(令和3年5月25日(火曜日)14時48分 於:本省会見室)

米韓首脳会談

【産経新聞 石鍋記者】21日の米韓首脳会談について伺います。共同声明では、台湾海峡の平和と安定性を維持することの重要性や、南シナ海などでの航行の自由など、中国を念頭に置いた表現が入った一方で、中国への直接的な言及はありませんでした。
 香港や新疆ウイグル自治区の人権状況なども含め、中国への懸念を明確に発信した日米首脳会談、日米「2+2」とは温度差のある内容となったと思いますけれども、このことに関する大臣の見解をお願いいたします。
 
【茂木外務大臣】これは第三国間の会談でありますから、それについて日本の外務大臣としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、日米の間では、地域情勢についても完全に認識は一致していると思います。
 同時に、先の日米韓の外相会合で一致しているとおり、日米韓の3か国の協力、これはインド太平洋地域の平和、安定及び繁栄にとっては不可欠でありまして、我が国として北朝鮮への対応をはじめ、地域の安定のために、引き続き日米韓3か国で連携をしていきたいと考えております。

​自由で開かれたインド太平洋

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 渡会記者】日本政府は、安倍晋三前総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」戦略を踏襲し、米豪印と組んで、中国包囲クワッドを形成しています。ここに英独仏蘭の欧州4か国も加わるとのことですが、クワッド+αによる中国包囲網とは、具体的に何をされるのでしょうか。
 海上自衛隊幹部学校の戦略研究論文を見ると、マラッカ海峡を封鎖し、中国への中東からの石油の輸入ルートを遮断する戦略がしばしば出てきます。米海軍大学のトーマス・ハメス博士の提唱するオフショア・コントロール戦略に基づくものです。クワッドの戦略は、このオフショア・コントロール戦略をベースに、マラッカ海峡を封鎖し、中国に石油が入らないようにして、兵糧攻めにするのが狙いと考えてよろしいでしょうか。
 一方で、中国と日本は他の東アジア諸国と共に、RCEPという包括的経済連携協定を結んでいます。中国は、日本にとって最大の貿易相手国であります。RCEPという経済の枠組みと中国包囲網であるクワッドとは相反し、矛盾すると思われますが、今後、クワッドが深まれば、RCEPは放棄し、中国という巨大マーケットも捨てる決断をするのでしょうか。そのときの日本経済のダメージは、どうお考えでしょうか。
 
【茂木外務大臣】終わりですか、よろしいですか。
 
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 渡会記者】はい。
 
【茂木外務大臣】「自由で開かれたインド太平洋」、これは今から5年前、2016年のTICAD6の際、当時は安倍総理でありましたが、日本として提唱したビジョン、考え方でありまして、基本的には「自由で開かれたインド太平洋」、これはインド太平洋、まさに世界の成長センターと、こういう地域でありますが、一方でパワー・バランスの変化も激しいこの地域において、法の支配を始めとする共通の価値や原則、これに基づく自由で開かれた秩序を実現することによって、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくと、こういった考え方に基づく構想であります。
 これは特定の国、これを念頭に置いたものではなく、考え方を共有する幅広い国々と協力していく、包括的かつ開かれたビジョンであると考えております。
 実際にこの「自由で開かれたインド太平洋」、ご案内のとおり日米豪印、この間では、既にこれは、インドネシア沖の地震のときの協力から、2004年に始まったものでありますが、2019年、私(大臣)が外務大臣に就任してすぐに、国連総会の際に外相会談、これを行いまして、その後、毎年外相会談、今年は2月に外相会談、更には3月に初の首脳会談、これも行っているところであります。
 これは安全保障だけではなくて、地域の連結性を強化するための4か国の取組であったりとか、4か国のそれぞれの強みだったりとか、また関係を生かした様々な取組、協力の分野というのも、様々な分野に広がっていると考えております。
 この日米豪印クワッドもありますし、更には一昨年、ASEAN、これはAOIPという独自のビジョン、これを発表したところでありまして、日・ASEAN首脳会議におきましても、FOIPとそれからAOIP、様々な共通の要素・考え方を持っている。従って、協力関係といいますか、ASEANとの協力も広げていきたい。
 そして、EUとの関係におきましては、今年の1月に、私(大臣)がEUの外務理事会、日本の外務大臣として初めて参加をいたしまして、FOIPの考え方を詳しく説明いたしまして、EUの各国外相からも、これを支持すると、協力したいと、こういう意見表明も多くあったところでありまして、そういったものも踏まえて、4月にはEUとしての、このインド太平洋戦略、発表をしたところであります。
 またそれぞれフランスであったりオランダ、更には英国、独自の戦略を発表し、また、独自のイニシアティブを打ち出していると、このように今考えているところでありまして、こういった開かれたビジョンの下で、様々な国との協力が、今広がってきていると、このように考えております。
 同時に、今、世界を見てみますと、コロナ以前もそうでありますが、特にコロナ以降、やはり自国第一主義であったりとか保護主義というものが台頭すると、こういった中で日本として、自由貿易の旗手としてTPP11もまとめ、更には日EU・EPAこれが発効し、更にはTPPから離脱した米国との間では、日米貿易協定、更にはEUから離脱した英国との間では、日英のEPAと、こういったものも結んできまして、昨年、RCEPにつきましても、署名ということに至ったわけでありまして、これはまさに、自由貿易、更にこれはサービスから、そしてデータであったりとか、様々なルール分野、こういったことについて共通の基盤を作っていこうと、こういう取組であります。
 RCEPにつきましては、当初16か国で交渉を進めておりましたが、最終的にインドが合意に至らず、15か国での署名ということになりまして、そこの中には、中国・韓国、含まれておりますが、同時に、既にTPP等に参加しているASEANの国々やオーストラリア、ニュージーランド、こういった国々も含まれているわけでありまして、こういったRCEPにつきましても、しっかり進めていくということが、今必要とされる自由貿易体制の維持・強化にとっては、極めて重要であると思っておりまして、そういったところで日本として主導的な役割を果たしていきたい、こういうものにおきましても、「自由で開かれたインド太平洋」、更には様々な経済連携協定、日本として、各国が受け入れられる、できるだけ多くの国が参加できる、こういう立場から進めている協力であったりとか連携、こういうものの一環だと考えております。

​東京オリンピック・パラリンピック(外国要人の受入れ)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 オリンピックについてお伺いします。オリンピックに際しては、通常多くの外国政府要人が訪日すると思いますが、現時点で訪日予定の要人のリストはありますでしょうか。また、オリンピックに際して、どのような外交を展開されるのでしょうか。さらに、外国政府要人の一部は自国の選手団との面会を認められない、あるいは制限を受ける等の話もあるようですが、このような制限は、要人の落胆の一因となる可能性もあるとも考えます。この点についての情報はありますでしょうか。また、訪日する関係者は、日本でワクチンを接種するのでしょうか。
 
【茂木外務大臣】先月、IOC、そして、組織委員会が、新型コロナ対策をまとめたプレイブックを公表しておりますが、このプレイブックの中では、アスリートに対する防疫措置として、人との接触を最小限にすること、そして、活動場所の制限等が示されていると承知をいたしております。
 やはり、安心・安全な大会にする、これが何より重要だと考えておりまして、政府としても、東京大会に際して、先ほどのプレイブックも踏まえて、訪日する外国政府要人に対して、選手との接触、本来であれば激励したりとか、自分の国の選手でありますから、できるだけ応援したい、こういう気持ちは十分あるから訪日をしていただけるんだと、こういったことも理解しておりますが、どうしてもそういった防疫対策・感染対策も含めて、選手との接触については自粛をしていただくようにお願いすることを検討しておりまして、その旨在京の大使館にも説明をしたところであります。
 外国要人の受入れ、これはオリンピックにとっては非常に重要な機会でありますが、今回は感染対策をしっかりと行うと、これを前提にしながら、できる限りハイレベルの外交、こういったものを展開していきたいと考えております。

​姜昌一駐日韓国大使の信任状捧呈式

【産経新聞 石鍋記者】日韓関係についてお伺いします。昨日、韓国の姜昌一(カン・チャンイル)駐日大使が天皇陛下に信任状を捧呈しました。日韓間には慰安婦問題を始め、多くの課題がありますが、姜大使に期待することがあればお聞かせください。併せて、大臣自身が大使と直接お会いする考えはおありでしょうか。お願いいたします。
 
【茂木外務大臣】まず、日韓については、5月5日、G7外相会合の際にロンドンで、鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官と外相会談を行ったところであります。現在の日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題、そして慰安婦問題等によりまして、かつてなく厳しい状況にあるわけでありますが、政府としては問題の解決に向けて、適時適切なレベルで意思疎通を図ってきておりまして、今後もそうしていきたいと考えております。
 姜大使、正式に信任状捧呈式終わったということでありまして、大使としての活躍、期待しておりますし、こういった今の関係も踏まえて、適切な対応と、これを期待をするところであります。