令和3年3月11日

 3月11日(現地時間10日)、国際連合開発計画(UNDP)本部のあるアメリカ合衆国ニューヨークにおいて、我が方、石兼公博国際連合日本政府代表部特命全権大使と先方カリダ・ブザールUNDP事務総長補兼総裁補アラブ地域局長(Ms. Khalida Bouzar, Assistant Secretary-General, Assistant Administrator, Director of the Regional Bureau for Arab States)との間で、9億5,000万円を供与額とする無償資金協力「北東部における食料安全保障及び生計強化計画」に関する交換公文の署名が行われました。

  1. 2011年3月のシリア危機発生から10年目に入り、同国では、国内避難民620万人を含む1,170万人が何らかの支援を必要としているといわれており、人道上の危機的状態が続いています。危機が長年に亘って継続した結果、基本的な社会サービスが欠如する中、新型コロナウイルス感染症の影響等により経済状況は悪化しており、多くの人々が厳しい生活環境と食料不足の危機に直面しています。
  2. 北東部ハサケ県は穀倉地帯として、小麦の主要な産地でしたが、戦闘に伴う灌漑施設等の破壊、生産に必要な資材の不足、農耕機具の損壊等に伴い、小麦の生産量は大幅に減少しており、同地域の基本的な食料需要を満たすことができていません。同時に、農地を含む地域全体に分布している地雷やその他の残留爆発物の存在により、農業従事者の安全が脅かされています。この協力は、小麦生産からパン製造までにかかる支援として、灌漑施設の修復、小麦の生産性向上のための資機材供与、公営の製粉所及び製パン所の修復等を行うと同時に、農業従事者を含む市民やコミュニティに対する地雷回避教育を行うものです。この協力により、シリア国内避難民を含む市民への安定的な食料供給及び雇用機会の確保を通じた生計強化を図り、もって同国内での人道的危機状況の改善に寄与することが期待されます。

 シリア・アラブ共和国の面積は約18.5万平方キロメートル、人口は約1,690万人(2019年、世界銀行)。