令和3年9月17日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続いて,私から3件報告がございます。
 1件目は,刑事手続における性犯罪被害者の氏名等の秘匿についてです。
 昨日(令和3年9月16日),法制審議会の総会が開催され,性犯罪に適切に対処するための法整備についての諮問を行うとともに,刑事手続において,性犯罪の被害者の氏名等を秘匿することができるようにするための法整備についての答申を頂きました。
 この答申に係る法整備については,「性犯罪に関する刑事法検討会」における検討項目の一つでしたが,本年5月に先行して諮問し,部会において集中的に御議論いただいた結果,昨日の総会において,より早期に答申を頂くことができました。
 この答申に係る法整備は,捜査・公判の刑事手続全体を通じて,性犯罪の被害者の氏名等の情報を適切に保護することを可能にするものであり,犯罪被害者等の権利利益の保護を図る上で重要な意義を有するものと考えています。
 法務省としては,今後,この答申を踏まえ,適切な時期に法律案を提出することができるよう,所要の作業を進めてまいりたいと考えています。
 2件目は,法人の実質的支配者リスト制度についてです。
 本日,「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則」を定める告示を公布しました。
 法人の実質的支配者の把握については,FATF(ファトフ)による勧告など,マネー・ローンダリング防止等の観点から,国際的にもその要請が強まっています。
 こうした要請に基づく議論を踏まえ,令和4年1月31日から,全国の商業登記所において「実質的支配者リスト制度」を開始するため,先の告示を公布したものです。
 この制度は,株式会社の申出に基づき,実質的支配者に関する情報が記載された書面について,商業登記所が,その内容を確認し,その保管と写しの交付を行うものです。
 この制度により,我が国の法人の実質的支配者情報の透明性の向上や,銀行などの特定事業者による実質的支配者情報の確認の一層の円滑化が期待されます。
 今後,制度の運用開始に向け,この制度が広く活用されるよう,関係省庁と連携して,積極的な周知・広報に努めてまいりたいと考えております。
 3件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 9月10日(金曜日)から昨日までの間,職員については15の官署・施設で計18名の,被収容者については神戸刑務所で3名の感染が判明しました。
 詳細は既に公表されたとおりです。

自民党総裁選に関する質疑について

【記者】
 本日告示の自民党総裁選についてお伺いします。新型コロナウイルス,不安定な国際情勢への対応など課題も多い中で,望ましい次期リーダー像についてのお考えを聞かせてください。

【大臣】
 この1年間,新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい,1日たりとも対策を緩めることのできない緊張した中,また,我が国を取り巻く国際情勢が様々に変化する中,一つずつ着実に施策を実施していくという菅政権の大きな方針の下,様々な課題に取り組んでまいりました。
 私自身は,法務大臣として,法秩序の維持,国民の権利擁護などの法務行政を預かる立場であり,コロナ禍にあって,その職責を果たすため,覚悟をもって全力を尽くしてまいりました。
 こうした時代に,リーダーとして何をすべきか,望まれるリーダー像とは何かということを,自らに問いながら,最初に法務大臣に就任した6年前から今日まで,仕事をしてきたところです。
 日本には,古来「不易流行」という言葉があります。
 国民の不安感が高まり,変化の激しい国難とも言うべき状況の中で,私自身も,常にリーダーとして意識すべき心構えとして,肝に銘じてきた言葉です。
 その心はと問われれば,アメリカの哲学者ラインホールド・ニーバーの有名な「ニーバーの祈り」にある「変えるべきものを変える勇気を,変えることのできないものを受け入れる冷静さを,そして,変えるべきことと変えられないことを見極める知恵を」ということです。
 これを「不易流行」という言葉に重ね,変えることができないもの「不易」と,時代の変化に対応して変えるべきもの「流行」とを見極める知恵が問われていると,自らを戒めながら取り組んできたところです。
 変化の激しい国難ともいえる時代において,正に「不易流行」を見極め,果敢に変化にチャレンジするリーダーが求められているのではないかと考えています。

【記者】
 関連して自民党総裁選についてお伺いします。大臣御自身が望まれるリーダー像についてお答えいただきましたが,今回の総裁に4人の方が立候補されました。大臣としてどの候補者を支持されるのか教えてください。
 また,今回の総裁選には女性2人が立候補されておりまして,女性2人の同時立候補というのは初めてということです。大臣の評価や期待されることを教えてください。

【大臣】
 自民党の総裁選における支持については,自民党内の事柄に関するものであり,これまでも,法務大臣としてコメントする立場にないことを御理解いただきたいとお答えしてきました。
 その上で,敢えてお尋ねですので,1人の政治家としての立場でお答えすると,私自身,政策集団である「宏池会」に所属しており,同じ政策集団の中で,自由闊達に様々な議論をし,切磋琢磨してきた同志である岸田文雄さんを支持します。
 また,2人の女性候補についての御質問がありましたが,今,日本の政治分野における女性議員の活躍は,世界的に見ると,ジェンダーギャップ指数が156か国中120位であり,G7の中でも,世界の国々の中でも,非常に遅れている状況にあります。
 取り分け,政治分野における女性の活躍は,更にそれよりも悪く,このことがGGI(ジェンダーギャップ指数)を大きく引き下げている要因になっています。
 私も女性議員の1人ですので,女性が,様々な分野,地方自治,地方議会,あるいは国政に果敢にチャレンジできるよう努力をしてきたところです。SDGsの17のゴールに向けて,女性の活躍が,世界中で期待されている,議員のポジションについても期待されていると考えています。
 総裁選では,様々な政策議論が行われますが,女性の活躍という分野についても,活発な議論をしていただくことを期待しています。

性犯罪被害者の氏名等秘匿に関する質疑について

【記者】
 先ほど発言がありました性犯罪の被害者の氏名秘匿に関連してお伺いします。法制審議会では,刑事裁判に続いて,民事裁判についての議論が進められています。
 今後,刑事と民事で,いずれも性被害者の情報が秘匿されることで,どのような効果を大臣が期待されているか教えてください。

【大臣】
 刑事手続については,先ほども申し上げましたが,昨日,法制審議会から,起訴状謄本の送達を始めとして,捜査段階も含めて,刑事手続全体において,犯罪被害者の氏名等を被疑者・被告人に知られないようにする措置を執ることを可能とすることについて答申を頂きました。
 これまで大変熱心に御議論をいただき,結論を出していただいたことについて,会長に,心から感謝を申し上げたところです。
 民事手続については,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会において,本年7月,犯罪被害者の氏名等を明らかにせずに民事訴訟の手続を進めることができる制度について追加試案を取りまとめ,現在,10月4日を期限として,パブリックコメントの手続を実施している状況です。
 民事裁判手続においても,性犯罪・DV等の被害者の方々が氏名等を明らかにせずに手続を利用できるようにすることは,被害者の方々が,氏名等が加害者に明らかになることをおそれて提訴をためらうことがないようにするという観点からも,大変重要な課題であると考えています。
 また,刑事手続,民事手続のいずれについても,犯罪被害者の氏名等の情報を適切に保護することにより,より一層,犯罪被害者等の権利利益の保護が図られることが期待されます。
 刑事手続については,昨日の答申を踏まえ,速やかに法整備に向けた準備を進めたいと思っています。
 また,民事手続についても,法制審議会において,引き続き充実した調査審議が行われることを期待しています。

池袋で発生した自動車による死傷事故に関する質疑について

【記者】
 池袋の暴走事故についてですが,判決が確定したと伺っております。被告人は現在90歳で,公判には車椅子で来るような健康状態であったと思いますが,被告人の収監について,大臣のお考えを教えてください。
 また,改めて池袋暴走事故についての大臣の受け止め,コメントをいただけますでしょうか。

【大臣】
 個別の刑の執行に関する事項について,法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
 毎年,様々な交通事故の犠牲になられる方がおられるのであり,しっかりと安全管理をしていく,そのための措置を執っていくことが極めて大事なことだと思っています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 一昨日15日ですけれども,大阪地裁で行われた日系ペルー人男性の国賠訴訟での証拠提出に関連した質問をさせていただきます。
 2017年に大阪入管に収容されていたこのペルー人男性が,入管職員に過剰な制圧を受けて骨折し,長時間手錠をかけられて保護房に放置されていたことに対する国賠訴訟ですけれども,国側は大阪入管が撮影した監視カメラ映像を任意で証拠提出し,その動画がテレビ各局でも放送されました。もちろん新聞でも報道されています。
 このペルー人男性には,一方で9月13日に病気療養のための在留特別許可も出ました。これは国賠訴訟であっても,大阪入管は命や人権に配慮したのではないかと思います。
 ただ一方で,先日来ずっと問題となっていますが,名古屋入管で死亡したスリランカ人女性のケースでは,上川大臣と入管庁長官が遺族に面会し,入管収容中にスリランカ人女性が亡くなったことに関して謝罪はされましたが,いまだに代理人立会いの下での監視カメラ映像の視聴も,約2時間分の映像データの遺族への開示も認めようとしていません。
 代理人弁護士の立会いを認めない理由について,大臣は保安上の理由や個人の尊厳,プライバシーへの配慮などを挙げていらっしゃるわけですが,なぜ,裁判では情報公開しても,この辺のことが全く問題ないのでしょうか。
 裁判において,こういった監視カメラの映像が公開されることは過去にもあったわけですが,訴訟を担当している訟務検事の判断で,裁判では任意に証拠提出できても,スリランカ人女性のケースでは,法務大臣や入管庁長官の裁量で,遺族代理人の立会いの下でビデオを見せることができないというのは,なぜなのでしょうか。
 法務行政,入管行政においては,大臣や長官の裁量よりも,検察官僚の権限の方が強いということなのでしょうか。なぜ,裁判では提出できて,スリランカ人女性のケースでは,遺族にすら弁護士立会いの下で見せることができないのか,分かるように御説明をお願いします。

【大臣】
 今回報道されたビデオ映像に関しては,情報公開という話ではないということを御理解いただきたいと思います。
 今回報道されたビデオ映像は,御指摘の国家賠償請求訴訟の裁判手続において,飽くまで,裁判所の指揮等に対応して,保安上の支障と裁判での主張立証の必要性等を勘案した上で,マスキング等の保安上の措置を講じた必要最小限の範囲で,裁判における証拠として提出したものであり,出入国在留管理庁として,一般に公開したものではないと承知しています。
 これまでにも御説明しているとおり,名古屋出入国在留管理局における被収容者死亡事案に関するビデオ映像については,収容施設内の記録や被収容者等の具体的状況の記録であるため,情報公開請求に対しても,基本的に不開示情報として取り扱っています。
 調査報告書が公表された現在においてもなお,保安上の問題に加え,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点からの問題もあるため,代理人弁護士の方を含めて,ビデオ映像を公開することは,適当ではないと考えています。

【記者】
 同じくスリランカ人女性のビデオについての質問ですが,大臣は先日,ビデオを御覧になられたということで,それは間違いないということですよね。
 その中で,ベッドから落ちたスリランカ人女性が助けを求める場面があったかと思います。その際に,スリランカ人女性は,何回助けを呼んだかということを教えていただけたらなと。数回という話もありますが,数回というのは,国語辞典(大辞泉)によれば,2~3回とか,多くて5~6回を示す言葉です。
 ただ,スリランカ人女性の御遺族は23回と数えています。この映像の場面で,実際に助けを呼んだのは何回なのか。その辺りを教えていただきたいなと思うのですけれども,この質問は事前通告しています。ですから,正確に覚えていらっしゃらないというのであれば,甚だ不謹慎ですし,また,お答えを差し控えるということであれば,やはりおかしな話で,そういった御回答をいただくのであれば,数回以上であると,私としては受け止めますけれども,正確なところを教えてください。

【大臣】
 御質問は,ビデオ映像と調査報告書の記載内容との間にそごがあるとの御指摘の一つと受け止めますが,改めて確認を行いましたが,現時点で,明らかなそごと言える部分は見当たっていないとのことです。
 詳細については,正に担当している出入国在留管理庁にお尋ねいただきたいと考えています。

【記者】
 大臣としてお答えいただきたい。

【大臣】
 調査報告書の内容について,私は報告を受けた側であり,その内容については,公正性・客観性を確保するため第三者に御協力いただき,ビデオ映像の全てを御覧いただいた上で,出入国在留管理庁において取りまとめたものです。
 記載内容の詳細について御質問がありましたら,調査報告書に責任を持っている出入国在留管理庁に御質問いただきたいと思います。

【記者】
 23回なのか数回なのか,そこだけ教えてください。

【大臣】
 今の御質問については,出入国在留管理庁の担当者が責任を持ってお答えするべきものです。

【記者】
 大臣,ビデオ映像を御覧になったのですよね。

【大臣】
 私はビデオ映像を見ましたけれども,調査報告書の内容についての御質問ですので,出入国在留管理庁にお問い合わせいただきたいと思っています。

日本共産党に関する質疑について

【記者】
 話題変わりますが,日本共産党についてお伺いします。
 立憲民主党の枝野代表は,「共産党が暴力革命を目指しているとは全く思っていない。」と発言されておりますが,共産党は破壊活動防止法に基づいて調査対象の団体となっています。大臣として,共産党が暴力革命を起こすとお考えでしょうか。理由と併せて教えてください。
 また,現在,経済安全保障やテロ組織等への対応等が重要な課題になっていると思いますが,限られた公安調査庁のリソースを,そうした課題に振り向けるというお考えはないでしょうか。

【大臣】
 政府としては,現在においても,日本共産党のいわゆる「敵の出方論」に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識しています。
 公安調査庁の人員配置についての御指摘がありましたが,テロの脅威については,デジタルの時代であることも含め,大変,厳しい状況が続いており,そうした問題について,今後,更に直視していかなければならないと思っています。
 また,経済安全保障についても,様々な視点から問題に対応していくべき事柄であると思っています。
 人員配置については,組織内の問題であり,どのように効率的かつ効果的に進めていくのかについて,今後,起きるであろう問題への対処の観点も含め,しっかりと対応してまいりたいと思っています。
 公共の安全の確保は非常に大きなミッションですので,全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えています。

(以上)