2021年3月
鷲尾 哲
情報通信総合研究所、内閣府経済社会総合研究所客員研究員
藤井 秀道
九州大学、内閣府経済社会総合研究所客員研究員
ざき彰彦
九州大学、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官

要旨

本研究では、国内卸売業、道路貨物運送業におけるAI 活用の取り組みに影響を与えている要因を、全国16,002事業所を対象としたアンケート調査(有効回答5,099事業所)の個票データを用いて分析した。具体的には、AI と親和性のあるデータの利活用可能性やデータの蓄積期間に加えて、事業所の規模、管理職や従業員の学歴、CIO の有無、競合事業所数など、組織の体制と環境がAI活用の取り組みにどう影響しているかを大規模事業所、中小規模事業所別にロジットモデルで検証した。その結果、卸売業では、データが利用可能な状態になっていること、一般従業員の大卒以上比率が高いこと、所属企業にCIO がいること、事業所規模が大きいことがAI 活用の取り組みにプラスの影響を及ぼすことが明らかとなった。中小規模事業所では、データの利用可能性がプラスに有意な結果となり、データの利用可能性を高めることがデータへの理解を通してAI 活用の進展をもたらすと期待される。道路貨物運送業では、データの蓄積期間が長いこと、一般従業員の大卒以上比率が高いこと、所属企業にCIO がいること、事業所規模が大きいこと、競合事業所数が多いことがAI 活用を推し進める要因であると判明した。中小規模事業所では、データの蓄積期間がプラスに有意な結果となり、長期間のデータを保有していることがAI 活用を検討するきっかけの一つになっていると推察される。また、いずれの業種・事業所規模においてもCIO の有無が有意に影響している結果が得られており、現時点におけるAI 活用の取り組み姿勢はCIO など情報通信技術に携わるトップの存在が大きいことが明らかとなった。


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データ整備状況や組織体制がAI 活用の取り組みに与える影響: JP-MOPS アンケート調査を活用した実証分析open pdf in new window(PDF形式 774KB)

全文の構成

  1. 1. はじめに:研究の目的と背景
    3ページ
  2. 2. 先行研究と本研究の位置付け
    3ページ
  3. 3. 分析のフレームワークとモデルの特定化
    5ページ
  4. 4. 分析に用いるデータとその観察
    6ページ
  5. 5. ロジットモデルの分析結果
    7ページ
  6. 6. おわりに:結論と今後の課題
    9ページ
  7. 参考文献
    11ページ
  8. 図表一覧
    12ページ
  9. 補足資料
    19ページ