令和3年9月28日

 9月27日(現地時間同日)、世界貿易機関(WTO/ジュネーブ)紛争解決機関(DSB)は、中国による日本製ステンレス製品に対するダンピング防止(AD)措置について、我が国の要請を受け、WTO協定に基づき紛争処理小委員会(パネル)を設置しました。

  1. 中国は、2019年7月、日本、韓国、インドネシア及びEUから輸入されるステンレス製品のダンピングにより中国の国内産業が損害を受けているとして、AD税の賦課を開始しました(以下、「本AD措置」)。
  2. 我が国は、本AD措置は、中国の調査当局の認定や調査手続に瑕疵があり、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)及びアンチ・ダンピング協定(GATT第6条の実施に関する協定)に違反する疑いが強いと考えています。
  3. そのため、我が国は、WTOの場や二国間協議において措置の撤廃を繰り返し求めてきました。本年6月11日には、WTO協定に基づく二国間協議を要請し、7月19日に協議を行いましたが、紛争の解決には至りませんでした。これを受け、今般、パネル設置を要請しました。
  4. 我が国は、本件がWTOのルールに従って適切に解決されるよう、今後の手続を進めていく予定です。

[参考1]WTO紛争解決制度におけるパネル(小委員会)について
 他の加盟国による協定非整合的な措置によって不利益を被ったとする加盟国は、当事国間の協議を相手国に要請できる。協議を通じて60日以内に紛争が解決されない場合、パネルに紛争を付託し、問題とされる措置と協定との整合性について判断を求めることができる。

[参考2]パネル設置後のプロセス
 パネル設置後は、パネリストの選定等を経て、パネルによる審理(意見書の提出やパネル会合)が行われる。

[参考3]ステンレス製品(対象製品)
 本AD措置では、ステンレス鋼鋼片(スラブ)、ステンレス鋼熱間圧延鋼板(カットシート及び厚板)及びステンレス鋼熱間圧延コイルが対象製品となっている。ステンレス鋼鋼片は、精錬された溶鋼を鋳造して得られる半製品である。ステンレス鋼熱間圧延鋼板は、船舶・橋梁など建材部材や産業用機械に利用されている。ステンレス鋼熱間圧延コイルは、自動車部品、家庭用電化製品用冷延鋼帯の原材料等に利用されている。

[参考4]アンチ・ダンピング措置
 ある商品の輸出向け販売価格が国内向け販売価格よりも安く、その輸出によって輸入国内における競合する産業が損害を被っていることが正式な調査により明らかになった場合に、その商品に対して国内向け販売価格と輸出向け販売価格の差を上限とする関税を賦課する措置。