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令和3年3月15日

地球環境

第29回気候変動に係るアジア太平洋地域セミナーの結果について

3月4日及び5日、第29回気候変動に係るアジア太平洋地域セミナー(The Asia-Pacific Seminar on Climate Change:APセミナー)をオンラインにて開催しました。本セミナーにはアジア太平洋地域等の気候変動政策の担当官、国際機関及び研究機関等の専門家、事業者等が参加し、50名以上の参加を得て活発な意見交換が行われました。セミナーにおいては、脱炭素技術やイノベーションの促進による脱炭素社会構築のための方策及び気候変動長期成長戦略策定のための知見の共有やアジア太平洋域内での支援のあり方について、議論が行われました。

1.会合の概要
(1)日程
  令和3年3月4日(木)・5日(金)

(2)主催
日本国環境省及びオーストラリア外務・貿易省(Department of Foreign Affairs and Trade (DFAT))

(3)事務局
一般社団法人 海外環境協力センター(OECC)

(4)参加者
アジア太平洋地域等(19ヶ国)の気候変動に関する担当官、国際機関及び研究機関等(8機関)、民間企業(4社)の専門家等(計59名)

(5)議論の概要
 ①脱炭素技術やイノベーションの促進による脱炭素社会構築のための方策
 オーストラリア国立大学及び東京大学から、脱炭素技術に関する実施中の研究が紹介され、脱炭素技術の課題や地域循環共生圏の実証研究が紹介された。
 日本企業2社及びオーストラリア企業2社からは、風力や水素燃料、大規模太陽光発電と長距離送電等の脱炭素技術開発の具体例や、イノベーションの社会実装を行う取組等が紹介された。
 日本国環境省及びオーストラリア外務・貿易省からは、イノベーションや脱炭素技術促進に係る政策や支援スキームについて報告がなされた。
 グループディスカッションでは、国際協力のポテンシャルや民間・政府それぞれの役割や、新型コロナ禍を克服するための社会経済の再設計(リデザイン)、より良い復興におけるイノベーションの役割について議論された。
 国際協力においては、国同士の連携に加え産官学での協働がこれまで以上に重要であることが強調され、また、国が一貫性のある政策を掲げ社会が向かう方向性についてシグナルを発信することが、民間企業によるイノベーションを促進させるとの意見などがあった。新型コロナ禍からの復興策については、今後のエネルギー需要対策における再エネのより一層の導入促進や、密の回避を可能とするためITによる遠隔マネジメントシステムの導入等を通じたイノベーションにより、グリーンリカバリーや社会のリデザインへ昇華していく必要性について認識が共有された。

 ②気候変動長期成長戦略策定のための知見の共有やアジア太平洋域内での支援のあり方
 国連開発計画(UNDP)より長期成長戦略策定において考慮すべき要素等について紹介がなされた後、シンガポール、フィジーより国連気候変動枠組条約へ提出した長期成長戦略概要について、ベトナムより国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)更新と長期成長戦略となる次期国家気候変動戦略(NCCS)策定の方針について紹介がなされた。
 国立環境研究所からは、長期成長戦略策定における温室効果ガス(GHG)排出のシナリオを推計するためのモデルとして、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)が紹介された。
 アジア開発銀行(ADB)からは、途上国における気候変動対策をコロナ禍からの復興支援に組み入れるための、新たな分析手法を用いた取組が提示された。
 グループディスカッションでは、長期成長戦略とその他国家戦略や計画等についてのシナジー、新型コロナ対策の長期戦略への組み込み、長期戦略策定における国際協力の役割について議論された。
 長期成長戦略の策定プロセスにおいては、シナリオ作成が長期戦略とNDCのような短中期の計画の間のシナジーの形成に有用であること、エネルギー等セクターごとの開発戦略との連携や民間セクターによる関与も重要であるとの認識がなされた。また、新型コロナに関しては、新型コロナが経済社会やライフスタイルに及ぼす影響については、政府や民間企業の革新的な対応が必要であり、今後も気候変動によって起こりうる新たな感染症流行の可能性を考慮した長期戦略策定が必要であるとの意見などが出された。加えて、長期戦略は、技術の急速な変化や気候変動影響予測など科学的にも不確かさのある中での模索であること、国際協力においては先進国から途上国への一方的な支援だけでなく、そうした区別なくお互いの経験や知見を共有し対策を検討していく観点の重要性についても指摘がなされた。

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策担当参事官室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8330
参事官 辻原浩 (内線 6772)
主査 岡尾和真 (内線 6774)
環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室
室長補佐 長谷代子 (内線 6728)

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