令和3年5月14日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。

 続きまして,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況について申し上げます。
 5月11日(火曜日)の会見後から昨日までの間に,職員については,9の官署・施設で計9名の感染が判明しました。詳細は既に公表されたとおりでございます。
 なお,被収容者の感染判明はございませんでした。

婚姻届等の押印義務廃止に伴う対応及び周知に関する質疑について

【記者】
 今月12日の参議院本会議でデジタル改革関連法案が可決・成立しました。これを受けて,今後,婚姻届や離婚届は押印の義務がなくなり,署名のみで届出が可能になります。
 法務省は,押印の存続を求める声を受けて,任意での押印を認める方針とのことですが,こうした方針を国民に分かりやすく説明していくことが重要だと考えます。大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 デジタル社会形成整備法案が12日,参議院本会議で可決され,成立しました。
 これによりまして,戸籍法が改正され,本年9月1日から戸籍の届書への押印義務を廃止し,その真正確保のための署名のみを求めることとなったところでございます。
 他方で,人生の節目となる婚姻届など戸籍の届書については,押印すべき,あるいは押印したいとの国民の皆様からの声も多いと承知しております。
 これを踏まえまして,婚姻届・離婚届を始めとする戸籍の届書については,押印義務は廃止した上で,民事局長通達によりまして,届出人の意向に基づく任意の押印を認める予定でございます。
 届書の様式についても,任意の押印が可能なことが明らかになるよう検討を進めているところでございます。
 任意の押印が可能なことについて,国民の皆様に十分理解していただけるよう,法務省ホームページなどを通じて十分周知してまいりたいと考えております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

【記者】
 スリランカ人女性の死亡に関して,入院,点滴の医師の指示について診療記録と中間報告に食い違いがあることについてお伺いします。
 名古屋入管側は,診療記録は事実と異なると主張しているわけなのですが,それを一方的に認めまして,記録が残っていることを全くその中間報告に記載していない,そういった判断をされたのは,法務省の具体的にどなたなのでしょうか。
 また,仮に名古屋入管側の意見を考慮すべきだとしても,両論併記するべきだったのではないかと。一方的にその診療記録をなかったことにしたことが適切だったのでしょうか。よろしくお願いします。

【大臣】
 ただいまの御質問でございますが,今調査チームが,しっかりと最終報告に向けて調査をしている段階でございます。今のような御質問,つまり,記載の仕方も含めまして,どのような理由で誰がそれを指示したのかといった質問につきましては,私自身,この調査を指示している立場でございますので,お答えは差し控えさせていただきます。
 それに対する評価ということでありますが,これも含めて,調査チームの客観・公正な調査に委ねております。私はかねてより申し上げているところでありますが,そうした論評を加える,あるいは意見を求められてお答えをするということについては,控えるべきであるという気持ちを持って進めてまいりました。
 ゆえに,今のような御質問に対しましては,そうお答えざるを得ないということでございます。

【記者】
 今の質問と関連してくるのですが,2月5日に診療した外部の医師の診療情報提供書に,内服できないのであれば点滴,入院と書かれていました。
 入管庁は,昨日,与野党の質問に対して,外部の医師と職員から話を聞いたが,外部の医師は入管内の医師に点滴を指示したわけではないと説明しているので,報告書があのようになったと説明したと聞きました。
 しかし,支援団体の方によりますと,病院に付き添った入管の職員が,彼に説明をいたしました。そこでは,点滴の話もあったが,点滴は長い時間がかかり,入院と同じ状態になるので,点滴を打たず女性を入管に連れ帰ったと説明しています。
 内部の医師に指示をしたかどうかということではなく,当日,薬を飲んでも吐き続けている状態のスリランカ人女性への点滴,これをなぜしなかったのか。外部の医師がしようとしたのに,付き添った職員が時間がかかると拒否したのではないでしょうか。
 この点について,昨日入管庁が説明していますので,もう一度,どういうことだったか説明をお願いいたします。

【大臣】
 今の御質問でございますが,入管庁から説明いたしますので,そちらの方にしっかりと聞いていただきたいと思います。
 先ほど来,申し上げておりますとおり,今のような情報があったのか,なかったのかというようなことや,論評も含めまして,私の今の立場は,最終報告を待っているということであります。
 正に介入するということにつながりかねないということで,現に慎重に,私自身は立ち位置を持っているところでございますので,担当のしっかりとした説明を受けていただきたいと思います。

【記者】
 今の名古屋入管の件で,現在,スリランカ人女性の御遺族が日本に来られているわけですけれども,大臣は面談しない,ビデオの開示についてもプライバシー,保安上の理由から公開することは考えていないと,また,公開といいますか,御遺族ですとか,あるいは国会議員,理事会の構成メンバーですとか,限定した形でも動画を視聴させることは考えていないというお話でした。
 このプライバシーとか保安上の理由というのは,全然理屈になっていないと思うのですが,遺族や他の特定の方に対して,ビデオを開示することを拒んでいる理由は何なのでしょうか。大臣のお考えを聞かせてください。

【大臣】
 今回の事案につきましては,私自身,亡くなられた方の思いに心を寄せています。様々な悩みを持ちながら,また体の不調を抱えながら,最終的に亡くなられたということにつきましては,本当に重く受け止めております。亡くなられたことに対して,心からお悔やみを申し上げたいと思っております。
 これも私自身思うところでありますが,日本という,母国と離れたところで,希望を持って頑張っていらっしゃったということでございます。そういう中で体調を壊されたこと,そしてまた医療,あるいは外部の医療機関も含めまして,どういう診療がなされてきたのかということについては,私はこの事実関係をしっかりと把握していくこと,そして,このような結果になったということについて,しっかりと把握をしていくこと,このことは大事であると思っております。
 そして,早い時期に事実関係の調査をしっかりする。外部の医師も関わることであり,これは客観・公正にしていくべきであるということで,第三者の方も入っていただきながら調査チームを編成し,その中で責任を持って,最終報告に向けまして取り組んでいただきたいという思いで指示をしてきたところでございます。
 御遺族におかれましても,異国の地でどういう状況だったのか,そのことを知りたいという思いについては,私もそのような思いをしていらっしゃると思っておりまして,同じように心を痛めているところでございます。
 御遺族の方が来日されているということでございまして,出入国在留管理庁に対しましては,御意向等も十分に踏まえて,そして可能な限りの支援や説明を行うようにということで,指示をしているところでございます。
 私自身,法務大臣として,この事案につきまして,第三者を加えた公平で客観的な調査の実施を指示している立場でございます。
 現在,調査の結果として取りまとめられる最終報告を待つ立場でございまして,来日されている御遺族に対して,今の段階で,お会いすることについては必ずしも適切ではないと考えているところでございます。
 かねてより申し上げてきたところでありますが,出入国在留管理庁に対しましては,御遺族の心情や御意向も踏まえた適切な対応を行うよう,その方針で臨むよう指示をしているところでございます。

【記者】
 大臣は以前,このスリランカ人女性の問題に関してしっかりと事実が何であるか調査をするというようなことをおっしゃられました。
 しかし,中間報告に関して言えば,先ほど質問させていただいた件を含めて,様々な問題が指摘されて,国会審議にも影響しております。
 それに対して,何の介入もしないというのは無責任なのではないかと,少なくともこれまでの調査の在り方を見直す,そういったことが必要だと思います。
 また,野党側にもビデオの件を含めて,ちゃんとした資料を見せるべきではないかと思うのですが,ここまで中間報告に様々問題が指摘されている中で,大臣のお考えは一切変わらないということなのですか。

【大臣】
 中間報告は中間段階の報告であります。
 最終報告に向けて,この中間報告をなるべく早くお出しし,いろいろな御指摘をいただいてまいりました。そして,国会におきましても,国会議員の先生方からも御指摘をいただいているところでございます。そういったことも含めまして,この内容について更に深掘りし,また第三者の方々にもいろいろな角度から御指摘をいただいているところでございます。
 そういったことも併せて,最終報告,これがこの調査チームの最終の目標でありますので,それに向けまして努力をする,なるべく迅速にお出しをする,こういったことが,正に与えられた責任を果たすことにつながると思っております。
 中間報告の段階で様々な,今おっしゃったようなお気持ちを吐露されるということもございますが,そうしたことも含めまして,最終報告の迅速かつ適切な提出ということに向けまして,努力をしてまいりたいと思っております。

【記者】
 スリランカ人女性の御遺族,来週に名古屋入管の所長とお会いすることを検討されているようなのですが,会うだけではなく,実際にどういう扱いを受けていたのか,実際に施設の中を見て,亡くなった場所を見たいという強い希望を持っております。これについて法務省としてどう対応するおつもりなのか。
 また,もう一度お聞きしますが,来日中,大臣が直接御遺族とお会いし,説明したり謝罪したりする気はないのか,この点をお聞かせください。

【大臣】
 事実を解明して,しっかりとそれをお伝えしていくということ,そしてそれに伴いまして検証を加えて改善策を講じるということが,この一連の全体像の中で責任を果たすことになるのではないかと思っております。
 中間段階での報告については,私の方が,かなり早めに出した方がいいのではないかと思っておりましたものですが,いろいろな御指摘がございました。
 そういったことも含めまして,しっかりとした,そして丁寧な調査を更に加えて,最終的な報告書をまとめ上げていくこと,これが調査チームの責任でもあり,指示をした責任者としての私の責任でもあると思っております。
 御遺族の方が来日されているということであります。御葬儀にお越しいただいているということでございますので,そのことに対しての最善の支援をさせていただきたいと思って,これも出入国在留管理庁に指示をしているところでございます。

【記者】
 施設内を見せる予定はございますか。そういったお気持ちはありますか。

【大臣】
 御遺族の思いというものを,直接伺った状態ではないので,そのことも含めて,どのような思いがあるのか伺わせていただくことが大事ではないかと思います。これも出入国在留管理庁にしっかりと対応できるように指示をしているところでございます。

【記者】
 今の質問に関係しますけど,名古屋入管局長はお会いすると聞いていますけれども,それについて大臣は何か指示は出しているのでしょうか。
 それと中間報告についてですが,第三者として5名の方が関わっているわけですが,この5名の方がどなたかということは,はっきり公表されていません。どなたがどういう基準で選定されたのか,その点について説明がないと思うので,お願いします。

【大臣】
 まず,御遺族の方にどのような御要望があるのかということを踏まえ,しっかりと対応するということでありますので,出入国在留管理庁に対しましては,それを伺って,適切に対応をさせるということでございます。
 今の件については,適切に御要望いただいた上で対応するということでございます。出入国在留管理庁が今もろもろの体制を整えながら,調査チームの中でも対応しているところでございます。
 名古屋にお越しいただくということでございますので,そうなりますと名古屋のトップは局長でございますので,そのように対応するものと考えております。
 御質問の第二がございましたので申し上げたいと思います。
 この5名の方でございますが,5名の第三者の方々に調査チームへの参加をお願いしたところでありますが,この人選に関しまして,私自身は,出入国在留管理庁に対しまして,調査の客観性及び公平性を担保するために,第三者の方々に調査に加わっていただくことを指示したところでございます。
 この指示を受けまして,出入国在留管理庁におきまして,入国者収容所等視察委員会のメンバー及び元メンバーの方々に調査に加わっていただくこととしたものでございます。
 この第三者の方々の構成ですが,学識経験者の方,法曹関係者の方,NGO関係者の方及び入管施設地域住民の方は,東日本地区入国者収容所等視察委員会のメンバー又は元メンバーの方であります。また,医療関係者の方にもお願いをしているところでございます。入国者収容所等視察委員会のメンバーのうち,医療関係者の方につきましては,日本医師会の推薦を受けた医師であると承知をしておりますし,また,法曹関係者につきましては,日本弁護士連合会の推薦を受けた弁護士の方と承知をしているところでございます。
 中立・公正が担保された方である必要があると思っておりまして,指示に基づいて,調査に加わっていただいたと報告を受けているところでございます。
 これ以上の第三者の人選に関しての詳細につきまして,更なる御質問もございましたが,出入国在留管理庁にお尋ねいただきたいと思っております。

【記者】
 中間報告書の賛否については今は言えないということですが,今出ている情報で,中間報告に,外部の医師にスリランカ人女性は点滴,入院を求めていなかったとまとめられております。
 しかし,2年10か月拘束されていたネパール人女性のお話によりますと,外部の病院に職員が付き添うと,自分が言いたいことが全く言わせてもらえず,職員の主張だけで,外部の病院の医師が判断していたと話されていました。
 もしも,外部の医師にスリランカ人女性が伝えていなかったとすれば,職員が彼女に意見を言わせていなかった,また,全て代わりに話してしまっていた可能性が高いのではないでしょうか。
 イギリスでは,収容者に不利益が生じないよう,収容施設の職員が同行することを禁じていると聞きました。支援者,看護師に繰り返し点滴や入院を彼女が訴えていたのに,その旨が唯一助けの綱といえる外部の医師に伝えられていなかったとすれば,これは非常に問題ではないでしょうか。
 また,これが現在でも,他の収容者に行われている可能性が否定できません。外部の病院に行くときに職員が付き添い,収容者に代わって発言し,収容者に発言をさせていないという運用をしていた場合,これを改めていく気はあるのか。この点の御見解をお聞かせください。

【大臣】
 今この場で私に質問されたような内容については,正に全体の調査の中で明らかにしていく,そうした事柄ではないかと思います。
 いろいろな方のヒアリングもさせていただきながら,ここまで来ているところでございます。最終報告に向けましても,いろいろな角度から御指摘があったことについては,しっかりと深掘りをしながら対応していく,改善策についてもこうした事案が二度と起こることがないように検討していく,これは御遺族の方の強い御意向でもございます。そういったことも考え合わせてみましても,しっかりと調査をしていくということの中に,いろいろな要素が入り得ると思っております。
 何々の場合はどうなのでしょうかという御質問も含めまして,私自身は,このチームにしっかりと任せてまいりたいということです。途中でいろいろなコメントを求められているところではございますが,ここは法務大臣として指示をしたことの責任はあると思いますが,調査チームの責任という形の中で今やっていること,これをしっかりと見守ってまいりたいと思っております。
 もちろん,様々な御指摘がございますが,そのことについて,それはというようなコメントは控えさせていただきたいと思います。

(以上)