございますけれども、特例措置の前後で船型と寄港回数を比較いたしております。基幹航路に就航しているコンテナ船の船型は大きくなっておりますので、特例措置のもともとの趣旨でございました大型船のコスト増に寄与することにおいては、施行後に実際に大型化が図られておりますので、一定効果が出てきているのではないかと思います。ただし、他方、右側のグラフでございますけれども、寄港回数は減少。これは東京湾のデータですけれども、入港隻数自体は、国際海上コンテナ輸送の需給逼迫、後ほど御説明させていただきますが、特に北米、中国を中心とした港湾の混雑ということで、寄港回数自体が落ちているところがございます。

 8ページ目を御覧ください。この需給逼迫につきましてここから何枚か状況を整理しております。左側のグラフがアジアから北米へのコンテナの荷動き量でございまして、特に昨年秋ぐらいまでは落ち込んでいたところ、昨年の秋以降急激に回復してきております。北米の特に家具とか家電ですとか、そうしたところの巣籠もり需要などにより急増している状況にございます。これを受けて、コンテナ運賃もこの7~8年かなり長期低迷しておりましたけれども、急激な伸びを示している。通常時の5~6倍ぐらいにはなっておりまして、これは2021年8月のデータですが、21年9月に入ってもこのような傾向は続いております。

 9ページ目を御覧ください。北米での需要の急拡大にはほかにも要因がいろいろございまして、例えば、当初は中国におけるコンテナ製造量――中国が95%以上製造しているのですけれども、これが一時期減産をしていた。これの影響を受けてコンテナの箱が足りないような状況が生じていたと。ただし、今の状況の一番の要因は、特に北米西海岸、ロサンゼルス、ロングビーチといったところで需要過多というか、ターミナルあるいはトラック、鉄道といったところが取り扱える荷物の量をはるかに超える荷物が入ってきて、そこで港湾の渋滞が生じて滞船が継続しているという状態にございます。例えば9月19日の段階ですけれども、ロサンゼルス、ロングビーチだけで滞船総数が73隻というような記録もございます。

 10ページ目を御覧ください。このような需給逼迫に対する対応ですけれども、私ども国交省では、マーケットの動きですのでなかなか難しいところはあるのですが、荷主とか物流事業者に対して、日本にあるコンテナですとかスペースの有効活用ですとか、あるいは臨時便の運航といったところを要請しております。

 11ページをお願いします。また、4月には経産省、農水省と協力いたしまして、荷主団体ですとか船社さん、物流事業者さん、皆様に入っていただいて情報共有会合を開きまして様々なことを議論して、背景の共有等を行っております。また、それに引き続いて海外港湾の調査なども行っております。こうした状況において、要は、荷主さん方がこの状況をどう捉えて、どのようなことについて一番懸念されているかということについて改めてヒアリングをいたしました。総じてでございますけれども、輸出荷主さん、機械メーカーですとか、輸入荷主さん、例えば食品メーカーですが、この需給逼迫の事態を受けて事業を継続する上では基幹航路の維持がとても大切であるという認識が改めて示されております。

 13ページを御覧ください。また、コンテナ船社さんからも直接お話を伺っております。船舶量では今世界1位のMaerskさんとそれを追いかけるMSCさん、あと日本の船会社のコンテナ部門を統合したONEさん、この3社にヒアリングをしたのですけれども、総じて現在の需給逼迫の影響で船のスケジュールが確保できない。日本への寄港が一時的に困難な状況になっている。ただし、需給逼迫の影響が平常化すれば、逼迫影響以前の航路サービスの水準に戻したいという意思が示されておりまして、とん税・特別とん税の特例措置の必要性についてもそれぞれ言及を頂いているところです。

 14ページ目を御覧ください。ここから、とん税特例措置以外のコスト軽減で我々はどういった取組をやっているかということと、あと様々な集貨の取組をやっていることを御紹介させていただければと思います。まず、入出港コストでございますと、記載の施策、タグボート基地の整備というのは、昨年御説明させていただいたかと思いますけれども、また新たに、右側の一番下ですが、超大型コンテナ船が入港するようなときに、例えば当日の風とかで追加的にタグボートが必要になる場合がありますので、こちらについて港湾運営会社を通じて独自に支援をしていこうじゃないかということで具体の制度を検討しているところでございます。

 15ページを御覧いただければと思います。こちらのページは、我々、要は国の補助によるものだけではなくて、港湾運営会社が自身で国際戦略港湾に荷物を集めてくるという取組をやっているということで御確認いただければと思います。

 16ページを御覧ください。さらに、このターミナルの一体的、効率的な運用というものも本年から始めております。横浜の南本牧で、4つターミナルがありますが、APMTというMaersk系の会社が中心になって借り受けまして、ガントリークレーンとかいった施設もそうですし、岸壁の利用形態もそうですけれども、一体利用を行うことで効率化を目指すということも今年4月から始めている状況でございます。

 17ページを御覧いただければと思います。ソフト面の取組としましてはCONPASというのを導入していまして、要は、トラックが入るときのゲート前の渋滞が非常に問題になっているものですから、事前に情報通信技術を活用して、何時何分に行きますよということで予約しておく。荷物を何時に取りに行きますと予約をしておくことでの効率化と、もともとPSカードというのがございますけれども、そこに情報を入れておいて、ゲートにそのPSカードをかざすだけでチェックができるといったようなことで、実証の結果、かなりゲート前待機時間を減らすことができている。これは横浜の例ですけれども、これを神戸とか大阪にも広げていくことを予定しております。

 あとは、これも御指摘いただいたかと思いますが、地方港から例えば釜山に行ったりする航路について支援をしている地方港がありますので、こちらについては、少なくとも国際戦略港湾への荷物の集貨を妨げないように、イコールフッティングにしてくれということで港湾管理者に向けて随時働きかけを実施しております。

 時間がなくなってまいりましたが、19ページ目でございます。御紹介だけになります。こうした国際コンテナ戦略港湾政策は、御指摘いただいているとおり、当然とん税を措置していただきましたけれども、そうしたことではなく、ほかの取組も総合的にやっていかなければならない。常にバージョンアップをしていかなければならないということで、ワーキングを設置しております。

 最後のページになりますけれども、こちらで中間取りまとめを先般行ったばかりでございます。我々がやっている集貨、創貨、競争力強化という3本柱だけではなくて、昨今の情勢を踏まえて、カーボンニュートラルポートですとか、あるいはDX化といった新しい要請を踏まえて付加価値を上げていこうといった指摘を頂きました。こうした御指摘でございますとか、このような状況でございますけれども、関税分科会の先生方にいつも御指導いただいておりますので、御指導を踏まえて総合的に戦略港湾政策に今後も取り組んでまいりたいと思っております。

 以上でございます。

森田分科会長 御説明、ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御報告につきまして御発言がございましたらお願いいたします。

根本委員 ありがとうございました。

 とん税を減税することによって、欧米基幹航路の日本への寄港回数を維持したいということで、その効果をモニターするということでした。7ページ目の右の図で言うと、現在は入港隻数になっています。残念なことですが、減ってしまったことになるわけです。ただ、これは説明があったように、アメリカなどで滞船、船がずっと止まったままになっていて全体的にスケジュールがタイトになっているので、港をスキップしていることによるものでしょうか。日本だけではなくて、中国の港などもスキップする港が出てきていること等聞いています。そういう意味では、現在減ったというのは一時的なものだということでしょうか。要するに、これは現在減って見えるけれども、もう少し様子を見させてくれと、そういう説明と理解してよろしいでしょうか。

奈良港湾局港湾経済課長(国土交通省) 根本先生、ありがとうございます。御指摘のとおり、こうした米国で滞船が発生することによって、例えば北米航路、要はワンループ、今まで40日で航行できていた、行って戻ってこられたところを60日、もっとかかっているらしいのですけれども、それくらい遅れてしまう。そうすると、年間9回寄港できるところが単純に6回ぐらいになってきてしまう。かつ、今、先生が御指摘いただいたとおり、遅れを取り戻すために、場合によっては1回スキップする。そうした現象も見られております。ただし、先生御指摘のとおり、船社さんなどに聞きますと、楽観シナリオ、悲観シナリオがありますけれども、いつかは解消される。そのときにいつかは必ず航路再編を行うことになるので、こうした状況は、短いか長いかはありますけれども、その際にはある程度解消されるのではないかというような見立てをしております。

野原委員 私からは応援のコメントをしたいと思います。

 とん税の導入を受けて、その効果を確認するために御報告いただきました。言うまでもなく、日本からの北米航路をメイン航路として維持することは大変重要で、釜山、上海との競争だけではなく、ASEANから京浜や阪神経由で北米に行く航路を拡充することも重要視していると認識しています。今日の御説明では、様々な施策を連携させることによって北米ルートが維持できそうである。あるいは、維持するべくさらに努力していくというお話だったと思いますので、とん税効果という観点にとどまらず、大型船の北米航路を維持できるように施策全体を連携させ頑張っていただきたいと思います。

奈良港湾局港湾経済課長(国土交通省) 野原先生、大変ありがとうございます。北米ルート、欧州ルートというのは基幹航路として、荷主さんから聞きましても、やはりこれは必要なんだというコメントを頂いております。我々として、御指摘のとおり、ほかの施策も総合してこうした国際基幹航路の維持というものに取り組んでまいりたいと思っております。

三石委員 簡単なコメントです。海上輸送が日本にとって非常に大事だということはみんな理解していると思います。今回とん税の関係で我々も全体が少しずつ見えてきたという感じがいたします。コンテナ船だけではなく、石油を輸送しているタンカー、穀物を輸送しているバルク船など、海上輸送には様々な種類があります。国交省さんにぜひお願いしたいのは、何かの機会に、日本の海上輸送がどういう状況になっているのかということを一度非常に簡単に教えていただけると、この関税審議会として何ができるかというまた違った次元の議論ができるのではないかという感じがいたします。

 例えば今日の資料ですと4ページでしょうか。コンテナ船の規模がいかに大きくなっているかということが書かれていますが、例えば穀物の輸送などですと、このグラフの真ん中にあるパナマックス船という5万トンから6万トンぐらいのパナマ運河を通る最高の船がいまだに世界の標準です。これだけで見ると、例えば1980年代から90年代の基準でまだ世の中が動いています。こういう視点で考えると、コンテナ船がこれだけ大きくなっていくということは、将来的にバルクカーゴを輸送する船はどう動いていくのか。それに伴ってバルクカーゴを入港させる港をどう改善していけばよいかとか、いろいろなことが起こってくると思います。ぜひそういった視点を含めて、何を考えていけばよいのかという機会や要因など、そのような資料を何かの機会に簡単で構いませんので出していただけると、恐らくみんなで共有し、良い議論ができるのではないかなと思います。

森田分科会長 ありがとうございました。これは資料をお願いするということでよろしいでしょうか。

奈良港湾局港湾経済課長(国土交通省) ありがとうございます。御指示いただきましたら、そのような資料を御準備させていただきたいと思います。私ども、国際コンテナ戦略港湾のみならず、国際バルク戦略港湾といったような政策も進めております。また、先ほどのカーボンニュートラルポート、特にカーボンニュートラルということにも着目した取組を進めております。こうした概要が分かるような資料を、また関税局様と御相談させていただきながら御準備させていただきたいと思います。

森田分科会長 ありがとうございました。

 ほかに御発言はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、ないようでございますので、最後に連絡事項がございます。

 まず第1は、委員の交代について私から御紹介申し上げたいと思います。本日の関税分科会をもちまして日本労働組合総連合会経済・社会政策局長春田雄一委員が御退任されます。平成27年から6年間にわたりまして本分科会に御貢献いただきまして、大変ありがとうございました。御礼を申し上げたいと思います。

 続きまして、事務局から連絡事項がございますので、河西課長からお願いいたします。

河西関税課長 1点、本分科会における議事録の取扱いにつきまして簡単に御説明させていただきます。議事録につきましては当審議会議事規則第5条の規定によりまして、原則公開とされております。本日、御発言いただきました委員の先生方には、議事録案がまとまりました段階で御発言部分を事務局から送付させていただきます。送付後1週間程度の間に御意見などがない場合には、恐縮ですが、御了解いただいたものとさせていただければと存じます。

 議事録の取扱いにつきましては今後ともこの扱いで進めさせていただければと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。議事録の取扱いについてよろしゅうございますね。

 それでは、以上をもちまして、本日の関税分科会を終了いたしたいと存じます。活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。

 次回の関税分科会の開催につきましては、11月5日(金曜日)午前10時開始を予定しております。詳細につきましては、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げる予定でございます。

 それでは、本日は御多用のところ御出席賜りまして誠にありがとうございました。これで終了とさせていただきます。

午前11時45分閉会

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