厚労省・新着情報

日時

2021年(令和3年)1月19日(火) 16時00分~
 

場所

霞ヶ関ナレッジスクエア  千代田区霞が関3丁目2-1 霞が関コモンゲート西館3階

出席者

  ・阿部 正浩
  ・安藤 至大
  ・大久保 幸夫
  ・鎌田 耕一(座長)
  ・武田 洋子
  ・中田 るみ子
  ・山川 隆一

議題

(1)労働市場の現状と人材サービスの展開について(公開)
(2)その他(公開)

議事

議事内容

○事務局 ただいまから第2回労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、労働市場の現状と人材ビジネスの展開についてのヒアリングということで、2つの業界シンクタンクの皆様に御出席いただいております。それでは議事に入りますので、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。
皆様、本日は御多忙のところ、本研究会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は阿部委員が所用により途中から参加されるということです。また、武田委員が所用によりまして途中で退席されるということですので、御了承ください。よろしくお願いいたします。
議事の進め方ですが、本日御出席の2つのシンクタンク、それぞれ20分から30分程度お話を頂きまして、その後、出席委員からの質疑応答とさせていただきます。シンクタンクごとに質疑応答をさせていただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。最後に総論的な議論をと考えておりますので、委員各位御協力をお願いいたします。
最初にヒアリングに対応いただくシンクタンクは、株式会社パーソル総合研究所様でございます。では、労働市場の現状と人材ビジネスの展開についての御説明を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○株式会社パーソル総合研究所 私のほうからは、事前にお配りしている資料で大きく2つです。直近の労働市場の動向、今後の動向ということで、最近のデータを交えながら御紹介申し上げ、2つ目のパートで人材業界の見立てのようなことをお話させていただきたいと思います。資料に沿ってデータの御紹介を申し上げます。
3ページ、こちらは11月のデータで、直近の緊急事態宣言等を含めて、少し動向が変わるところがあるかと思いますが、11月時点で当グループが展開しているdodaのサイトでの動向です。求人倍率は中途採用市場では1.79倍ということで、前年同月比では7割ほどの水準ということになっております。グラフが少し細かいですが、赤い折れ線が我々中途採用市場での求人倍率ということで、春先からガクンと落ち込みましたが、一番右側の3つほどの点ですが、秋以降少し上向き加減ということです。いわゆるホワイトカラーの中途採用市場の動向は、引き続き業・職種によって濃淡はありますが、企業様の採用意欲等のバランスで言いますと1を超えているということです。
4ページ、11月下旬に実施させていただいた我々の研究所の第4回目のコロナの影響調査の数字になっております。11月末時点で900人弱の人事・総務・経営層に伺った数字になりますが、来年度の中途採用、新卒採用はどういう見立てかということで所感を伺っております。中途採用について「減らす」が16.3%、新卒も「減らす」が17.7%、「増やす」はそれぞれ6.6%、4.6%ということで、一番マジョリティは半数ほどの皆様が今までどおりということですが、「減らす」と「増やす」差引きで言いますと、10ポイントほど「減らす」とお考えの企業があるというのが足元の状況です。
同じ調査で5ページ、11月末時点での人員の過不足感を聞いております。グラフで青いほうが、「不足」とお答えの比率になっております。従業員全体で言いますと、半数程度の企業様が11月末時点でも人員は不足感があるということです。中身を少し見てみますと、中高年では、ここでは40歳以上としておりますが、「不足」が23.8%に対して、「過剰」だと御認識の企業様が27.7%ということで、ここにおいては過剰感が現時点でもかなりあるということになっております。
同じく職種で見ますと、事務系については13.8ポイントが「過剰」ということもありまして、テクノロジー等の進展等々で、昔のような人手は必要ないという所も出始めているという状況かと思っております。
6ページ、こちらはシニア人材に関する調査のデータから引っ張ってきております。n=800の調査ですが、各企業の人員構成を伺いますと、高齢者偏重の組織が84%で、若年のほうが多いという組織が16%に留まるということで、当然日本の人口を反映しているわけですが、ホワイトカラーの高齢化が、いよいよ待ったなしになってきているのかなという認識です。
今後のキャリアの選択肢の動向ということで進めさせていただきまして、8ページのデータです。こちらも同じ調査で、コロナが広範囲に働く人々の意識に影響を与えていると捉えております。その中身を紐解いて御紹介します。こちらはn=15,000の大規模な調査になっております。コロナ禍を受けて、今後のキャリアや人生の設計に関して考え方に変化がありましたかという聞き方をしております。影響の大きい順で、「専門性の高いスキルを身につけたい」という思いが強まったという人が30%強、一方、弱まった方も6%ほどおりますが、専門性が高いスキルというのが非常に大きい。仕事関連で見ますと、上から3つ目の「副業・兼業を行いたい」という思いが強まったという方が28.3%、弱まった方が10%ですので、差引きで20%弱の方が兼業・副業を行いたいということになっております。同じように「学び直しをしたい」という辺りも、それなりに増えてきているかなと思っております。コロナを受けて、皆様の働く、ライフに関する意識が大きく影響を受けていることが見て取れるかと思います。
9ページ、こちらの詳細は今回割愛させていただいておりますが、多変量解析等の分析のサマリーとして御紹介します。今後のキャリアの選択肢ということで、「副業意向」、「独立・起業」、「地方移住」、「テレワーク」等々のキーワードのジャンルで、どのような方が代表的に影響を受けているのかというまとめになっております。副業意向が強まっているということで言いますと、やはり、派遣社員の方や契約社員・嘱託社員、女性中心ということになっております。背景としては、収入の減少幅の大きさや、その影響を受けての家計の補填的な意味合いでの副業意向ということが見えてきております。独立・起業、フリーランスになりたいという御意向については、宿泊業や飲食サービス業の男性というのが浮かび上がっております。今一番影響を受けている皆さんが、そのような意向をお持ちということかと思っております。地方移住意向については、年収400~1,000万円程度の男性の皆様が浮かび上がりました。こちらは新型コロナの感染の不安が、お子様等々も含めて、大きい皆様かなと見ております。テレワークができる会社・職種への転職意向ということについては、副業と近い形で派遣社員の皆さん、オフィスワーカー、女性ということで、こちらもコロナ感染不安が身の回りとしては非常に大きい皆さんかなと思っております。共通の特徴としては、勤めている会社の経営不安などが根底にありつつ、今後の御自身のキャリアや収入への不安がかなり高まった結果、それぞれのお立場で副業、地方、テレワークと影響が現れているのかなと見ております。
11ページ、去年の3月から、我々の研究所では定期的に大規模な調査をさせていただいておりますが、テレワークの実施比率の推移については、4月以降おおむね4人に1人くらいがテレワークを実施している傾向です。僅かではありますが、徐々に1ポイント、2ポイント程度、テレワーク実施者は減っているものの、世の中としては4人に1人ぐらいがテレワークを実施される状態になっており、定着に向かっているところもあろうかと思います。
労働市場の概観としては、1月でどうなるかというのは注視していきたいと思いますが、企業全体で見ますと、我々としては2030年に644万人の人手不足と出させていただいており、マクロの人手不足感は底堅いのかなと思っております。ホワイトカラーの領域も足元数箇月は回復基調に入っているという認識です。
いわゆる日本型雇用への課題感もかなり顕在化しているように感じております。脱・年功処遇を目的とした職務等級、いわゆるジョブ型の流れや、企業としても個人としても副業を積極的に取り組むということが見て取れます。テレワーク実施比率が4人に1人という話もありましたが、今後より一層、テレワーク・デジタルを使ったようなBPOや今までできなかったような形でのBPOも含めて、不可逆な動きでますます強まっていくのかなと考えております。
足元、収入減少ということもあり、労働者サイドの意識はリスク回避的と思っております。独立・起業を施行されるよりも、一定の正規の職を手にしながらも、家計補填の意味合い、スキルの獲得という意味合いで、副業・兼業意向は強まっているということかと思っております。企業のほうも副業解禁ということもありますし、政府の流れもありますので、副業者については、今後急速に増加するというシナリオも大いに予想されるかなと考えております。これらの複線型と言いますか、複数の職を掛け持つという意識は、主に収入不安・キャリア不安・会社の経営不安等、ある種ネガティブな要因から沸き起こっているというのも見て取れております。実態経済が安定、上向きにならない限り、年収で言いますと低めの層の皆様もますますそういう動きになっていくのではないか、いわゆる副業市場が形成されていくのではないかとも見ております。こうなりますと、意識の高い、リテラシーの高い方々だけでなく、いろいろな方々が副業・兼業という形で、ある種、雇用契約ではない形で労働マーケットに入ってこられ、その数が増えるということも大いに想定されると思っております。そうなりますと、一定保護の観点からも、一定程度の意識の向上等の啓蒙活動の重要性は高まってくるのではないかというふうに見ています。副業・兼業マーケットはハイスキル層とワーカー層と大きく2つそれぞれ形成されていくようにも見ております。ハイスキル層は一定のリテラシーで、お互いの共通認識のもと実態的には仕事がなされるということで、そこまでのリスクはマクロではないのかなと思いますが、いわゆるワーカー層は注視が必要ではないかと考えております。
次のトピックスは、今後の人材サービスということですが、最初のスライドは業界団体のほうから持ってきておりますので、皆様は周知のことかと思います。今は10兆円程度の市場規模ということで見立てをしております。
15ページ、類型を過去経緯も含めて少し振り返りますと、従来御案内のとおり、ホワイトカラー系の高年収職種中心に、我々のグループ会社も含めて、民間職業紹介がそれらを手掛け、サービス業・ブルーカラー系を中心にハローワークということが大きな棲み分けであったかなと思いますが、近年、2000年代以降、民間職業紹介事業者の取り扱う職種が広がり、年収の下限も下向きに拡大するということもあり、また、求人メディアがインターネット化することで様々な領域を扱えるようになったということもあり、ハローワーク・職業紹介・メディアという3領域それぞれのオーバーラップが広がってきたのかなと思っております。取り分け、この数年、新しい技術が世に登場したこともあり、今までとは違う、いわゆるアグリゲーター型、データベース提供型、ソーシャルネットワークを基盤としたサービスということで、これまで想定していなかった新しい形が登場したということは皆様共通の御認識のところかなと思います。
その中で、16ページ、AI、IT技術の影響ということですが、現時点では我々グループ内を見る限り、皆様が想像されるほど、ものすごいAIがいろいろな所で搭載されてということでもまだないということを少し触れさせていただきつつ、右側の三角形の白い四角が2つありますが、大きく2つの使われ方がテクノロジーはしております。事業者の内部プロセスの生産性向上のために、いわゆる効率化のためにテクノロジーが使われる、いわゆるRPO的なことも含めて商品の自動化も含めて使われているという実態と、もう1つは、リコメンドのようにマッチングの確率を上げていくために、高付加価値化のために使われるという、大きく2つの使われ方をしており、この動きは不可逆であり、それぞれ高度化をしていくことかなと思っております。
17ページ、前半申し上げたように、個人の働き方の選択肢が増えていることや、ジョブ型と言われるように個人も法人もキャリア自律の意識が高まり、お互いにフェアな関係性をマクロでは施行していく流れにある中で、それぞれの役割が少しずつ変わっていくと思っております。右下の四角で、先ほど触れたように、やはり、だんだん副業・兼業のあっせんのようなメディアも登場してきておりますし、個人事業主、業務委託の形での、取り分けハイスキルなシニアの皆さん等、ギグワーカーと言われる所も含めて、いわゆる雇用ではない形での仕事の在り方をあっせんする事業者が、プレイヤーの数も、その影響範囲も広がってきているというふうにも見ております。それから、別な産業からアグリゲーションのような形で、今まで必ずしも雇用マーケットに精通していない皆さんも参入できるようになってきておりますので、仕事という重要なあっせんを仲介、マッチングをする中で、一定程度の透明性の担保やトラブル発生時の対応を担保にするような形というのは、最低限整備していかないと全体としては不適合なことも起き得る状況になっているのかなというのを、左下に要検討事項と書かせていただいています。
18、19ページ、見立てとしては、ある種、言わずもがなではありますが、これまでの単純なる職業紹介と情報提供という垣根がかなり低くなり、交わるような形で新しいサービスの形に、もはや変わりつつあるのかなと考えております。取り分け、今後フリーランスや副業・兼業領域、定年延長等々も含めて、シニアの皆様の御活躍の場といったときに、必ずしもこれまで想定していた雇用という在り方ではないマッチングがされていく。そこへの情報提供をしていく事業体がたくさん生まれてくるのではないかと考えております。併せて、これまで技術的にできなかったアグリゲーションやデータベースを提供するという形のサービスも、いろいろな皆さんがチャレンジを始めておりますので、こちらも市場が大きくなりつつあるのかなと考えております。
19ページ、こちらも言わずもがなかなとは思いますが、インターネットの登場によって、これまで雇用マーケットで事業の前提にあった情報の非対称性ということを事業者が埋めていくということの価値が低下し、その辺りのことは自動的になされていくと見ております。事業者それぞれは、情報の非対称性を埋めることを価値の源泉とはできなくなり、より人がどのような価値を提供するのかというところ、キャリアカウンセリングや動機付け、その辺りの重要性が増していくのではないかというふうにも見ております。
大きくは、冒頭でも申し上げたように、644万人という人手不足が一番マクロ、長期的には大きなファクターで、需要と供給の関係で言いますと、個人が企業を選ぶ時代、昔と違って、面接なども企業が個人を選ぶ場ではなく、個人が企業を選ぶ場になっていると捉えております。そういった大前提が変わった中、各種ルールをどのようにするのかというのが1つポイントかと思います。その中で、テクノロジーの進展も含めて、情報の非対称性がなくなってきている中、企業と個人もよりフェアな関係になる方向に今環境が整ったということでもあろうかと思っております。逆に言いますと、あまりよろしくない企業は、事業者にしても求人企業にしても、自然に淘汰されていく方向にはなっていくのではないかと思っております。ある種、それを後押しすることも重要かなとも思っております。
直近の変化としては、今まで誰も体験していなかったリモートワークというのが、一気に4人に1人という世界になって、これも不可逆だと思います。今までの通勤時間分働けるようになった、お迎え等の制約からかなり解き放たれた主に女性の皆さんもたくさんいらっしゃいますし、その方々がもとの状況に戻れるとも思えません。場所の制約も職種・業種によっては、もはやないと気付かれた皆さんもたくさんいらっしゃるという中で言いますと、地方に住んで、兼業も副業もという流れも大きく起こると思っております。個人が企業を選ぶようになった、兼業・副業、場所の制約から解き放たれたという大きな変化をどのように今回の議論の中に入れていくのかというのが重要なポイントではなかろうかと考えております。私どもからは以上です。
 
○事務局 ありがとうございました。それでは、委員の皆様からただいまの御説明に対する御質問、御感想などがありましたら、お願いできればと思います。鎌田座長、お願いします。
 
○鎌田座長 いろいろ詳しい情報提供をありがとうございました。非常に参考になります。
2点ほど、ちょっとお聞きしたいのですが、1つは資料の通しページ番号だと18ページ、19ページの辺りで書かれていることについて、確認の意味で質問させていただきたいのですが、職業紹介事業と募集情報等提供事業の垣根が低くなり、従来の募集情報等提供事業においては新しいサービスの形に変わっていくということが予想される、このような御指摘だと思いますが、この垣根が低くなるということと、新しいサービスの形に変わっていくということの中身について少しお聞きしたいのですが、職業紹介は言うまでもなくあっせんということです。募集情報等提供事業との垣根が低くなりというのは、いわば、あっせんとまではいかないが何らかの形で紹介に近いような類似のサービス、これは様々なものがあると思いますが、そういったサービスが付加されたような形で募集情報等提供事業が活動している、こういった趣旨でお話されたのかということが1点です。
もう1点は、これもそこに書いてありますが、フリーランス、あるいは副業・兼業領域というものが今後1つの市場として拡大するのではないかという見通しの中で、こういったところについて一定のサービスの提供ということが考えられるということでした。言うまでもなく、職業安定法や今までの職業紹介事業、派遣、募集情報提供事業は、基本的には雇用労働者を対象にしたシステムということなのですが、フリーランス、あるいは雇用によらない副業・兼業を念頭に、そういったものが今後拡大して、そして仲介業者についても、こういったところが、拡大するだろう、こういう御趣旨でお話をされたのか。2つ質問させていただきたいと思います。
 
○株式会社パーソル総合研究所 ありがとうございます。両方とも基本的には、イエスという見解です。少し補足をさせていただきますと、1点目の所は、分かりやすく言いますと、今までは雑誌であれば求人広告を選ぶ側が、純粋にこれがいいということで、意思は求職者側にあったわけです。現在では、レコメンデーションのような、あなたにはこの仕事がいいのではないですか、Amazonさんのレコメンドと一緒ですが、そういうこともあれば、あなたはこの職種、ポジションは受かりやすいかもしれませんねというようなことが、過去のデータをもとに今もなされているのではないかと思います。そのようなテクノロジーによる、この世界でレコメンドとかと言いますが、テクノロジーによる紹介ということが今も行われているという認識です。この精度等々は上がっていく方向にあります。一般的にはお互いにとっていいことではありますが、形としては紹介と変わらない。それを人が対面ないしメールや電話でキャリアカウンセラーが伝えるのか、エンジンが伝えるのかという違いになってくるのかなということです。
2点目についても、こちらも既にいろいろなベンチャーさんを含めて起こっているとは思いますが、本当に副業紹介サイトのようなものが、純粋に今世の中はこういうニーズがあるということで、出てきているかと思います。地方でのお仕事まとめサイトのようなものも出てくると思います。ただこれが、数百億というような大規模になるかというと、そこまでは想定しているわけではありませんが、有り様としては一定程度出てくるだろうなと思っています。
 
○株式会社パーソル総合研究所 フリーランスと副業に関して補足させていただきますと、現状、今、勢いがあるというか、コロナという実態経済の不安定化の中で、労働者が今、正に気持ちの揺れ動きとしては副業のほうに寄っているかなと思っています。私もこの調査をやったときに、フリーランスという選択肢をもう少し考えているのかなと思っていましたが、現状では思いが弱まった、のほうが高いのがフリーランスへの移行です。こちらはものすごく大きなマスで捉えた数字ですので一概には言えないのですが、全体の市場規模としては副業・兼業の市場が広がっていく流れのほうがコロナで増したのかなと考えています。
 
○鎌田座長 その場合、副業・兼業というのは、雇用労働としての副業・兼業もありますが、雇用によらないものも含めて、今おっしゃっていますか。
 
○株式会社パーソル総合研究所 おっしゃるとおりです。実態としては、いわゆる2社に雇用というのはなかなかテクニカルに難しいところで、取り分け大企業側からするとオペレーション上難しいこともあり、実態としては1つの会社に雇用契約がある場合は、こちらの企業側の事情により、もう1個の兼業・副業の形態は、おおむね業務委託契約にならざるを得ないのが今の実態のところでもあろうかと思っています。いわゆる雇用によらない兼業・副業がメインになってくるのではないかと捉えています。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。
 
○事務局 ありがとうございました。それでは委員各位、ほかに御質問、御感想等があれば、お願いできればと思います。
 
○山川委員 非常に面白く、かつ有益なお話をありがとうございました。簡単に2つだけあります。1つは、これから情報の加工はAIが行う可能性が強まるであろうという御指摘でしたが、ここで例えば情報の加工というのはどういうものを指すのかについて、1点教えていただければと思います。
2点目は、実態としてテレワークのお話も伺いました。これも興味深かったのですが、例えばテレワークの機会の提供と言いますか、テレワークできるというようなことも求人企業側で情報提供しているのかどうか。より一般的に言えば、関心の高い待遇情報と言いますか、労働条件の情報として、現在どのようなものがあるのか。例えばより積極的に情報提供をすると有益であるなど、そういった情報というものがあるかどうか。この2つについてお伺いできればと思います。
 
○株式会社パーソル総合研究所 1点目にありました情報の加工というところですが、我々は職業紹介の事業や求人広告事業を運営している中でテクノロジーの活用をしていますが、そのAIのデータの活用というと、まだ行っていると胸を張っては言える状況ではなく、まだまだ研究段階かなという状況です。個人の方の希望を全部インプット情報に入れたときに、抜けなく漏れなくその方の希望に合った案件を紹介することや、その方自身のいわゆる可能性を広げるようなことに、やはりテクノロジーを使うケースが今のところはあります。ただ、将来的には求職者の、いわゆる決まりやすいとか就職につながりやすいとか、同じような経験をしている人がこういうジョブチェンジを行っているというようなことから言うと、匿名加工した情報自体でその人の機会を広げるような教師データと言いますか、正解データのようなことはどんどん科学をしていって、個人の人たちに対して更に、その人の可能性を広げるということに関しては、より研究をしていきたいと考えています。その意味で、加工という言葉を利用させていただいた次第です。1つ目の答えは以上です。
 
○株式会社パーソル総合研究所 テレワークに代表されるように、関心の高い情報については、今、事業者各社がどこまで対応できているのかということを網羅的には把握していませんが、大きな流れとしては人手不足、個人が企業を選ぶ立場になっているという大原則からすると、まず募集企業側もテレワークできます、副業OKですということを言っていかないと、選ぶ側から支持されない。中長期的には、人材力が衰えてしまうという大きな流れに逆らうことはできないので、当然、情報提供の事業者サイドも、テレワークできる案件一覧のように、検索したいというニーズに応えなければ、使われなくなっていきますので、各社スピード感はあれど、対応していくことになろうかなと思っています。まとめますと、関心の高い情報、取り分けテレワークや副業等というようなことは早晩皆さんが対応されていくことになろうかなとみています。
 
○山川委員 ありがとうございました。非常によく分かりました。加工というのは、そうしますと、全体としての統計的な傾向の中で個人を位置付けるといったようなことを、今後、考えるであろうというように理解してよろしいでしょうか。
 
○株式会社パーソル総合研究所 はい、そのとおりです。
 
○山川委員 ありがとうございます。
 
○事務局 ほかの御質問等はありますでしょうか。
 
○安藤委員 1件コメントと2点質問があります。まずコメントとしては、8ページ目の所で副業・兼業意向が高まっている、強まっているというお話がありましたが、副業・兼業のガイドラインの見直しの際には、労使の代表はどちらかというとやはり副業・兼業に否定的な見解を持っていたと個人的には感じています。使用者側はどちらかといえば、本業に集中してほしいと、こういう意向を持っています。また労働者の代表から出てくる意見というのは、あくまで本業で生活できる収入を得るのが原則であるというものです。労使がこのような意見を持っている中、副業・兼業意向が高まってきたということについて、これから労働政策を考えていく上で、どう捉えるのかというのは重大な課題だと感じました。これは感想です。
質問が2点あります。まず17ページ目、個人と事業者の関係、そこに仲介役としての人材サービス事業者がいる。こういうお話を図で表していただいていますが、ここでこの図を上から見たときに人材サービス事業者にどのような動機付け、インセンティブを与えるのが社会的に望ましいのかという問題を考えていました。例えば、情報提供をしたら、雇用関係が成立したら、それでおしまいというのではなく、雇用関係が一定程度続いたらとかスキルアップしたらなど、何らかの意味でもうちょっと長期的に寄り添っていくような形で、この人材サービス事業者に活躍してもらったほうが社会的に望ましいのではないかという気もします。しかし、現在のように社会変化が激しいのであれば、長期雇用が実現することだけが社会的に望ましいとも限らないわけです。必要なときに必要な組合せができて、また次によりよいマッチングにどんどん移り変わっていくというのも悪いことではないのかもしれない。このようなことを考えたときに、まず、この業界のシンクタンクとして、どのように人材サービス事業者の役割を捉えていらっしゃるのか、また適切な動機付けについてどのように考えられているのか。併せて、現行の規制のうち、例えば、前回第1回で年収700万円など一定の基準を超えたり、一定の条件を満たさないと労働者側から雇用仲介についてお金を取ることはできないなど、そういった現行の規制について、いろいろ再検討の余地もあるのではないかコメントしたのですが、この種の規制についてどう思われているのか、これが1点目の質問です。
2点目は、最後の19ページについてです。こちらで、今回の資料の中で情報の非対称性を解消、軽減することが人材サービス事業者の役割と、この点を強く表に出されて説明されていて、インターネットメディアやSNSの普及によって、情報の非対称性が小さくなったとしています。情報の収集・選別・加工、こういうものはAIで代替されるということはコモディティ化されていって、競争が激しいので、ここでは収益が得られなくなってくる。このようなことが予想されると思いますが、しかし人材サービス事業者の役割はほかにもたくさんあって、既にお話に出てきたように、ここはどうですかとか、あなたみたいな経験だったらこちらもいいですよというところをお勧めするだけではなくて、最後の一押しをしてあげるような、キャリアの相談に乗ってあげるような役割も十分に果たしていたのだと思います。似たような仲介事業で言えば、例えば不動産を探す、賃貸でも売買でもいいですが、今、簡単に自宅にいても売りに出ている物件や賃貸物件を探せますが、では、それで決められますかと言ったら、やはり仲介事業者さんに付き添ってもらって、中を見てみて、そして最後、幾つかの物件で迷っているときに、えいやっと背中を押してもらう、このような機能もあったりするのです。質問としては人材サービス事業者の役割として、この情報の非対称性が解消、軽減されていくという方向性と、今後どういう分野で人間にしかできない仕事が残っていくのか。どういう分野がAIなどで代替され、どういう分野は更に人間が重要になるのか、この辺りどのように将来像をお考えか、この辺を教えていただければと思います。長くなりましたが以上です。よろしくお願いします。
 
○株式会社パーソル総合研究所 ありがとうございます。なかなか難しいテーマですので、完全には御質問にはそぐわないかも分かりませんが、コメント的にお話させていただくと、1点目、冒頭にありました長期の就業へのインセンティブのようなことも、おっしゃられたとおり、企業側のニーズも片やありますし、必ずしも、長いことがいいのかと。大きく言えば日本型雇用というのは超長期をコミットして、それが今課題だということになっています。短すぎるのも問題だと思いますが、期間という概念よりは安心して前向きに働ける仕事へのマッチングなり動機付けがどうできるのかということが、より大事になっていくのではないかと思います。必ずしも長期な就業をインセンティブとして置くというのは、時代の流れとはなかなかそぐわないところもあろうかと思います。
個人のほうがパワーを持っていくという大前提からしますと、事業者も今までは企業に寄り添う、法人に寄り添うところも強かったと思いますが、個人から支持をされないと利用されなくなるというメカニズムにおいて、より個人が実現したい世界観に近付いたサービスコンセプトを設計していくことに必然的になると思っています。
役割についても、おっしゃるとおりだと思っています。単に情報の流通というところの価値は下がる中で、何が価値かで申し上げると、少し触れさせていただきましたが、正におっしゃるように背中を押す、心理的に寄り添う、よく分からないロジックでロボットがお勧めしてくれたものに必ずしも自分のキャリアを預けるかというと、そうではないと思っていますので、その辺りのハイタッチなところが価値になるということが1つあり得るだろうということ。それから、情報を一定クローリングでアグリゲートが今でき始めていますが、必ずしも、企業側も全ての情報を世に出すかということもありますので、情報を集めてくるところも、引き続き一定価値としては残るかなということ。少なくとも今の技術ではできない偶然の出会い、情報のケミストリーといったことを人間ならではの世界でどう実現していくのかという辺りにも価値があるかなと思っています。私も専門ではないので、理解が正しくないかもしれませんが、AIの世界は過去のデータ、今あるデータに基づいて最適化するということだと思っています。未来に起こり得る可能性を、全て導き出せるわけではないと思っていますので、その辺りは人間の成せる業として、価値として残っていくのではないかと考えます。真っ当な答えになっていないかもしれず恐縮ですが、コメントとしてはそのようなところです。
 
○事務局 ありがとうございました。他にはありますでしょうか。よろしいでしょうか。
そうしましたら、パーソル総合研究所様からの御説明と質疑は一旦ここで終了させていただきます。
続きまして、リクルートワークス研究所様よりヒアリングをさせていただきます。また、本日はリクルートワークスさんには事務局から、海外の情勢を付加して御説明を頂くようにお願いさせていただいています。若干、御説明の時間が長めになりますが、御承知おきください。それではリクルートワークス様、よろしくお願いいたします。
 
○リクルートワークス研究所 本日は、貴重な機会をありがとうございます。ホームページで、前回の第1回研究会資料を拝見したところ、論点は3つと書いてありました。IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度。また、多様化するキャリアの中で、機能的な労働市場、その機能性をどう高めていけばいいのか。その上で、有料職業紹介及び情報提供事業をどう確立していくべきかという、正に今必要な観点だと思っています。こちらに資するような情報を是非御提供できればと思います。
私からは、雇用仲介に関わる労働市場を概観するという話。そして、事務局よりお話がありましたが、IT活用が進む米国のサービスについて、今何が起こっているのかを御紹介します。それを踏まえて、日本の状況と今後についてお話できればと思います。先ほどの御質問の中にもありましたが、テクノロジー活用の実態をお伝えして、その可能性とリスク、そして、今後の人材サービスの在り方を考えるといった情報として御活用いただければと思います。
最初は、雇用仲介に関する労働市場です。第1回研究会で、労働市場を概観する部分は厚労省からお話があったと思いますので、余り詳しくはお話いたしません。先ほどパーソル総研さんからあったとおり、非常に長期的な人材不足を踏まえて、就業者数は増加傾向が続いています。入職者数についても、一定安定して推移してきたという状況かと思います。ポイントは、その中でどういう動きがあるのかということだと思います。
このデータは、ワークス研究所で実施している、毎年同じ5万人ぐらいにアンケートを取らせていただいている就業実態パネル調査のデータです。2年間の転入者9,000名がどういう動きなのかを示しています。例えば、無業者から自営業者になった人は1.4%ぐらいを占めている、正社員の中で動いた人が14.4%いる、という動きを可視化しています。
これを見て、特に赤字の所は5年前と比較したときに、非常に増えている動きがこれで確認することができます。転入者は非常に増えているのですが、特に大きなのは非正規社員の中で転職をしていくという動きです。続いて、正社員の中で動いていく。その次は、無業者から非正規社員に動いていくという話です。これは、第3次安倍内閣でも、非正規雇用に対する手当をいろいろやってきたわけですけれども、そういう効果も出ているのかと思います。その次の動きとしては、非正規雇用から正社員に動いていくのが4.3%とあります。この辺りが顕著な移動の状況かと思います。
今後の労働市場を考えたときに、非正規雇用の中で動いている大きなボリュームと、正社員の中で動いている対象者を分けながら見ていくことも必要と思っています。次は前職に対して転職した先、業界がどう動いているのかというところになります。日本の大きな産業構造転換で、業態転換とか事業モデル転換がなされる中で、異業種・異職種に対しての動線も非常に大事になってくるということです。そういう動きが今どう起こっているかというのがこの図表になります。真ん中で、右下に伸びているグレーの網掛けのところが、同業種が同業種に転職した比率です。例えば、左の縦のラインで、情報産業の6番目の数値は、情報産業にいた人が続いて情報産業にそのまま移ったというのが46%ということです。その他の業種にどのように動いたかということがこの比率によって表されています。グレーの網掛けのところを見ると、大体4割から、多いと6割ぐらいが同業種にとどまるというようになっています。これは裏を返せば、6割ぐらいは異業種に転職しているという感じです。そういう業界転換は結構起こっていると思います。
雇用仲介の機能の中で、このトランジションをいかに促進するかというのは一つの重要な機能だと思います。現時点においても、比較的多くの可能性が転職者に対しては開かれていると考えてよろしいのではないかと思います。実際に、人材紹介の事業をやっている。リクルートエージェントにおいて、正社員の異業種・異職種それぞれへの転換度合というのは大体7割近くあります。そういう意味では、雇用仲介者が貢献できる領域と思っています。
今後の可能性や潜在性という意味では、転職意向というものがあります。この後お話するITを活用した多くのサービスは、顕在化している転職ニーズだけではなく、潜在層に働きかけるためにITを積極活用していく例が多いのですが、そのボリュームがどれぐらいあるかというのが、この潜在的な転職意向です。若手・中堅を中心に、「現在転職を考えている」、又は「いずれしたいと思っている」層が潜在しています。20代の若手では、20~29歳のところを見ると、転職活動をしている人が13%ぐらいいます。潜在している層が15%、いずれでは半分ぐらいが転職の意向を持っています。動きにくいと言われている40代ぐらいを見ても6%が活動し、10.5%が意向を持ち、いずれというのが24%ということで、全体としては40%ぐらいが何らかのトリガーやアクションがあれば動ける可能性を持っている層です。
そうした大きな潜在層が動くということを考えたときに、どこから動き始めるのかということです。恐らく若手とシニアという、日本的雇用でいけば入口の新卒一括採用の崩れと出口の定年制の崩れ。改正高年齢者雇用安定法がこの4月から施行されますけれども、その高年齢者に対する施策の変化によって大きく動き始めるのかと思います。
次に、大卒者の早期離職率の推移です。今までは、一般的に大手企業に入れば、多くの人は長期間勤める。さすがに終身雇用という話にはなりにくいですけれども、長期雇用を前提として、入る側の新卒もその心づもりでやってくると。これまでは中小企業と大手企業の早期離職率の乖離が大きかったのですが、今はそれが小さくなってきています。これは、構造的に2011年ぐらいから動き始めていて、一貫してその幅が狭くなっています。大手だから辞めないということではなく、大手でも若手に関しては転職の意向が徐々に強くなってきています。この流れが、最終的には、大手だから中小だからというわけではなく、自分に合った仕事を求めて徐々にキャリアの中で仕事を変えていく、選んでいく流れにつながっていくと思っています。
もう1つはシニア、高齢者のほうですけれども、同じようにワークスで調査をしたところ、今、ミドルシニアのキャリアパスというのはこんな構造になっています。50歳時点で男性正社員だった人は、大体59歳時点で4人に1人が転職している状況です。この流れが、今後シニアの雇用が、70歳までの努力義務等も含めてどう変わっていくかということです。恐らくは多くの企業で多様なキャリアの選択肢を提示することになるでしょうし、又はキャリア教育といった取組が進む中で、自発的にいろいろなキャリアを自ら選択していくシニアの層が増えるのではないかと思います。
私が、特に着目しているのは引退者というオレンジ色のラインです。60歳以降徐々に引退者が増えていきます。65歳ぐらいでいくと35%ぐらいが引退している状況です。70歳という1つの区切りの年齢が示されたことで、この引退層がどう動くかということです。
こちらのページにあるように、シニア層が引退する理由を調べたところ、4つの理由に分かれました。そのうちの大きなものはミスマッチ引退ということで、自分に合った仕事がないから引退するという理由が非常に多いです。これを実際の労働市場に掛け合わせてみると大体160万人ぐらい、こうしたミスマッチ引退というものがあるのだと思います。先ほど、パーソル総研さんのほうからもありましたけれども、副業・兼業の進展、若しくはマッチング技術といったものが高度化していくことによって、こういう潜在層に対しても、より働きかけられる機会が増えていくと思っています。
実際にミドルシニア層の副業・兼業の意向というのは、近年高まってきています。45歳以上のミドルシニアの34%ぐらいは「副業・兼業をしたいと思っているが、勤め先の制度で認められていない」という制約の中で、副業・兼業はしないというようになっています。今後は、人事の規定等の改定等も進んでいくと思いますので、そうした意味ではこの34.6%というボリュームが、副業みたいなことを通じて更に新しいキャリアに動いていくということなども十分考えられるのではないかと思います。
ワークスの調査でいくと、今は大体転職する人の5%ぐらいが、副業・兼業を経て次の会社に移っていくという、段階的な転職をやるようになっています。その比率が、昨年と今年を比べたときには1、2%ずつ徐々に増えてきています。一気にAからBの企業に移るということではなくて、AからB’、Bみたいな形の、少し副業・兼業をはさんだ転職の変化も、今後は潜在的な層を動かす大きな力になっていくと思います。そういった広がりも、労働市場を大きく動かす力になっていくのではないかと思います。
更には、ジョブ型雇用の進展ですが、経団連も含めて、大きくジョブ型雇用への移行を考えておりますので、多くの企業でジョブ型が進めば、社内労働市場、社外労働市場における人材流動化への影響も当然あると思います。
こうした形で、それぞれ転職をしていくわけなのですけれども、雇用仲介事業を考えるにあたって、その流入の経路として、どんなサービスを使って転職をしていくのかということが非常に大事になります。パネル調査を5年ぐらいやっていますので、その5年間の推移を示しているのがこの表です。これは、ハローワークから始まって、メディアと言われる募集情報等提供事業者の中にも、当然ながら求人誌という、紙もあれば、インターネットといろいろなものが含まれているわけです。それを細かく丁寧に見たのがこの表になります。ここ最近5年間の傾向としては、ハローワークが少し減ってきているということ。あと顕著な傾向としては、タウン誌、新聞・折り込みチラシといった紙媒体の利用率は下がっています。一方で、インターネットの転職情報サイトの活用比率が高まっているという流れになります。
Linkedinとか、Facebookとか、SNSの活用が増えているという話がよくあります。その実態というと、ここで見ていただけるとおり、大体現時点においては2.4%ぐらいがSNSなどを使った転職になっています。インターネットの活用というのはかなり進んでいて20%ぐらいを占めていますが、SNSというのは、この後で海外との比較を出しますけれども、日本においてはまだごく一部で2.4%です。こうした中、今後5年、10年でどういう法制度を整えていくのかという視点が考えていくポイントなのかと思います。
ただ、この流入の経路は、正社員、非正規社員では随分様子が違います。次の図表は正社員です。正社員は、ハローワークの活用率が高くて、紙媒体の活用率は低い。インターネットの活用は全体的傾向との差はそれほどない。それではどこが増えているのだという話でいくと、やはり非正規に比べて民間人材職業紹介の会社が多い。インターネットのところと、あとは民間職業紹介、ハローワークという辺りが中心になっているのかと思います。
非正規雇用のほうはどうか。ページをめくって両者を比べていただくとより分かりやすいのですけれども、非正規雇用は、紙媒体の活用が非常に高いです。求人誌とかタウン誌とか、新聞の折り込みチラシ等辺りの活用比率が高い。インターネットの情報サイトはどうかというと、正規社員も非正規社員もほとんど活用率は変わりません。正規、非正規を問わずインターネットは広がっているということです。逆に紙媒体は随分活用度が違う。ハローワークに関しても、その利用率は随分違う。そのような状況の差があるのかと思います。
更に、こうした活用により大きな差が出るのが男性、女性の年齢別です。男性の年齢別を御覧いただくと、まず若者たち、一番上の20~29歳ですが、この若手になるとSNSの活用が6.5%になります。これを横と比べてみると、民間の人材紹介会社の比率を超える比率になってきています。若手の20代においては、民間人材紹介とほぼ並ぶか、もう超えるぐらいの感じでSNSの活用が進み始めています。世代別の特徴というのは、色濃く出てきています。恐らくはこの男性20代の流入経路の比率が、日本の5年後ぐらいの一般比率になるのではないかと思いながらこのデータを見ています。上の世代と比べると、非常に転職活動の仕方が変わってきているぞということが見えると思います。
逆に、中堅の年代層である40~60代を見ると、皆さんが確認できるとおり、ハローワークを通じた転職流入が非常に増えています。御存じのとおり、非常に転職が難しい年代層とも言えます。そうした方々に対しては、丁寧なキャリア・コンサルティングが必要という話が先ほどありましたけれども、そうしたものだったり、地場就職であったり、広域ではなく狭域のマッチングであったり、そのようなものが非常に大事になってきますので、そういう点がハローワークの活用に顕著に表れています。民間職業紹介に関しては、ほぼ各年代層、60歳代まではほぼ変わらずという形で、広く年代層を超えて、民間職業紹介が活用されていると見ていただいたらいいのかと思います。
続いて、女性はどうかということでいくと、40代から50代はハローワークが多いというのは変わらない傾向になりますが、紙が増えるところが1つポイントになります。もう1つは、人材派遣会社を通じた職種転換というところが非常に機能しているという話。また、もう1つ特徴的なのは、インターネットの活用は各世代を超えて女性のほうが進んでいます。男性よりも職種転換でインターネットを使っている率は女性のほうが多いのです。男性に比べても、女性はインターネットなどを結構積極的に活用しています。
最終的に、これは男性も女性も共通ですが、60代以上になると、ここにあるとおり家族とか知人とか、前職の紹介が増えます。口コミということでいけばリファーラルなどにも通じてくるのかもしれませんが、知人の紹介や縁故の採用が増えてきているので、こうしたネットワークをどう作っていくかというのは結構大事なことではないかと思います。
こうした日本の傾向が、他国とどう違うのかを示しているのが次の図表で、13か国調べています。調べた中で、日本は上から2段目にあります。視覚的に捉えて顕著な点は緑色の公的機関が多いというのが1つの特徴だと思います。日本以外で公的機関が比較的多いのはフランスですけれども、日本は特に多いというのがポイントです。もう1つは、その結果というわけではないのですけれども、インターネット求人サイトとSNSの活用が少ないというのが、もう1つの日本の特徴です。逆に、一番活用が進んでいる所はアメリカとかロシアです。特にアメリカではインターネット求人サイトとSNSを足せば、ほぼ5割を超える求人・求職がここを通じて行われているということで、非常に活用が進んでいます。他国で他に特徴的なのは中国です。中国は、国策的にもSNSの事業者を育成するということもやっていますので、SNSの活用は非常に増えている状況があります。アメリカがITの活用という意味ではベンチマークになるかということで、この後アメリカの状況をお話していきます。
その前に、転職市場において何を実現するのかということです。これも各国比較ですけれども、日本は以前よりも転職して良くなった、状況が良くなったという回答比率が他国に比べて少ない傾向があります。否定的な回答も少し多いのです。日本の転職というのは、他国と比較しての話ですが、良い転職ができたという大きな満足感を感じている人が相対的に少ないということもあります。その理由はいろいろ考えられると思いますけれども、雇用仲介というプロセスの中でも貢献できることはいろいろあるのではないかと思います。
それでは、先ほどお話したとおり、HRテクノロジーの活用が進む米国においての活用状況を少しお話していきます。これは、SIAの人材ビジネスエコシステムマップというものです。テクノロジーの活用を中心とした全体像がここに示されています。恐らく、雇用仲介という意味では人材獲得のテクノロジーという、この円でいくと下にある各サービスが、今後日本でも活用されていくと思いますし、現時点でも相当数が既に日本に入ってきている状況です。オンライン広告でいけば、ジョブボードといった広告事業から始まって、ジョブアグリゲーターといった検索エンジン、それからソーシャルメディアのSNSとかコミュニティサイトとか。クラシファイド広告サイトと書いてあるのは、新聞の三行広告をオンライン上で展開しているもので、これも非常に多く活用されています。あとは、求人の配信サービスとか、求人ポストの最適化サービスといったものがここに並んでいます。恐らくは、こういうものを平面的に見ていても、カタカナも多いですし、なかなかイメージが湧かないと思いますので、実際の採用のプロセスに応じて、こういうものがどう機能的に組み合わされて、転職をするという世界観が出てくるのかということを後段でお話します。
こうしたHRテクノロジーが活用されるということですけれども、ほぼこの3つのテーマに沿って、いろいろなテクノロジーが開発され、提供されていきます。1つは、より個人に合った仕事、より企業に合った人材を絞り込むというところに、データを処理するテクノロジーが非常に有効だということ。2つ目は、求職者の活動負荷、求人企業の業務負荷の大幅低減。それから、先ほど潜在層という話が日本においても結構ありますというお話をしましたが、アクションを起こしていない求人潜在層へのアプローチということ。この3つが大きくあります。これらの目的を、良い形でテクノロジー活用に組み込んでいけば、日本の転職市場というのは、より多くの人が満足度の高い転職ができることになります。3つに対するリスクへのケアが少ないと、なかなかそうはなっていかないということでもあるかと思います。
実際にどのように組み合わせてやっているかというのを、大手ホームセンターのLow’sという会社でみていきます。全米50州、カナダに1,725店舗を持つ非常に大きい会社です。従業員は30万人いて、日本でいう、いわゆる雇用期間が定められた非正規社員の雇用も多いので、非常に多くの人材を採用するということでこういったテクノロジーを活用しています。テクノロジー活用のステップはこの4つがあります。まずは、ソーシングとよく言われる候補者の発掘です。それから、候補者とのコミュニケーション・交流。それから選考。そして、全体を支える事務的なプロセス管理というような場面でITが使われます。
それでは、ソーシング段階ではどんなことを実際にやっているのだという話になります。例えば、Web上で公開されている候補者の氏名、社名、学歴、職歴、メールアドレス等々をAI採用自動化プラットフォームが収集して、候補者管理システムに自動的に登録をしていってくれます。既に登録されているデータなどを自動更新する機能もあります。当然ながらこの中には、収集した候補者情報から、この職種、この会社にはこういう人が合いますよということをレコメンドしたり、リスト化したりというサービスも標準で組み込まれていることが多いです。
ソーシングの下半分は、候補者の発掘のいろいろなチャネルがありますという話をしています。例えば、Web上のSNSで公開されている求人だけではなくて、一般的な求人・求職サイトを探りに行くということもあります。そこだけでは当然足りないものですから、職業コミュニティや、学習コミュニティみたいな所で情報を収集したり、あらゆる所を探りに行って、応募者のリスト化だったり、又はアプローチといったことが行われています。
続いてエンゲージメント。交流というところでいくと、自動化された採用プラットフォームが動いていて、日程管理機能を使って、候補者の面接を調整するスケジュール管理がAIでなされるようになっています。
続いての選考というフェーズでは、先ほどお話がありましたが、パフォーマンスの予測を自動的にやってくれて、大量の応募者を評価していく。更には、自社に有利な特性を持っているかどうかが比較検討され、自社に合った人材を採用するために使われています。又は、AIが候補者の分析モデルを基に、候補者の長所や可能性を引き出す面接ガイド、面接の視点をアウトプットしてくれたりします。
プロセス全体管理においては、採用全体のマネジメントができるように、部署、応募者の人数や応募状況を管理するシステムが動いているというような感じの採用の流れが出来上がりつつあるということです。
これは、大手企業なので、いろいろなツールを使ってという例でこれを示しています。これが中小企業になってくれば、ごく一部だったり、ある機能だけだったりということの違いはありますけれども、かなりの部分テクノロジーが導入されているというようにお考えいただいていいと思います。
この後は、活用されている主なサービスで幾つか特徴的なものをピックアップしています。全て説明するというよりは、ポイントだけ触れさせていただきます。例えば、先ほどの候補者発掘のソーシングでいけば、ここにEnteloというサービスツールがあります。これは、ここの赤字にあるように、いろいろな所から候補者情報をクローリングして集めてきます。自動収集した潜在層のプロフィールを1ページに全部きれいにまとめてくれて、比較できるようにするとか、又はカルチャーフィットの高さを示すとか、又はその候補者が所属している企業の株価の状況とか、幹部の退職状況みたいなニュースを拾って、ひょっとしたら転職する可能性が高まっているかもしれませんよというアラートも出してくれる機能があります。これが、ソーシングというところです。下のほうは、割愛させていただきます。
このTalentNetというのは、先ほどフリーランサーとか業務委託の話が出ていましたけれども、そこの垣根を設けずに、フリーランサー、業務委託、インターン、正社員なども含めた、あらゆる人材の情報を1つのシステムにキュレーションしていくシステムです。いろいろな雇用形態、人材が混在するものですから、求人とスキルのマッチングを行った上で候補者のランク付けをしていくということも普通に行われていくということです。続いて、エンゲージメントは、先ほどお話したとおり日程管理といったようなことです。
そして、アセスメントでは、ビデオ面接とか、面接のスケジュール機能がセットになっています。ビデオアセスメントでは、求職者が30分間で5問の質問に答えて、そのビデオを送ると、求職者の表情とか言葉遣いとか、ボディーランゲージとか、イントネーションなど最高5万のデータポイント、5万の評価指標を収集した上で、入社後のパフォーマンスを自動予測していく。当然ながら、これによって合否が全て決まるなどということはありませんので、面接選考なりのサブ情報として活用していって、効果性を上げていくということです。このHireVueは、既に日本にも入ってきています。日本では、デンソーさんとか星野リゾートさんといった会社も含めて45社が既に導入しています。こういうアセスメントが有効なのは、言語対応が、非常にバリエーションが多いということで、32か国語に対応しています。
続いてのRobot Veraさんという人は有名なのですけれども、この方などでも68言語に対応しています。非常に幅広い候補者に対して対応しているということで、重宝しているということです。
ただ、テクノロジーというと、非常にブラックボックスになりがちと言われます。そういうテクノロジーを逆の意味で使っていくサービスも結構出てきています。例えば、この左のBLENDOORという会社も、AIを活用したマッチングサービスです。性別とか人種といった採用に必要のないバイアスを逆に除外していくというAIなどもあります。最終的に人が面接をしたときには、その採用/不採用の傾向を分析して、どの段階でバイアスが生じたかということを、求人企業にフィードバックしてくれるAIの活用なども出てきています。一番右側のTalVistaなども同じで、アンコンシャスバイアス、無意識の偏見が入らない評価ができるように、逆に人をAIが支援する。こうしたサービスも、恐らくはAIの活用という大きな流れでは必ず出てくると思っています。
このBLENDOORとTalVistaは2018年にアメリカのHR Tech Conferenceで優勝と特別賞を得ています。こういった活動が、アメリカの業界のカンファレンスでも非常に評価されているところがあります。
今度はいろいろな仕事側の情報をどう求職者に届けるかということです。この採用マーケティングというのも、このあと日本でもキーになってくるテクノロジーだと思います。候補者となるターゲットが最もよく利用するWebサイトを解析して、そこの広告枠を自動買付して、ターゲット層に適した広告を適切なタイミングで配信するというような自動化のツールなども出てきています。
オンボーディングは入社後の話なので、ここでは一旦割愛します。
今後更に導入が進むHRサービスとしては、この下から2番目にある、オンライン上で短期の仕事とか、そういったものの募集又は契約といったものが進められるオンラインスタッフィングプラットフォーム。あとは先ほどあった、下から4番目のソーシングの自動化のテクノロジー、応募者を広くいろいろなネット環境から集めてくるソーシングのテクノロジー。それから、候補者のエンゲージメントということで、プロセス管理をするテクノロジーを更に積極的に導入していこうという企業が非常に多いです。
こういう海外の状況を踏まえて、日本ではどうかというところです。日本も、より個人に合った仕事、より企業に合った人材の絞り込みをしていこうという方向性は何ら変わりません。各企業の検索アルゴリズムの機能向上により、レコメンド情報は精度が徐々に高まってきている状況があります。ただ、米国のサービスと比較した際には、レコメンド機能の一部の提供を各社が控えている状況もあります。これは、日本の採用慣行や業法に関する配慮が一部にあります。
2番目の、求職者の活動負荷とか、求人企業の業務負荷の大幅低減に関しては、やはり大きく今の日本で進んでいます。無料の求人掲載プラットフォームとか、そのプラットフォーム上に登録した求人情報を、SNSとか検索サービスに自動配信していくとか、企業が安価に多くの求職者に発信できるサービスというのが、非常に拡大してきています。求職者のほうも、インターネット上の求人情報が集約される効果などもありますので、ワンストップの情報提供が進んでいます。
そして3点目、アクションを起こしていない潜在層へのアプローチという意味では、求人データベースなどを活用することで、今動きたいという人だけではなくて、あなたに合った仕事がありますという、求人側の働きかけによって潜在層にアプローチできるサービスが生まれているという状況です。
ここに、主要人材サービスの俯瞰図とありますけれども、先ほどアメリカの状況でお話したものが、ほぼ日本でも提供サービスとして入ってきています。紫色が2010年以降登場してきた、又はテクノロジーによって随分大きく発達したツールです。この10年ぐらいで人材サービスというものが本当に様変わりしてきているということが見えます。真ん中に緑色に白抜きの文字で、転職顕在層へのアプローチと潜在層へのアプローチと分けていますが、潜在層アプローチが紫色で埋められていますので、潜在層へのアプローチは随分進んできているということが見て取れると思います。
特に、人材マッチングに関わるサービス事業者はここに一覧化していますけれども、以前からある職業紹介及びヘッドハンティング、求人広告に関しては上の3つで、その下に新しく出てきた、人材データベースに直接レコメンドやスカウト機能を搭載したサービス。SNSを使ったコミュニティ、又はFacebookなどのSNSそのものに拡散していくサービス。ソーシャル・リクルーティングサーチということで、インターネット上のオープンデータから候補者をレコメンドしていく。また、ジョブボード・アグリゲーターなどの検索サービスを提供するものがここに入ってきています。
そうした中で、今採用するときに、何か単一のツールだけを使って採用をやりますというようにはななりません。例えば無料のジョブ登録をして、ジョブサーチの検索エンジンで情報配信するという、上から2段目のブロックがあります。ここを核にした場合には、ここから人材あっせんのサービスにつながっていったり、又はここを起点に先ほど言った自動配信の採用マーケティング、適切な媒体をうまく自動的に選んでくれるというツールを使って、登録したジョブをSNSとか、又は採用力がないのであれば求人広告という形で、お金をかけて情報配信する所につないでいったりというように、これらが入れ子になりながら採用という価値、サービスを提供していくという形になってきています。どこをどう区切るというようなことが、比較的難しくなってきていて、そのときのその対象者に応じた適切な方法が柔軟に組み合わされたりする中で採用が進む形になっていきます。
下のほうは、求職者データベースによるダイレクトアプローチということで、直接的に求職者データベースに、こんな人にこんなお仕事がありますよ、是非うちに応募しませんかとアプローチをすることが進んできている状況です。
一方、求職者視点で見ると、人材サービスの見え方は、また少し違った見え方をしています。求職者も当然ながら転職活動において多様なサービスを活用できるのですが、ここの「求職者のニーズ」と書いてある段にありますが、これだけいろいろなものが出てくると、何をどう使って自分のキャリアを書いていったらいいか分からないというニーズも当然出てきます。
例えば1番では、どんな仕事をしたいのかを誰かに相談したい、先ほど背中を押してもらうという話がありましたが、そんな相談先などもすごく大事です。検索サイトに行って、自分でどんどん仕事を探すプロアクティブなアクションが取れる方も当然多くいます。なかなかそういうプロアクティブな、自分からどんどん探すという行動が取れない人もいます。そういう人は、どんな仕事がよくて、どんなメディアを使って職探しをしていけばいいのか、伴走の機能がすごく大事になります。
2番は、今お話をしたとおり、選択肢が多岐にわたる中で、自分自身に適した求人サービスをどのように選べばいいのかということ。今は転職を考えていないのだけれども、企業との接点は持っておきたいとか、4番、5番の右側に行くと、より早くとか、又は条件交渉の難度が高いので、それをサポートしてもらいたいみたいなニーズなど、多様化しているところがあります。最適な1つの仲介サービスの形があるというよりは、いろいろな特徴を持ったサービス事業者が組み合わされていくということになっていくのだろうと思います。
下のほうにありますけれども、その中でも大事なのは、個人情報の保護やキャリアサポート機能及び人権的な問題、適正情報開示の問題。この辺りは様々なサービスがフラットに利用されるほど非常に重要になってくる類のテーマだと思います。
最後は、人材サービスにおける今後の課題をまとめています。1点目は、求人企業の適正情報開示への取組です。先ほどお話したように、プラットフォームといった機能を提供する事業者が非常に増えています。求人企業が求職者に対して直接アプローチできる場面が増えてきています。そうした場合に、求人企業自身が労働条件をタイムリーに正しく開示するということが当然ながら必要になります。この件に関しては、2017年の改正職安法でも、求人者に対する責任を明確化する方向で進んでおりますが、その定着がより求められるのではないかと思っています。
もう1つは個人情報の取扱いです。これは、個人情報保護法にのっとった情報の取得と管理という形になると思います。適正な取組というものが大事になります。
3点目は、個人と企業双方に精度の高い情報が提供される環境整備で、機能向上を促進する環境を整備するということ。当然ながら求職者としては、より正確性の高い、精度の高い仕事の情報がくればアクションしやすいわけなのですけれども、先ほどの話にあった、情報提供事業者が余りに情報を絞り込んでしまうと、情報の選別加工という領域に近くなっていきます。ただ、そうした機能が不要という訳ではないため、そうした進化に対応した新しい枠組みなども必要なのではないかと思います。
4点目は、先ほどお話をしたキャリアサポートの機能です。あとは人権の保護ということで、仕組みが見えにくい構造になってきていますので、事業者に関しては性別・人種等の差別といったマッチング場面における不利益に関して、技術活用を進めていくというようなことが重要になってくるかと思います。この辺りは、職業安定法における均等待遇、労働条件明示や個人情報保護の中でうたわれている話ではあると思いますけれども、よりベーシックな基盤みたいなものですから、要件をしっかりと整備していくことが重要と思っています。
以上です。長時間ありがとうございました。
 
○事務局 ありがとうございました。それでは、各委員より御質問、御感想等がございましたらお願いできればと思います。
 
○中田委員 非常に貴重なお話を頂きまして、ありがとうございました。特に、潜在層の求職者と言いますか、そういった人たちに企業としてどうアプローチする可能性があるのかというところが、非常に関心を高く持っておりましたので、今回頂いたお話が非常に参考になりました。
やはり若い人たちはSNSとか、そういったところへの抵抗感がないと言いますか、そういったものを非常に活用しているということもよく分かったのですが、年齢が高くなればなるほど、SNSへの抵抗感という、個人情報保護という観点で、漠然とした不安というのがあるのかなとも思っております。
そういった意味で海外との比較の資料も見せていただいて、アメリカはああいった感じかなとは思っていたのですが、ヨーロッパは特に個人情報に関して非常に厳しい制限があって関心も高いのかなと思っておりまして、そういった人たちがあれだけ使いこなしているというのは、保護という点で、国であるとか法制であるとか、そういったところでしっかりとしている結果、安心して使われているのかなという気もするのですが、特にヨーロッパ等で、日本とは違って、このようなところが特に規制が厳しいとか、そういったところがありましたら教えていただけますでしょうか。
 
○リクルートワークス研究所 ヨーロッパにおいて活用が進んでいるという話でいきますと、転職における考え方の違いも随分ある気がいたします。私自身も、他国で活用されているからといって、そのまま持ってくるべきとは思っておりません。ヨーロッパ等においてSNSやインターネットサービスの活用が成り立つためには、個人が主体的に自分の履歴やレジメといったものを転職のためにどんどん入力して、少しでもよりよい職を獲得する機会につなげていきたいという、求職者自身の主体的な動きが非常に重要になります。日本で今SNSが余り活用されていないのは、そういう環境になっていないということもあるのです。
他国比較において、日本における転職の理由の第一位は人間関係という調査結果が結構多かったりするのですが、実は海外において人間関係が一番になる国というのは全くなくて、キャリアアップとか年収を高めたいといった理由が上にきます。そうすると、新しく出てきたツールの活用においても、比較的ポジティブにツールを使って自分の生活を高めていきたいというドライブが利くという理由が1つあります。そういった雇用環境の違いがあります。
あと、個人情報保護等に関しては、ヨーロッパはGDPRも含めた大きな網というものがありますので、そこに乗っかってサービスするのが基本原則です。なので、個人情報の保護に関しての個別の規定を設けているというケースもなくはないですが、プラットフォーマーは、転職だけに特化したサービスプラットフォームではないので、業法ではなく大きな法体系の中でやっています。
ただ、人権の保護等に関する差別は別の話で、そこは個別に国によっても随分違う状況があるかと思います。
 
○事務局 ほかにいかがでしょうか。
 
○阿部委員 本日は遅れて参加いたしましたので、大変すみません。
それで、職業安定法そのものに関係するわけではないのですが、少し教えていただきたいことがあります。アメリカの事例というものが出てきまして、企業がどういうようなサービスを使っているかというのがあったと思うのですが、これは相当大企業でしょうか。
 
○リクルートワークス研究所 そうです。
 
○阿部委員 気になっているのが、中小企業はどのようにサービスを使っているのだろうかということで、日本でも労働者の約6~7割が中小企業に従事している方で、そうしたところのマッチングというのが、ここも効率的に行われる必要があるのでしょうね。そういったときに、中小企業でのマッチングの、こういったテクノロジーの利用実態というのはどうなっているのかというのが気になったのです。
よく言われるのは、中小企業ですと、民間の人材サービスというのは比較的高価で、なかなか広告だとか人材サービスを使うことが難しいということです。こうしたテクノロジーが、幅広い層で使われると、非常に効率的になっていくとは思うのですが、逆に、こうしたテクノロジーが出てくることによって2極化だとか3極化だとか、そういうことが進まないのだろうかということが、お話を聞いていて懸念した点なのですが、アメリカで中小企業がどのようにサービスを使い分けているのか、あるいは使っていないのかとか、もし情報があれば教えていただければと思います。
 
○リクルートワークス研究所 今回、事例として御紹介させていただいたのは、全体のイメージを付けるために、ツールをいっぱい使っている企業ということで大手の事例を使わせていただきました。それに対して中小企業という話になると、このツール数が減っていくという話になります。大量の採用だからこそ、候補者全体の進捗を管理するようなツールが入っていたりしますが、そういったものがなくなっていったりとか。一方でインターネットを通じた求人は、先ほどのボストンコンサルティングと一緒にやった各国比較などでもあったように、ここは大手とか余り限っていませんから、一般的に使われているというところがあります。インターネット上におけるサービスというのは一般化していると、企業規模は問わずにそのように考えてよろしいのではないかと思っています。
そうしたときに、求職者については2極化していくのではないかという問題が当然ありまして、自分から働きかけてポジティブなアクションを取れる方と、なかなかそこに対して動けない方もいらっしゃると思います。そこは2極化すると思います。ただ、それに対応したサービスが生まれていきます。なので、なかなか動きにくい方に対して、それをフォローするサービスが出来ていくということもあります。また、ポジティブな方に対して、より積極的にいろいろなところに、個人側が逆にエントリーして、いろいろな企業を探し出せるようなサービスも、個別のカテゴリーの中で進化していくと思いますし、そこは分かれていきます。
ただ、ちゃんと考えなくてはいけないのは、更にそこから漏れてしまう方々に対して、どういうサービスを作るかで、これは収益性だけでは解決できない問題もどこかに出てくると思っております。そういった点に関しては、公的なものであったり、民間と公的なサービスの連携だったり、少し大きな視野で捉えて考えていかないといけないのではないかなと考えております。
 
○事務局 武田委員、お願いします。
 
○武田委員 本日は大変有益な御説明を頂きまして、まずは御礼申し上げます。その上で、3点質問させていただければと思います。
1点目は、前半の御説明で、59歳では4人に1人が転職されているということでした。日本は60歳定年という形は、これから変わってくると思うのですが、定年を直前にした転職、あるいは直前になって転職を検討する傾向が比較的多いように思います。もう少し40代など15年、20年の経験を積んだ後に、チャレンジしていきたい方向への転職、次への挑戦といった形が増えてもいいのではないか。そうした動きが増えることで、マッチングがよりスムーズになることはないのかという点が1つ目の質問です。よく聞かれるのは、税制や企業の年功序列的なカーブの退職金制度のために、そうした動きが阻害されている面はないのか、その辺りも、御経験からの感触で結構ですが、御意見を賜りたいと思います。
2点目は、技術がミスマッチを解消していくというお話がありました。ミスマッチには2つあると思っておりまして、1つは求職者と求人者が出会わないミスマッチです。これは技術、テクノロジーによって解決する部分はあろうと思います。もう一つ、重要なミスマッチは、デジタル化が進む中で、既存のスキルとこれから求められるスキルがマッチングしないという、スキル自体のミスマッチの問題があると思います。その辺のお考えや取組事例などがございましたら御紹介いただければと思います。
3点目ですが、デジタルの活用はマッチングサービスとして有用性を感じる一方で、先ほどご説明頂いた退職者のアラートやアセスメント等、使い方への留意が必要ではないかと感じております。人権保護という観点も御指摘がございましたが、プライバシーの点で不利益がないような仕組み、工夫、今後の検討課題などがございましたら御教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
○リクルートワークス研究所 3点御質問いただきました。この定年年齢の問題というのは、日本の雇用において非常に大きなテーマになっていまして、定年があるからそれまで何もやらないといった方も実は多いです。実際にアンケートを取ってみると、50歳代前半で何の準備もしていないという方が普通という状況もあります。これから65歳、70歳と定年年齢が変わっていくことで、御本人の意識も変わっていくというように思いますし、企業側も人件費負担に対する様々なオプションを持つために、ここ最近であるのは、40代、更には30代ぐらいからキャリア教育をやるという企業が非常に多くなっていて、随分意識は変わっていくのではないかと思います。恐らくは定年というものが、より選択的になっていくと思っておりまして、そこは今後随分状況が変わっていく。
そうすると、シニアの雇用でも、多様なオプションが出てくるのではないかと思います。オプションの大きなポイントは、先ほどパーソル総研さんからもありましたが、シニアの業務委託とかフリーランスといったものは非常に可能性があると思っています。今回、雇用仲介ですので、フリーランスに対するクラウドソーシングみたいなものはテーマに入れませんでしたが、そういったようなものをいかに拡充させていくかというようなことなども、すごく大事と思います。
実際、検索エンジンで皆さんが仕事を検索いただくと、業務委託、又は社員、アルバイト、パート、どれでもいいですというように、1つの仕事に対して複数の雇用形態が出てくるようなケースもあります。副業・兼業で検索しても、業務委託でも社員でもいいと書いてあって、そこはどんどん混ざっていくと思います。そうしたときに大事なのが、雇用契約に対する概念だと思っておりまして、最終的なマッチングの健全化のためには、応募者は自分の雇用契約に対してしっかりとした認識を持った上で応募して仕事を選ぶ。企業側に関しては、適正な労働条件の開示をする。その上に人材サービス事業者の多様なサービスが乗ったときに、初めて安定的な転職の市場が生まれると思っております。事業者だけの問題ではなく、少し広めに捉えながら、日本の今後の市場の在り方がどうあるべきかということを考えていくテーマと思います。
2点目のミスマッチのところですが、スキルマッチングは正に大きなテーマだと思っています。さっき異業種・異職種への転換が結構進んでいるという話をしましたが、Society5.0の中のDX変革という意味では、日本の場合は大きく遅れていることは、つい先日、経済産業省から、DXにおける人材の育成の在り方のレポートが出ましたが、本当に大事だと思います。
ここは、国のレベルでも体制を組んでいかなくてはいけないと思っておりますが、もし民間であるとすれば、今後、ジョブ型雇用という中で、ジョブに求められるスキル、専門性なりが、より明示されて世の中に流布されていくと思います。そうした活動がだんだん増えてきたときに、自らのスキルにおける自らのプランというようなものも発展していく可能性があり、雇用仲介という領域の中でもいろいろなサポートができるのではないかと思います。
最後にアセスメントに関してですが、当然ながら、ここの活用の留意というのは大変必要なことでして、アセスメントにおいて何が評価され、何が評価されないのかというようなことを、企業側が採用の基準として明示して、その基準に合ったアセスメントを取り入れるということが大事です。ただ単に優秀な人などという基準は世の中にはないものですから、企業側がどういった人材を採るのかという戦略を基に、しっかりとした指標を設定して、改革と合わせて有効なツールを活用するというバランスが必要なのではないかと思っております。
 
○事務局 大久保委員、お願いします。
 
○大久保委員 ワークス研究所からの報告なので、質問ではなくて補足的なコメントを2つほどさせていただきます。
1つは、個人情報とかSNSの話なのですが、日本は現在SNSのシェアが低いということは、もともと日本における転職活動におけるほかの国との違いが、影響があるのではないかと思っています。日本の転職活動は、企業が行う求人に対して応募するのが専らでしたが、ほかの国は積極的に自分自身のレジュメのようなデータベースを公開して、それに対して企業にアプローチをしていくか、個人のほうからポジティブにキャリアアップのための転職機会を探っていくということが、根付いていました。
ですから、プラットフォーム規制などで、個人情報の保護については欧州も充実しておりまして、日本よりも様々なルールが整備されているのですが、一方で、今度は個人からすると、SNS等で、これまでの自分のキャリアを公開しておかないと、HRテクノロジーがそれを見付けてくれて、どこかの企業からのオファーを送ってくれるというチャンスを失ってしまうので、そういう意味では積極的に自分自身のキャリアを開示するということになっているのだと思います。
一方で企業の側も情報開示しておかないと見付けてもらえなくなってしまうので、このテクノロジーの進化によって、企業側、個人側の情報開示行動が進んできているという事実はしっかりと踏まえて理解しておく必要があるのではないかと思います。これが1点目です。
もう一つは、テクノロジーによって、例えば中小企業については採用するコストがないとか、先ほど御質問もありましたが、実際にはテクノロジーが出てきたことによって、コストが下がっていると思います。単純なマッチングは、すぐにコモディティ化してきています。求人情報誌を作るような事業は、求人を集めてくるのに相当なコストが掛かりますし、求人情報誌を流通させるためにも相当なコストが掛かるので、参入障壁がとても高かったのです。それに対して現在は、求人広告はクローリング技術を使って集めてくることも可能ですし、そして個人のほうもSNSとつなぐことによって、そこから引っ張ってくることも可能になってきているので、そういうプラットフォームの参入障壁が極めて低くなって、非常に安いコストでも取りあえず作ろうと思えば作れるわけです。
ということになってきましたので、リクルートのグループにもIndeedという会社がございますが、小さな会社が少人数の採用について、それほど急ぎでもなく、良い人がいたらと思う採用のときには、ローコストとか、あるいは無料でも、取りあえず求人ができるのです。ただ、そこに質とか量とかスピードといったものを求めてくるときには、逆に言うと、そこにコストを積んでいくと様々なサービスが利用できて、それによって望むようなサービスを得ることができる。そういう構造になってきているので、中小企業に対してだけ厳しいというわけでもなくて、多くの企業によって採用の利便性を向上させている側面があるのだろうと思います。
アメリカの実態を見ると、かなり幅広く使われていると本当に実感として感じるので、今、そのようなことが起こっているのだということを補足的に御報告しておきたいと思います。
 
○事務局 山川先生、お願いします。
 
○山川委員 今の大久保委員の御指摘を受けて触発されたのですが、自分で情報を発信する方が外国では多く、しかも、プラットフォームがいろいろ発展しているということで、非常に面白いのですが、そうしますと、その場合のプラットフォームと募集情報等提供事業の関係はどうなるのでしょうか。Uberなどの場合ですと、プラットフォームと自動車で人を運ぶ事業は全然別とも言えるのですが、そもそも情報を問題にする場合に、プラットフォームと募集情報等提供事業というのはどう区別されることになるのでしょうか。
 
○リクルートワークス研究所 プラットフォームに関しては、雇用の仲介において、あくまで直接求人を受けることもありませんし、職を募集するということもありません。あくまで、入力の仕組みを提供しているという感じになります。
企業に関しては今、大久保委員がおっしゃったように、登録をして非常に安価に募集をすることができるようになりますが、求職者においてその情報が十分ではない、という場合に、募集情報等提供事業者がそこを補うというようなこともありますし、さらには、事業者が持っているデータベースを使って、より積極的に求人をかけていくというようなことなどもある。組み合わせることでより大きな求人効果が見込まれるというようなことになっていくと思います。
ただ、今後の大きな流れとしては、まずはそういったプラットフォームに登録すればある程度のことはできるという形になりますので、恐らくは募集情報等提供事業は、その課金形態を変えていくとか、若しくはそこにおけるコンテンツを充実化させていくであるとか、又は先ほどお話もあったように、キャリアアドバイス等の付加価値的な機能をプラスアルファしていくとか、そういったサービスの変化が、今後随分大きく起こるのではないかと私は考えています。
 
○山川委員 そうしますと、単に入力したものを乗せるだけと、それ以外のプラスアルファがあるかの辺りが違いになってくると。
 
○リクルートワークス研究所 そのように思います。
 
○事務局 鎌田座長お願いします。
 
○鎌田座長 ありがとうございます。法的な観点から確認なのですが、本日はアメリカの状況などを含めて、機能面で、特にこのように進んでいくということで非常に参考になったのですが、31ページを見ていただきたいのですが、人材マッチングに関わるサービス事業者ということで、左のほうに事業者のタイプが書かれているのですが、職業紹介、ヘッドハンティング、求人広告というのは、割と伝統的と言いますか、その下の人材データベースとか、口コミ活用型広告などは職業安定法から言うと対象になるのだろうかという視点で見ていたのですが、例えば人材データベースというのは、情報提供のようにも見えますが、募集情報等提供事業者というのは、求人企業の依頼を受けてとか、求職者の依頼を受けてということになるので、必ずしも、これは職業安定法の対象にはならないかなという感じがして、口コミ活用型広告求人も同じようなもので、ジョブボード・アグリゲーターというのは確かに求人者の依頼を受けてということなのですが、しかし、求職者に対して情報提供する、クローリングして提供するということとすると、必ずしも、いわゆる伝統的な募集情報等提供事業とは違ってくるのかなと。
そうすると、実態としては様々なサービスが進んでいくということはおっしゃるとおりだと思うのですが、法的な網が掛かるか掛からないかということで言うと、掛からない部分が結構あって、そこはある種の自由市場型に進んでいくということになってくるのかなと。それで効率的なマッチングが進むということであれば、それはそれでもいいのですが、例えば、個人情報の保護とか適正な情報の提供だとか、あるいは求職者からは料金を徴収しないというようなことを考えたときに、サービスによっては、30ページにあるように、例えばキャリアアドバイス・コーチングという部分に取り出してみれば、ちょっとお金を払って、求職者のほうもお金を払ってくださいというサービスもあり得るわけですよね。そういうような実態はないのかもしれませんけれども。
いわゆる法の枠外になってくれば、それもフリーだということになってきます。そうすると、今、御説明いただいた中で、様々なサービス、機能ということをおっしゃったときに、どこまでが現行の法の中に入ってくるのか、入らないものも結構御説明いただいたのかなと。そういう認識でいいのか、そこを確認させていただきたいと思います。
 
○リクルートワークス研究所 当然ながら、事業者も職業安定法というものに対して、ある行為をやったときには人材紹介になるというのは分かっていますので、そこに抵触することは、なるべく避けて、やらないというようなところが1つあります。なので、先ほどあった、求職者に対する課金は当然行わないということが原則になります。その辺りは、現法案のガイドラインを守りながら、各適正範囲の中でやっているということです。
ただ、一方、彼らが一番困っているのはマッチングの部分だと思っていまして、レコメンドです。レコメンド情報は機能提供とはいえ、その機能を上げていくと、より精緻な、こういう仕事が合っているという情報が提供できるのです。事実、先ほどIndeedの話がありましたが、Indeedなどでいけば、アメリカにおいては求職者に対して、これが合うというのをピンポイントで出していくことも行われていて、そのほうが、求職者が動きやすいし決まりやすいという傾向が出ています。ただ、日本において、今、検索エンジンがそれをやってしまいますと、問題になるのかならないのか、非常に微妙なところがありますので、日本においてそういうサービスは取り入れていないわけです。ですので、日本の場合は検索すれば100とか200という仕事が一覧化されて出てくる形になっていて、それ以上の絞り込みには踏み込んでいかないわけです。
ピンポイントで絞り込めばそれが本当に人材紹介事業なのかという点については、これは議論があると思っています。個人的には人材紹介という1つの行為には、情報の加工・選別と、双方向性と1対1の個別の対応ということがあると思うのです。現時点においては、この3つの要件のどれかが引っ掛かれば人材紹介というような建付け、指針になっていますので、それがいいのかというのは個人的にはあります。機能向上という行為は、それは求人者と求職者共に、ある意味ハッピーなことなので、そこに関しては積極的に認めていく判断もあるのではないかと思います。
 
○事務局 時間がまいりましたので、最後に鎌田座長より、本日の議論を踏まえた総括を頂きたいと思います。
 
○鎌田座長 本日は本当に貴重な情報を頂き、ありがとうございました。労働市場が転換期にあり、その中でマッチング機能を高めるためのIT技術を利用したサービスが様々に展開されているということが、分かりました。特に、サービスの中でも、今御紹介いただいたレコメンドサービスとか、様々なキャリアに関わるサービスだとか、そういったことが併せて展開されていると。それが、伝統的なあっせんということとどう結び付くかという、1つ大きな課題を提起されているのかなと思います。
こういう新しいサービスについて、今言ったとおりですが、従来から存在する職業紹介と機能に近しいサービスということで登場し、マッチングの効率を高めているということについて非常に御示唆を頂いたなというように思います。
一方で、個人情報の保護を中心とした利用者の保護、それから求人情報の的確な表示、そういったところから様々に発生してくる苦情相談の対応の必要性、こういったことが、雇用仲介企業に基本的には課せられる課題かなとも考えておりました。そういったところで、今日はいろいろ皆さんの御提案を得て共有していただけるのかなと思っています。
次回は、本日の御説明でも指摘された労働市場で多種多様化している雇用仲介のサービスについて、事務局が業界団体と協力して、現状を可能な限り把握していただいた報告を頂き、更に議論を深めていきたいと考えております。本日はどうもありがとうございました。
 
○事務局 それでは、次回につきましては詳細が決まり次第、委員各位に御連絡させていただきたいと思います。本日は長時間にわたりましてありがとうございました。また、パーソル総研様、リクルートワークス様、どうもありがとうございました。これにて、第2回の研究会を終了いたします。

 
 

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