(令和3年3月12日(金曜日)10時49分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)東日本大震災から10年の節目に当たり

【茂木外務大臣】私(大臣)から冒頭3点ございます。まず、東日本大震災の関係です。
 昨日、東日本大震災から10年の節目を迎え、外務大臣談話を発出しました。改めて、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、世界中から頂いた多くの支援や励ましの言葉、そして今回10年の節目に当たっての温かいメッセージや祈りの言葉に心から感謝いたします。
 昨日、南三陸では、東京のオーストラリア大使館の首席公使と大阪のオーストラリア総領事が追悼式典に参列されました。お二人は10年前、東京の大使館員として他のスタッフと一緒に被災地を支援し、今回再度日本に赴任され、昨日の追悼式典に参列されたそうであります。
また、昨日は世界各地でも追悼行事が催されました。日本は、こうした世界の方々からの温かいお気持ちや支援を決して忘れません。「ともだち」、そういった言葉が米国をはじめ多くの国でも共有されているんだな、こういう思いを改めて感じたところであります。
 震災から10年が経過した今も、日本産食品に対する輸入規制など、重要な課題も残っております。東北の復興なくして日本の再生なし」との強い決意の下、引き続きこういった問題にも引き続き全力で取り組んでまいります。また、近年、気候変動に伴う異常気象が世界各地で頻発しておりまして、自然災害がより激しさを増す中で、防災を通じた国際協力、これも強化していきたいと考えております。

(2)全人代(香港の選挙制度変更)

【茂木外務大臣】2点目ですが、香港に関連して、3月5日から昨日11日まで、中国において全国人民代表大会が開催され、我が国としてその動向を注視していましたが、昨日、この全人代において「香港特別行政区の選挙制度変更に関する決定」が議決されました。
 昨年6月の国家安全維持法制定、その後の多数の民主派議員や活動家の逮捕・起訴に続いて、今般、全人代による香港の選挙制度を変更する決定がなされたことについて、重大な懸念を強めております。
 特に、今回の決定は、香港の発展を支えてきた、香港基本法、及び1984年の英中共同声明に基づく「一国二制度」に対する信頼を更に損なわせ、香港における高度の自治を大きく後退させるものであり、我が国として看過できないところであります。
 香港は、「一国二制度」の下に、自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要であるというのが我が国の一貫した立場であります。
 日本政府として、香港において関連の選挙が幅広い政治的意見を代表する候補者を含む公正な形で実施されることを求めます。こうした我が国の考え方については、今回の決定を受けて改めて中国側に伝達したところでありまして、引き続き国際社会とも連携して、中国側の具体的な対応を求めていきたいと思います。

(3)2020年版開発協力白書

【茂木外務大臣】最後3点目でありますが、本日の会議におきまして、「2020年版 開発協力白書」の公表について発言をいたしました。
 今回の白書では、「未来へ向かう、コロナ時代の国際協力」という副題を付けて、新型コロナに関する「特集」を組み、かつてないスピードで実施してきました保健・医療支援や、ワクチンへの公平なアクセス確保への貢献、世界で活躍する国際機関の日本人職員などを紹介しております。
 また、「参加型白書」を目指して、一般の方が撮影した写真の特集や、SNS等を利用して公募したコラムも掲載し、幅広く国民の皆様に親しみを持ってもらえるよう工夫をしております。
 この白書を通じて、開発協力に対する国民の皆様の理解と一層の支持を得つつ、引き続き、国際社会における開発協力や地球規模課題の解決に向けて積極的に貢献すべく、日本としてリーダーシップを発揮していきたいと思います。

菅総理大臣訪米

【NHK 山本記者】菅総理大臣の訪米について伺います。4月前半にも訪米ということで、官房長官が発表をされましたけれども、大臣、期待されるもしくは現時点で想定している成果はどのようなものか。また、同行者について必要最小限に絞るということでしたけれども、大臣ご自身の同行というのは検討されているのでしょうか。

【茂木外務大臣】4月の前半にも訪米するということでありまして、今日も日米豪印の首脳として初めてのクワッドも開催をするところでありますが、極めて、バイデン政権が発足してから早いタイミングで首脳会談が行われることは、日米同盟の強化に対するバイデン政権の強いコミットメントを示すものとして歓迎したいと思っておりますし、この日米同盟を踏まえながら、緊迫する地域の情勢であったり、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた日米の協力、更には、気候変動問題、コロナ対策等々、国際社会共通の課題について、日米が協力をし、リーダーシップを発揮していくということを確認する機会としても、極めて有意義だと思っております。
 当然、新型コロナ対策を徹底するという観点から、少人数での訪米へということになります。現時点におきまして、私(大臣)の同行というのは予定いたしておりません。

米国の対アジア外交政策

【読売新聞 福田記者】関連して、総理の訪米や、クワッドの首脳会談、ブリンケン国務長官のアジア歴訪など、米国の新政権がアジア重視の外交政策を打ち出しているように思います。大臣、この背景についてどう考えるか、そしてどう向き合っていくか、この点についてお聞かせください。

【茂木外務大臣】バイデン政権として、アジア、更にはインド太平洋地域を重視して、米国としてしっかりコミットする、こういう姿勢を示しているということは極めて重要であり、日本として歓迎をしたいと思っているところであります。
 当然、米国として、これからバイデン政権として、再び同盟国、同志国と協力・連携をしながら、しっかり国際社会の様々な課題についても、リーダーシップを発揮していきたいという考えを持っていると考えておりまして、そういったリーダーシップを発揮しなければならない、また、同盟国との連携を強めなければならない、特定の国を私(大臣)から挙げるわけでありませんが、こういった意味から、アジアの重要性を認識しているということだと思います。

中東情勢(米、豪、印との連携)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 日米豪印首脳会談の質問に関連し、同会談においてはインド太平洋地域について議論を行うものと承知しますが、同会談において、世界の他の地域、特にインド洋にも近接している観点から中東地域についてもどのような議論がなされるのか、お聞かせください。

【茂木外務大臣】「自由で開かれたインド太平洋」地域、この中には、中東地域も当然、地理的に含まれてくると考えておりますが、その上で中東和平問題については、中東地域に大きな影響力を有する米国を始めとする関係国と連携しつつ、「平和と繁栄の回廊」構想や「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」など、我が国独自の取組を通じて、当事者間の信頼醸成に取り組んできたところであります。
 また、中東和平問題を含む中東情勢に関しては、米国のみならず豪印を含む国際社会の重要なパートナーとも、率直に意見交換を行ってきております。
 我が国は、中東の各国とも、長年にわたって良好な関係を築いておりまして、こうした各国との関係を生かしつつ、中東の平和と安定に向けて、関係国とも緊密に連携しながら外交努力を継続していきたいと思っております。

イエメン情勢

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 最近のホーシー派によるサウジアラムコ(Saudi Aramuco)へのミサイル攻撃や民間施設等を含め、ホーシー派によるサウジアラビアへの越境攻撃についての報道が見られますが、この状況について日本政府の立場をお聞かせください。

【茂木外務大臣】日本は、イエメンにおいて紛争が長期間にわたって継続をし、多数の一般市民が困難な人道状況に置かれていることを懸念いたしております。ホーシー派によりますサウジアラビアの累次にわたる越境攻撃等を強く非難いたします。
 日本政府は、改めて全ての関係者に対して、イエメンにおける即時の停戦と政治的解決に向けた早期の対話開始を呼びかけているところであります。また、イエメン紛争の終結に向けたグリフィス国連イエメン担当特使の努力を支持するとともに、米国が外交努力を強化していくことを歓迎いたしております。
 引き続き、関係国と連携しつつ、人道支援の実施を含め、イエメンの平和と安定の実現に取り組んでいく考えであります。
 こういった点については、様々な国々、昨年もサウジアラビアの訪問の際、また先日も、イランのザリーフ外相とも意見交換して、今申し上げたような日本の立場をしっかりと伝えております。

IOCに対する中国からのワクチン提供の申出

【産経新聞 石鍋記者】中国のワクチンについてお伺いいたします。IOCのバッハ会長が、中国から東京五輪・北京五輪の選手や関係者に対してですね、中国製のワクチンを提供するという申し出があったと明らかにしました。大臣、この受け止めとですね、中国側の意図について、ご見解をお願いいたします。

【茂木外務大臣】オリンピックの問題、IOCに関わる問題、更には、それに関連したワクチンの問題、所掌外ですから控えたいと思います。

日米「2+2」

【NHK 山本記者】来週行われる日米の2プラス2についてですけれども、これ、どのような成果を目指されるご予定なのかということと、特に対中国という観点で、何らか日米で強いメッセージを打ち出す機会になるのでしょうか、お願いします。

【茂木外務大臣】バイデン政権発足後の早いタイミングで、米国の国務長官及び国防長官が、最初の外国訪問で日本を訪れることは、米国が日米同盟を重視している表れでありまして、歓迎したいと思います。この機会に、一層厳しさを増す地域の安全保障環境であったり、様々な課題を抱えている国際情勢について議論すること、極めて有意義だと考えておりまして、日米同盟の強化に向けた今後の協力等について、対面でじっくりと意見交換をして、日米同盟のゆるぎない強固な結束を内外に示したいと思っております。
 日米の外相会談については、既にブリンケン国務長官とは3回にわたって、電話会談を行ってきておりますが、今回初めて、できるだけ早くやろうと言っていたフェイス・トゥ・フェイスの会談ということになるわけでありまして、今申し上げたような問題についてじっくりと話をして、日米間ですり合わせを行っていきたいと思っておりますし、更に個人的な信頼関係と、一層深めていきたいと思っております。
 具体的な会談の結果、日米外相会談についても、2プラス2につきましても、恐らくぶら下がりであったりとか会見、こういったことも、その後、日程的に設定することになると思いますので、その際に発表したいと思っております。