2021年3月
加藤 涼
東京大学公共政策大学院教授
奥田 達志
日本銀行金融機構局
敦賀 貴之
大阪大学社会経済研究所教授

要旨

部門別のインフレ動学の研究では、部門間での大きなばらつきの存在が強調されてきた。本稿は米国の生産者価格データを用いて、部門別のインフレの慣性が市場集中度と負の相関関係にあることを示したうえで、この関係が標準的な独占的競争モデルでは説明困難であることを論じる。このようなインフレ動学を説明するため、本稿では、Melitz and Ottaviano (2008)による独占的競争モデルと不完全共有知識のモデルを融合する。モデルでは、企業の間の価格設定の補完性を通じて、市場集中度が低まると価格設定の補完性が高まる。価格設定の補完性はインフレの慣性を高めることから、インフレ慣性と市場集中度の間に観察される負の相関関係が再現できることが示される。


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部門別インフレ率の慣性、市場集中度、および、不完全共有知識open pdf in new window(PDF形式 618KB)

全文の構成

  1. Introduction
    2ページ
  2. Evidence
    4ページ
  3. The basic model
    7ページ
  4. The extended model
    13ページ
  5. An alternative approach: The Calvo model
    17ページ
  6. Conclusion
    18ページ