(令和3年5月5日(水曜日)17時57分 於:英国)

冒頭発言

【茂木外務大臣】先ほど、G7外務・開発大臣会合を終えたところであります。一昨日5月3日のワーキング・ディナーから始まりまして、G7外相の間で、そして昨晩からはアウトリーチ国の外相も参加して、充実した議論を交わすことができました。
 G7外相間で、忌憚なく、率直な議論を行い、改めてG7が結束をして国際社会をリードしていく決意確認いたしました。基本的な価値や原則を共有するG7の連携の意義、改めて強く実感をしたところであります。
 昨日のセッションでは、地域情勢について突っ込んだ議論を行いました。中国については、各外相から様々な懸念が指摘をされ、G7として中国に対して自らの経済的規模、役割に相応しい責任を果たすよう求めていくことで一致をしました。また、東シナ海、南シナ海の情勢を深刻に懸念し、緊張を高め、ルールに基づく秩序を損ないかねない一方的な行動に強く反対することでも一致をみたところであります。この他、ミャンマー、ロシア、中東、アフリカ等の地域情勢についても、議論が行われました。
 昨晩からは、G7に加え、豪州、インド、韓国、南アフリカ、そしてASEANの議長国ブルネイの外相も交えて、インド太平洋や「開かれた社会」、また、ワクチン・保健、気候変動などの国際社会の課題について議論を行いました。私は、ワクチン・保健の議論でリード役を務めまして、新型コロナによる危機を乗り越えるためには、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの考えの下、途上国も含めた世界全体において、ワクチンの公平なアクセスを実現することが不可欠であることを指摘し、賛同を得ました。また、医療保健分野を含みます財政ニーズに対処すべく昨年4月に創設した「新型コロナ危機対応緊急支援円借款」の枠を、最大5,000億円から7,000億円に拡充することを表明したところであります。
 先ほど共同コミュニケを採択しましたが、外相間の幅広い議論を踏まえ、G7で結束して力強いメッセージを発出することができたと考えております。
 また今日の朝は日米韓の外相会合を行いましたが、この会合では米国の北朝鮮政策レビューが完了したタイミングでありまして、大変タイムリーな会合となりました。ブリンケン国務長官、鄭(チョン)外交部長官との間で、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮に対して安保理決議の下での義務に従うことを求めることで一致しました。その上で、今後、この政策レビューの結果を踏まえ、対北朝鮮政策を具体的に進めていくにあたり、日米韓3カ国で緊密に連携して対応していくことを確認しました。また、拉致問題について、改めて両長官からの支持を得たところであります
 その後の、日韓外相会談においては、北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとって日韓・日米韓協力が重要であることを改めて確認しました。私からは、慰安婦訴訟判決や朝鮮半島出身労働者問題に関して、日本の一貫した立場に基づき、改めて韓国側の適切な対応を強く求めました。また、ALPS処理水に関して、今後とも必要な情報提供等を継続していく旨述べた上で、最近の韓国政府の対外発信に懸念を表明したところであります。その上で、今後とも、日韓関係を健全な関係に戻すべく、外交当局間の意思疎通を継続していくことで一致しました。

質疑応答

【記者】日韓外相会談について伺います。会談が終わって韓国側の発表ですと、慰安婦の問題でも、労働者の問題でも、日本側の正しい歴史認識無しに、過去の問題は解決されないと強調したと発表しています。チョン外相との初めての会談になったわけですけれども、日韓間の難しい問題の解決に向けて、今後チョン外相と建設的な議論、対話は行っていけそうなのか、そのあたりの大臣のご感想を聞かせていただければと思います。

【茂木外務大臣】チョン長官とは、今回初めてお会いしましたが、率直な意見交換を行うことが出来たと思います。日韓関係をこのままにしておいてはいけないと認識の共有をすることが出来たと考えてります。慰安婦の訴訟判決に関しては、日本の一貫した立場に基づいて、改めて韓国側に適切な措置を講ずることを強く求めるとともに、旧朝鮮半島出身労働諸問題に関して、現金化は絶対に避けなければならないとして、韓国側が日本にとって受け入れ可能な解決策を早期に示すよう改めて求めたところであります。今後、韓国側がどのように対応していくかについては、様々な形でやりとりを進めていきたいと思っておりますが、日韓関係を健全な関係に戻すためにも外交当局間での意思疎通を維持し、日本の一貫した立場に基づいて引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていきたいと思っておりますし、外相間でも率直な意見交換を行っていきたいと思っております。チョン長官の方も、今日私(大臣)と直接意見交換できたことを非常に良かったと、このように言っておりました。

【記者】G7外相コミュニケに、台湾海峡や人権問題を始め、中国についてかなり多く盛り込まれたような印象があります。まず、これに対する大臣の評価をお願いいたします。併せて、大臣はイギリス滞在中にG7各国やオーストラリア、インドなど個別会談も重ねていますけれども、そのほぼ全てで中国について議論をしていると思います。改めて、中国に対するする国際社会の見方、あるいは大臣が中国の問題を提起したときの反応など、これまでとの違いなどがあればお願いいたします。

【茂木外務大臣】中国については、G7各国共に関心が高く、バイの会談もそうでありますが、昨日の午前中、このG7の外相会合において、90分にわたって議論を行ったところであります。各国から中国に対して様々な側面から発言がありましたが、議論を通じて中国に対して、主要な経済国として、ルールに基づく国際システムに建設的に参加するよう求めることで一致をみたとこであります。また、G7として、新疆ウイグル自治区の人権状況や香港情勢に対して、強い懸念を有しておりまして、中国に基本的人権の自由を尊重するように求めることで一致を見たとこであります。もちろん東シナ海、南シナ海、そして、中国海警法を巡る動きについても、私(大臣)の方から問題提起致しまして、中国による一方的な現状変更の試みの継続、強化について深刻に懸念している。こういう発言をしたところです。G7の会合もそうでありますが、バイの会談におきましても、基本的に各国の認識、一致をしている。また、日本の発言に対しては、賛同してもらっている。このように考えています。

【記者】先ほど日米韓外相会談で、米国が朝鮮半島の完全非核化を引く続き目標としていることを支持すると発言されましたが、先日の日米首脳共同声明では、日米が北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認すると明記されています。朝鮮半島の非核化という表現は北朝鮮、韓国がこれまで使っていた表現で、韓国への核の傘の提供をやめることや、在韓米軍の非核化も含む表現です。今回、日米又は日米韓の外相会合の中で、朝鮮半島の非核化を目指すということを確認されたのかということとですね、これまでの北朝鮮という表現から方針を変えたのでしょうか。この点を確認させてください。

【茂木外務大臣】変えたと思っておりません。基本的な考え方については、日米で一致をしておりますし、日米韓でも一致をみている。このように考えています。

【記者】ミャンマーについてお伺いします。ミャンマーに関してはG7の外相声明が2月に2本出ているかと思うのですが、それに比べますとこのコミュニケのパラ24の中にある国軍側の方向転換をしないという・・・

【茂木外務大臣】文章で言われてもですね、パラいくつと言われてもコミュニケが今手元に無いので・・・

【記者】了解しました。そこにですね、趣旨としては軍政が方向を変えなければ更なる措置を取る用意があるということが書かれていまして、ここが一歩踏み込んだところという解釈をしてよろしいものなのかという点とですね・・・

【茂木外務大臣】そこまでで一旦止めてください。基本的にミャンマー情勢、2月の1日にですね、クーデターが起こって、それ以来の事態ですね、多くの死者が出ている、このことについては日本だけではなくて、各国から強い非難があったということであります。
 4月24日、ASEANのリーダーズミーティングが行われました。5つのコンセンサス、採択をされまして、今後前向きな動き、こういったものをですね、求めていきたいと思っておりますが、一方でそのなんというか、事態、これは収まっていないのも事実でありまして、そういった現在の状況を踏まえてですね、G7としての強いメッセージを発出したということであります。

【記者】ありがとうございました。昨日4日の段階でですね、イギリス側はですね、国軍に近い個人や組織への制裁網を拡大することに対してメンバー国に賛同を求めたいという趣旨のことを発表していたのですけれども、この点はコミュニケに盛り込まれていないと思うのですが、その理由はいかがでしょうか。

【茂木外務大臣】こういったですね、G7の外相会合におきましては様々な意見というのが当然、G7のそれぞれ基本的な価値であったりとかですね、方向性一致をしておりますが、個別の問題についてはそれぞれ考えていることの強弱というのもあるわけであります。そういった中で、このですね、コミュニケというものは採用される、コミュニケとして出されたものがG7のコンセンサスであるとこのようにお考えください。

【記者】日韓の外相会談についてなんですけれども、韓国との対面での外相会談というのは1年以上開かれてこなかったわけですが、今回どういった経緯で実現したのでしょうか。

【茂木外務大臣】どういった経緯といいますか、今回ですね、G7の外相会合、このロンドンで開催しております。併せまして、議長国であります英国がですね、招待国として今年はそのインド太平洋を重視する、こういう観点からインド、そしてまた豪州、韓国、招待国としてブルネイもそうでありますが、南アも招くということになった訳です。当然ですね、G7の各国とも私バイの会談をやっております。このロンドンにいるわけですから、限られた時間の中では、それぞれの国と意思疎通をするということは当然だと思っております。