外務省・新着情報

令和3年10月11日

 10月11日(現地時間同日)、カンボジア王国の首都プノンペンにおいて、我が方三上正裕駐カンボジア特命全権大使と先方プラック・ソコン・カンボジア王国副首相兼外務国際協力大臣(H.E. Mr. PRAK Sokhonn, Deputy Prime Minister, Minister of Foreign Affairs and International Cooperation of the Kingdom of Cambodia)との間で、デジタル分野推進のための計2件の無償資金協力(供与額計7.5億円)、また、生活の質向上・産業振興のための円借款「シェムリアップ上水道拡張計画(第二期)」(供与限度額63.36億円)及び計3件の無償資金協力(供与額計8.5億円)に関する交換公文の署名が行われました。対象案件の概要は、それぞれ以下の通りです。

  1. デジタル分野推進のための支援
  • (1)コンピューター数値制御(CNC)工作機械の供与(経済社会開発計画)【無償資金協力:供与額5億円】
     カンボジアでは衣類や革製品を中心とした縫製産業が盛んですが、カンボジア政府は産業の多角化を目指し、特にデジタル技術を使った付加価値の高い産業の誘致と育成を政策目標として掲げています。
     本計画は、自動車部品等の高付加価値製品を製造するために用いられる最先端のコンピューター数値制御(CNC: Computerized Numerical Control)工作機械を供与することで、カンボジアの製造業における国際競争力の向上を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与するものです。
  • (2)全球測位衛星システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)測量機器の供与(経済社会開発計画)【無償資金協力:供与額2.5億円】
     カンボジアでは、2023年までに国内全土の土地登記を完了させることを目標に定めていますが、2020年3月時点では6割程度の進捗にとどまっており、測量・地形図作成の効率的な実施が求められています。
     本計画は、高精度で効率的な測量が可能なGNSS測量機器を供与することにより、測量・地形図作成の効率化を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与するものです。
  1. 生活の質向上・産業振興のための支援
  • (1)シェムリアップ上水道拡張計画(第二期)【円借款:供与限度額63.36億円】
    • ア 対象案件の概要
       シェムリアップ市は、近年急速に人口が増加していますが、同市の給水率は25%程度と同国の主要都市のなかで最も低い水準となっており、深刻な水不足が発生しています。また、同市は世界的に有名なアンコールワット遺跡群を有しており、現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により観光客は減少しているものの、感染が終息した際には観光客数の増加が見込まれています。このような今後も増加し続ける水需要に対応するため、給水能力の向上が喫緊の課題となっています。
       本計画は、同市における上水道設備の拡張を支援し、安全かつ安定的な上水道事業の普及を図るものです。本計画の実施により、同市における給水量が増加し,市民の生活・衛生環境が改善されるほか、観光産業を中心とした地域経済の発展に寄与することが期待されます。
    • イ 供与条件
      • 金利:0.65%(固定金利)
      • 償還期間:30年(10年の据置期間を含む。)
      • 調達条件:一般アンタイド
  • (2)材料試験機器の供与(経済社会開発計画)【無償資金協力:供与額2.5億円】
     これまで、カンボジアには建物建設の許可や建築基準に係る法令が存在せず、安全性に問題のある建築物が多数存在していましたが、日本の支援によって2019年11月にカンボジアにおける初めての建設関係法令として建設法が施行されました。当該法令により、建物の建築基準が規定(日本の建築基準法)されたほか、使用する建設資材の規格適合の証明が義務付けられましたが、建設資材の規格検査を行うための試験場で用いられる材料試験機器の調達が課題となっています。
     本計画では、コンクリート圧縮試験器などの材料試験機器を供与することにより、カンボジア国内における建設材料の品質確保を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与するものです。
  • (3)職業訓練機器の供与(経済社会開発計画)【無償資金協力:供与額4億円】
     カンボジアにおける工場製造ラインの管理を行う専門家を育成するために、我が国はこれまで電気分野のディプロマレベル(短大相当)のカリキュラム策定支援を行ってきましたが、職業訓練校における同カリキュラムの実施に必要な実技研修用の機器の不足が課題となっています。
     本計画は、実技研修に必要な職業訓練機器を供与することにより、同国内における産業人材の育成を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与するものです。
  • (4)地雷源調査機器の供与(経済社会開発計画)【無償資金協力:供与額2億円】
     カンボジアでは、1991年のパリ和平協定締結から約30年経過した現在も深刻な地雷・不発弾による汚染が社会問題となっています。現在、カンボジア政府は地雷撤去活動を最優先課題の1つとして掲げ、撤去作業を行っていますが、地雷原調査に必要な機器が不足していることから、調査が十分に進んでおらず、地雷除去計画の策定や地雷除去実施者の調整に支障が生じています。
     本計画は、地雷原調査に必要な機器を供与することにより、同国の地雷原調査能力の向上を図り、もって社会の安定化を通じた同国の経済社会開発に寄与するものです。
(参考)カンボジア王国基礎データ

 カンボジア王国は、面積約18万平方キロメートル(日本の約0.48倍)を有し、人口約1,672万人(2020年、世界銀行)、人口1人当たりの国民総所得(GNI)は1,490ドル(2020年、世界銀行)。


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