文科省・新着情報

1.日時

令和3年6月8日(火曜日)10時~12時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 教育再生実行会議第十二次提言について
  2. 魅力ある地方大学の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長(委員)越智光夫,熊平美香,後藤景子,湊長博,村岡嗣政,吉岡知哉の各委員(臨時委員)相原道子,麻生隆史,安部恵美子,大野英男,大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,清家篤,髙倉明,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由紀子,益戸正樹,吉見俊哉の各委員

文部科学省

【文部科学省】(事務局)森私学部長,川中大臣官房審議官(高等教育局担当),水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官(内閣参事官),笠原大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官,横井総合教育政策局地域学習推進課長,淵上高等教育企画課長,斉藤産業連携・地域支援課長,髙橋高等教育企画課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐 他【内閣府】(事務局)山下内閣府地方創生推進事務局参事官,坂本内閣府地方創生推進事務局参事官補佐

5.議事録

【永田分科会長】 おはようございます。こちら,文部科学省です。所定の時刻になりました。第161回の中央教育審議会大学分科会を始めさせていただきます。残念ながら,またウェブでの開催となりました。皆様には,御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございます。
始まる前に一言,これはWebExを使用していますが,会議全体はYouTubeでライブ配信をします。そのことを了承しておいていただきたいと思います。
それから,みなさんが他の影響を受けずに発言できる環境にいらっしゃるという前提で,この会議を進めさせていただきます。
それでは,準備が整っているようなので,事務局から,まず事務連絡をさせていただきます。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】 本日は,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,挙手のマークのボタン,これは下の段の顔のマークのところを押すと挙手ボタンにたどり着けますので,そこから挙手ボタンを押していただくようにお願いいたします。その際,分科会長から指名されましたら,御自分のお名前をおっしゃってから御発言いただきたいということ,あとは,発言後は,その挙手のマークのボタンをもう一回押して消してくださいということをお願いいたします。発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますと幸いでございます。
本日の会議資料は次第のとおりとなっており,メールで事前にお送りしております。今回,参考資料といたしまして,5月25日に公表されました「新型コロナウイルス感染症に係る影響を受けた学生等の学生生活に関する調査等の結果について」をお送りしております。御参照いただければと思います。
以上でございます。

【永田分科会長】 本日,議事次第において既にお知らせしていますが,2つ大きな話題がありまして,1つは,先日,6月3日に公表されました教育再生実行会議第十二次提言「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」について,担当から説明をお聞きして,意見交換をさせていただきます。
もう1点は,11期の大学分科会のメインテーマにも重なりますが,その一部,魅力ある地方大学の在り方について、振興施策等にも触れながら議論を交わしていきたいと考えています。よろしいでしょうか。
それでは,早速,最初の「教育再生実行会議第十二次提言」について,事務局の方から説明をいたします。本日は,水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官がいらっしゃっています。水田参事官,お願いいたします。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 内閣官房教育再生実行会議担当室参事官の水田と申します。先週,6月3日に取りまとめられました教育再生実行会議第十二次提言について御説明させていただきます。
資料1-1を御覧ください。第十二次提言に向けては,昨年7月に,「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」というテーマで議論を開始しました。初等中等教育ワーキング・グループ,高等教育ワーキング・グループ,それに,両ワーキング・グループ共通の事項を議論する合同ワーキング・グループ,さらに,秋からは,専門的な議論を深めるデジタル化タスクフォースも設置して,合計26回の会合を重ね,本提言が取りまとめられました。
2枚目は,本体会議の有識者,3枚目は,ワーキング・グループの有識者でございます。大野委員,熊平委員,日比谷委員には,高等教育ワーキングの委員としても御参画いただいております。また,渡邉副分科会長には,本体会議の有識者との意見交換において,中教審会長として,中教審答申「『令和の日本型教育』の構築を目指して」の御説明を頂きました。皆様の御協力に,この場をお借りして改めて感謝申し上げます。
資料1-2を御覧ください。まず,こちらの概要で,提言の全体像を簡単に説明させていただきます。
資料一番上にございますように,今回の提言では,ニューノーマルにおける教育の姿として,初等中等教育,高等教育を通じて,一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現を目指した,学習者主体の教育へ転換していくという方向性を示すとともに,そのための手段として,デジタル化を進め,データ駆動型の教育に転換し,学びのデータの活用を進めることの重要性を強調しています。
具体的な提言は4つのパートから成っております。
1ポツの初等中等教育については,(1)で,一人一台端末の本格運用に係る環境整備など,データ駆動型の教育への転換による学びの推進や学びの多様化など,(2)で,少人数によるきめ細かな指導体制と教師の質の向上等について,2ポツの高等教育については,(1)で,遠隔・オンライン教育の推進など,(2)で,グローバルな視点での新たな高等教育の国際戦略等について。内容は,この後,本体で御説明いたします。
次のページ,3ポツの教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策については,秋季入学への移行については,まずは大学等の入学時期の多様化・柔軟化を推進するよう支援するとともに,産業界にも採用・雇用慣行の転換をお願いし,取組を進めていくこと。
そして,最後の4ポツ,データ駆動型の教育への転換については,ここでは主に教育行政に対して,様々な教育データを活用した現状把握と効果的な政策の立案と,そのための基盤整備等について提言しています。
それでは,高等教育関係について,資料1-3で簡単に御説明させていただきます。
18ページ以降が,2ポツ,ニューノーマルにおける高等教育の姿,国際戦略と実現のための方策となっており,最初の部分は総論でございまして,19ページを御覧いただきますと,ポストコロナを見据えた高等教育の在り方を考えるに当たっての3つの視点を示しております。
第一に,遠隔・オンライン教育は,高等教育の新たな可能性を開くものであり,新型コロナウイルス感染症が収束したとしても後戻りすることはあり得ないため,学修者本位の視点に立って,面接授業とオンライン教育の双方の良さを最大限に生かした教育の可能性を追求することが重要であること。
第二に,大学等は,単に知識・技能を修得するためだけの場でなく,正課外活動も含めた学生生活全般において,学生間における多様な協働・交流を通じた社会性や対人関係能力の養成等が行われることに価値があり,全人格的な教育の場としての大学等の学び,経験の全てが遠隔・オンライン教育に代替されるものではないこと。
第三に,遠隔・オンライン教育は緒に就いたばかりであり,教育実践の検証や評価を通じて,知見を蓄積していくことが必要であるということでございます。
下の段落に移りまして,ニューノーマルにおける高等教育の姿として,学修者本位の教育を実現することが求められていること,個人と社会のウェルビーイングの実現のため,初等中等教育と連携を図りながら,学びの多様化を進め,より多くの人に対して高等教育を受ける機会を充実することが大変重要であること。
20ページの上では,我が国の高等教育を「入口での質保証」から「出口における質保証」へと転換していくことが求められるとしております。
中ほどからの①,遠隔・オンライン教育の推進では,今後,面接授業と遠隔・オンライン教育を効果的に組み合わせたハイブリッド型教育の確立や教育のデジタル化によるデータ駆動型の教育への転換等により,主体的な学びの質を高める取組を求めているほか,知見や資源等を大学間や教職員間で共有し,有効活用することや,企業との連携により質の向上に取り組むことなどが有効であるとしています。
また,遠隔・オンライン教育の検証・評価を行い,遠隔・オンライン教育の単位修得の柔軟化を検討するとともに,質保証システムの在り方についても,見直しに向けた検討を進めることが必要としております。
その後の囲みは,具体的に実施すべき事項を記載しておりまして,21ページの最初の丸では,大学等連携推進法人の活用や大学コンソーシアム・大学間連携などの取組を通じた単位互換制度の活用や,MOOCの戦略的な活用について記載されております。
22ページです。②,教学の改善等を通じた質の保証では,2段落目の後半で,「教学マネジメント指針」に基づく細分化された授業科目の統合や,学生が同時に履修する科目数の大胆な絞り込み等の改善を図ることが求められるとするとともに,「出口における質保証」の取組を進める上では,データの収集・分析,調査研究を通じて,どのような教育実践がどのような効果をもたらしているのか明らかにし,知見の蓄積と共有を図ることが必要としており,その後の囲みの中では,「3つの方針」に基づく体系的で組織的な大学教育を展開するための具体的な事項を列挙しております。
23ページ中ほどから下の③,学びの複線化・多様化では,我が国の教育システムが年齢主義的な傾向が強く,「大学入学イコール18歳入学」,新卒一括採用といった慣行の下で,学びの複線化・多様化が必ずしも十分に進んでいないことから,空間・時間の制約を取り払う遠隔・オンライン教育の特性も生かして,高等学校教育と大学教育の連携・接続の一層の円滑化,リカレント教育の充実・高度化等を図ることや,修業年限の弾力的な運用を促進し,社会人・高齢者,障害などにより学修が困難な方などの多様な学修者が「いつでも,どこでも,誰でも,何度でも」質の高い高等教育を受けることができる機会を提供できるようにする必要があるとしています。
24ページの囲みの中では,具体的な取組としまして,高等学校と大学等が連携した先取り履修などの学習プログラム等の開発や,飛び入学した大学での一定の単位の修得をもとに,文部科学大臣が高等学校卒業資格を付与する制度の創設,先取り履修の活用を図るための修業年限の柔軟化が可能となるような制度改正,マイクロクレデンシャルの提供などによる,多くの人がアクセスしやすい取組を促進し,その際,履修単位を積み重ねることにより学位が取得できるような柔軟な仕組みの在り方や国際通用性の確保などについて検討を進めるとしています。
25ページの下3分の1,デジタル化への対応では,2段落目で,大学等においては,教育改善や経営改革の方針等に基づき,戦略的かつ効率的にデータの収集・分析を行い,学務・教務のデジタル化を進めること,特に学修歴証明書のデジタル化は世界標準になりつつあり,我が国においても早急に取組を進めていく必要があること。26ページに移りまして,さらに,学内の教職員の研修の充実を図るとともに,数理・データサイエンス・AIに関する教育を充実・高度化させ,デジタル化の担い手となる人材の育成を推進することが必要であるとしております。
その下の囲みの中では,2つ目の丸の,LMSの活用による教育改善など,具体の取組を記載しております。
27ページ,⑤,学生等への支援の充実では,学生への経済的支援,就職支援の一層の充実など。
28ページ中ほど,⑥,施設・設備の整備の推進では,「イノベーション・コモンズ」の実現を目指した魅力的な施設・設備の計画的整備,カーボンニュートラルに向けた取組の推進等を提言しています。
29ページからは,(2)グローバルな視点での新たな高等教育の国際戦略という柱を立てています。最初の部分,2段落目後半では,各国では遠隔・オンライン教育による国際交流支援を拡大する取組が見られ,海外の一部の大学等では遠隔・オンライン教育の充実・高度化により優秀な学生の獲得競争等をリードしていこうという動きが見られる中で,我が国の大学等にも,ポストコロナ期を見据えた戦略的な対応が求められるとしています。
続く29ページ中ほどからの①,グローバル化に対応した教育環境の実現,学生のグローバル対応力の育成では,オンライン国際協働学習(COIL)プログラムの開発・実施など,遠隔・オンラインの利点を生かした取組,大学が国内外の協定大学等との間で遠隔・オンライン教育のリソースを共有するためのプラットフォームを構築して,日本の強みや魅力ある教育の国際的な発信を積極的に進めるとともに,ジョイント・ディグリーの一層の普及促進と合わせ,高等学校段階からの海外留学経験を含め,実留学を支援していくことが重要であるとしており,30ページからの囲みの中で具体的な取組を記載しております。
中ほど,上から4つ目の丸では,ジョイント・ディグリーの開設に係る設置手続の見直しなど,下から2つ目の丸では,「トビタテ!留学JAPAN」の後継事業の実施,一番下の丸では,高専の海外展開,31ページの上の丸では,ポストコロナ期を見据えた質の高い国際流動性を実現していくため,より具体的かつ戦略的な目標の設定に向けた検討を行うとしております。
31ページ,②,優秀な外国人留学生の戦略的な獲得では,1段落目の中ほどから,受入数という入口部分の重視から,より出口(アウトカム)に着目して,外国人留学生の質の確保・向上を図る方向へと転換することが重要としております。
次の段落では,そのため,国際バカロレアの活用等による入学者選抜のグローバル化を促進するとともに,COILプログラムや海外向けの遠隔・オンライン教育講座等を通じて我が国の高等教育を受けている優秀な外国人学生が,遠隔・オンラインでの学修を契機として,実際の留学へとつながっていくハイブリッド型の新たな留学形態を促進することが有効としています。
31ページの下の囲みの中の2つ目の丸では,具体的な取組として,頭脳循環の拠点となる大学において優秀な外国人留学生の獲得に資する制度の在り方を速やかに検討するとしています。
32ページ,③,学事暦・修業年限の多様化・柔軟化と社会との接続の在り方では,秋季入学の導入について議論を行いました。その結果としまして,3段落目にありますように,大学等の国際化は,秋季入学の導入によって直ちにグローバル化に対応した教育環境が実現されるものではなく,国際化に関する各種施策,さらには初等中等教育における外国語教育の充実も含め,総合的に推進していく必要があること,また,秋季以外の学事暦を採用している海外大学も多いことや,入学時期を複数回設けることで社会人のリカレント教育を推進しやすくなることを踏まえると,入学時期を春季から秋季に移行させるのではなく,入学時期や修業年限を多様化・柔軟化させることが適当との結論に至りました。
また,このことは,学生が横並び意識から脱却して,自らの能力や適性,思い描くキャリアパスに応じた多様な学び方が可能となる大学を切り開く観点からも重要とされています。
その上で,33ページの上の部分ですが,取組の促進に当たっては,定員の設定・管理の在り方や授業料の設定・徴収の在り方について併せて考慮することが重要であるとしております。
また,この課題との関連で,大学入学者選抜については,教育再生実行会議第四次提言で示したように,高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の在り方について一体的な改革を進めるとした理念に沿った改革を進めていくことが重要とした上で,秋季入学の入学者選抜においては,多くの大学においてペーパーテスト中心の選抜方法ではなく,総合的・多角的な選抜方式がとられている中で,今後,入学時期を問わず,入学者選抜全体において,このような選抜方式が推進されることが必要としています。
さらに,大学等における入学・卒業時期の多様化・柔軟化の取組を普及・定着させ,実効性を確保していくためには,産業界において,新卒一括採用やメンバーシップ型雇用中心の採用・雇用慣行を転換し,採用・雇用形態の多様化・複線化,大学等における学修成果を十分に評価する採用選考を進めるなど,採用・雇用慣行を改革していくことが求められるとしています。
その下の囲みの中では,具体的な取組について列挙しています。
35ページ,3ポツ,教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策では,秋季入学について,全学校種を通じた検討のまとめをしています。
下の方の②の今後の望ましい在り方のところでは,高等教育については今御説明しましたので,36ページの上を御覧ください。初等中等教育については,学びの保障の議論と切り離して,義務教育への就学時期を前倒しする場合について検討しましたが,その場合でも,児童生徒の一時的急増による教師・施設の確保,社会への影響,幼稚園の教育・運営への影響といった課題が生じ,教育現場にも更なる負荷がかかるため,国民や社会の十分な理解と協力を得ることが不可欠としています。
結論としましては,次の段落にありますように,全ての学校種で一律に秋季入学へと移行するのではなく,まずは大学等における入学・卒業時期の多様化・柔軟化について,産業界における新卒一括採用やメンバーシップ型中心の採用・雇用慣行の改革と併せて,取組を進めていくことが重要であるとし,こうした取組の進捗状況や検証等を踏まえ,将来的に,初等中等教育段階も含め更に議論することが適当としています。
41ページから,4ポツ,データ駆動型の教育への転換につきましては,趣旨は先ほど御説明した通りですけれども,42ページの具体的取組でも,一番上の丸で,大学をはじめ生涯を通じた学びにおける教育データ利活用のため,更なる標準化を検討することや,一番下の丸で,大学・研究機関等を含む関係機関の連携により,教育データの分析・研究に関する機能を構築し,分析や利活用を進めること,さらには,国は,大学における教育データサイエンスに係る研究者や高度専門人材の養成のための取組を促進することなどを提言しています。
以上,駆け足になりましたが,教育再生実行会議第十二次提言の概要を,高等教育関係を中心に御説明させていただきました。
今後,文部科学省においては,速やかに必要な検討や取組を行っていただきますようお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【永田分科会長】 水田参事官,ありがとうございました。
御質問,御意見ですが,御質問を中心にお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 ありがとうございます。髙倉です。
提言には、産業界に対する内容も含まれている。特に,採用や雇用形態の見直しを行うべきとしており,採用に関しては一括採用から通年採用などへの切り替えと具体的に触れられているが、雇用形態に関して具体的な論議がされたのかお聞きしたい。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
水田参事官,どうぞ。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 この件については,余り具体的な雇用形態というところまでの深い議論はございませんでしたが,例えば,高等教育ワーキングの中で,日立アカデミーの迫田委員からは,同社の具体的な取組について御紹介いただいております。
今後,政府全体として働きかけなどをしていっていただけたらと思っております。

【永田分科会長】 髙倉委員,よろしいでしょうか。

【髙倉委員】 分かりました。

【永田分科会長】 次に,村田委員,どうぞ。

【村田委員】 質問でございます。よろしくお願いします。
今の説明でちょっと聞き逃したのかもしれませんが,遠隔授業だとかオンライン教育の推進のところで,大学設置基準や設置認可うんぬんはありますが,単位制度そのものについて何か御議論はあったのでしょうか。
といいますのも,どこかでも言ったかと思いますが,今,オンラインの授業,あるいは,オンデマンドの授業なんかで,2時間の授業を,学生によっては,早回しで1時間で聞いたりして効率的に学習したりする。そうすると,今,これ,学習時間でいわば単位を測っているわけですけれども,正にそういう状況ではなくなっているわけで,そのあたり,どんなふうに議論があったのかお教えいただければと思います。

【永田分科会長】 水田参事官,どうぞ。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 遠隔・オンライン教育につきましては,様々な御議論がございました。ただいまありましたような単位の在り方についても含めて,今後,遠隔・オンライン授業の普及によって,現在の制度の在り方の見直しについて,かなり踏み込んだ議論もあり,中では根本的な見直しも必要ではないかといった意見も出たところでございます。
そういったことも含めて,提言の検討事項としては,大学設置基準の在り方や設置認可制度ということで,かなり幅の広い表現としておりますので,詳細については,提言の趣旨を踏まえて,文科省の方で検討いただければと考えております。

【永田分科会長】 小林委員,どうぞ。

【小林(雅)委員】 小林でございます。1つ御質問したいのですが,その前に,私はずっとこの中教審でいろいろな発言をしてきましたので,そのことと関わらせて少し申し上げたい。
こういった政策というのは,言うまでもないことですけれど,それぞれの政策のバランスを取って全体的に推進していくということが非常に重要だと思う。その観点から少し御質問したいのですが,修業年限の多様化ということで,これは私も中教審で何度か申し上げましたが,この前提になっているのは,やはり教育の質が保証されているということであって,単位が実質化されていて,そういうことがない限り,修業年限を多様化したら,例えば,現在のように,3年で単位を取り終わって卒業してしまうというようなことになりかねないわけです。それで卒業できるということになりますと,根底から今の考え方が変わってしまうようなことになるわけです。
そのあたりのことについて,どのような議論がなされたのか。あるいは,私は,今申し上げたように,教育の質保証というのが大前提にあって,それが満たされない限り,修業年限の多様化というのは非常に問題が多いと思っていますが,そのあたりについてはどのような議論があったのか,あるいは,どのようにお考えかということをお聞かせ願いたいと思います。
以上です。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 今,正に小林委員から御指摘がございましたように,教育の質保証が大前提であるということにつきましては,日比谷委員も高等教育ワーキングに入っていただいておりましたので,非常に懸念をされて御指摘を頂いておりまして,いずれの提言も,先ほど申し上げましたように,教学マネジメント指針に基づく取組をしっかりとやっていくというのが前提でございます。提言文の中でも,随所に質保証を前提とする趣旨の表現ぶりとしているところでございます。
その一方で,これからの大学というのは,リカレント教育なども含めて,もう少し入口・出口を柔軟にしていく必要があるのではないかといった方向性についても合意があったところでございますので,この辺は両立を目指して取り組んでいただくということが基本と考えております。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】 ありがとうございます。1つ質問させていただきたいと思います。
このような提言は,もともと日本は世界の中でも,残念ながら,教育におけるICT活用が遅れてきたと言われている現実をこの機会に大きく進展させて直そうという,非常に有益な試みであると思って拝聴しておりました。
その際,かなりの広い分野にわたって,教育全般,初等教育から高等教育まで,このような変換を実現していくために,やはり財政的な支出の裏づけが必要になると思うのですが,この後,この実現のために,財政的な裏づけや支出等の見通しがございましたら,それがないと,なかなか提言だけでは進まない分について,現状,分かっているところがございましたら,お教えいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 水田参事官,いかがでしょうか。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 会議でも,必要なものについては,予算要求することも含めて,速やかに実行に移していただきたいという議論がございましたので、提言の中でも,速やかに実行していただきたいという趣旨の記述がございます。
従いまして,これを踏まえて,担当省庁の方で,実施に向けた努力をして頂きたいと考えております。

【髙宮委員】 ありがとうございます。

【永田分科会長】 吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 1つは,今の財政のことで,オンライン化とか何とか,色々なことを考えても,結局はお金がかかるという,非常に単純な部分のことですが,今のお答えといいますか,そういうことで,一応結構です。
もう1点は非常につまらないことですが,文章の中で,「ガクシュウ」の字が2種類使われていて,これは単に記述上の問題で混在しているのか,それとも少しニュアンスに違いがあるのかということを伺いたい。大学分科会では,基本的に,「ガクシュウ」の「シュウ」は「修」になっていたと思います。細かいことです。
もう一つ,中心的な質問は,高大接続について,既に何度も提言しているということが書かれていますけれども,今回,高大接続の具体的な在り方について何か議論が行われたか。つまり,入試とか何とかの問題だけではなくて,実際にどのように高等教育と高校までの教育をつなげていくのかということについての議論が何かあったかということを教えていただきたいと思います。
以上です。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 まず,「ガクシュウ」の「シュウ」でございますけれども,初等中等教育については,「習」の方を通常使っておりますので,「習」と。それから,高等教育については,18ページの下の注釈57にありますように,大学設置基準に基づいて,「修」という字を使っております。あとは,出典に応じて,「習う」という文字を使っているような場合には全体を通じて「習」とするといった使い分けをさせていただいております。
それから,高大接続については,主として,高校から大学への,例えば,飛び入学者への卒業資格の話ですとか,先取り履修の取組を進めるべきといった議論がございましたほか,高等教育,初等中等教育の両方の立場から,それぞれ改革していく中においては,大学入学者選抜の在り方というのが非常に重要だといった意見も多くございました。
教育再生実行会議としては,既に第四次提言出しておりますので,その基本的な理念というのは今でも変わっていないため,それに基づいて現在行われている検討を進めていただきたいといった議論があったところでございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。今,4人手が挙がりました。それでは,短めに,簡潔にお願いします。大野委員,後藤委員,清家委員,越智委員の順番です。
それでは,大野委員からどうぞ。

【大野委員】 ありがとうございます。私,この高等教育ワーキング・グループに参加していました。その最後の議論の中で,提言がどのくらい速やかに実行されるのかということが話題になりました。
それで御質問です。この提言を受け取って,もちろん時間をかけていく必要があることは多々ありますけれども,一方で,コロナの後で,あるいは,コロナの最中で,高等教育の在り方が大きく変わりつつある。その中で,スピードが重要だということもありますので,提言を出す側(がわ)と,受け取る側(がわ)は,どのような役割分担になっているのかをお聞かせいただきたいと思います。
私自身は,留学生の定員を外枠にして,かつ,授業料を自由化することによって,学部学生のグローバルな環境を増やすことができると思っています。それにはほとんど予算がかからないので,是非,そういうことにスピード感を持ってできるようにしていきたいと考えています。
以上です。

【永田分科会長】 まとめて聞きましょうか。それでは,後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】 データ駆動型の教育というのは1つの方向性だとは思いますが,現場の教員がそれを活用し学生に向き合って,初めて機能するのではないかと思います。そのあたりの仕組みづくり,あるいは,教員に対する支援等について,お考えをお聞かせください。

【永田分科会長】 次に清家委員,どうぞ。

【清家委員】 ありがとうございます。私は私学事業団の理事長としてここに参加しておりますけれども,もともと労働経済学を専門とする研究者ですので,その視点で1つだけ心配なことを伺いたい。
メンバーシップ型雇用,あるいは,学卒一括採用の見直しということが述べられていますけれども,少なくとも労働経済学の知見では,日本の学卒一括採用というのは,それなりの合理性があって,しかも,マクロ経済的な視点から言うと,若い人の失業率を低く抑えるのに大変貢献している。ヨーロッパなどは,卒業してから職探しをするので,もうby definitionで統計的に失業率は高くなりますし,また,企業は空席の補充という形で採用するので,どうしても経験のない若者は後回しになるため,若者は失業率が高くなる。ところが,日本は,学卒一括採用のおかげで,若い人の失業率が非常に低く抑えられていて,これは社会的にもとてもメリットがあると考えられますが,そういう点についての何か配慮というか,それをなくしてしまうことの問題点というのは議論されたのでしょうか。
それから,いわゆるジョブ型というふうに言われますけれども,これはジョブ・ディスクリプションといって,仕事の内容を職務記述書に詳細、明確に定義して人を採用するという仕組みであり,職業経験のあるプロフェッショナルにはとてもいい仕組みですけれども,職業経験のない若者には適さない仕組みです。もちろん,ITの専門家とか,そういう人を若い学卒で採用することはあるかもしれませんけれども,普通は,雇ってから仕事を通じて仕事を覚えてもらうというのが良いわけで,恐らく文科省などでも,ITの専門家などは学卒でいきなり雇うかもしれませんけれども,普通の人たちは,やはり総合職とかで採用していくのではないか思いますが,その辺についての議論というか,今の採用システムを変えてしまうことの問題点というのは議論されたのか。あるいは,今,私が申し上げたような労働経済学的な知見といいますか,エビデンスというのは考慮されたのか。少し心配だったので,伺いたいと思います。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
質問の最後で,越智委員,どうぞ。

【越智委員】 ありがとうございます。
私も,遠隔・オンライン教育のことですけれども,ポストコロナで非常に重要になってくるのではないかと思っております。そして,広島大学を含めて,地域の大学間では,もうある程度スタートしておりますが,このような仕組みは,全国レベルでの展開では今どういうふうになっていますか。SINETを使った形で全国展開というのはどこまで進めようとしているのかということをお伺いしたいと思います。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
それでは,水田参事官,答えられるところを簡潔に答えてください。

【水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 それでは,順に。
まず大野委員からの,提言を出す方と実行する側(がわ)の役割というお話がございましたけれども,教育再生実行会議としては,提言を出した後は,関係するところにその趣旨などを御説明して,周知していくのが役割でございますけれども,これを受けての実施については,高等教育の部分については,主として文科省になりますけれども,担当の方で必要な予算の獲得も含めて実施していただくという役割分担になってございます。
それから,後藤委員の方から頂きましたデータ駆動型の仕組みづくりや支援ということでございますが,例えば初等中等教育の方では,いわゆるGIGAスクールの部分ですとか,LMSの初等中等教育版である学習マネジメントシステムの整備や活用を進めていると承知しているところでございます。
それから,清家委員から頂きましたメンバーシップ型や新卒一括採用の部分の議論でございますけれども,確かに,おっしゃるような部分というのはあるかと思いますけれども,議論の中では,先ほど少し紹介しましたけれども,余りにも日本の現在の仕組みというのが硬直的過ぎるのではないかというところから,例えば,例としましては,通年採用をやっている企業も随分出てきている一方で,留学して帰国してきた学生が,年度の途中で卒業できるとか,あるいは,社会人の方がリカレントで,多様な時期に入学して柔軟に学んで,また卒業していくといったことも今後増えてくることが考えられる中では,やはりもう少し雇用,採用の時期についても柔軟にしていいでしょうし,また,これまでは,せっかく大学等で学んでも,企業側は真っ白な状況の学生を欲して採用していく傾向があったわけですけれども,やはり何を学んできて何ができるのかということが大学等を卒業させる面でも課題ですので,企業においても,それに対応した形で,採用の時点で,何を学んできて何ができるのかといったところもしっかりと見ていただきたいと,そういった議論があったところでございます。
ですから,この課題についても,二項対立というのではなく,今の状況をもう少し柔軟性を持った形にする取組を進めていただきたいという趣旨とご理解いただければと思います。また,この課題は,大学側だけや産業界側だけの取組で変わっていくものではなく,社会全体で取り組んでいく必要があるといった議論でございました。
それから,遠隔・オンラインの進捗状況については,文科省の方で把握している部分があれば,お願いしたいと思います。

【淵上高等教育企画課長】 高等教育企画課長の淵上でございます。2点ございます。
1点目は,先ほど大野先生からございました,この提言を受け止める側(がわ)の文部科学省としての考え方でございますけれども,御提言の内容のうち,速やかにできるもの,あるいは,きちんと制度的な検討を必要とするもの,ここを少し私どもの方で整理をした上で,いずれにしても中教審にお諮りをして,制度改正なりにつなげていきたいと思っておりますので,またこの場で具体的なテーマについて論点を提示して,御議論いただくことになろうかと思っております。
それから,もう一つ,DXの関係でございますけれども,今,NIIの方で,いろいろな勉強会ですとか,ネットワークなども進んでいるかと思います。国の方で,それぞれの大学の教育課程を直接どうのこうのということはないわけでございますけれども,NIIのルートを使って,いろんな協力をしていただいたり,各大学間でのいろんな教育課程の入れ繰りをしていただいたりということかと思います。
あと,制度的には,いろいろな大学と連携する新法人ですとか,共同教育課程,共同学部の設置といったような柔軟な仕組みが取りやすいような,そういう制度もございますので,そういうのを御活用いただきながら,連携を進めていただければと思っているところでございます。
以上でございます。

【永田分科会長】 提言は出てしまいましたので,なかなか満足のいく回答というか,議論はできていません。1つだけ言えることは,この中央教育審議会大学分科会とその下のワーキングでは,今出てきたような提言一つ一つを咀嚼(そしゃく)して,制度改正とか財政措置へ結びつけないといけません。その任務が,ここにあるということを,控えめに今淵上課長がおっしゃったと思います。
村田委員や小林委員がおっしゃった根源的な高等教育に関わる問題というのは,やはり議論しなければいけないし,髙宮委員,吉岡委員,大野委員が言われたように,お金が要るか要らないかにかかわらず,とにかく早急に実施できる体制をうまく考えていかなければいけないこともあります。
それで,今,清家委員のお話を,これは御持論で何度かお聞きしています。提言をどう咀嚼(そしゃく)するかというのは,髙倉委員のおっしゃったように,ただアイデアを頂くだけではなくて,やはり産業界は積極的に施策そのものを言わなければいけないし,それから,研究者は,それが最終的に社会のダイナミクスとしてどういうふうになるのかということもやはり考えなければいけない。そういった問題が先ほどの議論の中で少し見えてきたと思います。
いずれにしても,我々の方に振られたと思って,この提言をうまく大事なものから咀嚼(そしゃく)して,規制改革,財政について文部科学省を通じてということになりますが,実現していかないといけないだろうと思います。
これから具体的な話合いが始まるものは幾つもあると思います。先生方には,いろいろなところにご参加いただいて,積極的に御意見いただければと思います。よろしいでしょうか。
水田参事官,どうもありがとうございました。
それでは,もう一つの議題ですが,「魅力ある地方大学の在り方について」ということです。これは前回,今期の第1回の大学分科会でランダムに意見を頂きました。その意見を事務局の方でまとめていきます。御説明を頂きながら,後で具体的な論点をお示ししたいと思います。
それでは,最初に,淵上課長から御説明をお願いします。

【淵上高等教育企画課長】 改めまして,高等教育企画課の淵上でございます。資料2-1と2-2と2-3を用いまして御説明をさせていただきたいと思います。
魅力ある地方大学の在り方に関する御審議を賜る前に,まず2-1で,前回の御審議,第11期において,この大学分科会として,基本的にどういう問題意識でこの分科会の議論を進めていったよいだろうかということを,先生方から御意見いただいたものを事務局でまとめさせていただいたものが2-1になります。
議論を踏まえた今期の議論の構造(イメージ)というものでございますけれども,まずは,大学分科会としての今後の議論の在り方という点でございますが,フィロソフィーを話し合う場であると同時に,今,分科会長からもございました,法令を改訂することによってシステムとして全体を動かし,最終的には予算を獲得し実現するための議論をする役割があるだろうということ。あわせて,高等教育は世界的な視野を持ち,変化する部分に関してはスピードも必要。我が国の高等教育を大いに振興する審議を行うことが必要だというような,大きな方向性の議論がございました。
また,「グランドデザイン答申」を受けた検討の加速化という観点からは,学修者本位の学びへの転換を明確に打ち出し,多様性をキーワードにしているので,大学が教育機関として本腰を入れた取組を後押ししていかなければならないということ。
また,質保証システムに関しては,学修者本位の教育への転換という大きな流れの中で質保証,情報公表,認証評価などの問題が生じてきている。ニューノーマルになっても基本的な質保証は変わらない。新しい質保証の在り方について,設置基準をどうするかということも含めて今期,議論していく必要があるという御議論でございます。
また,新しい大学教育の在り方の検討の方向性として,これまでの教育の在り方に戻ることはやめて,新しい大学教育の在り方に向かって改革を進めていかなければならない。コロナ禍において,大学とは何なのかという根本的な問題に突き当たった。そういう意味で,高等教育の在り方全般に関わる議論がますます必要。さらに,前期おまとめいただきました教育と研究というものに加えて,第3の柱として,社会的実践が必要だと。教育と研究と社会的実践のトライデントな構造をどうつくっていくかということが,これからの高等教育にとって重要であり,地方大学の問題が非常に大きくなってくるという御意見。また,学生が2年間,4年間あるいは6年間,そして大学院課程でどう成長していくのか,それをどう支援していくのかを考えていきたい。また,今もございましたオンライン・ハイブリッド授業の進展への対応ということで,急速にオンライン授業が取り入れられ,オンライン授業での大学間連携も進んでいくものと思われる。デジタル化は,コロナ時代にあっても今までよりも豊かで安心安全に暮らすことという御意見でございます。
そして,右側に,魅力ある地方大学づくりということで,地方創生に資する地方大学という観点からは,地方創生を進めていく上で,大学は重要なパートナーである。地方にある大学は,国公私を問わず,そして大学,短期大学等の学校種を問わず,魅力ある地方づくりのための役割をこれからも積極的に担うべきです。DX社会における地方大学の観点からは,地方大学の問題は,一般的な地方創生という観点で見るだけではなくて,デジタルトランスフォーメーションの観点で見たときに必然的な問題となるという御意見。また,他極分散型社会形成に資する地方大学という観点では,国をよりレジリエントにするという観点で,分散型社会の実現を目指していって,その中で中核をなすのが大学である。また,大学の多様性という観点では,国立のみならず,私立大学や私立短期大学も含めて,魅力ある地方大学をつくるという観点に立ったバランスの取れた検討が必要だと。質保証に関しましては,エンゲージメント型の質保証へと転換していく必要があるというふうな御意見でございました。
その他の論点といたしましては,大学の多様性・設置者別の大学の在り方,大学院教育の在り方,財政支援の充実といった御意見がございます。
これが全体の議論の構造ということでございましたが,この大きな文脈の中で,資料2-2にございます,魅力ある地方大学の在り方に関する御審議を頂きたいというのが本日のメインテーマになってございますけれども,2-2に,大きく6つの視点からの論点を提示させていただいております。
前期,第10期にも一旦提示をさせていただきまして,このうち,地方国立大学の定員増に関する議論というのを先行して行っていただきましたけれども,今期は,これについて総合的に議論を行っていただきたいということでございます。
まず,論点1でございますが,地方大学の役割・地方大学を振興する意義ということで,最初に総論を述べた上で,中段にこれまでの御意見がございまして,めくっていただきまして,2ページ目には,これまでの中教審での議論の抜粋,そして,他の検討会議などでの御意見を述べた上で,3ページ目に,具体的な論点を掲げさせていただいております。
検討に当たっての論点ということで,18歳人口減少,Society5.0・人生100年時代,ポストコロナ,ニューノーマルといった社会の在り方を踏まえた地方大学の役割,地方大学を振興する意義をどう考えるかという論点。
それから,地方創生,地域分散型のレジリエントな社会づくりが目指されている中での地方大学の在り方。
また,国立・公立・私立の大学,高等専門学校が存在しているが,それぞれの高等教育機関の役割をどのように考えるかという論点があろうかと思います。
2つ目が,「魅力ある地方大学」の考え方ということで,めくっていただきまして,4ページ目の中段に論点を提示させていただいておりますが,どのような大学が「魅力ある地方大学」だと考えていけばよいのだろうか。また,その「魅力」というのは,誰にとっての,どのような魅力なのかということを整理する必要があるのではないかということでございます。
それから,3点目でございますが,魅力ある地方大学を実現するための地域との連携の在り方ということで,次の5ページ目が具体的な論点でございますけれども,「魅力ある地方大学」を実現するためには,どのような地域との連携の在り方が必要になってくるか。他方,地方自治体の長のリーダーシップが重要となるけれども,地方自治体などが地方大学づくりにどのように関わっていくことが望ましいと考えられるかということ。めくっていただきまして,6ページ目に,「地域連携プラットフォーム」や「大学等連携推進法人」を普及させていくに当たって,どのような方策が考えられるかということ。
それから,大きな4点目でございます。地方公共団体や産業界等の役割ということでございますが,7ページ目の下の方でございますけれども,検討に当たっての論点といたしましては,「魅力ある地方大学づくり」を進める上で,地方公共団体や産業界がどのような役割を果たしていっていただくのが重要かという論点。また,地方公共団体や産業界が自らの足腰を強くしていくため地域の大学に着目するという在り方が望まれるのではないか。そのために地方自治体,産業界にはどのような変革が求められるだろうかと。また,大学の方も産業界や自治体から着目される存在になるためには,どのような変革をしていく必要があるのだろうかという論点でございます。
それから,5点目が,大学が地方創生の取組を進める意義というところでございますが,9ページの上の方でございます。大学が地方創生の取組を推進する意義や役割というものはそもそもどういうものであるかということの整理が必要ではないか。また,都市部の大学にとって地方創生に関わっていく意義や課題をどのように考えていったらいいか。その際,自治体,産業界,地域の高等教育機関との関係をどのように考えながら都市部の大学の関わりを考えていったらいいだろうか。また,大学が地方創生の取組を進める上でどのようなことが必要になってくるか。支援策も含めてでございます。
6点目が,その具体的な支援方策ということでございますけれども,10ページ目,最後のページでございますが,検討に当たっての論点ということで,国公私,高等専門学校等の地域の高等教育機関を含めた,魅力ある地方大学づくりを推進するために,どのような振興方策が考えられるか。また,地域の特性を生かした先導的な取組の創出によって大学の魅力化を図るためにはどのような振興方策が必要か。加えて,各地域において求められ続ける大学となるための質保証の在り方はどのようなことが考えられるかといったようなことが,事務局として,論点として整理をしたものでございます。御審議を深めていただければ幸いでございます。
資料2-3につきましても,途中まで私の方で御説明させていただきます。
2-3で,これまでの地方大学関係の支援施策,現状,文科省が,あるいは,他省庁も含めまして,どのような支援策があるかということを少し御紹介しておこうと思います。
1ページ目から3ページ目までは,基盤経費での支援策が中心に掲げてございます。1ページ目は,国立大学の運営費交付金などでの支援ということで,例えば,左側のSociety5.0に向けた人材育成の推進というところの数理・データサイエンスの全国展開ですとか,4期を見据えた教育研究組織整備,こういったもの,さらには,3つ目の箱の教育研究の基盤整備ということで,地域の中核としての連携強化を行うための基盤設備の整備といったものの支援が運営費交付金の中でも行われているところでございます。
また,右下の方に,経営改革構想の実現の加速ということで,国立大学の改革補助金という形で,地方の中核大学として地域イノベーションを創出するような大学への支援というものも組まれているということでございます。
2ページ目は,こうした国立大学の運営費交付金などを活用して,各国立大学で行っていただいている組織整備の例ということでございますが,2ページの右側の少し緑がかった取組などが,地方創生に関わる各大学の取組の例ということで挙げさせていただいてございます。
めくっていただきまして,3ページ目は,私学助成における支援策ということになりますけれども,私立大学等改革総合支援事業という事業の中で,タイプが4つに分けられてございますが,特にタイプ3につきましては,「地域社会への貢献」ということで,地域と連携した教育課程の編成などを行っていく大学への支援経費として,改革総合支援事業の中のタイプが設けられているところでございます。
高等教育局からは以上となります。

【横井地域学習推進課長】 続きまして,総合教育政策局の方から,担当しております「地(知)の拠点整備事業」(Center of Community(COC))事業等について説明させていただきます。
4ページ目を御覧ください。COC,それに続くCOC+,さらに,令和2年度から開始しておりますCOC+Rの各事業について説明いたします。各事業の概要は6ページ以降に示しておりますけれども,ここでは,これまでの成果と課題を中心に説明いたします。
平成25年度から,地域ニーズと大学シーズのマッチングによる地域課題の解決を目的として,地(知)の拠点整備事業(COC事業)を開始しました。平成27年度から,COC事業を発展させて,地方創生に向けて,複数の大学,自治体,企業等の参画を得て,地域人材を育成する地(知)の拠点大学による地方創生推進事業,COC+と呼んでおりますが,COC+事業を,42の取組,214の高等教育機関が参加して,令和元年度まで実施いたしました。COC+事業実施に当たっては,自治体の基本計画へ位置づけいただくとか,地域の複数大学,中小企業等との連携について事業実施要件として加え,成果指標として,高い地元就職率,雇用創出を設定することとしました。COC+事業委員会が本年3月に公表している事後評価報告書によりますと,成果としましては,COC事業,COC+事業を通じて,地域の拠点大学として大学が活動する中で,協働する各機関との信頼関係が徐々に育まれ,当初の目的どおり,多くのところで補助期間終了後も取組は自走化されていること,それから,地域が求める人材養成に必要なカリキュラム改革が実施され,学生に魅力ある就職先を開拓するといった,大学主導による地域創生モデルの全国展開を行うことができ,大学等が地(知)の拠点として,各地域に高いポテンシャルを発揮し続けるための基盤ができたことを挙げております。
一方,課題としましては,実施期間中の景気拡大により大都市圏での雇用情勢が良くなったことで,成果指標として掲げておりました地方・地域での就職率の実績値が,多くの大学で目標に届かなかったことが挙げられております。
このような課題を踏まえて,令和2年度より,COC+の後継事業として,大学・地域の連携・協働により,地域で求められる人材の養成に向けた指標を設定して,出口となる就職先が一体となった教育プログラムを構築するということで,学生の地元定着を実現するための事業,大学による地方創生人材教育プログラム構築事業(COC+R事業)を実施しているところでございます。
5ページ目を御覧ください。これまでの予算,採択大学数,参加大学数の推移を示しております。COC+の初年度である平成27年度が予算的にはピークとなっております。COC+,COC+Rにつきましては,どちらの事業も,補助期間終了後,継続的なプログラムの実施を図る観点から,予算額を逓減させるということでプログラムを組ませていただいております。
以上でございます。

【斉藤産業連携・地域支援課長】 続きまして,9ページでございますが,研究ですとか,社会貢献,産学連携関係の過去の施策について御紹介させていただきます。
研究・社会貢献関係の競争的資金なども,様々な事業で支援を行ってきたところでございます。研究関係は,まず科学の指標で公募しているところが多いので,余り地方色,地方大学を対象にした支援事業というのはないのでございますが,産学官連携に関しましては,これから申しますとおり,様々な地方大学関係の支援も行ってきております。
9ページを見ていただきますと,これは産学官連携の過去の経緯でございますが,第1期科学技術基本計画の頃から,人材交流の促進などから始まりまして,技術移転ですとか,イノベーション創出の重要な手段として,徐々に重要性が増しているという経緯がございます。それを受けまして,TLOの制度ですとか,日本版“バイドール”ですとか,ベンチャーへの出資等々,様々な対応が行われてきておりまして,これらを支援するための事業も進めてきたというのが経緯でございます。
10ページを御覧いただきますと,その中でも,特に地域科学技術イノベーション支援という関係でやってきた事業,様々ございますが,経緯でございます。これも先ほどの基本計画と連動しまして,初期の頃から徐々に拡大してきている制度でございますが,当初は,地域大学のシーズを核に,いかにそれを発展させていくかということで,クラスター政策というのをとっておりましたけれども,2009年の事業仕分をきっかけに,地方におけるクラスター政策事業というのは大幅に縮小ということになっておりまして,その後,少し形を変えて,事業プロデューサーを配置して商品化等を支援するような地域イノベーション・エコシステム事業というものを行って,直近では,本年度からスタートするものでは,地域の課題解決とか,地域経済の発展に向けた新しい事業ということで,共創の場形成支援プログラムというのを開始する予定になっております。
これらの対応を行いまして,11ページで,少し一般論でございますが,大学の研究力を日英独で比較したものが,この図でございます。こちらを見ますと,上位に続く層の大学を見ますと,ドイツやイギリスに比べて,日本の方が少ないというようなものになっておりますし,12ページに行っていただきますと,一方で,特定の分野において個性を持つ地方大学が多数存在しているというものがデータ的にも見えておりまして,ですので,各大学の個性を伸ばすことで,結果的に日本全体の研究の多様性というものの厚みを形成するようなことが重要ではないかと言われています。この2枚は,科学技術・学術政策研究所のデータに基づくものでございます。
これら背景を受けまして,13ページからは,これは前回御報告させていただいた内容なので,内容は割愛させていただきますが,省内に地方大学研究振興タスクフォースというのをつくって,関係課の課長級を中心に,ただいま議論を進めているところでございます。14,15,16までが,その中身でございます。前回御報告したものと全く同じでございます。
17ページは参考ということで,先ほど地方大学支援ということで,今年度から始まります新しい事業の説明の資料でございます。共創の場形成支援事業ということで,右下の図にございますとおり,産学官が一体となって,地域共創の場というのをつくって,地域における課題解決や経済発展などを目指して,産学官連携の拠点形成を行うというような事業でございまして,ただいま公募がちょうど始まって,受け付け中という状況になってございます。
御説明は以上でございます。

【永田分科会長】 もう一つ,資料2-4の説明をお願いします。

【山下内閣府地方創生推進事務局参事官】 それでは,内閣府地方創生推進事務局より,資料2-4に基づき,地方大学・地域産業創生交付金事業について説明させていただきます。
表紙をめくっていただいて,資料の1ページを御覧ください。
まず,事業概要・目的ですけれども,平成30年度より,「地方大学・産業創生法」に基づき,自治体の首長さんの強いリーダーシップの下で,自治体・大学・産業界が一体となって実施する地域の中核的産業の振興や研究開発,人材育成等を行う優れた取組に対して,地方大学・地域産業創生交付金事業による支援を行っております。
これにより,日本全国や世界中から学生が集まる「キラリと光る地方大学づくり」を進め,地域における若者の修学・就業を促進し,もって東京一極集中の是正と地方創生の実現を目指しているところでございます。
3ページ目に予算資料のポンチ絵を付けていますが,本事業のポイントとしましては,事業へ申請する主体が大学ではなく自治体であること,10年間の計画を自治体に策定いただき,原則5年間,国費支援をし,6年目以降については,産官学の事業負担による自立・自走を求めるものであること,原則5年間の国費支援期間についても,1年当たりの国費支援額最大約7億円に加えて,自治体に補助裏としての地方負担を求めていること,産業振興,大学改革,研究開発,人材育成の一部だけではなく,全てを一体的に実施し,さらに互いの相乗効果を生み出すこと等が挙げられます。
平成30年度の事業開始以降,事業運用についても不断の見直し・改善を図ってきているところです。例えば,令和2年度には,国費充当に向けた自治体の計画作りを事務局が支援する計画作成支援枠を新設いたしました。また,令和3年度には,原則5年間としている国費支援期間について,当初計画以上の加速・強化・拡大が期待される取組に限り,6年目以降,最大4年間国費を追加支援する加速枠の新設を決めたところです。
続きまして,1ページの資料の右上を御覧ください。平成30年度の事業開始以降,記載のような9自治体の取組を支援しているところです。本日ご参加いただいている越智先生のいらっしゃる広島県も採択されているところです。それぞれの自治体の取組テーマや,パートナーの大学や事業者については,2ページに交付対象事業9件の一覧の資料を添付しておりますので,適宜御覧ください。
最後に,1ページの資料の下半分を御覧いただけますでしょうか。現在支援している自治体の取組のうち,島根県の事例をお示ししております。時間の関係から詳細な説明は割愛しますが,特殊鋼関連産業と島根大学が連携して先端金属素材の研究開発を行うことにより,今後成長が期待される「航空機」,「モーター」産業での事業展開に向けた取組を推進しています。
本年4月には,研究開発・人材育成の拠点として,オックスフォード大学のロジャー・リード教授をセンター長とする「次世代たたら協創センター」が島根大学に竣工(しゅんこう)したほか,オックスフォード大学への留学も可能な新たなコースが設置されたところでございます。
以上,駆け足でございますが,内閣府の地方大学・地域産業創生交付金事業についての紹介を終わります。ありがとうございました。

【永田分科会長】 それでは,少し説明させていただきますが,最初に,資料2-2を使った絵があったと思います。本日の主題の中の一つである、魅力ある地方大学づくりということを議論しようと思って作った,皆さんの前回の意見のまとめです。
これが今期の大学分科会のメインテーマの枠組みですが,まだ十分ではありません。今後皆さんから意見を頂いて,今期の中教審大学分科会での話の内容を詰めていかなければいけません。
例えば,新しい大学教育の在り方の検討の中で,オンラインの話とか,大学教育の在り方において、あるいはコロナについて諸々がありますが,先ほどの教育再生実行会議にて出ていた「グローバルな学生」という単語は出ていません。グランドデザインの多様性の中には入っているという理解ではありますが。この新しい日常におけるグローバルな教育という観点が抜けていることなど,御意見はたくさんあると思います。それを承知の上で,本日は,魅力ある地方大学づくりのパーツの部分についての議論をお願いしたいと考えています。
資料2-2を見ていただいて,先ほど御説明いただいたのは,主に検討に当たっての論点というところだったと思います。時間が予定よりも過ぎていますが,先生方に,この中から,1番,2番,3番,4番,5番,6番,どれかに関係するかということで御発言いただければと思います。本当は一つずつやっていこうと思いましたが,時間がなくなってしまいました。
取り分けて2番に、これが全てかなと思う課題がここに書いてあって,どのような大学が魅力ある地方大学と考えるのか,魅力とは誰にとっての魅力なのか,など当然いろいろ御意見はあると思いますが,このあたりからスタートして,例えば,地方自治体に関して意見が言いたいみたいな形で御意見をいただけると大変有り難いと思います。
繰り返しますが,どのような大学が魅力ある地方大学なのかということをまず念頭にお考えいただいて、6つのポイントと併せて御意見いただければと思います。
それでは,御意見を拝聴したいと思います。手を挙げるボタンでご参加いただきたいと思います。
それでは,村岡委員からお願いいたします。

【村岡委員】 ありがとうございます。山口県知事の村岡と申します。よろしくお願いします。
今回の論点であります魅力ある地方大学,どのような大学が魅力ある地方大学と考えるのかということでありますけれども,我々の立場から言いますと,地域の課題の解決に力を発揮していただける大学,そしてまた,地域で活躍する人材を育成し,また地域で定着してもらう。これはやはり若者の人材流出というのは地方において共通の課題でありますので,こうしたところをしっかりと力を入れていただきたいと思っております。
そういうことで言いますと,先ほど説明がありましたCOC+はとてもいい事業でありました。山口県におきましては,県内の大学等が,全国最大の規模となります136の企業を含みます177の事業協働機関の参画を得まして,地域の未来を創る若者の育成ですとか,県内企業の認知度の向上ですとか,インターンシップの促進など,大変に意欲的な取組につながりました。
山口大学におきましても,学長御自身が県内の数多くの企業を直接回られて,この取組への協力を得られたことと,それから,経営者の方々とも意見交換をして,大学に求められるニーズというのを,自分が足で動いて把握をして、取組につなげられたということもあります。
我々も大学に行って話をしたりですとか,企業の方から大学に行って話をしたりという機会を多く頂きました。そうしたことで,非常にいい取組がスタートして,今,事業自体は終わりましたが,是非,更に力を入れて前に進めていただきたいなと思っているところです。
大学と連携した商品の開発ですとか,あるいは,PBLの促進ですとか,そうしたことも進んできておりますので,これは是非引き続きこの方向で進めていただきたいと思っておりますので,更に力を入れていただきたい部分であります。
それから,人材のことで言いますと,私,実は全国知事会でデジタル社会推進本部の本部長をしております。その中で,各知事から声が上がるのは2つあります。1つは,地方の情報インフラの基盤整備です。これが整わないとどんどん格差が開いていくということ。それから,2点目,これも特に多いのですが,人材の確保であります。
やはり地方においても,デジタル人材の確保は大変深刻な問題となっております。都市部の方に集中していて,都市部で不足しているので,なおのこと地方においては不足するわけであります。政府の方にも,地方に人材を派遣する制度を設けて欲しいということを言っているのですが,なかなかこれは難しい中で,やはり地方において,AIですとか,データサイエンスですとか,デジタル人材は幅広くありますけれども,是非,これは共通して,地方の方で人材を育成し、活躍していただきたいと思っておりますので,そうしたところを大きく個別の柱としては掲げてもらえればと思っております。
それから,いずれにしても,こうした取組を進めていく上で財源が不可欠でありますので,是非財源につきまして,ほかの委員の皆さんもおっしゃいましたけれども,文科省の皆さんに頑張っていただきたいと思っております。各大学の方も大変財源の面での不安を抱えておりますので,よろしくお願いしたいと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
現在挙がっている手数から言うと,お一人今後3分以内で御発言をお願いします。
それでは,髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 ありがとうございます。
「1.地方大学の役割」の観点において,デジタルトランスフォーメーション(DX)はもろ刃の剣の一面があると考える。企業や社会の効率を高める一方で,AIに置き換えられてしまう職業があり得ることに加え,一定の職種ではそれを使いこなせないと仕事が成り立たないという事態も起きつつある。
他方で,産業界ではICT・AIなどの先端技術を活用し,新たな社会の在り方やそれにふさわしい製品・サービスを生み出すことができる人材が不足していることから,このような知識・技能を身につけた社会人の育成が強く求められている。そうしたことからも,社会人に対する新たな技術への適応に向けた知識やスキルのアップデート,学び直しが非常に重要である。しかしながら,日本における社会人の学び直しはOECD加盟国平均15.4%に対し2.4%であり,調査33か国中32位という状況である。学びたい時に学べる社会の実現,そのための大学での学び直しも地方大学の重要な役割と考える。
「2.魅力ある地方大学」については,子育て,医療・介護,環境,情報通信,農業,林業などの潜在的な需要を有する成長分野や社会のニーズを捉えた教育の促進などは,地方大学の得意な分野と受け止める。
ただし,実際に社会人が大学で学び直すには,学費負担や学ぶための時間がハードルと指摘されている。学費負担の軽減をはじめ「有給教育休暇」の制度化も含めて,社会人の学び直しに向けた環境を整備し大学と企業を行き来しやすくすることが,地域と大学の活性化につながると考える。
そのためにも,地域と大学また大学間の敷居を低くすることが重要であり「地域連携プラットフォーム」に非常に期待している。各省庁が、地方活性化に向けた様々なプラットフォームを整備しているで,先ほどの事例のように先行して取組が始まっている好事例の横展開など、横の連携をしっかり推進いただきたい。
我々連合も現場を地方に持っているので積極的に参加させていただきたい。プラットフォームの構築と魅力ある地方大学への改革は,どちらが先ということではなくて,それぞれ協働し両方が実現をしていくよう、取組を推進いただきたい。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
続きまして,渡邉委員,どうぞ。

【渡邉委員】 どうもありがとうございます。
まず,若干総論的な話になってしまうかもしれませんが,大学分科会として地方大学について検討をする視点というのは,従来はどちらかというと,国立大学や地域連携プラットフォームといった各論だったと思います。今期は,地域の多様性や私立大学を含めた大学の多様性を前提に,なおかつ,ニューノーマルの視点も踏まえ,魅力ある地方大学について体系的な整理をした上でのビジョンをまとめられれば,ボトムアップ型の組織である中教審らしい議論になるという気がいたします。
次に,魅力ある地方大学についての具体的な検討の視点といたしましては,日本私立大学連盟が一昨年まとめた報告書なども参考にさせていただくと,3つの視点で考えていくことが必要かと思います。
1点目は,地方の未来を創る人材の育成をどうしていくのか。これはリカレントも含めた視点です。
2点目は,地方大学が地域社会の中核的な役割を担うようなエコシステムをどう構築するのか。これは地域連携プラットフォームの関係や,今日説明されたCOC+Rといったものをどう考えていくかということです。
3点目は,地方創生とグローバル化の一体的な推進にどう寄与するのか。先ほど永田分科会長もおっしゃっていましたが,地方こそ世界につながらなくてはいけないと考えています。政府も,地域経済活性化や地方創生には海外の経済活力の取り込みが必要だとしていますし,中小企業といえども海外展開の拡大をしなければ地域創生はあり得ない状況にあると思います。そのため,地方大学による地域資源に精通して海外展開を進められるような人材の育成という視点が非常に重要になります。これは留学制度にも大いに関連し,学生を出す方と受け入れる方の両方が重要です。そういったものを含めた総合的なグローバル人材の育成が,大変重要な役割になるのではないかと思います。
地方こそがグローバル人材を必要としている。しかし,その核になるには,残念ながら,地方自治体単独ではできないだろうと思います。したがって,産官学の連携の下に,そういったグローバル人材を育成し,海外ともつなげていくということが必要なのだろうと思います。
こうした視点で,清家先生が理事長に就任されている日本私立大学振興・共済事業団の取組事例集も見せていただきました。実際,地方大学の中にも,世界につながろうとしている大学の好事例が幾つもあるということを知りました。こちらについては清家先生から,また是非御紹介いただければと思います。大学分科会としては,今後もそういった好事例を拾って,先ほど申し上げた3つの視点で,魅力ある大学とはどういうものかということを浮かび上がらせ,それを社会に打ち出すことによって,予算措置を要求するだけではなく,行動を示して資金を呼び寄せるというような視点が重要なのではないかと思います。
私からは以上です。ありがとうございました。

【永田分科会長】 渡邉委員,ありがとうございます。
そうですよね。地方の中小企業で,母国語と日本語と英語とが全部できて,専門を持っていて,日本で学位を取った人は,きっと重宝されます。その一人で、その企業はグローバル化に足を踏み出せるのではないかと思います。
それでは,益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 ありがとうございます。民間側で仕事をしている立場から,地方経済界における地方大学に対する感想をお話しさせていただきたいと思います。
やはり地方企業も都市部の企業以上に大きくビジネスモデルを変えなければいけない,大きな転換点に来ています。既に民間では,どういう人材が必要なのかというような議論ですとか取組が始まっていますが,それに比べると,行政機関とか教育機関ではなかなかすぐに取り組めていないのではないかなという印象を持っています。もちろん,この問題というのは,国の予算との関係があるかもしれません。経済界から見ますと,大学学内の仕組みですとか,人材育成改革に取り組んでいる大学は魅力的です。
また,地域ですとか産業界のニーズを使える場というのは,産学連携協議会ですとか,プラットフォームなど,幾つかスタートしていますが,現実問題,既にデータ活用ですとか,自然災害対策なんかの協力なども始まっています。面白いところは,最近は高等教育機関の手助けの下,地元の工業高校が手を挙げて人材育成をしていくと。研修の場を企業が提供するというような新しい動きも始まっています。
やはり国立,公立,私立,短大,専門学校など,それぞれの強みを生かしまして,初等中等教育に対しての支援,場合によってはリーダーシップを発揮する。もちろん,先ほど来出ていますリカレント教育なんかも,企業と手を組んでスタートしている。やっぱりリーダーシップというものは非常に魅力的です。
この点について言えば,大切なポイントというのは,行政機関と企業と教育機関が,それぞれの悩み,強みを従来以上にきちっと話すことです。そのためには,この大学分科会でもきっちりした議論をしました,教学マネジメントによる大学発の発信ということに更に力を入れていかなければいけないと思います。
いよいよこういった連携プラットフォームなどで,お互いの言いっぱなしという局面が,より深みのある議論をすべき必然がやってきたタイミングだと思います。あえて申し上げますと,従来は,大学というところは研究と教育に特化していて,なかなか地方経済界からは,言ってみれば敷居の高い存在,かつ,大学側もこちら側には余り出てこない存在だった。そういう意味では,垣根が低い大学というのは非常に魅力的だと思います。
幾つか予算獲得の必要性の話は出てきていますが,いよいよこの8月の予算要求に間に合うように,この大学分科会としても,魅力ある地方大学の実現のためには,こういう予算が必要なのではないかというぐらいのまとめをしてみるのも1つの案ではないかと。従来のような予算請求のやり方では,この大きな転換点で改革をすることはできないのではないか。地方経済界も,もちろんそれを期待していると私は思っております。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
続きまして,大森委員,どうぞ。

【大森委員】 ありがとうございます。大森でございます。
1点質問ですけれども,もし時間があれば。資料2-1のところのDXに関して,地方大学の問題は,DXの観点で見たときに必然的な問題となるというふうに書かれていますが,その意味がよく分からないというか,何でDXだと地方大学の問題になるのかという,むしろプラスになっていくことはあるのかなという意味で,この表現の意図についてお聞きできればというのが1点です。
それから,分科会長からお話しいただいた魅力あるというところですけれども,先ほど渡邉委員おっしゃっていただいたことは,本当に勇気づけられて,本学でも,GGJとCOC+,同時並行で展開する中で,飛び立たないグローバル人材というのを育ててきています。
そういう意味では,やっぱり本当に地方の大学というのは誰にとって魅力かというと,やっぱり地元の人材となる学生にとって魅力で,地域にとって魅力だということだと思います。そこでしか学べない教育を提供して,どう育てていくかということだと思うのですが。難しいのは,本当にその魅力がどんどん高まっていって,いわゆる大学の人気というものが高まると,地元の学生が入れない大学になってしまうという問題が実はあって,地方創生の一丁目一番地は,やっぱり各県の人口ビジョンにのっとって,人口減をどう食い止めるかというところにあるわけで,そこに大学が寄与すると考えたときに,魅力を高めることで地元の学生が定着するというのはすばらしいことですけれども,と同時に,全国から,そして世界から集まってくることによって,逆に地方創生にとって,4年間という限られた期間に学生が増えるということはよいのだけれど、地元の学生が地元の大学で学べないというような矛盾みたいなものが生じてくるところをどうしていくかということかなと。
一応本学は群馬県以外では全くコマーシャルしないということでやっていますが,それがいいとは言わないですけれど,そういう問題が起こってくるということは,魅力あるということを考えることと、地方創生を関連させるべきなのかどうかを吟味する必要があるかなと感じています。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
御質問が1点ありましたが,この資料2-1の表紙の図は,前回の委員から頂いた御意見の中にそういうのがあったということで,おそらく,インフラと,先ほどの人材の問題を言われているのではないかと思います。それが,例えば,地方にデータ駆動型をけん引するような人がどんどん行くかどうかのような問題を含めて言っていると理解しています。
次に古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】 ありがとうございます。
魅力ある地方大学とは何かということは,いろいろな要素はあると思いますが,その中で,やはり地域で活躍する人材を育てて,一定程度定着させて,地域の振興につなげていくということはとても重要だと思っています。
そういう意味で,先ほど,ちょっと質問にもなりますが,COCの関連事業の御説明の中で,地元就職率というお話がありました。これは非常に興味深いと思いまして,どの程度の目標を設定して,どの程度達成しているのかというのを,一定程度,傾向としても,国公私の比較も含めて明らかにしていただくと,今後,地方の大学の在り方を検討していく上でも有効ではないかと思います。
その上で,ここで不十分と言われている時勢的な内容にどう踏み込んでいくかということを考えていったらいいのではないかと思いました。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
古沢委員の御質問,今調べています。ただ,例えば,私は国立大学全部のデータを知っていますが,国立大学で,入学者のうち,他県も含めて入ってくるわけですが,そのうち地元への定着率は全ての分野を合わせて60~70%です。ですから,今でも,地元に定着する人の数は圧倒的に多いというふうに理解しています。
それでは,調べ終わりましたら,また御回答します。
清家委員,どうぞ。

【清家委員】 ありがとうございます。
先ほど渡邉会長がおっしゃってくださったこと,本当に大切だと思っておりまして,私立大学の立場から申しますと,私立大学の社会的役割は,やはり研究・教育における多様性の拡大にあると考えています。それは地方においても特にそうで,やはりそれぞれの地方,多様性がありますので,地域社会の変化に適応して,独自の理念に基づいた特徴のある教育・研究を行うということの意義は大きいと思っております。,そういう面で,魅力ある地方の特に私立大学は,その独自性で貢献できるという意味で定義できるものであって,その在り方はこうだというふうに一律的に決めるべきものではなく,渡邉会長が言われたように,むしろその多様性ということこそ大切だろうと思っています。
その中で,大切なのは地域社会との連携であり,たまたま私ども日本私立学校振興共済事業団は,平成25年から私立大学等経常費補助の私立大学等改革総合支援事業の中で,地域社会への貢献というタイプを設けて,地域の経済,あるいは社会,雇用,文化の発展に寄与する取組であるとか,あるいは大学間,あるいは自治体,産業界との連携を進めるためのプラットフォームを形成する,そういうことを支援する取組を行っています。今後とも,このプログラムの推進の充実を図っていくことは大切ではないかなと思ってございます。
また,地方創生に取り組む私立大学への地元の産業界等からのサポートも大切でありまして,特に寄附金等の外部資金を大学が一層獲得できるような方策も重要だと思っています。このための寄附金,外部資金獲得の戦略などについての調査研究なども必要かと思っております。
そして,これも渡邉会長が強調してくださったことで,大変有り難いことだと思いますのは,魅力ある地方の特に私立大学を実現するために,好事例の共有ということの大切さです。実は,この点でも,日本私立学校振興共済事業団には私学経営情報センターというものがございまして,ここでは地方大学を含めた特色のある私立大学の取組の事例を収集して,ホームページですとか広報誌で広く紹介しておりますし,また,個別の学校法人に対する経営相談の中でもそれらの情報を提供しておりますので,こういったこともこれからしっかりと進めていきたいと思っております。
どうもありがとうございました。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
事業団に任せてはいけなくて,国全体で考えなければいけないとのことです。
曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】 ありがとうございます。
既に渡邉委員,また,清家先生からもありましたが,やはり地方大学が魅力ある,あるいは,地方大学を振興するということになったときに,その成果指標のようなものは,各大学での取組ということにとどまらず,結果として地方創生がどう実現されたかという,国民に,もちろん我々にも分かりやすい指標を作る作業が必要ではないかと思います。
今まで頂いてきたいろいろな資料では,各大学での研究の取組や教育のプログラム等が紹介されていて,非常に魅力のあるものはたくさんありますが,結果的に地方創生,あるいは,地方の産業創生にどうつながっているかという全体像として,そして,そこに国公私立大学がどのように絡んでいるかという全体像を示す,何かしらの指標化が必要ではないかということをお伝えしたいと思います。
以上です。

【永田分科会長】 曄道先生,ありがとうございます。
そういう観点では,地方自治体,特に県庁に高等教育を扱う部署がないところがほとんどなので,とても計画を立てるのは困難かもしれません。ですので,そういうところから変えていかないといけなくて,地方で高等教育を本当に身近なものにしていくという努力が必要です。今日はいろいろな意見を聞かせていただきますが,本当にやらなければいけないことはたくさんあると思いますね。

【後藤委員】 大学から高等専門学校に異動した人間として,少し意見を申し述べます。
知の集積地,あるいは,研究力はベースとして非常に大事なことですが,それだけではなく,社会実装という,そういう目線が必要ではないかと思います。地域ニーズ,特に産業ニーズの掘り起こし,課題解決,ネットワークの仕組みづくり等,きめの細かい手法が必要だということになるかと思います。
御存じのように,高等専門学校は,地域密着型の社会実装手法の60年間の蓄積がございます。今日の資料1-3の26ページに記載していますように,社会実装のもっと大きな流れを今まさにつくろうとしています。高等専門学校は地方大学ではありませんが,そのノウハウを共有していただければと思います。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
次は千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】 ありがとうございます。
少しエッジを切った視点になるかもしれませんけれども。地方の公立大学の新しいニーズがあるかどうかというところで見ていきますと,全国の高等学校を卒業した方たちの約55%が大学へ進学しますが,専門学校へ進学する学生も24%程度おります。そういう学生さんたちが,後に大学へ編入しよう,入り直そう,こういうマーケットとしては,私は十分にあるのではないかと思います。実際に,本校の専門学校の卒業生でも,100名程度は大学へ2年次編入,3年次編入という形でいたします。
例えば,地方の公立大学でいけば,室蘭工業大学にも毎年10名ぐらいが3年次編入を果たしておりまして,地方の公立大学の対象が,割と高専を対象にしている制度がありますが,これを専門学校も対象にした制度にしていただくことによって,マーケットは広がるのではないかと思います。
そのためには,前回の会議でも申し上げましたが,やはりフレキシビリティを持っていただくということが重要で,そのフレキシビリティを個性とすることによって,そういう対象者というのが広がってくるのではないのかなと私は考えております。
地方大学の魅力は何かということも,やはり自問自答してやる必要があると思いますが,私の推測では,やはりマーケット,対象者を広げなければ,数的に増やしていくということは多分厳しいと思います。そういう意味では,既にあるマーケットを取り込んでいくためには,フレキシビリティという個性を持って,そして,それぞれの学校のファンを増やす。これは最近,経済界では,ファンベースドマーケティングと言いますけれども,人口減少社会の中では,やはり地方公立大学もファンを増やす,こういう視点で,新たな対象者に対する働きかけをしていく,こういうことは非常に有効ではないかと考えております。
ありがとうございます。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
相原委員,どうぞ。

【相原委員】 私は公立大学の立場から考えさせていただきました。魅力ある地方大学というのは,産官学連携も十分にできていて,その成果が実際に出ていることと,それによって全国から人材が集まり,また地域に優秀な人材を輩出できる大学だろうと思っております。
各論でちょっと触れたいのですが,4番目の地域公共団体や産業界の役割というところの検討に当たっての論点に,地方自治体には何を求めるかというところがあり,今,非常に問題というわけではないですが,動きにくいと思っていることは,行政のデータ活用が大学にとって十分にできていないということがあると思います。行政のデータ活用ができるような環境整備をお願いしたいと。
実際には,個人が特定されないにもかかわらず,非常に厳しい個人情報保護のために活用できないとか,行政が縦割りになっていて,各部署で管理している情報が違うので,実際に研究や教育に使おうと思っても全く使えないというような状況がございますので,行政には,是非,地域の大学が活躍できるよう、データ活用ができるようなシステムをつくっていただきたいと思っております。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
データだけではなくて,本当に地域の行政とはいろいろな意味で関係を改善していかなければいけないことがたくさんあると思います。
吉見委員,どうぞ。

【吉見委員】 吉見でございます。
永田先生からの問いは,魅力ある地方大学とは何かということです。時間がありませんので,ちょっと原理論的な答え方になってしまうのですが。魅力ある地方大学の前提条件,必要条件は,魅力ある地方があるということだと言うまでもなく思います。じゃ,魅力ある地方というものは何で可能なのかと言えば,少なくとも3つ条件があって,1つは,魅力的な雇用があるということ,そして,2つ目には,面白い人との出会いがあるということ,そして,3つ目には,文化ということでしょうか。ある種のいい知識基盤があるということだと思います。最初の点は,飯が食えるということです。2番目,3番目の点というのは,うまみがあるといいますか,要するに,だしの利いたいい飯が食えるということが,やっぱり魅力ある地方ということだと思います。
そうすると,問題は,じゃ,そのような魅力ある地方を可能にしていく大学の在り方とは何かということだと思います。これも3点あるのではないかと思います。1点目は,先ほど渡邉会長がおっしゃったことと全く同じですけれども,ローカルが,地方がいかにグローバルとつながり得るか,人が育成される点においてつながり得るかということで,これはオンラインが大いに力になりますが,オンラインを力にするためには,グローバルな時間の流れと地方の大学の時間の流れを一致させないといけないという,そこの問題があります。時間の壁を超えれば,あとは言葉の壁ですけれども,言葉の壁だけでは超えられないので,そこをどういうふうにつないでいくのかという問いがあると思います。
2つ目には,やっぱり水平的な風通しが必要です。オンラインでできることとできないことがあると思います。情報や,それから,ある種の時間を共有できますけれども,やっぱり最終的には人が動いていかないと,移動の自由というのが大学の原点ですので,人が動いていかないと本当にはつながらないと思います。そうすると,日本では,A大学に入ったらA大学から出る,B大学に入ったらB大学のB学部から出ると,もう縦割りでずっと人の流れが決まっているわけですけれども,ヨーロッパのボローニャプロセスやエラスムス計画等々を見ても,やっぱり大学を超えて学生も教員も動いていくという仕組み,一定期間を持って動いていくという仕組みをどういうふうに整備するのかということが,地方の大学の問題と不可分だと思います。
最後に,3番目ですけれども,今度は垂直的な風通しの問題です。社会人の学び直しが圧倒的に難しいということの一つは,やっぱり社会人にとっては,1年とか2年とかは長すぎると思います。つまり,今のセメスターだと4か月ですから,4か月掛ける2の8か月というのは,なかなか長すぎて難しい。そうすると,やっぱり具体的には,クォーターをもっと徹底して,2か月で単位もある種の修了書も取れるような仕組みというふうな,2か月だけどそこに集中して1週間で何回も何回も授業に出ていくようなカリキュラムの在り方の再編成が具体的には必要だと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
第一原理的なところの部分はみなさんで共有しないといけないので,吉見委員,ありがとうございました。
次,熊平委員,どうぞ。

【熊平委員】 ありがとうございます。熊平です。企業の人材育成をしております観点からお話しさせていただきたいと思います。
まず魅力ある地方の大学という問いにつきましては,やはり研究者が安心して研究に従事できるということが一番大事ではないかと思います。社会の多様性の中で,大学の存在理由は,研究する力にあります。研究があり,その上で教育があり,そして社会実装につながるということだと思います。社会実装に大学が参画することも重要ですが,社会実装を通して、研究・理論を発展させることが重要ではないかと思います。優秀な研究者を魅了し、優秀な研究者が育つ大学づくりに,地方の大学に限らず,全大学がオールジャパンで取り組んでいくべきではないかと思います。
皆様も御承知のとおり,日本の研究力は非常に低下しており,トップ10%,1%の論文や,注目研究領域における研究では,イギリス,アメリカ,フランス,ドイツ,中国に負けている状態です。
そんな中で,研究支援者の数に注目いたしました。これが、全てではないと思いますが,海外ですと,中国は1人の研究者に対して1人の支援者がついています。ドイツは日本よりも研究実績を上げているのですが,研究者の数は日本の半分です。半分の研究者しかいないにも関わらず,研究実績が日本より高いドイツでは、2人に1人の研究支援者がついています。ですから,研究に充てる時間がしっかりと確保されているのではないかなと思います。
実際,ドイツでは,インダンストリー4.0という国家戦略に関連した提言が毎週1つや2つは必ず大学から出てきているという話を経産省の方から伺いました。社会実装に関する提言を研究に基づいて行うことは、大学の重要な役割だと思います。
また,もう一つ,研究の観点で申し上げたいことがあります。人文・社会科学領域における研究が,工業化社会の中で非常に軽視されてきたことが,我々の社会が進展しなくなった理由の一つではないかと思っています。
海外では、人材開発の領域でも、研究が発展しております。日本の人材開発は、ほとんどが海外の研究に基づいて行われています。そのため、日本は,企業においても,10年,20年と,人材開発における理論の応用が世界に対して遅れてしまうという現実もあります。また,10年前から,ハーバード教育大学院などは,脳科学と心理学や教育学が一体になってマインド・ブレイン・エデュケーションという新しい研究を進めています。
社会の進化に寄与する研究が、人文・社会科学系の領域においても,科学技術の領域同様に発展することが,非常に重要ではないかと思います。
以上になります。

【永田分科会長】 熊平委員,ありがとうございます。
まずは,魅力ある大学づくりですね。地方も地方以外の大学も,とにかく魅力ある大学になりましょうというお話だったと思います。
今,ドイツの話も出ましたけれども,ドイツは,国からと州からの大学への予算というのは,ここ10年間で1.4倍ぐらいになっているのではないかと思います。要するに,基本的には,右肩上がりの予算配分になっているという背景の中から出てくることもやはりあると思いますね。
安部委員,どうぞ。

【安部委員】 ありがとうございます。安部でございます。
地方で生活している者から見ると,最近,地方というのは,そこに住んでいる人が安心して住みやすい地域でなくなっている。それはなぜかというと,地域づくりを支える基本的な人材が不足しているというのをすごく感じます。それが不足している理由は,若年人口の流出によるものであり,そして,数的な不足と同時に,質的にも不足しているといえます。
例えば,建設人材だとか,サービス業関連人材,あるいは,福祉や医療に関わるエッセンシャルワーカーでも人材の流出が続いていることは,地域の基幹産業に従事する人々の労働生産性が低いままで固定されるのではないかと思います。
地方大学ができるのは,これまで大学が余り熱心に取り組んでこなかった,先ほどから多くの先生方からも意見が出ておりますけれども,社会人のためのリカレント教育,職業教育等に特化するメニューを提供して,それを地方の総合計画等に,大学で行うリカレント等について書き込みをしていただいて,地方の教育計画の中に,それぞれの地方の国公私立の高等機関がどんな役割を果たせるのかということを示すことが必要と思います。地域の高等教育の活用の具体について,地方自治体が示す必要があるのではないかと思います。
そうすれば,地域の人々にとって大学,先ほど垣根の低さというお話もございましたけれども,地方の人々にとって垣根の低い,魅力のある,近づきやすい大学になるということにつながるのではないかなと考えております。
以上です。

【永田分科会長】 安部委員,ありがとうございました。
清水委員,手が挙がっているように見えますが。

【清水委員】 では,簡単に山梨から。
山梨は自然とか,ワインとか,食料とか,非常に恵まれていますが,日本で愛着度が最低の県でございます。こういう若者を山梨にとどめるためには,やっぱり魅力ある大学づくりをしなければいけないと痛切に感じております。
中教審で昨年大学等連携推進法人を制度化していただきまして,この4月から,山梨県と県立大学と山梨大学,この三者の連携事業が始まって,しかも,コロナ禍の中で,オンライン授業を活用した連携開設科目,53科目(前後期)が今走っております。
オンラインによって,授業だけではなくて,FD・SDとか,あるいは,国際コミュニケーションカフェとかも実施しています。もちろん教職員の人事交流も実現し,今,教員のクロアポまで検討しています。そうした事業のみならず,電気の共同調達とかも進められております。
1つ,これからの展望の中でお願いしたいのは,今検討されていると思いますが,地域にとって,子供を増やしつつ,育てて,子供を守るというときに,教育指導者はどうしても不可欠です。教員養成に関わる共同教育課程,これも山梨モデル的なものを推進しようとしたいのですが,その設置基準というか,課程認定基準が非常に細かく規制されておりまして,これを進めていく上では,もう少しその基準等に弾力化をお願いしたいと思っています。そうすることによって,地方の教育指導者の養成といったものをオール山梨で実現できるのではないかと考えております。
現在,国公のみならず,私立大学も視野に入れて,これから大学等連携推進法人の拡充方策を探っているところでございます。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
山梨の場合は,最も良い実例ですね。これは本当に中教審で早々に頑張って大学等連携推進法人の施策をつくって,すぐにこれが実装されたという例だと思います。
委員の先生方,どうもありがとうございました。十分な時間を用意できないというか,前半部分で時間を使ってしまいまして,十分な議論はできませんでしたが,もう一度論点の掘り起こしになるような御意見がたくさんありました。この先,この論点の掘り起こしで終わってはいけなくて,この論点を一つずつ何で解決するかという問題をちゃんと話さないと,先へ続きません。次回以降,ほかの課題も混ざってきますが,鋭意,この議論を続けていきたいと思っております。
それでは,本日の議題はここまでですけれども,事務局から次回以降の説明等を行っていただきます。

【横井地域学習推進課長】 先ほど古沢委員から御質問のあった件だけ回答させていただければと思います。
COC+事業につきまして説明申し上げますと,申請の際に,就職率について,10%の向上を目安として示しておりまして,多くの大学で10ポイント向上を掲げて事業に取り組んでいただいたのですが,結果として,繰り返しになりますけれども,大都市圏での雇用情勢が良かったことで,地域の就職率が目標に届かなかったということで,もともとプログラムの大学では3割,4割ぐらいあったようですが,それが数ポイントしか上がらなかったとか,かえって下がってしまったというような,それぞれ状況は様々な状況でございます。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。また詳細に調べた資料は用意します。
それでは,事務局,次回以降について,御説明願います。

【淵上高等教育企画課長】 すみません,私から1点だけ。
今,先生方の御意見の中で,好事例の横展開のお話がたくさんございました。前回お届けさせていただいた,文科省としてお作りした地方大学の好事例集もございますし,それから,できれば今年度中の早いうちに,地域連携プラットフォームの全国シンポジウムを行いたいと思っております。日程等固まりましたら,先生方にはまた御案内させていただきますので,御覧いただくなど,御活用いただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 それでは,次回についてお願いします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】 次回でございますが,7月21日水曜日の3時から5時を予定しております。実施会場や方法については,追ってお知らせさせていただきます。
また,本日もし発言できなかったという事項がございましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。
ありがとうございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
7月21日は,オリンピック直前です。オンラインで実施する可能性は高いとは思いますが,まだ実施方法と会場は調整中ということで,オンライン,オンサイト,どちらも可能性があるということをお含みおきください。
それでは,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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