外務省・新着情報

令和3年10月7日

 10月5日及び6日、OECD閣僚理事会(Meeting of the Council at Ministerial Level:MCM)が2年ぶりに対面(一部参加者はオンライン)で開催され、我が国から、岡村OECD代表部特命全権大使、広瀬経済産業審議官、正田地球環境審議官(オンライン)が参加したところ、結果概要は以下のとおりです。

【ポイント】
  • 今回の閣僚理事会は、議長国である米国(ブリンケン国務長官、ケリー気候変動特使、タイ通商代表らが出席)、副議長国の韓国及びルクセンブルクの下、「共通の価値:グリーンで包摂的な未来の構築」をテーマに開催され、気候変動、国際課税、デジタル化、貿易等、経済分野で国際社会が直面する共通の課題について活発な議論が行われました。
  • 我が国から岡村OECD代表部大使他が出席し、同大使からは「共通の価値」の実現にはOECD非加盟国に対してもOECDのルールやスタンダードの遵守を求めていく必要性や「DFFT(信頼性のある自由なデータ流通)」の具体化が重要である旨強調するとともに、東南アジアへのアウトリーチの重要性等について発信しました。
  • 本年はOECD設立60周年にあたり、OECDの今後10年の理念を示した「OECD設立60周年ビジョン・ステートメント」(仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)を採択しました。同ステートメントは、世界がグローバルな協力と行動を必要とする課題に直面する中、OECD加盟国が、個人の自由の保護、民主主義、法の支配などの共通の価値を持ち、志を同じくすることを改めて強調し、その上で、世界経済の持続可能な発展に対するコミットを新たにすること等に言及しています。
  • 会合の最後には、コロナ禍からの回復、気候変動、強制労働等の今日的課題について各国の立場や見解を踏まえた閣僚声明(仮訳(PDF)別ウィンドウで開く英文(PDF)別ウィンドウで開く)が採択されました。その中で、DFFT(個人データへのガバメント・アクセスに関する高次原則の策定の促進等)を通じたデジタル経済の前進にコミットする点や、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」等を通じた質の高いインフラ投資への支援、WTO改革や「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しの重要性等も盛り込まれました。

1 参加国・機関

 OECD加盟国:38か国(議長国:米国、副議長国:韓国、ルクセンブルク)
 キーパートナー国:ブラジル、中国、インドネシア、南アフリカ
 招待国:ブルガリア、クロアチア、ペルー、ルーマニア、香港(貿易セッションのみ)
 その他:EU、BIAC、TUAC、ILO、国連、世界銀行、WTO他

2 主な議題と概要

 今回の閣僚理事会は、「共通の価値:グリーンで包摂的な未来の構築(Shared Values: Building a Green and Inclusive Future)」をテーマに開催され、関係閣僚等による議論が行われました。成果文書として、「OECD設立60周年ビジョン・ステートメント」や「閣僚声明」等が採択されました。

(1)「開会及び60周年記念式典」(5日午後、岡村大使参加)

 冒頭、コーマン事務総長から、OECDにおける気候変動への取組、経済のデジタル化に伴う課題への対処、国際課税アレンジメントへのコミットメント、G7、G20、APEC等他の国際フォーラムへの貢献、アジア太平洋及びアフリカへのアウトリーチの強化等について発言がありました。次いで本会合の議長を務めたブリンケン国務長官から、国際社会が直面する課題は、OECDが設立された60年前とは異なるものもあるが、加盟国が保持してきた共通の価値は変わらず、今日の課題もこうした価値を土台に対処することを強調しました。その上で、コロナ対策、気候変動対策、格差(国内・国家間)や新たな技術による課題への対応について、OECDの役割を期待する旨の発言がありました。

(2)「共通の価値(加盟国セッション)」(5日午後、岡村大使参加)

  • ア 参加者が加盟国に限定された本セッションでは、民主主義、法の支配、人権、ジェンダー平等、市場経済原則等へのコミットメントを含む、OECDの共通の価値について議論が行われました。
  • イ 岡村大使から、「共通の価値」の実現には加盟国だけではなく、非加盟国に対してもOECDのルールやスタンダードの遵守を求めていくこと、特に、非加盟国であっても質の高いインフラを着実に実施することが重要であり、この文脈でBDN(ブルー・ドット・ネットワーク)における米国のリーダーシップを評価しました。また、途上国向けの資金を可視化するTOSSD(持続可能な開発のための公的総支援)が有意義であることを指摘した上で、広く参加を呼びかけました。更に、OECDはこれまでDFFTの具体化を推進してきており、特に個人データへのガバメント・アクセスに関する原則策定の重要性について強調しました。最後に、「共通の価値」の拡大を図るため、東南アジア諸国の新規加盟を視野に入れつつ、東京センターを中心にアウトリーチ活動の必要性を指摘しました。

(3)「グリーンな未来の構築 ネット・ゼロに向けて」(6日午前、広瀬経済産業審議官、正田地球環境審議官参加)

  • ア 分科会1「ネット・ゼロに向けたイノベーションと包摂的な道程」において、広瀬経済産業審議官から、カーボンニュートラルの実現には、エネルギー・産業部門の構造転換を大きく加速させ、民間企業の大胆な投資によるイノベーションの創出が不可欠。このため、今ある技術にのみ限定することなく、将来的なイノベーションを含む動的アプローチをとることが重要である旨指摘し、そうしたトランジションを進めるための考え方に基づいたトランジションファイナンスの取組を紹介しました。
  • イ 続いて正田地球環境審議官から、ネット・ゼロの達成には社会のあらゆる主体の巻き込みとイノベーションが不可欠である旨指摘し、「地域脱炭素ロードマップ」等、日本における具体的な取組を紹介しました。

(4)「全ての人のための貿易の促進」(6日昼:ワーキングランチ、岡村大使、広瀬経済産業審議官参加)

  • ア 岡村大使から、自由、オープンで公正な貿易を推進し、できるだけ多くの人々に裨益する貿易政策は重要であり、労働や環境への貿易的側面からの対応も不可欠であり、OECD諸国と協調していきたい旨発言しました。
  • イ 続いて広瀬経済産業審議官から、責任ある企業行動の推進がグローバルサプライチェーンから強制労働や児童労働を根絶する上で鍵となる中、企業が積極的に取り組めるような環境を整え、企業の予見可能性や透明性を確保することが政府の役割である旨発言しました。また、公平な競争条件(LPF)について、OECDは鉄鋼や半導体など国際的な議論の土台を提供しているが、市場歪曲的な政府支援の実態を更に明らかにするよう調査が行われることを期待すると指摘しました。

(5)「包括的な未来の構築」(6日午後、岡村大使参加)

 分科会2「包摂的成長:公平な競争条件の確保により全ての人に機会を」において、岡村大使から、女性、若者、非正規労働者等に対するスキル教育の充実、グリーンやデジタルといった成長産業への労働移動を支えていくことが重要である旨指摘しました。また、ワクチン普及が遅れている新興国等へのワクチン供給を含め、世界全体で接種を促進することで、世界経済へのリスクを軽減する必要がある旨指摘しました。


発信元サイトへ