令和3年3月19日(金)

 今朝の閣議におきまして,法務省案件として,「最高検察庁の位置並びに最高検察庁以外の検察庁の名称及び位置を定める政令の一部を改正する政令」及び「東日本大震災の被災者等に係る登記事項証明書等の交付についての手数料の特例に関する政令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。
 続きまして,私から2件御報告がございます。
 まず1件目は,人権侵犯事件の状況についてです。
 法務省の人権擁護機関では,全ての人がお互いの人権を大切にし,尊重する社会の実現に向けて,取り組んでおります。具体的には,人権相談などを通じて,人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には,人権侵犯事件として立件し,事案に応じた適切な措置を講じています。
 本日,令和2年の1年間における「人権侵犯事件」の状況を公表いたしました。
 令和2年の特徴を申し上げますと,インターネット上の人権侵害情報について,被害者からの申告等に基づき,プロバイダ等に削除要請をした件数は,578件と昨年の395件に比べて46%増え,過去最高の件数となりました。また,新型コロナウイルス感染症に関連して差別を受けたなどとする人権侵犯事件が,175件ありました。
 法務省の人権擁護機関としては,引き続き,その時々の人権状況を的確に捉え,人権相談や人権侵犯事件の調査救済を通じて,被害の迅速な救済に積極的に取り組んでまいります。
 2件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 3月12日(金曜日)の会見後から昨日までの間に,職員については,東京法務局1名,札幌法務局1名の計2名の感染が判明しました。
 また,被収容者については,宮城刑務所5名の感染が判明しております。
 詳細は既に公表されたとおりです。
 昨日,政府の新型コロナウイルス感染症対策本部において,明後日21日(日曜日)をもって緊急事態を終了することが決定されました。もっとも,解除後もこれまでの経験を踏まえた取組を継続することが重要です。
 法務省におきましても,気を緩めることなく,引き続き,高いレベルで各種感染症対策を徹底してまいりたいと考えております。

元東京高検検事長の処分等に関する質疑について

【記者】
 黒川弘務元東京高検検事長の賭けマージャン問題で,東京地検が,昨日,黒川元検事長を略式起訴処分としました。もともと,検察審査会の議決を受ける前は起訴猶予処分としていたものですが,それを見直した今回の処分についての受け止めを伺いたいというのが1点と,信頼回復に向けてガバナンスPTとワーキンググループを立ち上げていますが,現在の取組状況と今後の方針について教えてください。

【大臣】
 まず1点目の御質問でありますが,検察当局は,昨日(令和3年3月18日),黒川弘務元東京高検検事長を単純賭博罪の事実により,東京簡裁に略式命令請求したものと承知しております。
 個別事件における検察当局の事件処理につきまして,法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
 もとよりでありますが,検察官が違法行為に及ぶことはあってはならないことであります。検察の元幹部職員が在職中の非違行為により起訴される事態に至ったことは,検察を所管する法務大臣の立場としても,誠に遺憾であると考えております。
 検察当局におきましては,検察に対する信頼を損ねることがないよう,職員に対する綱紀の保持の徹底にしっかりと努めていくものと思っております。
 2点目の質問ということでありますが,御指摘の法務省ガバナンスPTは本年1月に設置されたものであります。「法務・検察行政刷新会議」の報告書におきましては,構成員の先生方が議論をした上で,様々な視点からの御意見を頂戴することができました。その内容をも踏まえつつ,ガバナンスに関する事項等につきまして,検討が進められている状況です。
 これまでに,PTでの検討結果を踏まえ,法務省における行政文書の作成や決裁に関するルールの見直しなど,速やかに実行可能なものから,順次実行に移してきたところであります。
 また,中堅職員を構成員とするワーキンググループにおきまして,現在,そうした御意見や,一筆書きキャラバン等も通じまして様々な形で上がってきた職員からの意見等も含めて,自由闊達に議論いただいております。そして,それにより提案された組織風土の改善や意識改革,さらに,こういったことに関わることのみならず,全体のガバナンスを高めるためにどういう取組をするべきかということについて,あらゆる提案,声を出していただいております。改善方策も含めて,このPTの中で更に検討を深めていくということを繰り返してまいりたいと思っております。
 この取組につきましては,法務・検察がより一層国民の皆様から信頼いただける組織となるよう,組織を挙げて意識を改革し,また風土を高めていくために努力していくべきということで,私自身,内部からの自発的,主体的参加によっての内部改革ということが極めて大事であると,この間認識してきたところであります。PTやワーキンググループにおきまして,風通しのよい形で意見が出されて,そしてそれを改善に向けてどんな小さなことでも積み重ねていくという,そういう一つの大きな流れを作ってまいりたいと考えております。

子どもへの性犯罪・性暴力を防止する制度に関する質疑について

【記者】
 わいせつ行為で処分される教員がなかなか減らない中で,子どもと接する職業に就く際に「無犯罪証明」の提出を求める,いわゆる「日本版DBS」の議論が国会や与党でも進められていると思います。犯罪歴は要配慮個人情報でもあり,慎重な取扱いが求められる一方で,子どもへの性犯罪も大きな問題であり,その抑止策が求められていると思いますが,大臣として,この議論をどのように捉えているのか,また,制度の課題や必要性についての御見解と,法務省での検討状況についてお聞かせください。

【大臣】
 子どもが性犯罪・性暴力の被害に遭うようなことが日常で起きているということは断じてあってはならないことであります。そうした事柄が起きるたびに,その状況が生じてしまったこと,レスキューできなかったということについて,非常に心が痛んでたまらない気持ちになるところであります。
 性犯罪・性暴力対策につきましては,強化方針を定めまして,各省庁横断的にこの問題について総合的な対策をそれぞれ責任を持ってとっていくということを進めてまいりました。正にチルドレン・ファースト,子の視点に立った諸課題,こうしたことへの対応が極めて重要であると認識しております。
 その上で,個々人の犯歴に関する情報が拡散した場合,その社会復帰の道が必要以上に閉ざされることとなるおそれがあるということもございまして,犯歴に関する情報の取扱いは慎重であるべきことについても,これは申し上げるまでもないと思っております。
 大事なことは,子どもが性犯罪・性暴力におびえることなく,のびのびと過ごせる社会を作るために,関係省庁が力を合わせて取り組んでいくことでございます。法務省としてなし得ることについて,様々な御議論もいただいているところでありますので,そういった動向も見据えながら,知恵をしっかりと絞ってまいりたいと思っております。

(以上)