令和3年5月28日

 5月31日から6月11日まで、ウィーンにて国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)法律小委員会第60会期が開催されます。

  1. COPUOSは、1959年に国連の常設委員会として設置され、宇宙空間の研究に対する援助、情報交換、宇宙空間の平和利用のための方法及び法律問題の検討を行い、これらの活動の報告を国連総会に提出することを任務としています。COPUOS法律小委員会では、専門的な見地から宇宙活動により生ずる法律問題に関する検討を行っており、これまでに、宇宙条約をはじめとする国際条約や宇宙物体登録、国内法整備等に関する各種勧告を作成してきました。
  2. 今会期の法律小委員会では、この分野の国際的な第一人者である青木節子慶應義塾大学法務研究科教授が日本人として初めて議長を務め、宇宙資源の探査・開発・利用の他、宇宙法に関する能力開発、宇宙デブリ(宇宙ゴミ)問題、宇宙交通管理、小型衛星活動への国際法の適用などが議論される予定です。また、青木教授は、女性初のCOPUOS法律小委員会議長となります(任期は2020年から2年間を予定していたところ、新型コロナウイルスの影響により、2020年の法律小委員会は開催中止。)。
  3. 民間企業や宇宙新興国を含む各国の宇宙活動が、世界規模で多様化、活発化する中で、国連を通じた多国間のルール作りの枠組みであるCOPUOSの重要性はますます高まっており、青木議長がその責務を十分に果たすことが期待されます。
  4. 青木教授のCOPUOS法律小委員会議長への就任は、我が国の持続的かつ安定的な宇宙利用の確保に向けた、宇宙空間における法の支配の実現に資する実効的なルール作りへの重要な人的貢献の一部と捉えており、我が国は他の加盟国と協調してCOPUOSの活動に引き続き積極的に関与していく考えです。
  5. また、今会期のCOPUOS法律小委員会には、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)の活動の一環として、日本を含む9か国により共同作成された各国の国内宇宙法に関する報告書が提出されています。5月31日には、青木議長就任及び同報告書の提出を記念したサイドイベントを開催予定です。

 国連宇宙空間平和利用委員会(Committee on the Peaceful Uses of Outer Space:COPUOS)は、1959年の国連総会決議(1472)「宇宙空間の平和利用に関する国際協力」により設立された国連総会直属の常設委員会。オーストリア・ウィーンにおいて開催され、本委員会のもとに、科学技術小委員会及び法律小委員会がおかれ、宇宙活動に関する諸問題に対し、それぞれ技術的側面及び法的側面からの検討等を行っている。2021年5月時点、日本を含む95か国が加盟。

 アジア・太平洋地域宇宙機関会議(Asia-Pacific Regional Space Agency Forum: APRSAF)は、アジア太平洋地域における宇宙利用の促進を目的に、同地域の宇宙分野での国際協力を具体的に検討する場として1993年に設立。宇宙法制イニシアチブ(National Space Legislation Initiative: NSLI)は、アジア・太平洋諸国の宇宙法・政策に関する相互理解を促進し、地域の共通課題に対する宇宙法政策形成・実施能力の向上や持続可能な宇宙活動の促進に貢献することなどを目的とし、第26回APRSAFにおいて立ち上げが決定。NSLIの下に設置されたスタディ・グループの参加9か国(日、豪、印、インドネシア、マレーシア、比、韓、タイ及びベトナム)は、第60会期COPUOS法律小委員会に共同で報告書を提出。

 慶應義塾大学大学院法務研究科教授(法学博士)。慶應義塾大学法学部法律学科、同大学院法学研究科修士課程を経て、1990年カナダ・マギル大学法学部附属航空・宇宙法研究所博士課程修了。立教大学法学部助手、防衛大学校社会科学教室専任講師・助教授、慶應義塾大学総合政策学部助教授・教授を経て、現職。2012年より内閣府の宇宙政策委員会委員を務める。2017年より国際宇宙法学会(International Institute of Space Law: IISL)副会長。