厚労省・新着情報

日時

令和3年3月5日(金) 10:00~12:00

場所

中央合同庁舎5号館仮設第1会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
上野晋、圓藤吟史、武林亨、角田正史、野見山哲生

厚生労働省:事務局
西村斗利、西岡邦昭、中山始、中村昭彦 他

議題

  1. (1)労働基準法施行規則第35条別表第1の2第4号の1の物質等の検討について
  2. (2)今後の検討事項について
  3. (3)その他

議事

議事録
 ○古山係長 全員の接続が確認できましたので、労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会を開催いたします。先生方におかれましては、お忙しい中ご出席頂きまして、大変ありがとうございます。
 それでは、座長の圓藤先生に議事の進行をお願いしたいと思います。
○圓藤座長 まず、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○古山係長 資料の御確認をお願いいたします。本分科会はペーパーレスでの開催としておりますので、お手元のタブレットや、事前に送付させていただいた電子媒体のご確認をお願いします。
 資料1-1が化学物質評価シートで、資料1-1がSDS交付対象物質に関するもの、資料1-2がシャンプー液等による接触性皮膚炎のものになります。資料2及び資料3が、業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究報告書です。こちらは、評価をお願いした際に事前に送付させていただいております。資料4は発がん性に係る現状について(事務局案)、資料5が「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」概要、資料6が「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」報告書となっております。机上配布資料1-1及び1-2として、資料1-1及び資料1-2の評価シートに評価を行っていただいた先生のお名前を記載したもの、机上配布資料2として、労災認定事例の一覧、机上配布資料3として、ACGIHによる許容濃度提案理由書、机上配布資料4として、産業衛生学会による許容濃度提案理由書、机上配布資料5として、化学物質のリスク評価検討会報告書となっております。机上配布資料3から机上配布資料5は、オンラインで御参加の先生方には、各物質の評価をお願いする際に送付させていただいております。資料の不足等はございませんでしょうか。
○圓藤座長 それでは、最初に事務局より資料の説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料1-1について説明いたします。これは、SDSの交付義務がある物質のうち、今回の検討対象となった73物質についての評価をまとめたものになります。前回の分科会では、それぞれの物質について、2名の先生方に評価を行っていただいた結果をお示ししましたが、追加で3名の先生方にも評価を行っていただきました。
 資料1-2について説明いたします。これは、シャンプー液等による接触性皮膚炎に関する物質についての評価をまとめたものになります。前回の分科会において先んじて評価を実施した2物質、すなわち、システアミン塩酸塩、コカミドプロピルベタインについては、5名の先生の評価をまとめており、他の16物質については、新たに2名の先生に評価を行っていただきました。資料1-1及び資料1-2については、今回新たに評価を行っていただいた先生の分を白いマスで表示しています。以上について、短期間での膨大な作業となってしまいましたが、先生方におかれましては、お忙しい中御対応いただき、誠にありがとうございました。
 資料2及び資料3は、先生方には評価シートの作成に当たって事前に送付させていただきましたが、厚生労働省の実施した調査研究の報告書になります。今回、評価を行う基となる資料の1つです。資料4は、今後検討予定としていた発がん性に係る検討について、その項目、検討の経緯及び検討方法を事務局案としてまとめたものになります。資料5及び資料6は、厚生労働省において令和2年3月から12月にかけて開催した「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」の検討結果の概要とその報告書になります。これについては、最後に御説明します。
 机上配布資料1-1及び机上配布資料1-2は、資料1-1及び資料1-2に評価を行っていただいた先生方のお名前を記載したものです。机上配布資料2は、今回の検討対象物質が原因で発生した傷病に関して、過去に労災認定された事例の一覧です。この認定事例については、前回の分科会でお示ししましたが、先生方から「傷病の発生状況などについて、もう少し詳しい情報が欲しい」との御意見を頂いたことから、今回、監督署の調査復命書などを参照し、より詳しく記載しました。これらの事例については、該当する個々の物質の検討の際に改めて御説明します。机上配布資料3は、各物質のうち、ACGIHから許容濃度が提案されているものについての提案理由書になります。机上配布資料4は、各物質のうち、日本産業衛生学会から許容濃度が提案されているものについての提案理由書になります。机上配布資料5は、厚生労働省の化学物質対策課で行われている「化学物質のリスク評価検討会」による各物質の報告書になります。資料の説明は以上です。
○圓藤座長 それでは、先生方に作成いただいた評価シートに基づき、各物質の検討に入りたいと思います。まず、SDSの交付義務のある673物質から既に大臣告示等に規定されている物質を除いた物質のうち、当該化学物質による症状又は障害に関して症例報告が一定数ある物質及び平成25年度の35条専門検討会において検討されたものの大臣告示に規定されていない物質について、現在までに症例報告がなされた物質のうち、一定の症例報告がある物質の2つについて、別表第1の2第4号1に基づく大臣告示に追加するか否かを検討したいと思います。まず、事務局から説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 前回の分科会において、厚生労働省の調査研究により絞られた73物質について、2名の先生方に割り振らせていただき、調査研究報告書等を基にした評価を行っていただきました。そして、今回の分科会までに、それぞれの物質について、追加で3名の先生方にも評価を行っていただきました。これらをまとめた評価シートに基づき、検討を進めていきたいと思います。評価シートにおいて、灰色で塗った部分は、前回評価を行っていただいた2名の先生による評価、白色の部分は、新たに評価を行っていただいた3名の先生による評価になります。そして、黄色で塗った部分は、前回評価を行っていただきましたが今回修正いただいたものになります。
○圓藤座長 評価の進め方についてですが、5名の先生方の全員が「×」としたものについては、労災認定事例一覧として上がっているもの以外については、特段の議論をせず、現時点では検討対象とする必要はないに分類したいと思います。その分類に対して異議があるような場合は、発言をお願いします。また、1名でも「△」以上の評価がなされた物質については、担当の先生から評価の理由並びに今後の検討対象とするか否かについて、御意見を頂きます。そのような進め方でよろしいでしょうか。
(了解)
○圓藤座長 早速、評価シートの順番に沿って進めます。基本的には、今回新たに評価を行っていただいた3名の先生の御意見を伺いますが、他の2人の先生方におかれましても、必要に応じて御発言いただければと思っております。また、労災認定事例がある場合には、事務局より御説明をお願いいたします。
 それでは、1番から進めていきます。アセトニトリルです。これは5名の先生とも×ですので、特段の議論なしに、現時点では検討対象とする必要はないと分類してよろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。エタノールについても全員が×でございますが、1例の労災認定事例がございますので、事務局から説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 1件、労災認定事例がございます。傷病名は「ガス中毒症疑い、消毒用アルコールの誤吸引」となっています。本事案は、前回の分科会において「ガス中毒症疑い」ということで報告しましたが、詳しく傷病名を確認したところ、消毒用アルコールの誤吸引という傷病名も記載されていました。
 発生状況について説明します。被災者は食料品の製造工場に勤めていた労働者です。冷凍食品の予冷室内にて器具殺菌のためアルコール噴霧機を使用していた際、アルコールの蒸気を吸入したというものです。成分としては、エタノール65.7%、乳酸ナトリウム0.1%、グリセリン脂肪酸エステル0.1%というものでした。現場は狭い密室で、被災者は予冷の風下で作業していました。被災者はマスクを着用しており、作業時間は2分程度でしたが、作業終了後に具合が悪くなり、休憩室で休んだ後、早退しました。その後、自宅で安静にしていましたが、入浴後に再び具合が悪くなり、急患で医療機関を受診後、検査入院しました。4日間休業しています。なお、被災者はアルコールが一滴も飲めない体質でした。事業場においては、それまで被災者のほかにこのような症状を呈した者はいないという状況でした。
○圓藤座長 今の労災認定事例について、御意見を頂きます。いかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。それでしたら、このような症例がほかにもあるのかないのか、調査していただきまして、次回に改めて検討するということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。では、次回に改めて検討するということにさせていただきます。
 続きまして、エチルメチルケトンペルオキシドについて、全員が×ですので、検討対象とする必要はないとさせていただきます。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。続きまして、エチレングリコールです。これについても、全員が×ですので、現時点では検討対象とする必要はないとさせていただきます。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続いて、オゾンにつきましては、私1人が△です。ACGIHに少し記載がありますが、症例数が多数あるとは思えないので、私は検討対象とする必要はないと判断いたします。ほかの先生方は×ですので、検討対象とする必要はないにしてよろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続いて、カーボンブラックについてです。カーボンブラックについては、報告されている症例でじん肺がございますが、これはじん肺に含まれていると思いますので、それ以外については、検討対象とする必要はないとさせていただいてよろしいでしょうか。それでは、×にさせていただきます。
 続きまして、銀及びその水溶性化合物についてです。これについても全員が×ですので、現時点では検討対象とする必要はないに分類させていただきます。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続いて、酢酸です。酢酸についても同様ですので、現時点では検討対象とする必要はないにさせていただきます。続きまして、2-シアノアクリル酸エチルです。これにつきましても、現時点では検討対象とする必要はないに分類させていただきます。続いて、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸です。こちらについても全員が×ですので、現時点では検討対象とする必要はないに分類させていただきます。続きまして、2,4-ジニトロトルエンについてです。こちらにつきましては、私と上野先生が△です。上野先生、御発言いただけますでしょうか。
○上野委員 私が△にしたのは、2,4-ジニトロトルエンそのもの、あるいは加熱して生じる窒素酸化物、これが圓藤先生が御指摘していらっしゃるメトヘモグロビン血症を起こすのかどうか、それがまた労働現場で起こり得るかというところが、ちょっとこれだけでは分からなかったので、×に近い△というような感じで評価をさせていただいたということです。
○圓藤座長 肺がんに関しては×というのが、武林先生、角田先生から出ておりますので、肺がんに関しては×にさせていただいてよろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 メトヘモグロビン血症が多数例あるかどうかということを、もう一度検討する必要はございますでしょうか。いかがいたしましょうか。私の見たところ、それほど多くはなかったのですが、上野先生も同様でしょうか。
○上野委員 そうですね。労働の現場で起こり得ることがそんなに多くないということであれば、現時点で取り上げる必要はないのではないかと思います。
○圓藤座長 では、一旦、検討対象にする必要はない、×扱いにしておきますが、次回までに調べて、あるようでしたら復活させるということも考えますが、×にしておきましょうか。では、×にしておきます。
 次は、すず及びその化合物です。野見山先生、何か御意見を頂けますでしょうか。
○野見山委員 私が書いていますが、粉じんによるものであるとすれば×でいいのではないかと思いますということです。
○圓藤座長 すず及びその化合物というのに、スズ、塩化スズ(Ⅱ)、塩化スズ(Ⅳ)、フッ化スズ(Ⅱ)と幾つかありまして、ものによって違う気がいたします。いかがいたしましょうか。今、粉じんとするならば×にしようという御意見でした。
○野見山委員 先生が今おっしゃられたのは、あとアレルギーの話でしょうか。
○圓藤座長 はい。
○野見山委員 その可能性はあると思うのですが、多分、塩化スズとかフッ化スズとか、いろいろ皮膚の症状が出ているのですが、それに関しては、頂いたものからはエビデンスに不足があるのではないかということで、×だと思いました。
○圓藤座長 私は、すず及びその化合物と一括するのではなく、スズ、塩化スズ(Ⅱ)、塩化スズ(Ⅳ)、フッ化スズ(Ⅱ)というように分けて、それぞれについて評価したほうがいいと思いました。それらを含めて、次回にもう一度見てみますか。今のところ、すず及びその化合物でそれほど業務上災害が起こっているようには思えないのですが、一旦残しておいて、次回に検討しましょうか。
○角田委員 最初に出てきたジルという方の論文で、皮膚症状が職業性ばく露によるものと考えられるので、次回に似たようなものがないかどうかということで検討してもいいのではないかと思うのです。
○圓藤座長 分かりました。ジルの論文でのすず化合物の種類と似たようなものがあるかどうかも含めて、次回に改めて検討するという扱いにさせていただきます。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続きまして、タングステン及びその水溶性化合物です。角田先生が○にされていますが、御発言をお願いいたします。
○角田委員 これは、じん肺の話なので、じん肺が別ならば、これと区別できるならばいいのですが、じん肺が明らかに出ていますので○にしてしまったというだけでございます。
○圓藤座長 じん肺に関しては、改めてじん肺の中にタングステン肺というのを含めてあるかどうかを見てみる形で、次回に改めて検討することとしたいと思います。じん肺以外に関してはいかがでしょうか。じん肺の種類の中に、タングステン肺というものの特徴を見ていきたいと思いますので、次回に改めて検討するにさせていただきます。
 続きまして、チオりん酸O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)(クロルピリホス)です。これについてはいかがでしょうか。△が2、3名おりますが、いかがいたしましょうか。どなたか御発言お願いします。
○武林委員 ここに書きましたように、ここにあるものだけで因果関係の判断、この物質で言うことは難しいのではないかということで書かせていただいております。それが明確になるのであれば、もう少し情報を集める、あるいは評価をということがありますが、これだけでは判断が難しいのではないかということで、△としました。
○上野委員 前回このクロルピリホスを議論したときに、結構使われているのではないかという御意見もあったので、具体的に調べてみて、そこに追記していますが、果実栽培において希釈液を散布する形で使用されていると。例えばリンゴだと、75%溶液を3,000倍に希釈して、10アール当たり200~700Lを収穫45日前までに1回散布するというやり方が決まっているようなのです。そういう中で職業性のばく露というのが起こり得る、あるいはそれに関する疫学的なエビデンスがどのぐらいあるのかどうかというところかと思いますし、余りまだそういうことがなければ、まだそこまで議論しなくてもいいのかなというところです。
○圓藤座長 私も同意見ですので、ほかに報告があるかどうかを調べたいと思います。次回に再検討のほうに回します。
 続きまして、銅及びその化合物です。これについては全員が×ですので、検討対象とする必要はないに分類いたします。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続きまして、二酸化塩素です。角田先生、野見山先生が、御検討されたように思います。野見山先生、御発言をお願いします。
○野見山委員 前回の事故事例では×にしていたのですが、ACGIHの報告を見ていると刺激性が認められるということが書いてあって、おおむねそうだろうということで、それが気道障害あるいは前眼部の障害、そういう刺激性として加えてもいいと判断いたしました。
○圓藤座長 労災認定事例があるようですので、事務局から報告をお願いします。
○秋葉中央職業病認定調査官 パルプ・製紙会社の作業員が「塩素ガス中毒」、「角膜化学外傷」という傷病名で労災認定された事例があります。
 災害発生状況ですが、建屋の天井からコンクリート片が剥がれて落下し、パルプの漂白に使う二酸化塩素水(濃度:約0.9wt%)を通す塩化ビニルの配管が破損しました。この配管から液体が漏れて気化し、建屋全体に拡散し、建屋内にいた作業員14名が気化した二酸化塩素ガスを吸い込み、眼の痛み、咳、呼吸苦などの症状を訴えました。作業員は防毒マスクを着用していたが、ガス濃度が高かったため吸引してしまったというものです。14名のうち7名が塩素ガス中毒、5名が塩素ガス中毒の疑い、2名が角膜化学外傷と診断されました。塩素ガス中毒7名のうち3名は救急搬送され、約1週間入院しました。全員1か月以内の療養期間で治ゆとなりました。
○圓藤座長 今の事例及びACGIH等の報告されているものを含めて、御意見を頂きたいと思います。議論するとしたら、前眼部障害、気道障害、上気道障害の辺りが検討課題かなと思いますが、いかがいたしましょうか。
○角田委員 労災認定は事故的なものですが大量に出ていますし、この物質だと、いかにも塩素ガス中毒というか、粘膜障害とか気道障害を起こしそうなので、これは可能性はかなりあるかなと思って、ACGIHに御指摘いただいたところを見ても、そうかなと思って△にしました。
○圓藤座長 ということで、次回に改めて検討するほうに残しておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、前眼部病変並びに気道ないし気管支障害のところで検討したいと思います。症状、障害名として妥当なものがあるかどうかも含めて、次回に改めて検討させていただきたいと思います。
 続きまして、ニトロメタンです。これについては全員が×ですので、これは現時点では検討対象とする必要はないにいたします。続いて、白金及びその水溶性塩についてです。これについては△の方々が多いのですが、御発言をお願いいたします。
○上野委員 私は、COPDに関しては少し文献を評価すべきではないかと考えたので、△にさせていただきました。
○角田委員 私も一緒で、メタアナリシスでそれぞれの文献の詳細が分からないので、これらについては確認すべきではないかと思いました。
○武林委員 疫学だけで因果関係を評価できるかというのは自信がないなと思っていましたので、もし可能であれば、それをサポートするメカニズムについても検討しないと、なかなか因果関係ありというところまでは難しいのではないかと思いました。
○圓藤座長 野見山先生も同じようなことでしょうか。
○野見山委員 はい。
○圓藤座長 次回に改めて検討するとしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。続きまして、バリウム及びその水溶性化合物です。野見山先生、発言はございますでしょうか。
○野見山委員 ×です。
○圓藤座長 労災認定事例があるようですので、事務局から御説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 バリウムについては、1件、「S状結腸穿孔、急性汎発性腹膜炎」という傷病名での認定事例があります。教育業の事務職員が、事業場の定期健康診断にて胃のレントゲン撮影のためにバリウムを飲みました。その後、下剤を服用し便の排出もなされたが、5日後に腹痛を生じ、医療機関を受診したところ、バリウムが排出されていないことが認められ、S状結腸穿孔、急性汎発性腹膜炎にて緊急手術が行われました。その後の経過は良好で、10日後に退院しています。被災者には便秘の素因が認められましたが、主治医の「バリウムで高度な便秘となり、S状結腸穿通、腸管膜および後腹膜膿瘍を発症したと推測される」との医学的意見を基に、監督署が業務起因性を認めたという事例です。
○圓藤座長 業務中というより、定期健康診断で胃部のレントゲン撮影を行ったということですので、通常の労災認定とは違う発症の仕方だろうと思いますが、皆様方から御意見はございますでしょうか。
○角田委員 定期健康診断によっての話なので、どちらかと言うと、業務で絶対に定期健康診断を受けなければいけないわけではありますが、医療事故に近いところもありますので、これは、これをもって労災の事例に載せるべきではないと考えます。
○圓藤座長 ほかの先生方はいかがでしょうか。
○野見山委員 これ1例だけなので、それをもって、これと直結して、そうだというように言い切るのはどうかと思います。
○圓藤座長 ということで、バリウムに関しては×、検討対象とする必要はないにさせていただきます。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。続きまして、ブタンです。ブタンについても全員が×ですので、現時点では検討対象とする必要はないに分類いたします。 次に、イソプロピルアルコールです。これも全員が×です。労災認定事例があるようですので、事務局から御説明をお願いします。
○秋葉中央職業病認定調査官 1件、認定事例があります。電気機械器具製造業の労働者の事例です。部品洗浄業務を行う部署に配属された当日から、純度100%のイソプロピルアルコールを取り扱う作業に6日間従事していたところ、ふらつき、頭痛、異常発汗、吐き気、縮瞳の症状が現れ、医療機関を受診した結果、イソプロピルアルコール中毒と診断されました。約5か月療養した後に症状固定となりました。事業場の作業環境測定の結果は区分1で、被災者以外にイソプロピルアルコールで体調に異変を来した者はいなかったことから、常時イソプロピルアルコールが高濃度で揮発しているという作業環境ではなかったと考えられるが、監督署で調査したところ、被災者は6日目の作業時にイソプロピルアルコールが入った一斗缶を倒してしまい、その際に防毒マスクを着用しないままウエスで吹き取るということを行っていました。その際に高濃度(400~800ppm)のイソプロピルアルコールのばく露があったと判断されたものです。
○圓藤座長 御意見はございますでしょうか。
○角田委員 これは1例の事故的ばく露による労災と考えていいと思いますので、それをもって追加する必要はないかと思います。
○圓藤座長 ほかに労災認定事例があるかどうかを調査していただきまして、ないようであれば×にしたいと思いますので、現時点では△にしておいて、次回に改めて検討すると、なければ×とするということで対応したいと思います。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続きまして、モリブデン及びその化合物についてです。これは全員が×ですので、現時点では検討対象とする必要はないに分類いたします。
 続いてロジンです。これにつきまして、野見山先生、御意見はありますか。
○野見山委員 ACGIHのジャッジが感作性分類ありで、その文章を見る限りは呼吸器や皮膚にあるように感じました。ですので、場合によってはもう少し文献を精査して決めてもいいのではないかと思います。以上です。
○圓藤座長 では、そのようにさせていただき、次回改めて検討するほうに分類させていただきますが、よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 アルファーナフチルアミン及びその塩です。発がん性については別扱いにしたいと思いますが、それ以外については特に所見はないように思います。皆さん×ですので、よろしいでしょうか。アルファーナフチルアミンは現在、許可物質という扱いですので、極めて限られた取扱いの仕方になっているかと思っております。現時点では×にしておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 アクリル酸についても、現時点では検討対象としないに分類させていただきます。アジピン酸については、若干△のものがありますが、武林先生、御意見を頂けますでしょうか。
○武林委員 そこに書きましたが、圓藤先生も書かれているように接触皮膚炎ということだと思いますが、その場合の症例が例えばどれぐらいの集積でこの表に載せるのかという全体の判断の中で考えるべきかなと思って、このように記載いたしました。
○圓藤座長 何例ぐらいあるのかを次回調べて、可否の判断をしたいと思います。次回、改めて検討を行いたいと思います。
 亜硝酸イソブチルは全員が×ですので、検討対象とする必要がないに分類いたします。アスファルトは、私だけが○です。アスファルトのばく露で皮膚炎、皮膚障害があるのではないかと思ったのですが、これもどれだけの症例数があるのかというのを調べる必要があるかと思います。先生方、いかがでしょうか。取りあえず、次回改めて検討するほうに分類させていただきます。
 亜硫酸水素ナトリウムは全員が×ですので、検討対象とする必要はないに分類いたします。アリルアルコールですが、私は鼻や眼への刺激性が少数例認められるにしておりますが、それほどないのかもしれません。先生方の意見は×ですので、検討対象とする必要はないのほうに分類して、よろしいでしょうか。では、×にいたします。
 アルミニウム及びその水溶性塩です。アルミニウム肺は、じん肺の1つとしてあるのではないかと思います。それを除いて、私が△にしたのは、フッ化アルミニウムと塩化アルミニウムについては個別に議論する必要があると思ったからですが、いかがでしょうか。それも、それほど多く症例数があるようには思えないのですが。
○角田委員 ただ、フッ化物とかになると、酸化アルミニウムみたいなあの手のものとはちょっと違いますので、症例を見ておいてもいいかなという気もいたします。
○圓藤座長 そのように個別に分けて、必要なものがあれば個別の物質名にして検討したいと思います。よろしいでしょうか。フッ化アルミニウムと塩化アルミニウムについて、次回検討したいと思います。
 一酸化二窒素については、全員が×ですので、検討対象とする必要がないに分類いたします。ウレタンについても、同様にしたいと思います。続いて、ジクアットについても、全員が×ですので、検討対象とする必要はないにいたします。オメガ-クロロアセトフェノンですが、防犯グッズの催涙スプレーとして市販されており、日本の警察も保有しているので、公務災害にあるのかどうかという検討は必要あろうかと思いますが、余り報告されているようには思えません。特段意見がないようでしたら、現時点では検討対象とする必要はないにしたいと思います。もし事例が見付かりましたら復活することもあり得るということで、一旦検討対象から外したいと思います。
 クロロエタン(塩化エチル)に関しても同様で、検討対象にする必要がないにします。2-クロロベンジリデンマロノニトリルも、先ほどと同じような催涙ガスですので、公務災害の中にあり得るのかもしれないと思い、私は○にいたしましたが、先生方の御意見を頂きたいと思います。
○角田委員 これは、先ほどの35番とほぼ同じような用途というか例なので、同じような扱いで、新しい例が出た場合ということを少し考えるぐらいでいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○圓藤座長 ということで、我が国で事例がないようでしたら、一旦×にしておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、37番は現時点では検討対象とする必要がないに分類しておきます。それから、結晶質シリカについては、じん肺の中で結晶質シリカというのは位置付けられているのですが、野見山先生、じん肺の中にある形でよろしいでしょうか。それとも。
○野見山委員 それでいいと思います。
○圓藤座長 既にじん肺の中で明確に書いていると思いますので、追加することはないということで、×にしてよろしいでしょうか。他の先生方、いかがでしょうか。ないようですので、結晶質シリカは、現時点で検討対象にしないにさせていただきます。
 鉱油、ミネラルスピリットについて、私は若干あると思ったのですが、純度や成分によってかなり違いがあるようですが、×にしてよろしいでしょうか。では、現時点では検討対象にしないにいたします。
 続いて固形パラフィンについて、上野先生、角田先生、御発言いただければ幸いです。
○上野委員 先ほどの鉱油ではリポイド肺炎というのがあって、固形パラフィンで同様に発症する可能性があるのか、ちょっとそれの判断がつきませんでしたので、△という形にさせていただきました。以上です。
○角田委員 私も、引用文献、先行論文があるということが出ていたので、それと合わせて判断すべきかなと思って、△に。
○圓藤座長 そうしたら、次回改めて検討するということで、一旦ここでは△の扱いにしておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続いて、酢酸ビニルです。私は前眼部障害とか気道障害とかを検討してもいいのかなと思いつつ、それほど症例がなさそうなので△にしております。武林先生も、「ACGIHは、古い年代の研究」であるとされておりますが、他の先生方、いかがでしょうか。×にしましょうか、それとも次回改めて検討するほうに持っていきましょうか。一旦×にしておきましょうか。では、酢酸ビニルは現時点では検討対象としないにいたします。
 酸化チタンに関しても、全員が×ですので、検討対象としないにいたします。酸化鉄に関しても、同じ扱いにいたします。続いて、HCFC-123ですが、△と○があります。高濃度ばく露で肝障害が見られるということでしょうか。現時点では△扱いにして、次回改めて検討するとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。どのぐらいの症例数があるかどうか、検討したいと思います。
 次はホレートですが、これについては全員が×で、現在日本での使用が禁止されていますので、検討対象から外したいと思います。続いて、マラチオンです。角田先生、野見山先生が△ですので、御発言をお願いします。
○角田委員 医療担当者の二次災害事例なので、これを職業性とするのはちょっとと思ったのですが、二次災害をもし入れるとしたらということなのですが、そういう意味で二次災害だから違うかなという気はしたのですが、一応3人の症例があったから、こういう評価にしました。
○圓藤座長 ありがとうございます。野見山先生、お願いします。
○野見山委員 機序としては起きるものだろうと思います。ただ、この症例とかこの研究で、十分ジャッジできるかどうかということで、症例がなければ×でもよろしいかと思いますが、ちょっと気になったので△にいたしました。
○圓藤座長 では、現時点では△扱いにして、次回改めて検討するにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。そうさせていただきます。続いて、ジベンゾイルペルオキシドは、全員が×ですので、現時点では検討対象とする必要がないにいたします。臭化水素については、いかがですか。○ないし△がありますが。
○角田委員 これは酸としては強いので、吸入すれば起こるので、3件ではないのですけれども、基本的にはそれは起こるだろうと思ったので、△にしたのですけれども。
○圓藤座長 例数がどのぐらいあるのかというのを調べていきたいと思います。△扱いにして、次回改めて検討するにしたいと思います。しゆう酸です。私は、刺激性が強いが症例数が少ないとしました。先生方は×にしておりますので、×として検討対象とする必要はないにさせていただきます。しょう脳に関しては全員が×ですので、検討対象としないにいたします。水酸化カルシウムについては、私は○にしていますが、×、△があります。これについては、労災認定事例があるようですので、事務局より御説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 1件、化学熱傷での認定事例があります。養鶏場の管理を行っていた作業員の方が、鶏舎の消毒のために石灰を撒いていたところ、長靴に入れ込んでいたズボンの裾が汗で湿り、そこに石灰が付着して発熱したというものです。以後数日は自分で用意した薬で対処していたが、症状がひどくなってきたため医療機関を受診した結果、化学熱傷と診断されました。療養のため1か月間休業しています。
○圓藤座長 その症例について御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。石灰は、水酸化カルシウムになりますので、水酸化カルシウムという扱いでいいと思っています。また、セメントも主成分は石灰石で水酸化カルシウムができますので、水酸化カルシウムについて検討してはいかがかと思います。今回は△扱いにして、症例がどのぐらいあるのかというのをしっかり調べたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○上野委員 圓藤先生、一応私はコメントに書いておりますけれども、創傷という雑誌に、本邦のセメント熱傷の報告例がどうやら1981~2017年にかけては13例あったというような報告もありましたので、またそれも含めて検討していただければと思います。
○圓藤座長 分かりました。水酸化カルシウムとするのがいいのか、石灰という形のほうがいいのか、セメントというのがいいのかというのもありますし、傷病名に関しても、皮膚障害という形がいいのか、いろいろな形がありますので、それらを含めて次回検討したいと思います。よろしいでしょうか。そのようにさせていただきます。
 続いて、石油ナフサは、こちらについては全員が×ですので、検討対象とする必要はないにいたします。石油ベンジンについても同様です。ジスルフィラムについても、全員が×ですので、検討対象から外します。灯油については、いかがでしょうか。△が2、3名おります。上野先生、御発言いただければ有り難いです。
○上野委員 灯油による皮膚炎というのは、接触皮膚炎としてガイドラインにも記載されているものなのですけれども、これが業務起因性というか、労働の現場において起こり得るのかどうかというところだと思います。以上です。
○圓藤座長 武林先生、職業性としては不要というようなコメントがありますが、いかがでしょうか。
○武林委員 今の上野先生からのコメントと同趣旨です。
○圓藤座長 では、その辺りを含めて、次回再検討したいと思います。よろしいでしょうか。次回、改めて再検討いたします。次は、トリエタノールアミンです。私は×にしていたのですが、2例労災認定事例があるようですので、事務局より御説明願いたいと思います。
○秋葉中央職業病認定調査官 1件が「喉頭炎疑い、喘息増悪疑い」、もう1件が「右化学熱傷(Ⅱ度)、右眼瞼縁炎、右角血膜びらん」の傷病名で労災認定されています。1件目の事案については、前回の分科会において、傷病名を化学性気管支炎と報告しましたが、詳しく調べたところ、医療機関のほうでは今お伝えした傷病名で診断されていました。金属材料品の製造業務に従事していた労働者が、旋削した金属の切粉をクラッシャーという機械で潰す際に、切粉に付着した切削油が気化していました。この切削油には、トリエタノールアミンが1~10%、2-エチルヘキサン酸が1~10%含まれていました。通常はマスクを着用するが、その日は暑かったため着用せず、クラッシャーの動作確認をするために金属屑の排出箇所を10分ほどのぞき込んだところ、咳が出始め、翌日に喉の痛みが起こり、その2日後に発熱しました。主治医の意見書によると、「咳については喘息の素因が関連している可能性もあるが、従来の喘息治療でも改善に乏しいことから、切削油の吸入が直接に粘膜障害を起こした可能性がある」とされ、この診断となりました。約3か月間療養し、治ゆとなっています。
 2件目の事例は、食料品の製造工場で働いていた作業員が、工場の製造ラインを洗浄するため、アルカリ性洗剤を取り扱っていました。この洗剤の成分としては、テトラアルキルアンモニウムアジピン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、トリエタノールアミンが含まれていました。この洗剤を20L容器から小容器に移し替えた後、20L容器を定位置に戻したところ、容器に付着していた洗剤のしずくが右眼に入り負傷したものです。水で洗い流したものの、20~30分後痛みがひどくなり、医療機関を受診したところ、この診断がなされました。眼の洗浄及び点眼・軟膏による治療が行われた結果、2週間で治ゆとなりました。以上です。
○圓藤座長 いかがでしょうか。先生方、△が付いておりますが、この2例を含めて御発言いただきたいと思います。
○角田委員 ACGIHの文書で、相当あると、7つの論文で出されて確認されているという表現があったので、その論文をちょっと見てみて、数が十分あるのかを判断する必要があるので、△にしました。
○圓藤座長 ほかの先生方、いかがでしょうか。角田先生のご意見は、皮膚障害ということで7つの論文を挙げておられるということ。それから、労災認定事例というのは、1例目は上気道での影響、切削油による影響です。2例目は眼瞼炎、角膜炎、角膜びらんという眼の症状が、前眼部病変として現れていると。それから、1例目の労災認定事例のほうは、切削油の中の成分としてトリエタノールアミンが入っているということで、トリエタノールアミンが主たる原因物質なのかどうか。2例目のほうは、アルカリ性洗剤ということで、その中にトリエタノールアミンが入っているということです。それらを含めて、トリエタノールアミンかどうかということを検討する必要があると思います。また、症状又は障害として、皮膚、眼、気道の3つがありますので、それらについて整理する必要があろうかと思います。よろしいでしょうか。次回検討するという形にしたいと思います。
○野見山委員 すみません、先生のおっしゃるとおりなのですが、先ほど角田先生からも言及があったACGIHは、全部アレルギーに関する文献だと思うのですけれども、その辺りがあるとジャッジしやすいかと思いました。それから、先ほど先生が御指摘のように、アルカリ性による腐食というか障害なのか、あるいはアレルギーなのかというところが、ある程度分かればいいと思うのですが、トリエタノールアミンがアルカリ性であればそこに含まれて、刺激も入るかもしれませんが、その辺りが弁別できると、この辺りが明確にどちらか、できるかなと思います。
○圓藤座長 アレルギーなのか、アルカリ性による刺激性なのか、少しトリエタノールアミンの物理化学的性質も見てみたいと思っております。それを含めて再検討したいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 続いて、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸は、全員が×ですので、検討対象とする必要はないに分類いたします。カルバリルに関しても、全員が×ですので、外したいと思います。ニコチンについて、御意見を頂きたいと思います。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 これは、前回も圓藤先生から御質問を受けて、もう少し調べさせていただいたのですが、恐らく調査書で取り上げられたのは、いわゆるグリーン・たばこ・シックネスという、要するにたばこ産業の実際にたばこの葉とかを採られる方々に発症する、急性のニコチン中毒ということだと思います。結構、海外の症例の話が最初は眼についていたのですけれども、探していた中で、15年以上前の文献ですけれども、1つだけそこに書いておりますように、熊本県の南部のたばこ収穫作業従事者1,067人の報告がありました。これはアンケート調査でしかないのですけれども、そういった結果から頭痛とか目眩、悪心、嘔吐、脱力感を伴う全身倦怠感、動悸、下痢、咳嗽といったグリーン・たばこ・シックネス関連症状が、多いものでは5%以上に出現していて、病院を訪れた収穫作業従事者の約4割ぐらいがGTSを患っていたというような報告があったのはあったのです。ただ、角田先生が御指摘のように、農業従事者のばく露ということで、これをどこまで消化すべきかどうかというところが、ちょっとまだ判断でき兼ねます。以上です。
○圓藤座長 野見山先生、御意見をどうぞ。
○野見山委員 農業従事者のものであれば、それは職域のものですから取り上げるものとしてはいいと思いますが、あとはニコチンのばく露とある程度一貫性があるかどうか。ただ、1個の文献ではちょっと弱いという印象があります。あと、ACGIHのものを見ている限りでは、事故的ばく露とボランティアにばく露させているものでの結果ですので、ちょっと厳しいかなと思って×にいたしました。ですから、あと文献が追加できるかどうかかなという気がしています。以上です。
○圓藤座長 上野先生が挙げられた文献は興味あるところではありますが、そのほかにもあるかどうかを含めまして、次回検討したいと思います。改めて検討するほうに分類したいと思います。続きまして、マスタードガスです。これは全員が×ですので、検討対象とする必要はないにいたします。フェノチアジンにつきまして、いかがいたしましょう。自殺目的の場合は外しておきたいと思いますが、職業性の場合は△が少しございますので、次回、改めてにしたいと思います。続きまして、DEHPです。武林先生。
○武林委員 これ自身はちょっと評価しにくいのだと思いますが、こういう母体ばく露から胎児影響というのが労働の方でもあり得ることを考えると、全体の整理としては必要かなということで、このようなことを付けています。
○圓藤座長 ありがとうございます。ただ、現在の列挙していく中には、胎児への影響につきまして明確に方向性は決まっておりませんが、今までは外していたと思いますので、現時点では検討対象とする必要はないにしておきます。
 次、ハロタンにつきましては全員が×ですので、外したいと思います。ヘキサクロロエタンにつきましても同様にしたいと思います。続きまして、ベンゾ〔a〕アントラセンも同様にしたいと思います。ほう酸及びそのナトリウム塩につきまして、角田先生、ご発言はありますでしょうか。
○角田委員 ACGIHの文書にあったものですから、呼吸器症状や粘膜症状は起こす可能性はあるかなということで、確認していただきたいということです。
○圓藤座長 私も同様ですので、これは次回、改めて検討するに持っていきたいと思います。それから、カルボフランについては外したいと思います。N-メチル-2-ピロリドンにつきまして、少数例皮膚障害があるように思うのですが、しかし、文献があるかどうか調べたいと思いますので、次回、改めて検討としたいと思います。続きまして、沃素及びその化合物です。武林先生。
○武林委員 沃化メチルについては○としてもいいのではないかと考えました。
○圓藤座長 ほかの先生、いかがでしょうか。では、次回、沃化メチルに限定して検討いたします。ヨードホルム、りん酸、モノクロトホス、メビンホス、いずれも×ですので、全部外したいと思っております。以上で作業を終了したいと思いますが、よろしいでしょうか。
 続きまして、理美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎につきまして、御議論いただきたいと思います。システアミン塩酸塩、これにつきましてはいかがいたしましょう。私が○で先生方は△ですが、どのようにいたしましょう。これは必ずしも感作性ではないと思うのですが、もう少し検討する形にしましょうか。アレルギー性かどうかを含めまして、少し議論を深めたいと思っております。引き続き検討することとし、現時点では△にしておきます。
 続きまして、CAPBにつきまして、これも似たようなことですが、これは界面活性剤ですので、感作性というよりは皮膚のバリアを破壊する作用があろうかと思います。武林先生は、これはアレルゲンではない可能性が高いと判断しておられます。
○武林委員 ここに挙がっている疫学研究に関しては、著者自身がここに書いてあるとおり否定をしております。一方で、圓藤先生が書かれているようなことはどう考えるか。そもそもそのために製品として使っているものが、皮膚のバリア機能を破壊するというのは、恐らくそのためにシャンプーに使っているのだと思いますけれども、それが高濃度だったら何が起こるかという議論かと思います。それをどう考えるか。それから、ほかの方たちが挙げてくださっているのはパッチテスト陽性ということで、これはほかの物質でも同じだと思いますけれども、結局、疫学的には否定されたパッチテストがあったときに、単純に陽性が多ければありと考えていいのか、適切な比較群が必要なのかという議論が最終的には必要なのかなと思いました。
○圓藤座長 ありがとうございます。今まで理美容師のシャンプー液等の使用による皮膚炎に関しては、十分議論を出してこなかったという経緯がありますので、少しその辺を整理しながら検討していきたいと思います。今回は継続審議にしておきたいと思います。
 次、パラトルエンジアミン、私と角田先生が○にしているのですが、角田先生、御発言はありますか。
○角田委員 これは全部海外の文献があるということと、日本で文献があるということで○にしたということです。
○圓藤座長 それらを含めまして、お三方、また見ていただければと思っています。私と角田先生の評価結果に関わらず評価していただければと思います。それから、2番目のONPPDにつきまして、上野先生と武林先生、御発言があれば幸いです。
○武林委員 私は、紹介していた文献で陽性率が4%あったとか、そういうことだったのですが、日本人を対象としたデータがあるのかどうかというところが、ちょっとまだ検討を要するところかなと思っています。
○圓藤座長 分かりました。次、PAPにつきまして、野見山先生は○にされていますが、エビデンスが十分かと書かれております。
○野見山委員 これは、症例対照研究と言われるものと、コントロールが12.5%で対照が56%、ばく露している人たちはそのぐらいあるとか、あるいは全体で14人中6人と書いてありますが、その辺の人たちがパッチテストで陽性になったということを挙げています。これは後の所、先ほど武林先生が正におっしゃったとおりなのですが、パッチテストが陽性になって、それで可能性があるとした場合に、これはそうだというふうにする、それはどの程度がそうなのかというところが不明で、後でもずっとそれを追って見ているのですが、2割だったらいいのか3割だったらいいのかとか、そこにこのパッチテスト以外に何の条件が足されると、これがそうなのかというところが少し不明確で、これをエビデンスとしてOKという言い方もありますし、不足だという言い方もあるかなと思いました。
○圓藤座長 ありがとうございます。それから、パラアミノアゾベンゼンについては、私も上野先生も外しておりますが、そもそも染毛剤成分と言えるのかというところがありますので、少しその辺を含めて御検討いただきたいと思います。赤色225号、これにつきましては上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 結局ずっと御議論いただいております、陽性率が40%と、それも集団が63人とちょっと少ない中で、その40%というのをどう捉えるべきなのかというところだと思います。
○圓藤座長 分かりました。次、過硫酸アンモニウム、これは告示に皮膚障害又は気道障害が規定済です。事務局、これでよろしいですね。ということは、もう検討しなくてよろしいでしょうか。
○古山係長 もし、他に規定すべき症状等があれば検討をお願いします。
○圓藤座長 ほかにあればということで、皮膚障害以外は特段なさそうですので外してよろしいでしょうか。では、外させていただきます。
 ハイドロキノン、これにつきましても皮膚障害が規定済ということで外させていただきます。それから、チオグリコール酸アンモニウムにつきましては、両先生が○にしておられますので検討していきたいと思います。モノチオグリコール酸グリセロール、これにつきましても両先生が△にしておられますので、引き続き検討していきたいと思います。香料ミックス、これは混合物であるのでリストアップになじまないと私は思ったのですが、武林先生はいかがでしょうか。
○武林委員 全く同じ意見です。
○圓藤座長 同じ意見ですね。この中のどれかというのを決めていきたいと思いますので、外すということでいかがでしょうか。外させていただきます。
 ペルーバルサムにつきまして、上野先生、野見山先生、△ないしエビデンスが十分かというのがございますので、今後、検討していきたいと思います。ケーソンCG、これを私は×にしていますが、角田先生、○にされていますね。
○角田委員 はい。
○圓藤座長 したがいまして、もう少し検討していくという形でよろしいでしょうか。
 そのようにさせていただきます。クロロクレゾール、これにつきましては両先生は×ですが、他の先生、確認いただきたいと思います。次、硫酸ニッケル、塩化コバルト、これは皮膚障害が既に告示に規定済です。塩化コバルトに関しては気道・肺障害も告示されているということで、追加はございませんね。外させていただきます。チウラムミックスにつきましては、両先生が○ないし△ですので引き続き検討するということでよろしいかと思います。以上で、理美容師におけるシャンプー液等につきましては終了させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 続きまして、今後の評価の進め方につきまして何か事務局から御意見を頂ければと思います。
○秋葉中央職業病認定調査官 今後の評価方法についてですが、SDS交付義務のある73物質及びシャンプー液等による接触性皮膚炎の2物質については、本日、次回の検討会で改めて検討する必要があると判断されたものについて、最終の評価を実施したいと考えています。今回までの議論をまとめた最終評価用のシートを先生方にお送りしますので、これまでの議論を踏まえた最終評価をお願いします。シャンプー液等による接触性皮膚炎の16物質については、同様に他の3名の先生による評価をお願いします。今後の評価の進め方については以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。続きまして、発がん性に係る検討項目について御説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料4を御覧ください。1の「発がん性に係る検討項目」につきましては、本分科会において、(1)木材の粉じんによるがん及び(2)カドミウム及びその化合物による肺がんの検討を行う予定です。
 2の「検討の経緯及び検討方法」ですが、(1)木材の粉じんによるがんについては、平成14年度、平成20年度及び平成21年度の35条専門検討会、そして平成23年度及び平成24年度の化学物質分科会において検討が行われたものですが、当時、国内での発生を示唆する報告がないこと等の理由から、労働基準法施行規則別表第1の2への列挙が見送られました。しかしながら、平成25年3月に取りまとめられた化学物質分科会検討結果報告書において、行政において引き続き症例の収集に努めるべきとの報告がなされたことを受け、厚生労働省において調査研究を行い、国内外の事例の収集や疫学研究報告のまとめを行いました。これを基に検討を行ってはどうかと考えています。
 (2)カドミウム及びその化合物による肺がんについては、第1回から第4回までの分科会において、カドミウム及びその化合物について新たな症状又は障害の検討を行いましたが、カドミウム及びその化合物は、IARC(国際がん研究機関)において、ヒトの肺がんの起因物質とされているため、追加の検討が必要とされたところです。こちらについては、IARC Monograph及びカドミウムによる肺がんに関する文献、すなわち発症機序、症例報告、疫学研究等の文献のレビューを行い、同規則別表に追加すべきか否か検討してはどうかと考えています。
○圓藤座長 ありがとうございました。ただいま事務局から発がん性に係る検討項目について御説明いただきました。何か御質問や御意見はございますでしょうか。今までの症状又は障害に関する報告が何例かあればということにしていますが、発がん性に関しては症例報告というよりも、疫学研究を基に検討していく形が主になっていくかと思いますので、今までとは検討方法が異なると思っていますが、その辺を含めまして御発言いただければと思います。
○角田委員 発がんに関しては、このように疫学研究中心で見直すということでよろしいのではないかと思います。
○圓藤座長 ありがとうございます。それでは、そのように疫学研究中心として、症例報告等は労災として認められた症例報告としますが、主として疫学研究で判断していきたいと思います。ありがとうございます。
 続きまして、最後に資料5及び6に基づいて、「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」について、報告をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料5を御覧いただきたいと思います。今般、化成品等を製造する事業場において、3,3′-ジクロロ4,4′-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を取り扱う業務に従事していた労働者が膀胱がんを発症し、複数の労災請求がなされたことを受け、業務が原因かどうかを判断するために国際的な報告や疫学調査結果などを収集・分析し、令和2年3月から5回にわたり検討会を開催し、検討を行いました。そして、検討結果報告書が令和2年12月に公表されました。
 この検討会での検討対象物質として、御覧のとおりの化学物質がありました。その中で、IARCによる発がん性分類としてグループ1に分類されているMOCA及びオルト-トルイジンが挙がりましたが、労災請求事案において実際にばく露する可能性のあった化学物質としてはMOCAであったことから、このMOCAのばく露と膀胱がん発症との関連性について検討を行いました。
 検討の結果、発がんのメカニズムについては、➀体内に取り込まれたMOCAは体内の酵素(主にCYP3A4)によってN-水酸化され、代謝生成物(N-OH-MOCA)を生成する、➁尿中の代謝生成物はDNA付加体を形成し、ヒトの膀胱内でDNA損傷を引き起こす結果、発がんを誘導すると考えられました。
 MOCAのばく露と膀胱がん発症との関連性については、調査した文献の事例を検討した結果、いずれもMOCAにばく露してから一定期間経過後に膀胱がんを発症しているため、MOCAのばく露は膀胱がん発症の有力な原因と考えられるとされました。そして、MOCAのばく露業務に5年以上従事した労働者に発症した膀胱がんについて、潜伏期間が10年以上認められる場合は、業務が相対的に有力な原因となって発症する可能性が高いと結論づけられました。
 今後は、労働基準法施行規則第35条専門検討会において改めて御議論いただくこととなりますが、そこでの検討の結果、妥当との結論になれば、MOCAのばく露による膀胱がんについて同規則別表第1の2への追加等につながるかと思われます。報告事項は以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。今の事務局からの報告に関して御質問や御意見がありますでしょうか。角田先生、参集者になっておられますので何か追加する発言がございますでしょうか。
○角田委員 これは芳香族アミンでありまして、いつも喫煙との関連が難しくなるのですが、芳香族アミンであること、それから、ばく露が現れていることなどを考え合わせまして認定するのがよいのではと考えました。ただ、今後ももちろん無条件ではなく、ばく露状況とか発症年齢、その他を考え合わせて、あと知見の状況も合わせまして判断すべきということになると思います。
○圓藤座長 ありがとうございます。ほかの先生方、何か御発言はございますでしょうか。ありがとうございます。これで議題の項目はおおむね終了したかと思いますが、何か先生方から全体を通して御意見や御質問はございますでしょうか。
○角田委員 1つあるのですが、接触性皮膚炎のところはちょっと難しいというか、皮膚の関係で難しいので、できればパッチテストとか皮膚炎に詳しい先生の御意見を聞いてもいいのではないかと思っているのですが、その辺はいかがでしょうか。
○圓藤座長 いかがいたしましょうか。
○野見山委員 少し関連しているところで、今、許容濃度委員会でも感作性の見直しを少し小委員会でしていただいているのはご存知のとおりですが、この労災を決める段階で、パッチテストとほかの疫学症例とか症例の必要条件、十分条件についての関係というものが、ある程度線引きが必要かなという気がしています。ですので、その辺りでどなたかに御参集いただくのか、あらかじめ事前に少しそういったところでの御意見を承った上で、ここにフィードバックして、厚労省の皆さんの御意見も、今までの先例がありますから、それとの整合性も見た上で決める必要があるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
○圓藤座長 今まで35条専門検討会では、接触皮膚炎は、感作性のもの、非感作性のものに分けずに皮膚障害という名称にしていました。特段、分けていなかったものの、明確に分けることができるならば分けていきたいと考えていますが、その根拠が明白でないというのであれば、なかなか分けづらいところもあろうと思っています。日本産業衛生学会の許容濃度委員会の中で感作性についてどのような議論がなされて、どのような結論になっているのかというのがございましたら、その報告を受けて、この検討会で議論したいと思っています。
○野見山委員 前回の許容濃度委員会のときに少し議論があって、ヒトの症例があった場合には他の条件をある程度超えるのではないかという意見があり、今、小委員会で少しメール上で御議論いただいているものが私にもCCで入って来ています。次回は3月27日ですけれども、その辺りにはある程度意見が出るかもしれません。5月の学会のときまででしたら、もう少し煮詰まった議論が出てくるかと思いますので、この分科会として次がいつなのかとか、その辺をどうするかということにもよるかと思います。以上です。
○圓藤座長 いかがいたしましょう。次回の日程調整と関係いたしますが、許容濃度委員会のほうで一定程度結論が出ましたら、その報告を受けて検討したいと思います。それでよろしいでしょうか。ほかに御意見はございませんでしょうか。ないようでしたら、これで終了したいと思いますが、その前に次回の日程等につきまして事務局から御意見を頂きたいと思います。
○古山係長 次回の日程でございますが、今、先生方に調査票をお送りして御回答いただいているところですので、調整した後、また後日御連絡させていただきたいと思います。最終の評価シートについても追って御依頼させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上になります。
○圓藤座長 ありがとうございます。ほかに先生方から特にございませんでしょうか。ないようでしたら、これで分科会を終了させていただきたいと思います。長時間ありがとうございました。

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