令和3年3月9日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。
 続きまして,私から2件御報告がございます。
 1件目は,人権啓発キャンペーンについてです。
 本日から,厚生労働省や賛同企業と連携して,新型コロナウイルス感染症に関連した差別や偏見をなくすための人権啓発キャンペーンを展開いたします。
 まずは,こちらの動画を御覧いただきたいと思います。
 尾身茂新型コロナウイルス感染症対策分科会会長による「不安を差別につなげちゃいけない。」というキャッチフレーズは,今回のキャンペーンの中心となるコンセプト,メッセージです。
 日頃,感染症対策のつもりが過剰な反応となり,差別や偏見につながっていないか,国民の皆様に今一度考えていただくきっかけとして,このメッセージは大変意味があるものではないかと期待をしております。
 新型コロナウイルス感染症に関連した差別や偏見につきましては,その被害を受けた方の命の問題にもつながりかねない,決してあってはならないものです。
 法務省では,今後とも,今回のキャンペーンも通じまして,その差別や偏見の解消にしっかりと取り組んでまいります。
 報道機関の皆様におかれましても,今回のキャンペーンについての積極的な周知・広報への御協力を是非お願い申し上げます。
 2件目は,メールによる情報配信サービスの開始についてです。
 出入国在留管理庁においては,在留外国人の方々が必要とする出入国,在留,生活支援などに関する各種の情報につきまして,これまでは,ホームページやFacebook・Twitterなどを通じて,発信してまいりました。
 情報発信をより一層強化するため,本日(3月9日)からは,メールによる情報配信サービスも開始いたしました。
 このサービスは,同庁のホームページ上からメールアドレスを登録いただければ利用可能となります。
 在留外国人の方々が必要とする情報は,それぞれの国籍や言語,在留資格等によっても大きく異なると思われます。
 このサービスは,登録の際に,希望する情報の種類を選択していただければ,その情報を,こちらからお届けすることができます。
 使用言語につきましても,日本語,やさしい日本語,英語の中から選択することができます。
 多くの方にこのサービスを広く利用していただくため,地方出入国在留管理局の窓口での御案内や関係団体への情報提供,ホームページやFacebook・Twitterでの発信を行うなど,幅広く周知をしてまいりたいと考えております。

京都コングレスに関する質疑について

【記者】
 京都コングレスが3日目を迎えました。これまでに京都宣言が採択されたり,世界保護司会議では「京都保護司宣言」が採択されたり,来日中の各国閣僚とのバイ会談も進んでいますが,現在までの受け止めと,今後の意気込みをよろしくお願いいたします。

【大臣】
 京都コングレスが開会して今日で3日目になります。
 7日の開会式の後,京都宣言が採択されました。
 京都宣言は,犯罪防止,法の支配の推進が持続可能な開発,誰一人取り残さない社会の実現のための礎となるものであると思っております。今後,SDGsの達成のため,国際連携の一層の促進,マルチステークホルダー・パートナーシップによる犯罪防止を進めていくことなどが宣言されたところであります。
 また,コロナ禍の状況を踏まえ,刑務所における感染症対策を始めとする,コロナ禍が刑事司法に与えている影響に各国が協力して対処することや,コロナ禍を契機に,刑事司法の分野のデジタル化を検討することなどが宣言に盛り込まれたところでございます。
 今後,国連及び加盟国がこの京都宣言の実際のオペレーション,実現に向けて取り組むことが極めて重要であると認識しております。
 国際社会における法の支配の確立を目指す「司法外交」を具体化させる取組として,京都宣言の実施にリーダーシップを発揮してまいりたいと思っております。
 また,7日には世界保護司会議が開催されました。我が国の保護司制度をより多くの方々に知っていただき,そしてまた,地域のボランティアの皆さんに再犯防止に積極的に御参加いただくことの極めて重要な意味と有用性につきまして,多くの国々に御理解をいただく大変よい機会になったのではないかと思っております。
 併せて,世界保護司会議では,「京都保護司宣言」が採択されました。保護司を始めとする地域ボランティアの国際的認知の向上や,これらの制度の各国への普及,さらに,国連の国際デーとしての「世界保護司デー」の創設などに取り組んでいくことが盛り込まれているところであります。
 本会議の成果を踏まえまして,アフターコングレスにおきましても,今回は漢字の保護司ではなくローマ字での表記をさせていただいておりますが,「HOGOSHI」の輪を世界に広げるために積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 二国間会談につきましては,今回はオンラインとリアル参加というハイブリッドで行われました。様々な国々が当日も来日していただきましたし,また各国との関係につきましても,バイ会談を通じて積極的に取り組ませていただいております。
 全13か国の閣僚級との二国間会談を実施いたしました。各国との間で,それぞれの国が抱える様々な課題や問題を共有させていただき,また,それに対する取組などにつきましても,共有させていただくことができ,大変実りある会談になったと思っております。
 こうした会談を通じて構築されました二国間関係を基礎といたしまして,今後更に「司法外交」を展開してまいりたいと思っております。
 最初の2日間,大変密度の濃い会合が続きました。今後の「司法外交」を展開していく礎となる極めて大きな成果を上げることができたと思っております。
 SDGsの基本理念であります「誰一人取り残さない社会」の実現に向けまして,国際社会が連携,連帯して,そして,これを強化していくため,12日までの議論,及び最終日,12日でありますが,閉会に向けまして,引き続き加盟国と充実した議論を積み重ねてまいりたいと思っております。

名古屋出入国在留管理局における死亡事案に関する質疑について

【記者】
 3月6日に,名古屋入管で単独室に収容されていた30代のスリランカ人女性が死亡したという報道がありました。それで,この方は報道によると日本語学校教師を目指して日本に留学していたのですが,専門学校の学費が払えず,ビザが切れてしまって昨年8月から収容されていたということです。特に今年に入って,1月下旬から健康状態の悪化を支援者に訴えていたようなのですが,申請しても外部診療を受けることができなかったと。入管が言っているように,本当に適切な医療措置が行われたのかどうかということですとか,それからなぜ単独室に隔離収容されていたのかとか,あるいはその死因は何だったのかとか,そういったきちっとした検証を第三者で行って公表するお考えはあるのでしょうか。
 名古屋入管では,昨年10月にもインドネシア人の男性が収容から5日後に死亡していますが,その死因や処遇状況についても詳細はまだ不明なままです。
 そもそも強制送還を前提にした無期限収容そのものが被収容者に対する精神的な拷問に近いものだと思うのですが,大臣は今回名古屋入管の死亡事案について,どのように真相究明されるお考えなのか。さっき言った第三者機関ですね,入管収容実態に詳しいお医者さんや弁護士とか,そういった方を含む委員会などの必要性を考えていらっしゃるのかどうか。その前提として,大臣は2007年以降,入管施設内で今まで何人が自殺したり,それから自殺を含む人が何人病気とかで亡くなっているのかということは,御存じでしょうか。その実態を踏まえた上で,この2点についてお伺いします。

【大臣】
 3月6日の午後に名古屋出入国在留管理局におきまして,収容中でありました女性の被収容者1名が救急搬送されまして,搬送先の病院で死亡が確認された件について,御質問がございました。
 亡くなられた方には,心からお悔やみを申し上げます。
 今回,亡くなられた方につきましては,以前から体調不良を訴えていたということで,庁内の診療室や外部の病院を受診していたとのことでございますが,死因を含めた事実関係の詳細につきましては調査中ということでございます。
 また,御指摘の昨年10月の事案については,収容開始から5日後に男性の被収容者お一人が亡くなったものでありますけれども,この方の場合には,体調の急変をうかがわせるような既往症等はなく,心臓性突発死の可能性が高いという報告を受けているところであります。
 出入国在留管理庁に対しましては,私自身,今回の事案につきまして,死亡に至る経緯や対応状況などの正確な事実関係を速やかに調査するよう指示したところでございます。その結果につきましては,適切にお伝えできるようにしてまいりたいと思っております。
 また,お尋ねの死亡等の事案については適宜適切に報告を受けているところでございます。また,人数等の詳細につきましては,入管当局にお尋ねをいただきたいと思っております。
 こうした事案をどのような体制で調査するかということにつきましても,併せて検討してまいりたいと思っております。いずれにしても,今,コロナ禍において,非常に大事な命を預かっているところでございます。しっかりとした対応ができるように私からも指示し,そして検討してまいりたいと思っております。

【記者】
 今,人数のお答えがなかったのですが,既に新聞報道等されていまして,今回で17人目だと思います。2007年以降の統計ということですが,17人で,自殺した方が5人いらっしゃると思います。これは入管の統計です。この調査についても第三者的な客観的な調査が必要だと思うのですが,それについてどう考えていらっしゃるかということと,今回閣議決定された入管法の改正案でも,長期無期限収容の歯止めがないので,こういった処遇の問題ですとか医療体制も,やっぱり改善されないというのはもう明白だと思います。それで,昨年から閣議決定の後,昨日3月8日までの間に日弁連始め全国40か所の弁護士会が,「収容・送還に関する専門部会」の提言の内容ですとか,それから閣議決定された入管法改正案に対して,多分44か45だと思うのですが,反対声明を出しています。その反対声明や,それに加えて国連の諸条約とか委員会,それから今も理事国である人権理事会から是正勧告が出ているわけですが,そういったものをどうやって実際の入管法改正案に反映させるお考えなのか。2007年から17人も入管施設でお亡くなりになっているということで,こういった状況の中で,その閣議決定を一遍撤回する,撤回して見直すようなお考えを含めてですね,どういうふうに今の実態を入管法の改正に反映させるお考えなのかということについてお尋ねします。

【大臣】
 まず,今回の改正法案ということで御指摘がありましたが,今回は,監理措置を創設するとともに,適正な手続を経て在留が認められないこととされた者の送還を促進する方策を設けることによりまして,収容の長期化の解消や防止を図ることとしております。
 他方,行政訴訟制度を通じて司法審査を受けることが可能であること,また,収容期間の上限を設けることには送還忌避を誘発するおそれなどの問題があることなどに鑑みまして,一律の司法審査や収容期間の上限といった制度設計は行わなかったものであります。
 こうした法案を提出しておりますので,その考え方につきましても,しっかりと御理解いただけるよう,丁寧な説明を尽くしてまいりたいと思っております。
 今回の事案が発生いたしまして,特にコロナ禍という大変厳しい状況の中,入管といたしましてもこの間,仮放免のことも含めまして様々な取組をしてきたところでございますが,なおこうした事案が出てきたということについては,先ほど申し上げたように,命に関わることであり,私も大変重く受け止めているところであります。できる限り早く調査をするよう指示しております。今の段階でいつまでにということはなかなか申し上げることは難しいところではございますが,なるべくスピードアップして調査を行うように指示しております。その結果についてどのように公表するか,また調査の方法や体制をどのようなものにするかということについても,併せてしっかりと検討した上で,事実関係を十分に解明してまいりたいと思っております。
 そして運用のレベルでこうした課題,問題についての対応をしっかりさせていただきたいと思います。コロナ禍の中で,命に関わる部分,問題につきましては,本当にいろいろなケースがございますので,大変厳しく受け止めているところでございます。しっかりと事案の検証に努めて,適切に対応してまいりたいと思っております。

東京出入国在留管理局における新型コロナウイルス感染症対策に関する質疑について

【記者】
 品川入管での新型コロナのクラスター感染に関してですが,今も発熱があるにも関わらず,複数人数で一部屋に収容されていたり,外部医療機関の受診を受けることができず,「助けてください」というSOSの電話を私にすらかけてくる方がいらっしゃる状態です。
 それで,その対応として品川に長期収容されていた女性を横浜入管に移送して,横浜入管に収容されていた男性数人を牛久の入管の方に移送したという情報もあるのですが,こういった玉突き的な,ただ空き部屋を作るための対策で,新型コロナ感染症対策ということには問題があると大臣はお考えでしょうか。
 それで,品川に長期収容されて仮放免申請を出していたその女性が,なぜ仮放免許可されないで,特にPCR検査で陰性だった場合,直ちに身柄を解放すべきじゃないかという意見書なんかも弁護士などから出ていますが,なぜ仮放免許可しなかったのかということ。それを,医療体制の在り方も含めて,具体的にお答えいただきたいと思います。森大臣のときは,少なくとも仮放免の許可については積極的に運用されていたと思うのですが,上川大臣はなぜ仮放免に対して積極的な指示を出せないのかということも含めてお願いいたします。

【大臣】
 今の御質問でございますが,森大臣のときに方針を出された4月の時点の方針は,今もこの方針を守っています。そして同時に,このコロナ禍におきまして,今のようなクラスター事案も発生していることを受けまして,更にこれを高めていくために,医療機関,あるいは保健所としっかりと連携をとりながら,様々な施策を総合的に打ち出してきているところでございます。
 その意味で,今回のコロナ禍でのクラスター発生につきましては大変重いものと受け止めておりまして,私も就任して以来,このコロナの問題については,法務行政として命を預かっておりますので,そこについてはしっかりとギアアップして取り組もうということで,指示を各部署に出しております。出入国在留管理庁の所管も例外ではございません。
 その上で,様々な今の厳しい状況でございますので,いろいろなことが起こりながらも,それに対しては断固として防護していくために,リスク管理をしながら対応するようにという指示をし続けてきておりますので,そういう方向で,これからもしてまいりたいと思っております。コロナ禍において,仮放免の在り方,また医療体制に関することも含めまして,様々な取組を実践してきたところではございますが,今のような事態も含めまして,しっかりと十分な事実確認,あるいは検証を速やかに行って,そして改善策等の検討をしてまいりたいと思っております。

【記者】
 品川から横浜に移された女性たち,仮放免申請を出している方もたくさんいらっしゃると思うのですが,その方たちをなぜ仮放免しなかったかということについても検証されるというお考えでしょうか。

【大臣】
 そのことも含めまして,事実関係をしっかりと調査してまいりたいと思います。
 基本的には4月にできるだけ仮放免をするべく,それぞれ申請の内容に応じて検討した上で,対応してきました。これは前大臣も同じでありますが,そのまま全て仮放免というわけにはまいりませんので,1人ずつの申請について,しっかりと申請の内容を精査した上でということ,これは基本であります。その上で,仮放免についても積極的にすると。コロナ禍ということでありまして,その方針については私もこれまでと同じ方針で臨んできましたし,今度のクラスター事案を踏まえまして,更にギアアップしてまいったところでもございましたので,その方針をしっかりと打ち出し続けたいと思っております。

(以上)