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2021年6月21日

ソフトウェアがIT機器を無駄なく使うという観点から、エネルギー効率を的確に評価できる国際規格が発行されました。
この規格が活用されることで、国内外において省エネルギーに着目したソフトウェアの市場が活性化し、ITサービスのさらなる省エネルギー化が進み、脱炭素社会の実現に貢献することが期待されます。

1.背景

IoTによって身の回りの様々なものがネットワークに繋がり、AIや5Gなどの技術を活用したさまざまなITサービスが登場し、我々の生活が便利で豊かになっています。スマートシティの実現、再生可能エネルギー事業の発展、エネルギーマネジメントの拡大など省エネルギー化に向けた取組の中でもITサービスの活用が期待されます。また、企業においてはデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれ、ITの活用によるビジネスの変革が進んでいます。一方で、このようなITサービスはクラウドで実現される傾向にあることから、データセンタの消費電力量は今後も増加することが予測されており(図1)、その省エネルギー化が課題となっています。

 

  • ※JST「低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書」情報化社会の進展が
    エネルギー 消費に与える影響(Vol.2)令和3年2月の表10から作成
    図1 データセンタの消費電力量の将来予測(国内、世界)

2050年カーボンニュートラルの実現に向けてデータセンタの省エネルギー化のためには、IT機器自体のエネルギー効率の向上に加え、ソフトウェアがIT機器を効率よく使うことによるエネルギー効率の向上も求められてきています。例えば自動車ではドライバーで燃費が異なるように、ITサービスではソフトウェアがIT機器を効率よく制御することでエネルギー効率が異なります(図2)。

 

  • 図2 エネルギー効率の違いを示す例

実際、ソフトウェアの処理にIT機器を効率よく使用するためのアクセス制御を加えることにより、性能を殆ど低下させることなく、消費電力量を大幅に削減できます(図3)。
 

  • ※N. Nishikawa, M. Nakano and M. Kitsuregawa, “Application Sensitive Energy Management Framework for Storage Systems,” in IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering, vol. 27, no. 9, pp. 2335-2348, 1 Sept. 2015のFig10から作成。
    図3 アクセス制御の有無それぞれの消費電力量と処理時間

 

そこで、省エネルギー化へ貢献するソフトウェアの効果を評価するために、IT機器とソフトウェアを組み合わせたアプリケーションプラットフォームとしてのエネルギー効率指標を提案し、国際規格として開発が進められました。その結果、今般、「ISO/IEC 23544:2021 Information Technology – Data Centres – Application Platform Energy Effectiveness (APEE)」として承認され、国際標準規格が2021年に発行されました。これは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の成果です。

2.規格の概要

本規格では、ITサービスが提供する価値と、その提供のために使用した電力量から、エネルギー効率を算出します。具体的には、構築したアプリケーションプラットフォーム上でベンチマークとなるプログラムを実行し、得られたITサービスの価値をIT機器の消費電力量で割って、エネルギー効率とします。この算出方法に加えて、結果の信頼性を確保するために、電力の測定方法や測定結果の報告方法も規定しています。また本規格は特定のITサービスや分野の測定に縛られているものではなく、将来出てくるサービスにも対応可能です。

3.期待される効果

本規格の成立によって、今後爆発的に伸びてくるデータ処理を行うITサービスの省エネルギー化のためにはソフトウェアが重要な要素であると世の中に認知され、省エネルギー化に貢献するソフトウェアの研究開発が進むことが期待されます。

また、ITサービスのアプリケーションプラットフォームを構築する際に、本指標を活用してエネルギー効率を考慮した設計・開発を行うことで、ITサービス、さらにはデータセンタの省エネルギー化につながります。この省エネルギー化が、脱炭素社会の実現に貢献することが期待されます。

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担当

産業技術環境局国際電気標準課長 柳澤
担当者: 森田、大平、林

電話:03-3501-1511(内線 3428)
03-3501-9287(直通)
03-3580-8631(FAX)

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