令和3年9月3日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から2件報告がございます。
 1件目は,刑務作業製品に係る大臣表彰等についてです。
 法務省では,例年,優れた刑務所作業製品及び刑務作業の運営が優秀な施設を表彰しており,本年の法務大臣賞が決まりましたので,御報告いたします。
 まず,刑務所作業製品の法務大臣賞についてです。
 この賞は,刑務所で新たに企画・開発した作業製品について,外部専門家に,デザイン性,市場性等の観点から全国刑務所作業製品審査会において御審査をいただき,優秀と評価されたものに授与するものです。
 府中刑務所で製作された浮世絵コースターを始め,こちらに並べている5つの製品が,今回の受賞製品です。
 次に,刑事施設の法務大臣表彰についてです。
 この賞は,刑務作業の実績等に評価基準を設けて,特に成績優秀な刑事施設を表彰するものです。
 本年度は釧路刑務支所,和歌山刑務所及び秋田刑務所に法務大臣賞を授与することといたしました。
 さらに,昨年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による医療用ガウンの不足を受け,42の刑事施設において,左に展示しているアイソレーションガウン合計約140万着を縫製し,全都道府県にお届けいたしました。この貢献を評価し,42の刑事施設に法務大臣特別賞を授与いたしました。
 私も大阪刑務所を視察した際,受刑者が真剣にアイソレーションガウンの縫製に従事している姿を目の当たりにし,社会貢献の意識の醸成等,再犯防止の観点からも非常に有意義な取組になったと感じております。
 今回の表彰が,刑事施設による更なる社会貢献を後押しするとともに,受刑者の社会貢献の意識の更なるかん養につながり,再犯防止に資することに,大きな期待を寄せています。
 2件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 8月27日(金曜日)から昨日までの間,職員については35の官署・施設で計52名の,被収容者については6つの施設で計27名の感染が判明しました。
 詳細は既に公表されたとおりです。
 法務省においては,引き続き,高い緊張感を持って,各種感染症対策を徹底してまいりたいと考えております。

子どもの自殺を防ぐための対策に関する質疑について

【記者】
 新学期が始まりました。夏休み明けは子どもの自殺が多い傾向にあります。子どもの自殺を防ぐための法務省の対策や大臣からのメッセージがあれば教えてください。

【大臣】
 夏休みが終了し,学校が再開するこの時期は,学校での生活に悩みを抱えるお子さんが不安定な心理状態に置かれています。
 特に今年は新型コロナウイルスの感染が拡大し,家庭環境や地域の状況によっては,お子さんの抱える悩みは大きくなりがちで,例年にも増して,子どもの心理の変化をきめ細かく汲み取る必要があります。
 毎年9月10日からの1週間は自殺予防週間と位置付けられております。全国の法務局におきましては,これに先立ち,夏休みが終わる時期に合わせ,今年は先月27日から昨日までの1週間を強化週間として,「子どもの人権110番」を使った相談活動を強化しました。
 今年の強化週間中には,子どもから「学校に行きたくないので,死のうと思った。」と言われたという保護者の方からの御相談,また,転校先の学校で「コロナだろ。」などと言われ,学校に行くのが不安であるとの相談など,切実な内容のものが寄せられました。
 こうした個々の相談について,その内容に応じ,関係機関としっかりと連携して見守り体制を早急に構築することが何より大事ですので,相談から具体的なアプローチに至るまで,できるだけ短い時間で対応するよう取り組みました。
 今後とも,子どもたちの不安や悩みごとに寄り添い,一人でも多くの子どもたちを救うことができるよう,しっかりと対応に努めてまいりたいと考えています。
 また,全国の法務局では,「子どもの人権110番」の電話相談だけでなく,メールやSOSミニレターでも相談に応じていますので,不安や悩みを抱えている子どもたちには,一人で悩まず,家庭内で抱え込まず,相談をしてほしいと思いますし,また,こちらとしても相談にしっかりと耳を傾け,適切な対応に努める必要がある大変重要な時期であると思っております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

【記者】
 スリランカ人女性の件でお聞きします。来週,ビデオの残りの50分を再び視聴する予定だということですが,これまで何度も会見で聞かせていただきました,いまだに遺族が強く希望している全部を見せるということ,それから弁護士の立会いも拒否されているということです。
 この間の会見で,上川大臣は「配慮の仕方について十分対応することが必要ではないかと思う。」とおっしゃられました。
 人道上の配慮,誰一人取り残さない社会ということのためには,せめて遺族側が希望する立会いの弁護士をつけるべきだと思いますが,この点どうするのか。
 それからもう1点,「選択」という雑誌で,髙嶋新事務次官についての記事が出ました。これを見て非常にびっくりしたのですが,報告書の関係で,佐々木出入国在留管理庁長官は遺族側への情報開示について比較的前向きだったが,髙嶋官房長がこうした動きに待ったをかけた,また,黒塗り文書についても,髙嶋氏が開示内容について口を出した,映像開示に関しても佐々木氏らは遺族側の要望について検討しようとしたが,最終的には髙嶋官房長が難色を示し,辻事務次官らがこの方針を採用したということが書かれておりました。火曜日,髙嶋さんを非常に評価するコメントを出されておりましたが,もしこれが事実であれば,とんでもないことをしているのではないかと思います。
 昨日これを受けまして,検察庁幹部の何人かに私が直接取材をしましたが,やはり中には,2週間,いずれ民事で出さざるを得ないような映像を約2時間,人道上配慮したと言いながら短く編集して出した。これだけでも,有り得ない判断をしているのではないか,こういうやり方を続けて,法務・検察庁というのが本当に国民や市民に理解される組織になるのかと批判している幹部が非常にたくさんいらっしゃいました。この記事が出た背景もそういったことがあるのかなと思います。
 大臣,こういうことが実際髙嶋さんの指示によって,真っ黒な1万5千ページに及ぶ文書が出てしまったということなのか,この背景事情を知っているのか知らないのか分からないのですが,この点についてもコメントいただけますか。

【大臣】
 まず,1点目の御質問ですが,これまでにも御説明したとおり,御遺族に対しては,亡くなられたお姉様の日常の御様子や,調査報告書で不十分,不適切な対応等があったと指摘されている場面とともに,亡くなられた方の体調に外観上顕著な変化が生じた状況を含め,御遺族に御覧いただくべきとの国会質疑での御指摘があった3月4日以降の御様子などについて,幅広に閲覧していただくこととしているところです。
 亡くなられた方の御様子がどのように推移していったのかということは,御遺族が本当に知りたいことであると思っており,その意味で,今回,御遺族に対しては,保安上の支障をマスキング等により軽減させる処置をした上で,通訳を介した説明を行いながらビデオ映像を閲覧していただくこととしました。
 8月12日には,御遺族が,出入国在留管理庁が用意した映像の全てを閲覧することができなかったとのことであり,再度閲覧していただくよう,日程を調整中と報告を受けています。
 ビデオ映像については,これまでにも御説明してきましたが,情報公開請求に対しても,基本的には不開示情報として取り扱っているものであり,調査報告書が公表された現在においても,保安上の問題に加え,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点からの問題もあることから,先ほど御質問の中にもありましたが,代理人の弁護士を含め,御遺族以外の方々にビデオ映像を公開することは,適当ではないと考えています。
 今回,御遺族には,日程を調整させていただいた上で,再度,閲覧していただく予定ですが,御遺族の心身への配慮も必要ですので,通訳を介するのはもちろんですが,心理的な負担をできるだけ軽減することができるようにする配慮も併せて考え,対応してまいりたいと申し上げてきたところです。
 2点目の御質問ですが,個別の記事の内容に関する御質問ですので,私からのコメント等は,差し控えさせていただきます。
 また,省内における検討経過につきましても,事柄の性質上,お答えは差し控えさせていただきます。

【記者】
 先ほどの「御遺族の心情に配慮して」ということであれば,前回も精神的にダメージが大きかったのですから,御遺族も代理人との同席を望んでいるわけですから,最低限,代理人の同席を認めた上で,2時間分の残りのビデオを見ていただくというのが当然の配慮だと思うのですけれども,それについてどう考えていらっしゃるか。
 それから,上川大臣は2007年に福田内閣で公文書管理担当の初めての国務大臣に就任されて,2009年には,公文書管理法の成立に御尽力されました。御自身のブログの中でも,「公文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源であり,それらを国民が主体的に利用できる仕組みは,民主主義の発展に欠かすことができない大切な前提条件です。」と書かれ,なおかつ,「どんな法律も運用次第である。」と,「公文書管理法の主眼は公務員の意識を変える点にある。」と,「緊張関係を保ち,改革の意識を維持するよう努めていく必要がある。」というふうに新聞のインタビューにも答えていらっしゃいます。それも,大臣のブログに載っています。
 正に今回の名古屋入管の死亡事件に関しては,改革を今大臣が進めよと指示を出されましたけど,その公務員である入管職員の意識を変えるためにも,この行政文書というものが,やはり第三者である御遺族や代理人,あるいは国会もどうなるか分かりませんが,所定の国会議員などに対して,黒塗りではなく,できる限り全面開示するということが,大臣がおっしゃっている公文書管理の基本に立ち戻ることだと思います。
 そういった大臣の御見解を踏まえた上で,なぜ,ビデオ開示を含む名古屋入管の行政文書の開示を,遺族や代理人に対してここまで拒み続けるのかと,そこについて大臣の率直な考えを聞かせてください。

【大臣】
 まず1点目の御質問ですが,先ほどもお答えしましたが,今回,御遺族に対しては,保安上の支障をマスキング等により軽減させる処置をした上で,通訳を介した説明を行いながらビデオを御覧いただくこと,これは人道上の配慮として対応することにしたところです。
 今回,2回目の閲覧の日程調整をさせていただいておりますので,御遺族に対して,御説明を加えながら,また,心情にも配慮した形で対応する努力をしてまいりたいと思っているところです。
 2点目ですが,私は,2007年に福田政権で公文書管理担当大臣を務めさせていただき,2009年の6月の公文書管理法の制定に携わりました。御質問でインタビューについての言及があり,また,公文書管理法の前文に記載されている文言の一部を読み上げていただきましたが,民主主義の安定に欠かすことのできない国民共有の知的資源であるということについて,行政文書を扱う立場の一人一人がその趣旨をしっかりと緊張感を持って認識し,行動することは,当然であると思っています。
 行政機関には,行政文書の適正な作成・整理・保存等を通じて,行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに,国の諸活動を検証可能なものとする,また,現在及び将来の国民に説明をしていく責務があるものと理解しています。
 さらに,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)に基づく行政文書の開示請求に対しては,同法の規定にのっとり,適切に開示・不開示の決定をすることが重要であると考えています。
 今回の事案に係る行政文書開示請求については,出入国在留管理庁から,情報公開法に従って対応したものと報告を受けています。
 今回のビデオ映像については,繰り返し御説明してきたとおり,コロナ禍の中で来日され,変わり果てた姿の御遺体と対面された御遺族の心情を踏まえた特別の人道上の対応として御遺族に開示することとしたものであり,御遺族にのみ閲覧していただくということで,今回対応させていただいています。
 その意味で,代理人を含め,御遺族以外の方に閲覧していただくことは,適当ではないと考えています。
 また,調査報告書については,既に出入国在留管理庁から,御遺族にお渡しし,通訳を介して御説明させていただいたところであり,現在,全文を御遺族の母国語に翻訳する作業を,できるだけ早く進めています。
 この調査報告書には,調査結果が根拠に基づくものであることをお示しするために,調査報告書の公表前に不開示とした文書の内容も,可能な限りでお示しをしています。

【記者】
 今のスリランカ人女性の件に関連しまして,一昨日9月1日に,STARTという支援団体が,名古屋入管に対して,食事から異臭がするなど,処遇が悪質な点を改善すべきという申入れを行いましたが,名古屋入管の人権意識の低さは,スリランカ人女性死亡事件以降も変わっていないと指摘されていると思うのですが,実際に異臭がするほど悪くなっている食事を食べさせているという実態があるのかどうか。そして,人権意識の低さが改善されていないと指摘されていることに関して,どうお考えかお聞かせください。

【大臣】
 名古屋入管に係る記事ということですが,個別にどのような内容の御説明・御要望を受けたのかについては,出入国在留管理庁にお尋ねいただきたいと思います。
 今回の事案を踏まえて改善すべき点,特に職員の意識改革については,全庁的に取り組むべきことですので,しっかりと取り組んでいこうという至急の指示をしたところです。
 意識改革には時間がかかると申し上げるつもりはございませんが,そうした取組を積み上げ,しっかりとその意義を理解し,そして行動につなげていくということ,考えていくことが非常に大事であり,マニュアルがあって,この通りにやりなさいと言えば済むといった事柄ではないと私は理解しています。
 その意味で,非常に難しい,しかし極めて重要なことであるとの認識の下に,その指示をしたところです。

自民党総裁選に関する質疑について

【記者】
 菅義偉首相は3日,自民党総裁選への不出馬の意向を臨時役員会で示しました。
 菅内閣の一員としての大臣の受け止めと,総裁選で岸田文雄前政調会長を支持するかどうかの大臣のお考えをお伺いします。

【大臣】
 新型コロナウイルス感染症は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の中でも拡大しており,一日一時たりとも対策を緩めることができない状況の中,菅総理におかれては,この1年間,新型コロナウイルスの変異も含め,事態が様々に変化し,世界的にも難しい局面が続く中,一つずつ施策を打っていこうという政権の大きな方針の中で取り組んでこられました。
 先ほどの会見において,菅総理御自身が,内閣総理大臣として国民の命と暮らしを守るという責務がある中で,新型コロナ対策に専念する必要があり,総裁選での選挙活動との両立はできないため,立候補を断念する旨を発言されました。
 大変重い決断をされたのだと思っております。
 私も菅内閣の一員である法務大臣であり,新型コロナ対策を含め,法務行政について,覚悟を持って全力を尽くしてきたところですが,この職にある限り,しっかりと職責を一日一日果たしてまいりたいと考えているところです。
 御質問の中で,特定の立候補予定者の名前が挙げられましたが,私自身,今申し上げたとおり,法務大臣として,コロナ禍の中,法秩序の維持,国民の権利擁護などの法務行政に携わっている立場であり,それに全力で取り組んでいるところです。
 総裁選における支持については,自民党内の事柄に関するものであり,私は,今,法務大臣としての立場でお答えしているところですので,お尋ねについては,コメントする立場にないことを御理解いただきたいと思っております。

(以上)