厚労省・新着情報

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和3年2月24日(水)13:30~16:14

議題

1 基調講演
 (1)「職場における化学物質等の管理のあり方~未来編~」
   厚生労働省 労働基準局 安全衛生部
   化学物質対策課 化学物質対策室 室⾧補佐 植松 宗久
 (2)「安全衛⽣と法と⽂化~実務に役⽴つ法的責任論~」
   近畿大学 法学部 法律学科 教授 三柴丈典

2 意見交換会
 

議事

 
○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまより令和2年度第2回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを開催いたします。
今年1月25日の第1回に引き続き、政府からの緊急事態宣言発出中であること、また、新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、対面式の会場参加を中止とし、Web参加のみとさせていただく運びとなりました。
会場参加へお申込みいただいておりました皆様におかれましては、Web参加へ変更など、お手数をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
さて、当会は、働く方の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者の方、また事業者の団体の方との情報共有、意見交換会を行うために実施しているものです。厚生労働省から委託を受けまして、私どもテクノヒルが運営を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
まず、「職場における化学物質等の管理のあり方」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質対策室室長補佐の植松様に、30分ほど御講演いただきます。
次に、「安全衛生と法と文化」というタイトルで、厚生労働省の検討会である職場における化学物質などの管理のあり方に関する検討会で行われた検討内容につきまして、検討会委員でいらっしゃいます近畿大学法学部法律学科教授の三柴先生に30分ほど御講演いただきます。
以上の基調講演が終わりましたら、一旦10分ほどの休憩といたします。
後半の意見交換会では、コーディネーターを東京理科大学薬学部医療薬学教育研究支援センター社会連携支援部門教授の堀口先生にお願いし、パネリストとして基調講演の三柴先生、植松室長補佐と、DIC株式会社レスポンシブルケア部化学物質情報管理グループグループマネージャーの山口様にお入りいただいて、疑問点にお答えしていきます。
なお、当会の意見交換会では、あらかじめお寄せいただいた質問についての回答のほか、ZoomのQ&A機能を利用した質疑応答を実施いたします。
1番目の基調講演より質問受付開始とさせていただきますが、どの基調講演に対する質問であるか判別できるよう、1番目、植松様の基調講演「職場における化学物質等の管理のあり方」は「1」を、2番目、三柴先生の基調講演「安全衛生と法と文化」は「2」を、その他の質問については「3」と定め、質問の書き始めに番号を御入力の上、御質問いただきますと幸いです。
頂いた質問、御意見に、できる限り回答する予定で進行いたしますが、時間の都合などの兼ね合いで回答できない場合もございます。また、後半の意見交換会の際に頂戴した御質問、御意見を含め、個人情報などを省いた上で議事録及び報告書を作成し、厚生労働省へ提出させていただきますので、あらかじめ御了承ください。
全体の終了は16時30分までを予定しております。
これより基調講演に入ると同時に、ZoomのQ&A機能を利用した質問受付を開始いたします。多数、御質問をお寄せいただいた場合など、状況によっては早期に質問受付を終了させていただくことがございますので、あらかじめ御了承ください。
それでは、最初の基調講演「職場における化学物質等の管理のあり方」を、厚生労働省の植松室長補佐、どうぞよろしくお願いいたします。
○植松室長補佐 皆さん、こんにちは。御紹介いただきました、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室室長補佐をしております、植松と申します。
本日は30分ほどお時間をかけまして、「職場における化学物質等の管理のあり方~未来編~」ということでお話をさせていただきます。
プレゼンテーションを始める前に御挨拶をさせていただきたいと思いますけれども、本来であれば、今日は大阪で開催するということで、皆様に会場でお会いできるのを楽しみにしていたわけでございますけれども、昨今の事情に鑑みまして、こういう形を取らせていただきました。
第1回、先月、第1回開催のときは、同様にウェビナーという形でやらせていただきましたけれども、そのときにはリアルタイムでの御質問を受け付けるというようなことはできませんでしたので、今回、そこの部分を改良するような形でリアルタイムに御意見を頂きながら、それらに回答させていただくというような形にさせていただいておりますので、時間の許す限り、忌憚のない御意見をいただきつつ意見交換させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それではプレゼンテーションのほうを始めさせていただきます。
これは前回のときにもお伝えしたのですけれども、ポイントはまず三つございまして、まず1点目ですが、皆さんには、今回、化学物質の管理のあり方が大きく変わるということを、ぜひ認識していただきたいということがございます。
2点目としましては、こうやってリスクコミュニケーションの場などに参加していただいている皆さんでございますけれども、これからも引き続き情報を収集していくというような姿勢を、ぜひ保っていただきたいということでございます。我々行政の立場としても、情報を発信する努力というものを続けてまいりますので、皆様におかれましてもホームページ等を通じながら、情報を収集していただく努力というものを、ぜひお願いしたいというふうに考えております。
3点目としましては、ぜひ、今日、聞いていただいた内容だけでなくて、そういった化学物質に関する情報等を、ぜひ周りの方々にも共有していただくというような姿勢を、ぜひ持っていただいて、社会全体で化学物質に関する理解を深めていただければというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今日のプレゼンテーションの内容ですけれども、大きく三つに分けてございます。
まず、一つ目ですが、これまでの国によるリスク評価の概要について、御説明申し上げます。
二つ目としまして、職場における化学物質管理等のあり方に関する検討会と、それにひもづくリスク評価WGというもので議論してきた内容を御紹介させていただきます。
最後に、未来へ向けた検討ということで、今後検討すべき事項をまとめてございますので、御紹介させていただきます。
ただ、主なメインになるのは、この2番目の内容になります。
まず、一つ目ですけれども、これまでの国によるリスク評価に関する御説明でございます。こちらの4ページ目の図を御覧ください。
現行の国によるリスク評価の全体像ということで、右上の四角に概要を書いてございます。国内外の情報を基に、特に有害性の高いと考えられる物質を選定して、その物質の有害性情報を収集するとともに使用状況を調査し、専門家による検討を経て、必要に応じて特別規則に追加するというような仕組みを、平成18年度から導入してきております。
国によるリスク評価の全体像は、ここに書いてあるとおりなんですけれども、その一番最初にリスク評価の対象物質を選定するという作業がございます。それに先立ちまして、国としても発がん性スクリーニングということで、変異原生試験であったり、形質転換試験であったり、発がん性試験であったりといったものを行いまして、発がん性の有無を確認するとともに、リスク評価対象候補物質の選定にも応用してきたというところがございます。
併せまして、国外の情報も含めまして、例えばIARC・国際がん研究機関の情報であるとか、そういったものを発がん性スクリーニングの結果と相交ぜて、対象物質を選定して、リスク評価を実施してきたというところでございます。
リスク評価は、その中身を見ますと大きく二つに分かれてございまして、一つは有害性評価、もう一つは、ばく露評価ということでございます。有害性評価というものは、評価の対象物質の有害性に関する評価ということで、文献等を情報収集してきて、そのばく露限界値の評価であるとか、そういった有害性の情報を評価するというもの。ばく露評価というものは、その評価対象物質の実際のばく露を評価するということで、現場に入って、そのばく露状況を調査するというようなものでございます。それらを組み合わせて、リスクがどれほどあるのかということを評価して、時に規制措置等が必要と判断されたような物質については、特別規則への追加といったことで、健康障害防止措置を検討していくというような大きな流れで行ってきたところでございます。
次に、こちらのグラフというか図を見ていただきたいんですけれども、「化学物質の有害性と情報量の関係」ということで模式的に分けてございますけれども、横軸が有害性の情報量の多いか少ないかということと、実際にその化学物質の有害性が高いか低いかということを縦軸に取っております。
この第1象限の部分、ここは有害性の情報量が相当に多くて、我々としても有害性が高いということを認識しているというような物質群が、ここに相当すると思います。ここに相当するようなものに関しては、我々としても厳しい規制の対象としているようなところでございますので、皆さんとしても、一般の方々も有害性が高いという認識をされている物質群ということになります。
第4象限の部分は、情報量は多くて、いろいろ情報を集めた結果、有害性はそれほど高くないということが分かっているということで、よかったというようなところなんですけれども、この中で、どの区分が一番危険でしょうかということで考えていただきたいのが、有害性の情報量があまり集まっていないような場合に、でも、実際は有害性が高いということで、この第2象限に区分されるような物質群が、とても、ここが着目すべきグループだということでございます。
要するに、有害性情報があまり集まっていないのに、物質に関して、それをきっと安全だろうという想定に基づいて対応するか、それとも危険である可能性があると想定に基づいて対応するかということで、我々としては労働者の保護という観点から、情報がなければ、情報が十分ないのであれば、労働者を保護するという観点から、できるだけ安全サイドに対応していただきたいというのが本音でございます。
続きまして、職場における化学物質管理等のあり方に関する検討会と、それにひもづくリスク評価WGについて御説明を差し上げます。
12月に、中間とりまとめということを行いまして、ここに書いてある内容をまとめてございます。
まず、検討会の趣旨・開催状況ということと、それから、これまでにまとまった検討結果を5項目に分けてまとめてございます。それから今後の検討事項ということで二つ、最後に検討スケジュールということでございます。
今日のプレゼンテーションは、この中間とりまとめの内容に沿った形で、御説明を差し上げます。
まず、「検討会の趣旨・開催状況」ということでございます。
国内で輸入、製造、使用されている化学物質ですけれども、今、約70,000物質程度あるというふうに承知してございます。ただ、その中には危険性や有害性が不明な物質は、相当程度あるということでございます。
これは考えてみれば当たり前の話でございまして、特に国内で新しく製造・輸入されている物質が、年間1,000物質程度のペースで増えてきているんですけれども、この世に新しく存在すれば、有害性だけに関わらず、物化性状等も含めて情報量が少ないというのは当然の話かなというふうに考えます。
他方で、化学物質による労働災害というものは、年間450件程度で推移しているという状況にございます。例示として挙げてございますけれども、オルト・トルイジンであるとか、MOCAによる膀胱がんの事案であるとか、有機粉じんによる肺疾患の発生であるとか、それから法令による規制対象外の物質による労働災害も頻発しているという状況にございます。
これらを背景としまして、趣旨・目的のところでございますけれども、化学物質による労働災害を防ぐため、学識経験者、労使関係者による検討会を開催して、今後の職場における化学物質等の管理のあり方について検討を重ねてきたところでございます。
本検討会とリスク評価ワーキンググループということに分けてございますけれども、まず、本検討会のほうでは、事業場における化学物質等による労働災害防止対策のあり方に関すること、ラベル表示・SDS交付等の危険有害性情報の伝達のあり方に関すること、化学物質等の管理に係る人材育成のあり方に関することを中心に、昨年末まで11回開催してきたというところでございます。
さらに、その技術的な内容を含む専門的な中身を議論する場として、リスク評価のワーキンググループというものを昨年から立ち上げまして、国によるリスク評価のあり方に関すること、それからその他職場における化学物質等の管理のあり方に関することということを中心に、昨年末まで3回ということで、今月、第4回を開催したところでございます。
これから、これまでにまとまった検討結果ということで、順に御説明を差し上げます。
まず、「労働災害の発生状況」ということでございますけれども、これは書き忘れておりますけれども、平成30年の状況をまとめた表でございます。この中で青く着色してございますけれども、これらの規制対象外の物質による労働災害ということで、労働災害全体の約8割を占めるのが、そういった規制の対象外の物質による災害という状況でございます。
それから、「有害作業に係る化学物質の管理状況」ということで、作業環境測定の結果を図にしてございますけれども、一番状態が悪い、第3管理区分の割合というものが、概ね増加傾向にあるというのが見てとれるかなというところでございます。
それからリスクアセスメントの実施率というものが、大体50%程度で推移しているというような状況がございます。御参考までに、リスクアセスメントを実施していない理由としまして上位にランクしているのが、そういったことが分かる人材がいないであるとか、方法がそもそも分からないといったようなお声が挙げられています。
それから「中小企業における状況」ということで、その検討会の中でアンケート等を行ったり、実際に企業さんからヒアリング等を行って得ている情報ですけれども、やはり企業規模が小さいほど、法令の遵守状況が不十分な傾向にあるということ、また、労働者の有害作業やラベル、SDSに対する理解が総体的に低いというような状況を把握してございます。
それから、「諸外国における化学物質管理」ということでございますけれども、欧州、アメリカでは、GHS分類で危険有害性のある全ての物質がラベル表示・SDS交付の義務対象となっているような状況でございます。
欧州は、個別規制はしていませんけれども、リスクアセスメントが義務づけされているということで、また細かい流通規制があるということでございますし、アメリカではインダストリアル・ハイジニストといった専門家の判断といったものが、とても重視されているというような状況でございます。
こういった現状を背景に、我々としても現行の体制を見直す必要があるのではないかということでございまして、上の部分でございますけれども、これまで、先ほど御説明を申し上げましたリスク評価というものを行って、特定化学物質障害予防規則等の対象物質に追加して、ばく露防止のために講ずべき措置を国が具体的に法令で定めるような仕組み、これを便宜的に「個別管理規制」と呼ばせていただきますけれども、そういった仕組みで対応してきたんですが、昨今の事情に鑑みて、もう少し事業者さんの「自律的な管理」にお任せというか、そういった自律的な管理を基軸とする仕組みに移行していくべきではないかということでございまして、具体的には、この下の太字のところでございますけれども、国としては、ばく露濃度等の管理基準を定めると。危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みを整備・拡充すると。他方で、その事業者は、その情報に基づいてリスクアセスメントを行って、ばく露防止のために講ずべき措置を自らが選択して実行するということを原則とする仕組み、これを自律的な管理というふうに呼ばせていただいておりますけれども、こういった仕組みにシフトしていくことに対して、検討を重ねているというところでございます。
こちらが、現在の化学物質規制の仕組みを模式的に表している図でございます。
これは従来から用いている図なんですけれども、特化則等による個別管理規制を中心とする規制ということでございまして、上に行けば行くほど、規制が厳しいというような図でございます。
特にこの三角形の部分に関しては、製造・使用等の禁止の対象物質ということで、代表的なものとしてはアスベストなどになりますけれども、8物質が現在対象となっているということでございます。
それからその次に、この下の台形でございますけれども、特化則とか有機則等に基づく個別管理の対象物質ということで122物質。それから、そのさらに下の台形も含めますと、ラベル表示であるとかSDSの交付、リスクアセスメントの義務対象物質ということで673物質。それ以外の物質が数万物質程度あるというような図でございます。
この図で、しばしば御意見をいただいていたのが、上に行けば行くほど有害性が高い物質であるというようなメッセージになっていないかということでございまして、実際、有害性が高いから規制も厳しいというところは合っているんですけれども、メッセージとして誤解を与えかねないという御指摘をいただいていたのが、この下の、よく状況が分かっていないような物質の中にも、有害性が高い物質も多数あるにも関わらず、それが見えないと。下のほうが、その規制がかかっていない物質に関しては安全だというようなメッセージになっていないかというような御指摘をいただいておったところでございます。
ということで、三角形の図は誤解を与えかねないということで、四角形の図で、新しい仕組みを表してございます。
こちらの図は、検討会等で使用している図ではないのですが、私がちょっと皆さんの理解のお役に立てればと思って、整理し直した図でございますが、多分、このリスクコミュニケーション以降、日の目を見ることはない図ではあるんですけれども、何かの機会があれば、思い出していただければと思います。
こちらは、新しい「見直し後の化学物質規制の仕組み」ということで、自律的な管理を基軸とする規制の概念を表しているものでございます。
ポイントは、その有害性の情報量が多いか少ないかということでございます。
まず、一番左ですけれども、「危険性・有害性情報が少ない」、よく分からない、不明な情報が多いような物質に関しては、「ラベル表示・SDS交付努力義務」「リスクアセスメント努力義務」というふうな整理にしてございます。
その少ない、多いというのは、どういうふうに分かれるかということでございますけれども、具体的には、国がGHS分類によって危険性・有害性が確認できているかどうかということで、ここに線が引かれます。
国がGHS分類を行って、危険性・有害性が確認されていない物質は、全てこの左の危険性・有害性情報が少ない物質ということで整理してございます。
国がGHS分類により危険性・有害性が確認された物質に関しては、ラベル表示・SDS交付、そしてリスクアセスメントの実施について「義務」ということで、整理させていただいてございます。
それから、全ての物質に関しては、ばく露濃度をなるべく低くする措置を講じるということを義務として、整理させていただいてございます。
有害性情報が一定程度多い物質に関しては、「ばく露限界値」を設定できるということで、ばく露限界値なるものが設定できた場合には、そのばく露濃度を「ばく露限界値」以下とすることを義務とさせていただきたいということでございます。
「ばく露限界値」と、今、言葉を使いましたけれども、次のスライドで御説明させていただきます。
それから、全ての物質に関してですけれども、皮膚への刺激性・腐食性・皮膚吸収による健康影響がある場合、またはそれらが分からないような物質を扱う場合については、保護眼鏡や保護手袋、保護衣等の使用を義務とさせていただけたらというふうに考えてございます。
これらが、事業者による自律的な管理としてお願いするような部分でございます。
では、国による支援として何をするかということでございますけれども、そういった有害性情報を集めて、国としては、先ほど申し上げました「ばく露限界値」というものを設定していくということと、積極的に対象物質を順次選定しながら、国が危険性・有害性を確認した物質について、GHS分類をしていく。
それらの中から「ばく露限界値」を設定していくということで、国がそういった対応をしていくということと、特に中小企業さんが、こういった自律s的な管理の仕組みに移行した場合に、中小企業さんたちが取り組みやすいように、国としては何が考えられるかということでまとめてございますけれども、標準的な管理方法等をまとめたガイドラインの作成であるとか、インダストリアル・ハイジニスト等の専門家による相談等の支援体制の整備であるとか、化学物質管理を支援する簡易なシステムの開発、それから化学物質管理に関する情報を集約したポータルサイトの開発などを検討してまいりたいというふうに考えてございます。
そのほか、今、申し上げたのが大きな枠組みなんですけれども、そのほか、お伝えしておくべき内容を下にまとめてございますけれども、そうはいっても、労働災害が多発していると、自立管理の枠組みの中では対応し切れないような物質等も想定されますので、そういった自律管理の枠組みでは管理の困難な物質、あるいは困難な作業を作業単位で国が指定して、それらに関しては製造であるとか、使用等の禁止、もしくは許可制度として対応していくということを考えてございます。
それから、現行の特化則等の対象物質の管理ということでございますけれども、基本的に特化則等の対象物質は、引き続き現行の規則に基づいて管理していただくということを想定してございます。
ただし、一定の要件を満たした企業におかれましては、こういった特化則等の適用を除外して、自律的な管理のほうに移行していただけるという仕組みを想定してございます。
それからもう1点、今後、特化則等への物質追加は、基本的には行わないということで整理してございます。
先ほど、言葉に出しました「ばく露限界値」、これは仮称ですけれども、あと「暫定ばく露限界値」というもの、これも仮称ですけれども、これらについて御説明をさせていただきますけれども、自律管理における判断基準を明確化して、化学物質へのばく露防止対策の適切な実施を促進するために、国が指標値を設定することというふうに整理してございます。
まず、「ばく露限界値」ということでございますけれども、こちらは、労働者が吸入する有害物の濃度を、この濃度以下に保つことを義務というふうに整理させていただきたいということで、考えている指標値でございます。
具体的には、労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で化学物質にばく露される場合に、当該化学物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪影響が見られないと考えられる濃度でございます。
また、有害性情報に応じましては、最大許容濃度ということで、作業中のどの時間でも、ばく露濃度がこの数値以下であれば健康上の悪影響を及ぼさないと判断される濃度としての、ばく露限界値を示すことも検討してございます。
それから、「暫定ばく露限界値」ということでございますけれども、このばく露限界値が設定されていない化学物質を取り扱う事業場において、化学物質の性状に応じて、ばく露防止対策の目安となる指標値ということで、労働者が吸入する有害物の濃度を、当該濃度以下に保つことを努力義務とすることを想定して、考えている指標値でございます。
ただ、その有害性情報等が十分ではなくて、ばく露限界値が設定できない物質に対して、多量の吸入による健康障害を予防する観点から、物質の種類によらず、少なくても当該濃度以上、ばく露させてはならないとする濃度で考えてございますので、たとえ当該濃度以下であっても、未知の毒性による健康障害の可能性があることに留意されたいということでございます。
この暫定ばく露限界値に関しては、まだ、どういう扱いにするかというのはワーキングのほうでも議論を、まさにしている最中でございますので、実際に科学的根拠がないながらも、ある程度目安として、指標値として示すとして考えられている暫定ばく露限界値に関しては、どういうふうな整理にするのか、現時点では値としては定められないということになるのか、ワーキングで今後も議論を重ねていく必要があると思いますので、議事録等を適時に御参照いただければというふうに思います。
それから、順番に御説明を差し上げますけれども、まず、「GHS分類の分類済み危険有害物の管理」ということで、これは国によるGHS分類の結果、危険性・有害性の区分がある全ての物質に関して、どういうふうに対処していくかということでございますけれども、先ほども申し上げましたけれども、これらの物質に関しては、ラベル表示・SDS交付の義務の対象ということでございますし、危険性・有害性に基づくリスクアセスメント、及びその結果に基づく措置の実施を義務というふうな整理にさせていただきたいというふうに考えてございます。
リスクアセスメントの結果に基づく措置として、ここに書いてございますけれども、以下の優先順位の考え方に則して、事業者が自ら手段を選択すると。ここが自律的な管理の肝でございますけれども、こういったことで自ら手段を選択していただいて、労働者が吸入する有害物質の濃度をなるべく低減することを義務づけと、義務とさせていただきたいということでございます。
1番目に、危険性・有害性がより低い物質への変更等によるハザードの削減。2番目に密閉化、局所排気装置の設置等によるリスクの低減。3番目として、作業手順の改善、立入禁止場所の設定、作業時間の短縮等によるリスクの低減。最後に、有効の保護具の適切な選択、使用、管理の徹底によるリスクの低減というような考え方でございます。
それから、皮膚吸収による健康障害のおそれのある物質であるとか、労災多発物質であるとか、現行の特別則の対象物質の扱いについては、先ほど御説明したので割愛させていただきます。
次に、国がGHSを、まだ分類していないような物質の管理ということでございますけれども、基本的な考え方は、先ほど申し上げましたとおり、そのうち国が既にGHSを分類をして、危険性・有害性があると分かっている物質の管理と同様でございます。
先ほどの優先順位の考え方に則して、やはり自律的な管理に基づいて労働者が吸入する有害物質の濃度を、なるべく低減していただくことを義務とさせていただくということと、できるだけ直接接触しないような作業手順を採用して、皮膚障害等防止用保護具の使用を義務とさせていただきたいということでございます。
それから、この自律管理に関して、やはり労使等による化学物質管理状況のモニタリングが必要であるということでございまして、ここに義務づけとさせていただく項目を書いてございますけれども、自律的な管理の実施状況、例えばリスクアセスメントの実施結果であるとか、労働者のばく露の状況、保護具の選択・使用等の措置の実施状況などにつきましては、衛生委員会などで労使で共有していただくということ。
それから、自律的な管理の実施状況に関しては記録していただいて、また、一定期間保存していただきたいということでございます。
それから、化学物質の取扱いの規模が一定以上の企業に関しては、定期的に自律的な管理の実施状況につきまして、専門家の確認・指導を受けるということで整理させていただいてございます。
それから、「健康影響の確認等の仕組み」ということでございますけれども、健康診断の実施の要否は労使に判断していただくということで、自律的な管理の中では、その健康診断の要否について、法令では定めないという整理でございます。
健康診断を実施する場合の検診項目に関しては、検診を実施する医師、または産業医に判断していただくということ。他方で、労働者がばく露限界値を超えてばく露した可能性のある場合は、臨時の健康診断を実施していただきたいということで、これについては義務とさせていただきたいということでございます。
また、年1回実施する一般定期健康診断の問診においては、化学物質の取扱い状況等を聴取し、健康への影響の有無について特に留意して確認していただきたいということでございます。
それから次に、「化学物質の危険性・有害性情報の伝達の強化」というところでございます。
「ラベル表示・SDS交付を促進するための取組」ということで、主として一般消費者の生活の用に供するためのもの以外の製品については、一般店舗販売やインターネット販売されているものも含めて、法令に基づくラベル表示・SDS交付の義務対象であることを、改めて明確化するということでございます。
特にその家庭用品品質表示法に基づく表示がなされているもの、そのほか、一般家庭だけで用いられることを想定しているものは対象ではないということでございます。
また、ラベル表示・SDS交付の義務の対象外の化学物質であっても、その化学物質の流通においてはラベル表示・SDS交付を伴うことが基本であるというメッセージを、行政、業界、労働組合が協力して情報発信していきたいというふうに考えてございます。
また、ラベル表示・SDS交付の義務違反を是正していただけないような場合には、対象製品名等を公表するなどで指導を強化してまいりたいというふうに考えてございます。
次に、SDSの記載の内容、そして交付方法等の見直しということでございます。
SDSの記載項目に追加するということで、これは国際的には一般的なようでございますけれども、推奨用途と使用上の制限というものを追加してまいりたいということでございます。ただし、当該化学物質の譲渡または提供する時点で想定している情報を記載していただければ、それで十分であるということでございます。
それから、「危険有害性情報の定期的な見直し」ということでございまして、SDS交付義務対象物質の譲渡・提供者は、当該物質に係る危険性・有害性情報の更新状況の定期的な確認及び更新されている場合には、SDSを再交付していただくということを義務とさせていただきたいというふうに考えてございます。
それから、「SDSの交付手段」としまして、現在、紙であるとかフロッピーであるとか、そういったものでお願いしているようなところでございますけれども、時代に合わせてインターネットを通じた伝達方法、容器に印字されたQRコードの読み取りであるとか、ホームページ等でSDSの内容を閲覧するといったような手段も可能にしたいというふうに整理してございます。
それから、「譲渡・提供時以外の場合における危険性・有害性に関する情報伝達の強化」ということでございまして、労働者保護の観点から、基本的に事業者間での譲渡・提供ということを意図して、これまで仕組みを整理してきたところでございますけれども、例えば、事業場内で、そういった化学物質を取り扱う際にも、しっかりと情報が伝達されるように整理したいということでございまして、例えば購入したGHS分類済危険有害物を事業場内でほかの容器に移し替えるときであるとか、自ら製造したGHS分類済危険有害物を容器に入れるときなども、しっかりと情報伝達していただきたいということでございます。
それから、GHS分類済危険有害物を製造し、または取扱う設備を改修、清掃等の作業に関して外部に委託していただくというようなことも想定されますけれども、そういった場合には、請け負っていただいた方に対して、扱っていた物質の危険性・有害性や作業についての注意事項などを記載した文書の交付ということを、義務として整理させていただきたいということでございます。
それから支援措置ということでございますけれども、危険性・有害性に関しての最新情報を共有・活用していただけるようなプラットフォーム作りというものを、関係省庁・機関で連携して進めてまいりたいということでございます。
それから、先進的な取組を行っていただいている企業・団体様の表彰等の制度を活用する等によって、支援を推進してまいりたいということで考えてございます。
次に、労働者の意識啓発・教育の強化ということと、中小企業に対する支援の強化ということでございますけれども、化学物質へのばく露防止対策を確実なものとするためには、作業に従事する労働者自身も、自ら取り扱う化学物質の危険性・有害性というものを正しく理解していただくということが、まず重要であるということと、作業において生じ得るリスクを正しく認識して、正しい作業方法を遵守し、保護具を適切に使用することが重要であるという観点から、以下のような取組を進めていきたいということを考えてございます。
一つは、雇入れ時の教育及び作業内容変更時の教育の教育事項に関して、ラベルの内容であるとか、作業場の注意点、保護具を使用させる場合には、その意義や使用方法などについても、しっかりと教育をしていただくということでございます。
それから、実際に働き始めた後ではなくて、学校教育といった早い段階から、ラベル教育についても導入を検討してまいりたいというふうに考えてございます。
それから、SDSに基づいて行う化学物質のリスクアセスメントには、作業に従事する労働者の参画というものを義務として整理させていただきたいということでございます。
次に、中小企業に対する支援の強化というところでございますけれども、化学物質に関する知識や人材が十分でない中小企業様が、適切な化学物質管理を行うことができるように、以下の取組を進めてまいりたいということでございまして、特に管理が困難な物質や、危険性・有害性が高い物質の標準的な管理方法等をまとめたガイドラインというものを策定していきたいというふうに考えてございます。
それから、企業OB等を活用して、地域ごとに化学物質管理に関する高い専門性や、豊富な経験を有する人材の育成を配置して、中小企業等からの無料相談に対応したり、助言支援等を行う体制というものを構築していきたいというふうに考えてございます。
また、専門知識がなくても化学物質管理が容易に実施可能なスマートフォンやタブレット等を活用した簡易な管理支援システムの開発及び化学物質管理に関する情報を集約したポータルサイトを整備してまいりたいということでございますし、中小企業等でも、混合物のSDS作成が簡易に行えるようなツールも開発していくということを考えてございます。
そして最後に、「未来へ向けた検討」ということでございまして、今後、検討会もしくはワーキングのほうで検討を予定している事項を整理してございます。
まず、検討会における検討事項ということでございますけれども、まずは、「化学物質管理を支える専門人材の確保・育成」。
それから、「特定化学物質障害予防規則等に係る課題への対応」ということで、ばく露リスクに応じた健康診断の実施頻度等の見直しであるとか、気中濃度を管理濃度以下に維持することが技術的に困難な場合の対策であることを議論していきたいということ。
それから、「遅発性疾病の把握方法等」ということで、職業がんとかの実態を、より効率的に把握していくためには、どのようなことが考えられるかといったようなことを議論してまいるということでございます。
リスク評価ワーキンググループにおける検討事項としては、国によるGHS分類の具体的な進め方であるとか、ばく露限界値や暫定ばく露限界値の設定方法であるとか、化学物質に関する危険性・有害性に関する情報収集のあり方等について、引き続き検討を重ねてまいりたいというふうに考えてございます。
最後に、検討スケジュールということでございますけれども、検討会は12月に中間とりまとめをしまして、今月、2月1日に安全衛生分科会に中間報告という形で報告させていただきましたので、既に法令改正の手続に進めるものは、順次対応してまいるというところでございます。
リスク評価ワーキンググループも並行して走っておりまして、今月も行いましたけれども、来月以降も検討を重ねてまいる予定ですので、適時のタイミングで取りまとめて、検討会のほうに報告をすると。その検討会にワーキングから報告をして、それらを受けて検討会のほうで、今年の夏頃、最終とりまとめという形で、再度、安全衛生分科会のほうに報告させていただくということで、これら全てを含めて所要の法令改正手続へ進めてまいるというところでございます。
以上、駆け足ではございましたけれども、私のお話は以上でございます。
御質問等は、Zoomのほうでお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
○事務局 植松室長補佐、御講演、ありがとうございました。
続きまして、近畿大学教授の三柴先生に、「安全衛生と法と文化」を御講演いただきます。
それでは三柴先生、よろしくお願いいたします。
○三柴氏 三柴でございます。よろしくお願いいたします。
私は制度論者ですので、検討会での審議状況というよりは、もう少し俯瞰して、規則対象外のリスクにどう対応するかという筋論をお伝えしたいと思います。
自己紹介しますと、現場問題の解決を重視している、かわった法学者だということです。
まず、日本の安衛法の展開をポンチ絵にしましたので、お示しします。
安衛法と似たような保護利益を持つ法律として道交法(道路交通法)があるわけですけれども、安衛法の場合は、執行上、監督官等の行政資源も限られていると。道交法のほうは、警察を含めてかなりスタッフを使って執行ができるという違いがありますけれども、いずれも災害を減らす上で、非常に力を持ってきた要素は、3E対策だろうと思います。
3Eというのは、「engineering(技術)」「education(教育)」、それからenforcement(ルールによる強制)」の三つなんですけれども、そうしたものを駆使して、いわば安全の秩序づくりをしようとしてきたということかと思います。
結局、enforcement、つまり、一律的なルールをただ強制していく、やるべきこと・やってはいけないことを示して、守らなければ罰則だというだけの方法ではなくて、その方法も含めて、関係者の安全行動、安全の秩序への働きかけを、ルールを使ってやろうとしてきたということですね。そのため、いろんなチャンネル、いろんな方法を駆使してきたということなんですね。
結果として、それなりに成果を上げてきたのですけれども、その安衛法にも発展段階がございます。もちろん環境条件の変化も踏まえてなんですが、基をたどると、旧安衛則時代、今の安衛法ができる前の段階では、要するに技術者が既に起きた労災を分析して、再発防止策を練った。それを、いわばそのまま強制的なルールにして、行政官が高権的に執行していたわけですね。
たしかに、当時から、機械設備の本質的安全化、要するに安全な機械を設計、製造させるような規制も設けていたんだけれども、そうした方策だけでは重大労災の多発を防げなかったので、そこに文系の知恵、経営工学などの考え方を応用して、今の安衛法ができたという経過があります。
今の安衛法は、いわば場と組織の管理体制づくりというのを重要な基軸にしておりまして、基をたどると、その前の災防団体法に盛り込まれたんですけど、事業者に安全衛生に自主的に取り組んでもらうと。何でもかんでも監督官が強制するというのではなくて、自分らでやってよと。そのため、管理体制を整備してください。とはいえ、どうすれば労災を防げるかの基準は示します、基準づくりは進めますというような総合的な対策を法令にに書いたわけですね。自主的な取り組みを重んじた総合的な安全衛生対策を打ち出したと。
それで、かなり労災は減ったんですけれども、しかし、対応が難しい衛生問題とか健康問題が増えてきたと、あるいは表に出てきたということもあって、そのうち専門家の活用を重視する、そちらに比重を移すような法政策が採られるようになった。
その代表例が、作業環境測定法です。これはもう、専門家活用法といってもいいぐらいの法制度です。
最近は、長時間労働者対象の面接指導制度とか、ストレスチェック制度とか、こういったものが、要するに専門家活用法として定められました。
さらに最近は、法制度に基づく政策として、がん就労、つまり、がんにかかっても、ちゃんと働き続けられるようにしようとか、そういう施策。さらに副業兼業フリーランスの健康をどうするというような施策まで行われるようになってきた。
これは、要するに、労使双方の、労働者だけじゃなくて、もう、労使双方ないし関係者のQOLとかQOWLを改善しようというところまで、公共政策である安全衛生政策の矛先が進んできたということですね。安衛法というのは、こういう展開をたどってきたわけです。
その展開を振り返って、一貫して取組が進んできたな、と思われるのは、基準の整備と技術の発達です。
最近、化学物質対策だったら、クリエイトシンプルが開発された。その前は、ばく露防止のためのコントロールバンディング等の開発があった。そういう技術の開発ですね。それは進んでいる。
他方で、積み残し課題もいろいろある。例えば、リスクを生み出す人、あるいはリスクを防げる人が管理責任を負うべきなんだけれども、それが徹底しているとは言えない。また、経営者・組織の意識・知識がどうかという問題もある。未解明のリスクはどうするという問題も、化学物質のみならず残っている。
また、規制の過不足をどう解消するかという問題もあります。これは非常に難しくて、規制が行き過ぎると産業の首を絞めちゃうし、現場も回らないと。条文が空文化しちゃうという問題があるんだけれども、実はちょっと厳しめの規制があると、安全の秩序、安全行動に働きかけるという面もあって、ここのバランスをどうするかというのは、非常に難しいわけです。
というような安衛法の展開の話を、もう少し具体化する趣旨でデータを示したいと思います。これは有名な図ですから言わずもがなですけど、労災による重大災害の経緯ですね。ほぼほぼ減ってきているということですね。特に安衛法ができてから、現行の安衛法ができてから、大分、重大災害が減ってきているということは、これは間違いがないと。
しかし、休業4日以上の災害は、最近微増傾向です。
また、定期検診に引っかかる人は、ほぼ一貫して増えている。
他方、交通事故のほうなんですけれども、交通事故のほうはきれいに減ってはいないんですね。第1次、第2次交通戦争と言われる山が二つあるのですけれども、その山を抑えた要素は何かというと、冒頭に申し上げたように、3E対策なんですね。要するに、engineering、enforcement、educationです。技術の発展、規制の発達、それから教育の強化です。
それから、私が厚生労働省の科学研究費を頂いて行った社会調査のデータを、これから多用いたしますけれども、それによると、日本でなぜ現行の安衛法が労災を減らし得たのかというお尋ねをしたところで、結局、個々の事業場で、安全衛生の管理体制の整備を進めたからだというお答えが一番多かった。それに続いて、国によって危害防止基準が整備された、つまり、やるべきことをはっきりさせた。やっちゃいけないこと、やるべきことをはっきりさせたということが挙げられているということです。
要するに、やるべきことを明確にして、それをやるための体制を明示したということが、かなり労災を減らす要因になったということかと思います。
また、事業者に厳しい義務づけを行ったということも効き目を発揮したという回答が結構多かったわけで、やはり、社長さんらのトップマネジメント層に意識づけ、知識づけを行うということの重要性も、ここからうかがえると。
そこで、この調査では、経営者に対して、安全衛生を重視していますかと聞きました。そうしたら、「重視している」という回答が半数を超えたわけですけれども、そこで私は質問を止めず、じゃあ、なんで重視しているのと聞きました。そうしましたら、一番多かったのが人道的なというか、被災者が出ると良心が痛むからという、これが一番多くて、それから、従業員のメンタル面への影響、士気に関わる。それから経済的なロスが生じるという、こういう回答が多かったわけです。
だから、逆に言うと、今後も何か対策を打とうというときは、こうした部分に働きかけるといいということが分かるわけですね。
さらに、じゃあ、重視しているって具体的に何をやっているのかと聞きましたら、専門の部署を設けて、人をそれなりに、それなりの質量の人を配置しているという回答が、一番多かったわけですね。
つまり、経営者は、安全衛生を重視しているんだったら、ちゃんと体制を組むし、人も置くということが、ここからうかがえるわけですね。
また、安全衛生を司る部署から出た意見は全社で尊重するし、安全衛生の専門家には、それなりにはステイタスを与えると。給与もステイタスも与えるというふうにお答えになっていました。
さらに、安全衛生の専門の担当役員、安全性専門の担当役員を置いているという回答も結構あったということです。
中小企業ではどうかということですけれども、中小でもやっぱり、いろいろ余裕はないけれども、安全衛生を重視する以上、人を置いていると。安全衛生の専門人材を置いているという回答が、非常に多かったわけですね。
他方で、安全衛生を重視していないという経営者が答えた理由ですが、結局、被災体験がないと。労災が起きていないからという回答が一番多かったということです。本当かな?と思ってしまいますけど、そういう回答ではあったと。
次に、社会調査で安衛法の知識を問いました。「よく知っている」「おおむね知っている」という回答が半数近くでした。
そう答えた方々を対象に、今の安衛法のバランスを聞きましたら、「おおむね妥当」と。厳し過ぎず、甘過ぎずであるという回答が8割ということで、日本の安衛法政策は、よくできているという評価、大学では、8割は「優」なので「優」評価でした。
それから、先ほどの植松補佐の話にもありました、性能要件化、要するに、目標を設定して、そのための方法は分権化する、個々の事業者の判断に委ねるという方法について、善し悪しを聞いたら「賛成」が43%ということで、結構多かったということ。確かに、「どちらともいえない」も、まあまあ多かったんですけど、「反対」が少なかったということは特筆できると思います。
それから、ちょっとラジカルな方法ですけど、イギリスが採っている方法、安全衛生管理を怠った役員を解任できる権限を法制度で書く、法律で書いちゃうと。こういうラディカルな方法について、賛成が4割近くあったというのは、実はちょっとびっくりしております。
それから、中小企業はコンプライアンスといっても難しいので、段階を踏んでやったらいかがでしょうという案については、「賛成」が4割ぐらいあったということですね。これについても「反対」はあまり多くなかったです。
それから、化学物質に限らず、あらゆるリスク要因についてリスクアセスメントを義務づけると、化学物質対策だったら、もう、少なくともGHS分類ができているようなものについても全部やると。リスクアセスメントさせるという、そういう施策の善し悪しを聞いたら、「賛成」が5割ということで、これはもう、はっきり多かったですね。リスクアセスメントの義務づけをすべきは、多かったです。
それから、リスクアセスメントに労使双方を参画させると。これもイギリスが採っている方法で、今後、日本でも化学物質対策では採る方向だということが、先ほど植松補佐から伝えられましたけれども、これも「賛成」が非常に多かった。やはり、労働者にも意識、知識を持ってもらわないといけないし、現場からの声のくみ上げは非常に重要だから、ちゃんと参画してもらう方向というのは、社会調査でも支持が多かったということです。
それから、労働者に発見したリスクを事業者へ報告させる、あるいは労基署なりに報告してもらうという方策については、やはり「賛成」がかなり多かったということです。
それと、「リスクメーカー」と私は呼んでいるんですけれども、リスクの源流、リスクを作り出している、あるいはリスクを防げるような立場の人ですね、発注者、設計者、譲渡提供者、こういった方々に法的な責任を強化する方向については、やはり「賛成」がかなり多かったということ。
それから、リスクコミュニケーション。この場がまさにその促進を目的にしているわけですけれども、これを義務とする提案についても、「賛成」がかなり多かったということですね。譲渡提供者、発注者、設計者から、その川下、ユーザーに対するリスクの伝達を義務にすると。これは「賛成」が5割近かったということで、「反対」は一桁台でした。
それから、行政官の中で、ちゃんと安全衛生に関する知識を持っている方については、今よりも執行上の裁量を広げるという提案については、ちょっと「賛成」は減りましたけれども、それでも4割ぐらいの「賛成」が得られたということ。
また、そうした知識を持つ行政官の増員についても「賛成」が4割でありました。
イギリスは、HSE(安全衛生専門も行政機関)が、検査官、インスペクターについては、民間で活躍していた方を、年俸制で、それぞれの専門性に応じた適正報酬を支払う前提で任用するというスタイルを取っておりまして、日本でもそういう方向はどうかということなんです。日本で言うと、特別規則ごとにインスペクターを任用するというようなスタイル。だから専門性は高いし、事業者側でも、いい意味でコンサルティングをしてくれるという面もあって、かなり信用されているということは、私の現地調査でも分かっております。そういう方向に賛成だという回答者は、結構多かったということですね。
現状、日本では、化学物質に詳しい監督官って非常に少ない。はっきり言えば、意識も知識も十分でない監督官が、現場のリスクを十分に承知しないまま、形式的にルールの適用を求める、そういう実態を置き去りにして、政策が先行するという、そういう格好になっている面がある。だからこそ、自律管理を進めなきゃいけないという面もあるわけですけれども、必要な折にちゃんとアドバイスができる行政官が必要だということは、この調査からもうかがえると思います。
それから、まさにばく露防止のためのクリエイトシンプルなんかがいい例ですけれども、中小企業でもリスクアセスメントを簡単に行えるツールの開発と提供については、やはり「賛成」の回答がすごく多かったですね。
それと、現状、化学物質を扱う事業場において、誰を頼っているかということを聞きましたら、はっきり出た傾向が、社内の人です。社内の人を頼っている。要するに、社外の専門家はあまり頼られていないんですね。中小企業などで、社内に適任者がいないということで社外に頼るような場合は、けっこう行政機関に頼っているということが分かりました。
やはり化学物質については秘密がいろいろ多くて、おいそれと外部の専門家を頼れないという、そういう声なんだろうというふうに思われました。
今後の中小企業の安全衛生の担い手については、災防団体、安全衛生コンサルタントが回答として多かったけれども、社労士も含まれていたということですね。社労士さんも、専門性はいろいろだけれども、事業者の悩みを聞いたりして、割と身近な存在だということで、安全衛生対策でも活用の可能性があるということがうかがわれました。
それから、特に大手の方対象の質問ですけれども、自分のところにいる化学物質なり安全衛生の専門家を、他社に派遣して、いろいろな事情を見てきてもらう。そこでアドバイスをしてもらうというのはどうかと尋ねました。要するに、自前のスタッフを他社で活用してもらうと。給料は派遣する側が払うという、こういう政策がアメリカで取られているんですけれども、日本でもやるのはどうかと聞いたら、「派遣する」という回答が25%ぐらいあったんですね。これは、実は驚きでありまして、やらないでもない、要するに、いわばやる資源を持っているところであれば、条件次第でやるよという回答なんですよね。今回も化学物質管理において、中小への支援では、そういうスキームが予定されています。
また、今後、日本の事業場で安全衛生が重視される文化を築くためには、どうしたらいいかと尋ねたら、やはり安衛法を分かり易くすると良い、それから、こういう問題に関心を持つ方が答えてくださったということもありましょうが、法の強制力は強めたほうがいいという回答が多かった。
それから、リスクアセスメントも大事だけれども、その職場の文化を大事にした政策、伝統的なゼロ災運動とかをより進めるべきだと。つまり、海外から輸入した概念もいいんだけれども、日本独自の文化を生かした施策というのが大事ではないかということがうかがわれました。
あと、よく上司教育や経営者教育の必要性が言われるけれども、やはり一般労働者への安全衛生教育こそ重要ではないかということが示されました。
次に、日本の政策は、割とイギリスから倣うところが多かったというところもありまして、ちょっとイギリスの話をしたいと思います。私自身も、イギリスについては、何度か現地に行って調べてきました。向こうの制度の特徴を端的にまとめれば、メリハリが効いている、飴と鞭が効いていると言えます。
基本的に、安全衛生に関する原則は明快に法律に書かれていて、違反したら厳しい罰則が課されるのですけれども、達成手段については各事業場に委ねるという、そういう方法。だからビジネスを不合理に邪魔しない。しかし、けじめはつけると、そういうやり方が採られています。
達成すべき基準や、安全衛生の原則は単純明快に示す。安全衛生は総合施策だから、総合的にやらなきゃいけないから、それもちゃんと示す。その上で、その達成手段は、労使でちゃんと考えて、自分たちでやってね、ということを示している。
それから、一方では、専門家を大事にせよ、としているが、他方で、一律の基準の強制より、柔軟な法執行が認められている。HSEの監督行政も、さっき申し上げたように、ちゃんと企業で活躍してきた民間の安全衛生の専門家を任用するから、企業の事情が分かった上で監督をするという、そういうやり方を取っていると。こういうことがうかがわれたわけですね。
また、これはイギリスの建築安全の専門家に聞いたところですけれども、イギリスで高い安全衛生の成果が示されている背景というと、まず、再発防止策としての危害防止基準をちゃんと真面目に作っていくと。それから、バランスの取れた法執行をするということですね。だから、中小企業にいきなり無理な要求をするとか、そういうことはしないと。
それから、監督官が高い専門性を持つと。それから、職場ごとに安全衛生を大事にするという組織的な取組を促進すると。それから、生産のリーダーが安全もリードするということですね。日本の安全管理者制度なんかも、そういう趣旨で作られているわけですが。
それから、BSとかISOなどの規格が発達している。
それから、行政機関が災害疾病、ヒヤリハット情報などの情報を確実に収集している。だから、化学物質対策でもそうですよね。これはちょっとおかしいんじゃないかという情報が、なるべく鋭敏に情報収集されるようにする。それが行政なりにちゃんと蓄積されるようにするということ。それから、リスクをつくり出している人たちへの規制をしっかりするということですね。
あとは、そのリスク管理のための適任者をしっかり選任するということですね。加えて、安全衛生技術の進展などが指摘されておりまして、これは化学物質対策でも当てはまるだろうと思います。
最近、イギリスで安全衛生に関する社会調査をしました。そこから分かったことは、一言で言うと安全衛生文化の高さかなと思います。そもそも回答者にトップマネジメント層が多かったし、安全衛生を重視している企業は、かなりの割合が安全性担当役員を置いていました。
それから、安全衛生の専門家は、結構尊敬され、給与も高い。イギリスは産業医制度が法定されていないので、法定してはどうかと尋ねたら、殆どの回答者が賛成しませんでした。多分、健康問題の専門家は、医師でなくてもステイタスが高いので、法制度化する必要がないのかなと思いました。安全衛生の専門家への尊敬と裏表で、素人が安全衛生を担当するより、餅は餅屋、専門知識を持つ担当者を社内で信頼するという文化が強いこともうかがえました。
安全衛生を重視する経営者に、なんでと聞いたら、ここは日本と似ていて、やはり労災が発生すると心が痛むという、結構、浪花節な回答が多かったのは興味深かったです。
それから、イギリスの安衛法が災防効果を持った理由についても、管理体制の構築が大きく作用したとの回答が多かったです。また、経営者の(法的)責任が重いということと、危害防止基準が整備されたという、この三つを挙げる回答が多かった点は、日本と共通していました。
あと、今後取り組むべき政策課題については、フリーランスの安全衛生、それから様々な労働者のメンタルヘルス、この辺が重要だという回答が多かったということで、似ている面、違う面がありますけれども、日本の安衛法政策にできることがまだまだあるということ、参考にすべき点があるということはうかがえます。
じゃあ、日本でどうしていくかということですけれども、やはり、監督官が、安全衛生法違反を取り締まることばかりで安全衛生を実現するには、やはり限界があるわけで、どうしても安全配慮義務とか、健康配慮義務とか、民事上の義務も一つの説得材料として災防対策を進めていくということが現実的だろうし、現に、もめてしまうと裁判所は、割と事業者に民事責任を負わせるんですね。だから、そこを意識して頂くことが重要だろうと。
民事裁判で経営者に責任を負わせるときには、結局、国ごとの文化といいますか、社会常識で判断されるんですね。だから、その国の常識でやるべきことをやっていましたか、という視点で判断されることになります。
裁判所というのは、科学的な切り分けが難しい健康障害のような事件については、事件の筋を見ています。要するに、事業者が、最低限の危害防止基準を守ると共に、ちゃんと体制を組んで人を置くことを基本として、やるべきことをやっていたかということを見るわけです。
だから、たとえば、GHS分類ができていない化学物質による被害なんかが起きたときも、やはり、やるべきことをやっていたか、という筋を見るわけです。しかるべき手順を踏んでいたかとを見るわけです。それも、やはり労災が起きたということになると、民事訴訟では、かなり結果責任的に事業者の責任を認める傾向にある。
要するに、日本の安全配慮義務というのは、法令の穴を埋めるような役割を持っている。極論、合理的なリスク管理は全部やるべきだったというスタンスで判決を出すんです。もちろん、無理までは要求しないですけれども、事業者として、既存の法令を参考材料にして、合理的なリスク管理は、なるべくみんなやれと。要するに、安衛法第28条の2はちゃんと守れと、そういう判決の出し方をするんです。
さらに、実質的には、最新の予防理論を踏まえろということも裁判所は言ってきていて、1次予防から3次予防、3ステップアプローチ、PDCAサイクル、こういったものはちゃんと踏まえて措置を講じよということを言うわけです。中には、U理論に基づく措置を求めているのかな、という例もあります。
U理論って何かというと、PDCAサイクルというのは、要するに再発防止なんです。だけど、U理論というのはリスクを予想しろということなんです、簡単に言うと。マサチューセッチュ工科大のオットー・シャーマーという先生の発案です。ということから、民事の領域では、リスクメーカーの責任も結構認めてきました。
化学物質関連で、ちょっとだけ判例を紹介しますと、被害に遭った労働者が、事業者とか製造者の過失責任を問う訴訟が起きてきました。また、国の規制権限の不行使を問う訴訟も起きてきました。例えば、元請会社が時計の針の印刷で、下請にノルマルヘキサンを使わせてたんだけれども、下請は、そのハザードとかリスクとか、全然事情を知らなかったと。にもかかわらず、元請は、仕事を発注しただけで、大して対策も講じずにいたところ、神経障害の被害が起きちゃったというようなケースで、元請は、事情を知ってたんだから責任取るべきというような判例が出てたり、それから、国際的な環境基準等に準拠して作業環境整備をしてないと過失責任を負うよといった例もありますし、それから、個人サンプラーを活用しないと過失責任を負うとか、作業環境測定から対策まで、ちゃんと一貫した、systematicな管理をやっていないと過失責任を負うといった例もありますし、要するに民事裁判になると、現行法令で定められてないところまでやれと言われるわけです。だから、ここを一つの基準に対策を考えなきゃいけない。国の法令というのは、ある意味では、民事裁判をフォローするというか、そういう面もあるということなんですね。むろん、相互作用なんですけれども。
だから、今回、植松補佐がお話しされたことというのは民事裁判との関係では、事案の性質によっては、既に法的義務なんだろうと思います。そのときに念頭に置くべき図として、縦・横・高さ、縦というのはサプライチェーンの川上から川下までちゃんとリスクコミュニケーションするということ、横は国際的なリスクコミュニケーションをするということ、高さというのは現場でちゃんとばく露管理をするということですね。こういう視点で行うということですね。
だから、民事裁判を意識するということは、≒国の文化を意識するということで、ある意味、制度の先取りにもなるということをお話しいたしました。制度論で細かい話ができず恐縮ですけれども、以上で私の話を終えさせていただきます。
どうも御静聴、ありがとうございました。
○事務局 三柴先生、ありがとうございました。
それでは、ここで10分間の休憩を取らせていただきます。
後半の意見交換会は、15時から開始する予定でございます。
14時51分 休憩
15時00分 再開
○事務局 それでは、お時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
コーディネーターは先ほど御紹介いたしました、東京理科大学薬学部医療薬学教育研究支援センター社会連携支援部門教授の堀口先生にお願いしております。
また、パネリストに、基調講演を行っていただきました、近畿大学教授の三柴先生、厚生労働省の植松室長補佐と、DIC株式会社の山口様に御出席いただき、あらかじめ頂きました御質問について先生方から御回答いただきたいと思います。
それでは、堀口先生、よろしくお願いいたします。
○堀口氏 皆さん、こんにちは。時間がもったいないので始めていきます。
それで、まずは事前に質問を幾つか頂いておりますので、その質問に回答していくような形で進めていき、その後、本日、皆さんから御質問を頂いておりますので、それに回答していただく形で進めたいと思います。
それでは、早速ですが、進めていきます。
それで、皆さん、いろいろなところの質問を頂いているので、前後することが、スライドの順番どおりにはいきませんので、その辺は御了解していただければと思います。
それでは、事前に質問を頂きましたので、それから進めていきます。
まず、有害物質に関しての個別の規制から、自主管理に向かうこと、作業場の有害物質濃度の作業環境管理に加え、作業者のばく露量の作業管理が加わることといった方針変更の方向性は理解できますが、現時点での実態との乖離が大き過ぎて、既存の規制への対策・対応と、新しい自律管理物質に関しての対策・対応の両方を求められることになった場合に、現場の混乱が心配です。特に、既存の規制の物質と新しい自律管理物質の併用が混合物の使用の際に、ルールが曖昧になって、作業管理に支障が出る懸念があります。こういった混乱を避けるために、移行に関して、段階的な施行や移行措置なども検討されているのでしょうか、という御質問です。
植松さん、よろしくお願いします。
○植松室長補佐 お答えいたします。
これはもちろんそうでして、特に移行措置期間ということで、現場の皆様にしっかりと対応していただけるように、どのくらいの期間が必要かというのは関係業界や現場等に対してヒアリングをしながら丁寧に検討してまいりたいというふうに思います。
○堀口氏 次に行きます。
自律管理のモニタリングに関して、「定期的に、自律的な管理の実施状況について、インダストリアル・ハイジニスト等の専門家の確認・指導を受けることを義務づけ」とあります。これは多分、資料の15枚目などにも書いてあると思うんですけど、それから、人材育成にも関係しているのでしょうが、中小企業に対する支援の強化に関して、「地域ごとに、化学物質管理に関する高い専門性や豊富な経験を有する人材を育成・配置し、中小企業等からの無料相談対応、助言支援などを行う体制の構築を検討」とありますが、このような専門家や指導者の育成と助言体制の構築に関しては、どのような案が議論されているのでしょうか。
植松さん、お願いします。
○植松室長補佐 これは正直なところ、今後検討していくということでございます。一応、方向性としては今お示ししているとおりでございますけれども、具体的な内容は今後検討していきたいということと、あと、三柴先生から補足をしていただけるようです。
○堀口氏 はい、もちろん。
○三柴氏 すみません、ちょっと補足させていただきますと、ただ専門家を選任してくださいとお願いしても、なかなか普及しないというのもありまして、これまでのように危ないと分かっているところに専門家をつけるということではなくて、危ないかどうか分からないところについては、基本対策はやっていただくというのを原則として、それを免除するのであれば、専門家のお墨つきを頂くと、こういう方向が望ましいと私は思っておりますし、そういうスキームを一応お考えいただいているなというふうに思っております。
○堀口氏 ありがとうございます。
山口さん、現場におられて、今のところでコメントはありますでしょうか。
○山口氏 現場で、やっぱり一番難しいのは、こういう専門家の方々をどこから探してくるか、どこにいるのかという、やっぱりそういうところが難しいというのが現実にあります。社内の専門家だけではなくて、特に中小さんなんかだと、社内にいらっしゃらない場合もあるかと思いますので、外でどこかにそういう方々がいて、すぐにでもお願いすれば来てもらえるという体制をつくっていくというのは、非常に大事なことだなというふうに感じております。
○堀口氏 ありがとうございます。それは、三柴先生の資料に厚生科研の調査結果があったと思うんですけれども、Q.31という質問で、派遣する他社の安全衛生管理の状況を調査し、必要に応じてアドバイスを提供するような公的な職務を任されたら、その職員を進んで派遣しますかという問いに関して、先ほどこの23.8%が「派遣する」と回答されていることから、概ねこのやり方ができそうだみたいなお話を三柴先生がしてくださったと思うんですけど、そこをコメントいただければと思います。
○三柴氏 実際問題、この制度を施行して、すぐに回るとは思っておりません。ただ、これから専門家を広く増やしていくためには、こういう施策をまずつくって、大企業に集中している専門家の知識を様々な規模、性格の企業でシェアできるように誘導するということは必要かと。このデータも、その方向性をある程度正当化しているように思います。
○堀口氏 ありがとうございます。
それで、その専門家に関しまして質問を頂いてます。植松さんの資料の15ページ目の労使などによる化学物質管理状況のモニタリングについて、義務づける項目の一つとして、「インダストリアル・ハイジニスト等の専門家の確認・指導を受けること」とありますが、インダストリアル・ハイジニストに類する国内の資格として、オキュペイショナル・ハイジニストが思い浮かんだのですが、その理解は正しいでしょうか。また、そのほかにそれに類する国内資格は何でしょうか、という御質問です。
植松さん、お願いします。
○植松室長補佐 今考えている専門家の要件としては、具体的に申しますと、例えば日本作業環境測定協会のインダストリアル・ハイジニストの資格を保有されている方であるとか、化学物質管理に関する専門の教育を行う大学院または大学院等の特定の講座を修了した方で、実務経験を一定程度積まれた方であるとか、労働衛生コンサルタントや労働安全コンサルタントの資格を保有されている方で、やはり同様に一定の講習、そして実務経験を積まれている方であるとか、そういった方々を想定してございます。
以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。
それでは、次の質問に行きたいと思います。「化学物質規制体系の見直し」の中で下記のように記載されています。植松さんの資料ですね。「特化則等の対象物質は、引き続き同規則に基づいて管理」「一定の要件を満たした企業は、特化則等の適用除外」とありますが、これは現行の特化則や有規則に規定される適用除外を引き続き運用するということでしょうか。もしくは、リスクアセスメント結果に応じて、局所排気設備を全体換気装置などで代替えするなどの手段を事業者自ら選択できるということでしょうか、という御質問です。
○植松室長補佐 お答えします。現行の特化則の規制そのものは、これまでも続いていくという観点からは、現行の特化則や有規則に規定されている適用の除外は、引き続き運用されるということなんですけれども、ここでお伝えしたかったことは、むしろ後者のほうでございまして、リスクアセスメントの結果に応じて事業者が自ら手段を選んで対応していただくというようなことを想定してございます。
以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。
それから、仮称のばく露限界値の話に関しまして、御質問等を頂いています。
まず、アイデアの御提案なんですけど、資料13ページで、リスク評価の判断基準として、ばく露限界値(仮称)を国が設定するとしています。これまでの議論では、この指標の候補として、産業衛生学会の許容濃度やACGIHのTLV-TWAが挙げられています。しかしながら、これらだけでは国のGHS分類3,014物質に足りないことから、補足するためにREACHの導出無毒性量も使用できるようにしたほうがよいと思いますが、どうでしょうか。ということで、どのような議論がされているかも含めて教えていただければと思います。
○植松室長補佐 ばく露限界値の設定に関しては、ワーキンググループのほうで議論を重ねているところでございますけれども、いきなり何百物質も設定できるわけではないので、優先順位を整理しながら対応していくということで考えてございます。それで、まずはこの新しい仕組みが出来上がった後に、まず対象としていく物質としては、現在のリスク評価の対象物質が100から200物質程度あるんですけれども、それらの物質でリスクが少ないことが分かった物質、もしくは既に特化則等に追加された物質以外のリスク評価の対象となりながら、措置が最後まで行き着かなかった物質について優先的に対象として設定していくことを想定しています。そのリスク評価が途中で終わってしまった物質に対して、ばく露限界値を一通り検討した後に、順次、産衛学会の許容濃度やACGIHのTLVが設定されている物質について、年間100から200物質程度を想定していますけれども、順次設定していくということを想定しています。それらの対応が終わった後に、残っている物質を順次対応していくということを考えてございますけれども、具体的に、その後の物質をどういう優先順位をもって検討していくかというのは、今後の検討材料かなというふうに思っておりますので、御提案いただいたようなREACHの導出無毒性量であるとか、また、ほかの国際機関とかの出している、そういった有害性情報等を勘案しながら検討していくのかなというふうに考えてございます。
以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。
それで、本日頂いた御質問の中に、ばく露限界値と許容濃度の違いがよく分からないので教えてください。また、ばく露限界値はどうやって定めるのでしょうか。産業衛生学会に諮問して数値として提案してもらうのでしょうか、という御質問です。
○植松室長補佐 「ばく露限界値」という言葉が混乱を招くという可能性があるということから、これは仮称ということでさせていただいた次第でございますけれども、恐らくここで言っている許容濃度というのは、産衛学会さんのほうが提案しているものだと思いますけれども、産衛学会が提案している許容濃度というのは、その有害性の情報から純粋に引っ張ってきている値、労働者のばく露濃度をこの濃度以下に保ってほしいという、そういう値だというふうに認識してございますけれども、ここで言っている我々が用いている「ばく露限界値(仮称)」というものの扱いに関しては、実際に有害性情報から導かれた許容濃度等も参考にしつつ、実際の現場で、その測定がどこまで可能かとか、そういった実効性も勘案しながら定めていくものというふうに整理してございます。産衛学会に諮問して、数値と提案してもらうということは想定してございません。
以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。
次に進んでいきたいと思います。スライド16ページ、植松さんのスライドですね、16ページ。「2-3.化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達の強化」の中の「ラベル表示等の義務から除外される一般消費者向け製品の範囲の明確化」に関する質問と意見ということです。
まず、通達により「主として一般消費者の生活の用に供するためのもの」の定義に追加される予定の「丸6家庭用品品質表示法に基づく表示がなされているもの、その他一般家庭だけで用いられることを想定しているもの」について、実質的に業務用であっても「家庭用品表示法に基づく表示」がされていれば、「家庭用品品質表示法に基づく表示がなされているもの」に当たり、今の定義に該当して、ラベル表示及びSDS交付義務の対象から除外されるのですか、という質問です。
○植松室長補佐 我々の表現の仕方がちょっと分かりづらい部分もあったかもしれませんけれども、ちょっと質問の趣旨もなかなか理解が難しいところはあるんですけれども、ここの我々がお伝えしたかったのは、家庭用品表示法に基づいて対象とされていて、その家庭用品表示法の法律の範囲で対象とされているものに関しては、家庭用品表示法に基づいて表示をしていただくと。それ以外の部分に関して、労働安全衛生法に基づく表示をしていただくということで、それがきれいに整理できるように、我々としては法令を整備していくということでございますので、一つのものに関して二重に規制がかかることのないように整理をしていくということでございます。
○堀口氏 はい。
消費者庁が関係しているところなんですけれども、この家庭用品品質表示法を所管する消費者庁と解釈について、すり合わせなどを行う何らかの連携した対応は取られたんでしょうか。今後連携した対応を取る具体的な計画はありますか、というところの御質問が来てます。お願いします。
○植松室長補佐 まだ現時点では連携ということはないですけれども、今後、当然、消費者庁とも連携して、具体的な方針を詰めてまいりたいというふうに考えております。
○堀口氏 ありがとうございます。
じゃあ、行きますね。今後、新たに相当数の化学物質がラベル添付、SDS交付及びリスクアセスメントの実施とその結果を受けての措置の義務対象となりますが、その数によっては事業者、とりわけ中小零細規模事業者は対応が困難になると予想されます。例えばSDS作成を外注することについては相応の費用がかかること、外注先とある程度の技術的なコミュニケーションを図る必要があることが必要になりますが、これに対応できるのか。また、ほかの事業者でも同様の対応が同時並行的に進むことから、外注事業者の取合い、SDS作成費用の高騰化も予想されます。政策決定前に、事業者を対象とした影響度の調査が必要だと思いますが、この点について国の考えをお聞かせください。
○植松室長補佐 現場、特に中小零細企業様の対応が困難になることが予想されるということでございますが、我々としても特に注目すべきは、やはりそういった中小零細企業の方々が、しっかりと対応できるような内容にしていくということでございまして、我々がGHS分類をしたものに関しては、皆様の参考となるようにモデルSDS、モデルラベルを全て作成していくということにしてございますので、まずはそういったものを活用いただくということがあるかと思います。それから、中小企業様や零細企業の皆様が活用しやすいように、混合物のSDSの作成が簡易に行えるようなツールの開発ということで、現在、NITEさんのほうでもそういった開発を進めていただいているというふうに聞いておりますので、そういったところともうまく連携しながら、皆様が対応しやすいような支援をしていきたいというふうに考えてございます。
○堀口氏 三柴先生のほうから、こういう中小零細、先ほどの専門家からのサポートにも関係すると思うんですけど、今のは具体的にSDSのラベル作成という話でしたが、先生から何かアドバイスなり、こういうふうな形でやるのが将来的に、例えば有効であると考えられるとか、ほかの国での事例とかでお話しいただけませんか。
○三柴氏 お尋ねありがとうございます。EUでは、中小企業向けにOiRA(オイラ)という仕組みが開発され、業種ごとの特性を踏まえたリスクアセスメントができるようになってきています。そういう制度も参考にしつつ、日本の中小企業でも効き目がありそうな施策の要点を挙げれば、まず罰則なり、ある意味脅威が効いているということですね。それから、分かりやすいこと。それから、その事業者が現に困っている人やお金の問題に応えるという、小規模企業者に長期的なことを言ってもなかなか聞き入れて頂けないので、まず目先の困っている問題に応えるということなどになると思います。ただ、アドバイザーや補助金の準備をしても、それだけではモチベーションにはつながらないので、中小対策では、コンプラの発想を多少外れるところがあっても、現場目線に立って措置していかないといけないということかと思います。
○堀口氏 ありがとうございます。
それで、現場の山口さんのほうからお願いします。
○山口氏 実際に行っている現場としては、具体的にどうすればよいかというところが非常に重要になってきて、法の立てつけが変わりました、自主管理してください、一体どうすればいいんだろう、といったところが一番大きなところかなと思います。そういったところに、こうすればこういう結果が出て、こういうふうに対策すればいいんだよと、それは誰々がやるんだよ、例えば誰々がお金を出して、あるいは人をかけて、そういったところが大体どの方もぱっと分かるような、そういった説明がされたような資料とか、そういったガイドラインというか、そういったものが充実してくると、中小もある程度やれるようになってくるのかなと思います。ただ、一つは、先ほど三柴様の説明の中にあめとむちとか、いろいろあったかと思うんですけれども、基本的に規制が変わるって民間から見ると、むちの部分が変わってくるとしか思わないんですね。じゃあ、これをやったらあめは何だろうというところというのが非常に大事で、そういうところも的確に書いてあると、やはりみんな守りたくなるというか、少しはやってもいいかなというふうに思うというような、そういったところがやっぱり重要になってくるのではないかというふうに私は思います。
○堀口氏 個人的にお尋ねしたいんですけど、あめは何だと思いますか。山口先生。
○山口氏 非常に難しいというか、言っていいのかどうかよく分かりませんけど、私の中であめと思っているのは、一つは、経営側がやろうと思うこと、つまり多分、金銭的に何かメリットが出ることなんじゃないかなというふうに思うんですね。そのやることによって、こういうことは絶対、多分できないと思いますが、例えば税金が少し下がるとか、納める費用が下がると、そういった直接的に見えるもの、そういったものが必要なのかな。あるいは、この企業はちゃんとやっているよということを、どこかの機関が公表してくれることによって、それがその先、例えば銀行の投資とか、そういうのにつながるとか、そういったものがやっぱり一番必要なのかなというふうに思います。
○堀口氏 いわゆる認証マークじゃないですけれども、そういう化学物質の管理がきちんと行き届いている企業というようなところが、そのお墨つきが何か分かるようにされていることによって、また新たな何か、インセンティブを与える何かがあればというような感じですか。
○山口氏 そうですね。
○堀口氏 三柴先生、お願いします。
○三柴氏 アメリカでは、VPPというのですが、そういうインセンティブ制度が取られています。日本の安全プロジェクトの発展版みたいな自主的な管理プログラムがあり、一応、労働監督が緩くなるとか、導入剤、促進剤みたいな目先のメリットがあるんだけれども、結局そこに参加して残っていく人たちというのは、最終的にはその組織の質の向上、仕組みがしっかりして、その経営自体、経営の質が上がっていくというところがモチベーションになっていくということはあります。
○堀口氏 ありがとうございます。皆さん、今日聞いておられる方は御参考にしていただければと思います。
植松さんから、よろしくお願いします。
○植松室長補佐 補足でございますけれども、自律管理に移行する中で、あめと言えるものかわかりませんが、我々として考えているのが、先ほど説明しましたけれども、特化則の部分でございまして、一定の要件を満たした企業様におかれましては、特化則の適用を除外するということで整理してございまして、それで今までの既存のやり方にとらわれないような自律的な管理に移行していただける余地をお渡しするというようなことも一つ、あめと言える部分なのかなというふうにも思いますし、また、先ほどもちょっとお話しいただきましたけれども、表彰制度といいますか、先進的な取組を行っていただいている企業様に対しては、表彰等の制度を創設するということでモチベーションの一助となればというふうに考えてございます。そういったいろいろな制度をこちらがつくったとしても、うまく皆様に伝わらなければ何の意味もないというふうに考えてございますので、その情報の発信方法、発信の在り方なども注意しながら、皆様に丁寧にお伝えしていきたいというふうに考えてございます。
以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。
それで、SDSの再交付について再考をお願いしたいということで、化学物質の情報更新があった際に、SDSの更新を行うことに問題はないですが、過去に遡って交付先に一方的に提供するのは無理があるのではと感じます。少量多品種の化学物質を数多く問合せ先に提供している場合、下手したら同じ企業であっても個人レベルに対する提供となり、その企業内で横展開されているのかや、現在に至るまで使用しているかの情報はありません。定期的に企業の購買窓口に対し製品を提供しているなら、SDS提供者側からの再交付もあり得ますが、もし供給者側からの再交付を義務づけるのであれば、使用者側からも情報提供が必要ではないでしょうかという御質問というか、御意見というか。
植松さん、何か答えられますか。さっき三柴先生のお話の中に、やっぱり双方向性の話がすごく出ていたと思うんですが、何かコメントはありますか。植松さんから、じゃあ。
○植松室長補佐 ここで申し上げたかった趣旨は、情報が古いままに放置しておくと、正しい有害性情報が伝達されないということを懸念して、こういう整理にしてございますので、現場で実際にうまく回るように、使用者であるとか供給側であるとかが双方向で情報共有しながら、常に新しい情報を共有していただきたいという趣旨でございますので、具体的な運用方法については、また別途検討が必要かと思いますけれども、趣旨としてはそういうことでございます。
○堀口氏 先生からお願いします。
○三柴氏 理想的には、まさに双方向、つまり物質を取り扱う事業者側も、ハザードやリスク関連情報を、川上の譲渡提供者や行政との関係で、積極的に提供すると共に取りに行くことが望ましい。行政に向けた情報提供の基本的な枠組みは、もう法に定めがありますけれども。ただ、実際、事業者の能力、キャパでどこまでできるかとか、あるいはそもそもハザードやリスクに関する情報や知識を持っていなければ、どこへ向けて何をやるべきかも分からないなどの限界もあるので、そこはステップ・バイ・ステップだろうと思っております。
○堀口氏 ありがとうございます。
次に行きます。事業者内で小分け容器に絵表示を掲載しておりますが、各メーカーで作成・発行されておられるSDSで、GHS絵表示の順番がメーカーによっては違うことがございますが、法令などでGHS絵表示の掲載する順番は決まっているのでしょうか。また、もし順番が決まっているようでしたら、それは危害有害性項目のどの順番に従って決まっておりますでしょうか。よろしくお願いいたします。という、植松さんからお願いできますか。
○植松室長補佐 絵表示を掲載する順番までは決まっていないですね。ただ、絵表示に関する内容に関しては整理してございますし、JISのほうでも記載すべき項目というものは整理してございますので、要するに情報の順番ではなく、情報の内容が重要かなというふうに考えております。
○堀口氏 絵表示はたしか、順番は決まってないんですよね。何か薬は、順番で裁判に負けちゃったような気がしたんですが。順番で、私たちは先に書いてあるものほど重要だというふうに認識することが心理学の研究で分かっているので、「イレッサ」の裁判か何かで、重篤な副作用が前のほうに書いてなかったということで言われたことがあるので、ちょっと別に順番は決まってないにしろ、頻度だったり、重篤度は考慮して書いてるほうが親切かなと思います。
先生、裁判、私、言っちゃったけど、いいですかね。
○三柴氏 すみません。その裁判例は知らないのですけども、ただ、一般に司法判断というのは1つの要素だけでは結論を出さない。ほかにもいろいろできてなかった点が重なって、責任を負わせたのではないかとは思います。とはいえ、契約約款の法的効力などでも同じことが言えますが、重要な内容を含むものについては、分かりにくく書くと隠蔽効果が働いてしまいますので、分かりやすく伝えるべきだというようなことは、こうした政策でも配慮すべきであろうとは思います。
○堀口氏 ありがとうございます。
山口さんのほうで、何か企業とかで、そういうところまで何か考えたりしているとかあるんですか。
○山口氏 GHSって9個しか絵がないんですね。9個全部並ぶことってないんですけれども、なので、横に三つ、四つ並んでいるのが、順番がどうのこうのというのを気にしたことが我々はないというのが現実なんです。実際には、その区分の高いところ、有害性の高いところと低いところで絵が違います。なので、その順番に左から大体並べているというか、気にしているというか、そういう順番でもう並べるようにしてしまっているという感じですかね。
○堀口氏 なるほど。ありがとうございます。御参考にしていただければと思います。
次、行きます。リスクアセスメント結果に応じて、工学的制御の手法などを事業者により選択できるようになるとのことですが、移行期間までの間、既に自主的にリスクアセスメントを実施し、規制に定められた局所排気装置の仕様を満たさないが、性能上は有機溶剤などを適切に除去し、管理区分なども適切に管理されている場合、それは安全配慮義務に違反しているなどの解釈となるのでしょうか。また、それらの手法は労働安全衛生法法令に違反しているとみなされるのでしょうか。
植松さん。
○植松室長補佐 これは非常に微妙なところですけれども、法律に違反している状況かどうかというのは難しいですが、実際は本当に労働者の保護という観点から、法令遵守されているかはもちろん重要ですけれども、実際その現場がしっかりと対応できているかというのは、現場を見てみないと分からないというところもございますので、もし実際の状況について確認したいということでございましたら、監督署等に一度御相談いただいて、実際、職員が現場を見に行って、これであれば、実態上問題ないというような判断もあろうかと思いますので、そういった対応をまずお願いするのかなというふうに思います。
○堀口氏 何か現場それぞれだと思われるので、ぜひ労働基準監督署のほうに御相談されるとよいのではないかと思われます。
どうぞ。
○三柴氏 裁判例では、まず、衛生基準ではっきり書いてあることは、仮に現場で不要だなと思っても、民事上も刑事上もやらないと駄目だとされています。その理由として、そうした基準は定型的にリスクを特定しているからだという趣旨が述べられてます。その上で、そうした基準以上の措置をやるべきかについては、まさに現場の事情に応じて決まってくる。事情に応じて、人的措置と物的措置をやらないといけない。特に、ヒヤリ・ハットとか、以前に似たような災害が起きているということがあったら、再発防止策を打ってないと、少なくとも民事上の過失責任アウトというふうにされるのが通例です。
○堀口氏 ありがとうございました。法律の専門家がいるといいですね。やりやすいです。すみません、ありがとうございます。
植松さんへの質問で、資料14ページになります。「国によるGHS分類の結果、危険性・有害性の区分がある全ての物質」という部分についてですが、各事業者がおのおの実施した有害性試験よりも危険有害性がつく場合もあろうかと思います。国によるGHS分類結果がなされるまでの期間、労働者は危険有害性のある化学物質にさらされる危険が、リスクがあると思いますが、その辺りはどのように考えられますか。なお、努力義務であれば、様子見する企業が残念ながら大半なのではないかと思います。
三柴先生、努力義務ってどんなふうに考えたらいいんですかね。
○三柴氏 努力義務は、民事裁判との関係では、かなり義務とされることが多いですね。ただし、そのケースによる。まさにケースによって、要するにこの現場の状況だったら、何か手を打たなきゃいけないでしょうというのを放置していると、努力義務規定があるからというふうに後づけ的に説明されるということが多いので、結局そのトラブルの筋による。スライドで最初のほうにお伝えしたとおり、筋によるということになります。あと、行政的にはもちろん監督指導の指導票は出せるとか、あるいは業界との調整の根拠にされたり、予算付けの根拠にされたり、義務かへの布石にされたりとか、いろんな味わいがあるということかと思います。
○堀口氏 植松さん、どうぞ。
○植松室長補佐 すみません、お時間頂きまして。
国によるGHS分類結果がなされるまでの期間、労働者は危険有害性のある化学物質にさらされるリスクはあると思うということですけど、まさにここの考え方を変えたいというところでございまして、国が何もしていないからといって、事業者の皆さんが何もしなくていいというようなことではなくて、まさに事業者自ら積極的に有害性情報を収集していただいて、必要な措置を講じていただくような、そういう考え方に変えていきたいということでございまして、実際に仕組みが変わるのはもうちょっと先の話ですけれども、そういった考え方に、少しずつ皆様も頭の中を変えていただいて、労働者を守るために必要なことというのを対応していただきたいというふうに考えてございます。
○堀口氏 ありがとうございます。今のお話もそうだと思うんですけど、先ほど三柴先生がスライドにきちんと示していただいた「裁判所は『事件の筋』をみている」という、「事件の筋」、赤色になっているので、皆さん、頭に入れたほうがいいかなと思うんですが。私も研究者の立場ですが、理系でいると、私たちはどっちかというと、三柴先生の資料にある科学的な根拠のほうについつい頭を寄せてしまって、科学的根拠があるからいいじゃないかというような議論をしがちなんですが、民事の裁判になったときには、そうじゃなくて、事件の筋を見ているというので、ここの視点がないと全体的なところの判断というか、そういうのも企業側も難しいのかなというふうに今、話を聞いていて思いました。ありがとうございます。
それから、科学的な専門性を有さない中小企業でもリスクアセスメントの実施を可能にするツール開発の必要性は認めますが、リスクアセスメントの内容のきちんとした理解も必要だと思います。リスクアセスメントの知識が少ない事業者への理解をどのような仕組みで取り組もうと国は考えられておりますか、という御質問です。
○植松室長補佐 リスクアセスメントの知識が少ない事業者への理解を、どのような仕組みで取り組もうかということですけれども、やはり専門的な人材を配置・育成していくことで、皆様がこれから自律的に管理していただくという仕組みに変わったときに、じゃあ、どうしていいかという疑問を持たれた際に、きっちりと専門的な知見を持った方が相談に乗れるような、そういった仕組みをまず整理していくことが必要かなというふうに考えています。知識がないから、もう我々は何もしないということではなくて、知識がないからこそ、自らしっかりと情報を収集していくというような考え方を皆様に少しずつ理解していただきながら、皆様の自主性に訴えかけていきたいというふうに考えてございます。
以上です。
○堀口氏 科学的な専門性を有さなくても、商売ができるということなんですよね。化学物質を扱っていても。
山口さん、コメントありますか。
○山口氏 化学的な専門性がなくても商売ができるかという質問に対しては、できると思います。例えば、全然関係ないですけれども食品の世界で、普通のお店で置いてあるものの野菜だとかジュースだとか、その専門性はなくても販売できますよね。ですから、取扱いそのものはできます。ただ、化学の世界の場合は、取り扱う際にSDSのやり取りをするとか、そういったものがありますので、ある程度やはり専門性がないと、全くないから私たちやれませんとか、そういうことではないのではないかなというふうには思います。
○堀口氏 食品に比べると、やっぱりリスクが非常にあるものをその労働の現場では扱っているので、やはり専門的な知識は必要であり、そのサポートはやっぱり必要ということなんですね。
○山口氏 サポートは必要だと思いますし、その聞きに行けるところということが、やはり充実していることが重要なのではないかなというふうに思います。
○堀口氏 それを官庁に聞きに行くと、いまいち専門性のある人が少ないですって、さっき三柴先生に言われたんですけど、そういうことですかね。
○山口氏 多分、内容によると思うんですね。労働安全の世界の危険性とか爆発性とか、そういうことに関しては、やはりかなりいらっしゃると思うんですが、今ここで議論してるのは化学の話ですよね。その化学の有害性となると、極端に減るんですね。そこの部分なんじゃないかと思うんですね。企業の中でも一緒です。やはり昔からある製造現場、事業所ですね。事業所に環境安全という部課が、大抵の会社にあるかと思いますが、その方々の専門性というのは、やはり労働安全という昔ながらのやつをやっていて、化学物質管理のような話じゃないんですね。ですから、そういう有害性をメインとしたような化学物質管理に関してというのは、知識を持った人は、どの企業に行ってもやはり少ないというのも事実なんじゃないかなというふうに思います。
○堀口氏 ありがとうございます。貴重な人材がどれだけいるかも、きちんと把握できるといいですね。
次の質問に行きます。2月1日に労働政策審議会安全衛生分科会に報告されたのは、検討会の中間取りまとめの内容であり、法制化される制度の具体的な内容にまでは言及されていませんでした。法令の条項に関わる内容については、今後の検討会やリスクアセスメントワーキンググループでの検討結果が反映されると考えてよろしいでしょうか。
○植松室長補佐 はい、それはそのように理解していただければと思います。我々はそのために検討会やワーキングを開催してございますので、その内容を適切に反映していきたいというふうに思います。
○堀口氏 それから、学校教育に関しての御質問がありました。調べてみると、古くは第9次防――と書いてあるんですけど、の頃から、社会に出る前に学校で労働安全衛生教育をすべき的な内容が上がっていますが、依然として実現する方向に進みません。学校を所管する文部科学省は全く興味がないようです。このような状況が続いていることを踏まえて、学校教育など早い段階からのラベル教育をどのように実現していくのか、ぜひお聞かせください。
植松さん、どうですか。
○植松室長補佐 9次防は第9次労働災害防止計画だと思いますけれども、その頃から全然状況が変わってないのではないかという御指摘だと思いますけれども、文部科学省さんに対して我々のアプローチが足りないのか、それとも文部科学省、我々が伝えていることに対してうまく御理解いただけてないのかというところでございますけれども、またこういうタイミングで学校教育等、早い段階からのラベル教育の必要性というものが、やはりいろんな方から御指摘いただいているという現状を受け止めて、これから過去に遡ることはできませんので、我々として、また改めて文部科学省さんと連携を図りつつ、前に進んでいくのかなというふうに思います。
○堀口氏 副読本に取り上げてもらう話と教科書に取り上げてもらうのとはちょっとハードルが違うので、副読本は意外に行けるんじゃないかなと思います。で、経産省さんは、業界団体さんと一緒に文科省に陳情に行かれたんですよ。なので、このリスクコミュニケーションの場でもいろいろな業界の団体の方が検討会にも入っておられますし、そういう方々と報告書なりを一緒に持っていくというのがいいんじゃないかなと思うんですけど。業界団体さんのほうとか、こういう学校教育の話は何かあったりするんですか。
○山口氏 すみません、業界団体そのものとして団体として活動していたかということ、分からないんですけど、企業としては、やはりそういう若い頃から化学物質教育、あるいは法的な内容を理解する素地をつくってもらいたいということは言ってきてるんではないかというふうに思ってます。現実に我々は、そういうことを常に言っているつもりではあるんですけれども。伝わっているかどうかは別として。
○堀口氏 環境省のほうは、化学物質のことがあまりやっぱり伝わってないというところで、今いろいろ言われているところ。化学物質を正しく理解してもらうための教材とかもあまりなくて、ちょっと、それもやっぱり同じように皆さんから御指摘をいただいているところなんですが。
○山口氏 業界としてというのはよく分かりませんけど、企業として、いろんな企業、個別の企業として子ども向けに化学物質ってこんなものですよとか、危険性だけではなく、有効性も全部含めてなんですけど、そういったような小さな冊子、パンフレットよりもページ数のあるようなもの、そういうものを出している企業は幾つかあるかと思います。それがどのように配られるかというと、会社に工場見学みたいに来てもらったときに配るぐらいの感覚での作成でしかなくて、文科省とか教育機関にそのものを、これ使ってくださいとか、そういったところまでの活動をしているところというのは、すみません、ちょっと私、聞いたことがないんですけれども、そういうことも必要なのかなということは思います。ただ、今回のGHSに関しては国際的に共通的なものなので、文科省だけではなく、我々工業会からも配っていくというのは、施策としては重要なことなのかなというふうには思います。
SDGsってありますよね。SDGsはすごい今もう有名で、皆さん、大体の方は分かっているかと思います。バッジをつけている方もいらっしゃいますけれども、あれで化学がどこに入るんだろうというのを探すのも結構大変で、化学、意外と出てこないんですね。なので、ああいうところにちゃんと入れてもらうというのも必要だと思いますし、SDGsに合わせて、こんなマークもあるよ、こんなのもあるよという連携したような組合せ、GHSだけではなく、ほかにも多分あると思いますので、ほかの業界にも。そういうものも一緒にやっていくというのもいいのかなというふうに思います。
○堀口氏 家庭用品とかになれば、先ほどのラベルの話で、家庭科とかも関係してくるんじゃないですか、洗剤とか。なので、割と化学物質は広範囲にいろんなものに使われているので、コミットできる教科があるのかなという印象があります。ぜひ頑張ってください。頑張っていても難しいんですよね。痛い目にたくさん遭ってるので。
大体、今のところで御質問をいただいていたのを処理できたのですが、何か皆さん、書き込みませんか。大丈夫ですか。今までの議論を踏まえた上で、何か御質問があれば書き込んでいただいて結構なんですが、いかがでしょうか。ちょっと書き込んでいただくまでにおしゃべりしておきます。
今日、このリスクコミュニケーションで法律の専門家が来たのって、10年以上やってて初めてなんですよ。なので、労働安全衛生法の全体のところも勉強することができましたし、今日御参加していただいている企業の方々含め、参加者の方々にはすごく勉強になったと思うんですけれども、三柴先生のほうから、こういうところはぜひ押さえておいてねというようなポイントってありますか。
○三柴氏 これは国レベルでも個々の事業所レベルでも似ている、同じだと思うんですけれども、結局、今日もお伝えしましたように、そもそも、やっぱり安全衛生って、再発防止策がどうしてもメインというのはあって、まず災害やヒヤリハットですね。先行的なものが起きる、起きないほうがいいんですけども、そこをまず鋭敏にちゃんと嗅ぎ取る。あるいは、そのデータをきちっと蓄積する。さらに、それを横展開するというのは基本ですよね。だから、業界団体でも、日化協さんとかもそうだと思うんですけど、ちゃんと業界のデータをまず蓄積するということは非常に意義があるし、それを活用していただくことも非常に意義があると思います。例えば、鉄鋼業界などでも、同じ業界の中でどこかで災害が起きたらすぐに情報を共有するような取り組みをやってきた。真面目な業界は、そういう、まさにリスクというか、災害のコミュニケーションですね。それをかなりやられている。これは重要なことだと思います。
他方で、それをブースターとイメージ的には言いたいんですけども、大ごとにして世論を喚起する政治家とかマスコミ報道とか、そういうものも、実はブームをつくるには重要で、そのためにきちっとマスコミとコミュニケーションを取っておくとか。私も、個人的に一杯やる記者とかがいます。そうすると、書きたいことがあったときに、お願いねって頼めたりするわけです。その記事が人目を引く内容ならば、他の社も書いてくれたりするんですよね。だから、その情報の発信の仕方、ウェブサイトでも、取り上げてもらえるようなものをちゃんと書くということも重要だと思います。法律家らしくないことを申し上げてますけれども、実を言うと、法制度の問題というのも、ちゃんと人を動かそう、物を動かそうとなると、そういうことまで考えておかないといけないとは思います。
○堀口氏 ありがとうございます。普段からのコミュニケーションがとても大事ということですよね。
○三柴氏 おっしゃるとおりだと思います。結局、安全配慮義務を履行するために何をすべきかといったら、本質的にはコミュニケーションの積み重ねなんだと思います。だから、労災が起きて、さらに裁判まで行って、判決まで出て、我々の目に留まるというものは、分析すると、多分、五重ぐらいコミュニケーションを失敗してます。
○堀口氏 そんなに失敗してますか。
○三柴氏 はい。そもそも災害が起きている時点で、当然コミュニケーションに失敗している。その後、それを丸く収める段階で失敗している。それが訴訟に行った後も失敗して、和解もできず、それで我々の目に留まると。
○堀口氏 なるほど。皆さん、日常が大事という。ごく当たり前ですけれども。分かりました。ありがとうございます。
質問がぱらぱらやってきましたので読み上げていきます。今日紹介いただいた法改正などの改正は夏頃とのことでしたが、施行の具体的なスケジュールは定まっていますでしょうか。
植松さん、お願いします。
○植松室長補佐 まだ、これは定まっていませんので、順次、スケジュール等に関しては、情報を早め早めに皆さんに共有できるようにしたいというふうに思います。
○堀口氏 あと、学校での教育をSDGsと絡めるのは賛成です。職業講話で安全衛生の話をさせていただくこともあります。活動されておられるということですね。新年度からの溶接アークが特化物にという情報の伝達が遅かったと思います。新しい情報が分かりやすいプラットフォームを望みますと。ばく露限界値(仮称)の値が決まった対象物質に決まった場合の測定方法は簡易なものであってほしいです。作業環境測定レベルの測定方法では対応できなさそうに感じます。持ち運び可能な測定器でぱっと測定できるようなものであってほしいです、という測定の話が出ました。
○植松室長補佐 現時点で我々が想定していることですけれども、基本的には実測での測定値とばく露限界値の比較ということを考えてございますけれども、やはり実際に測定できるように、我々としても順次測定方法の開発というものは行っていきたいというふうに考えてございますし、どうしても測定できないような場面も想定されますので、そういった場合には数理モデル等を活用していただいて、そういう値を用いてばく露限界値との比較ということを行っていただくということを想定してございます。
○堀口氏 結構、大変そうですね。
山口さん、どういうふうに現場としては、その値が決まって、例えば扱っている物質の数にもよるとは思うんですけれども、何か実際回していくというか、定例的に回っていくためには結構時間がかかるとかって思われますか。
○山口氏 これまでも特化則なんかで測定していたような会社は、同じような内容のことをどれぐらいの頻度でやるかということを検討するだけで済むかと思いますけど、今回、数が非常に増えますので、今まで該当していなかった会社とかにも、多く適用されてくるのかなと思います。そういう会社の場合は、一からどうやってやればいいんだろうというところから考えなければいけないかと思うので、比較的大変なのかなと思います。
あと、今までやってきた会社も数が今度増えますから、700から3,000とかに増えていくと、どうやってやっていこうかなというのと、あと、測定するときの仕方が違うものが幾つあるのだろうというところによって測定時間とか、そういうところでも労働時間が変わってきますので、その辺でちょっと煩雑になってきて、大変になっていくのかなというふうには思いますが、対応できないことはないと思いますけれども。
○堀口氏 何か対応できないというふうになると、今、日本ってネガティブリストじゃないですか。ポジティブリストみたいにしてしまうと、もう本当に扱えるものが少なくなってしまうから、それを避けると言ったら変ですけど、なるべくその企業さんの活動が活発にできるようにというところで、今の「(仮称)」ができている、「ばく露限界値(仮称)」になっているのかなという印象もあるんですけれども。その測定がものすごく多くなるとか、そういうような負荷がかかることによって、要するに化学物質を割と狭めると言ったら変ですけれども、していくようなことというのも企業さんでは起こり得る話なんですかね。
○山口氏 その測定を行わなければいけないので、この作業あるいはこの生産をやめるとか、多分、そういうことですかね。それは多分ないと思いますね。要は、我々の企業の中で必要とされることに対して、法的にやらなければいけないというふうに決まったことに対しては、通常はやっていくと思います。ただ、その負荷が非常に大きいと。何か、どうやればいいんだろうも含めてですけれども、そういった場合は確かにあり得るのかもしれませんが、私自体は、そこまでのことをこの安衛法の中では求められると思ってないので。この法律のいいところ、いいところという言い方は変ですね。化学の世界の法律って2パターンありまして、一つのパターンは労働安全衛生法のほうなんですけれども、法律の守らなければいけないことが決まりますが、これに向かって頑張ろうという、そういうパターンの法律なので、100%守らないと、すぐそれが違反で、だからあなたたち、これ生産しちゃいけないよというふうにはならないんですね。片や、化学物質の法律には、ポジティブリストみたいなものもそうなんですけれども、違反した、即生産停止というような、そういった法令もあります。ですから、この二パターンのやつがありますけど、今回の労働安全衛生法の場合は前者なので、努力をしていくことによって生産が続けられるということになりますので、義務活動として、やりたいのであるのならば、多分対応していくということになるんだろうと思います。
○堀口氏 ありがとうございます。
三柴先生、何か付け加えることはありますか。
○三柴氏 今、山口先生のおっしゃった要素は、安衛法は一応、両方含んではおります。要は、働きかけの部分と、強制の部分を両方含んではいます。その上で、話を元に戻して、中小企業で、どうやって今行われていない化学物質の自主管理を進めるかといったときに、働きかけの面から考えると、例えば中小企業の経営者というのは、やっぱりお金と人の工面でとても苦労しておられるから、だから、会計士とか税理士との連携する施策を考えるとか、あるいは銀行がこういう措置取ってないと、お金を貸さないようにしちゃうとか、そこまできつい施策を取れば、多分回ると思うんですよ。あとは、実は中小企業への働きかけについて、さっき言い忘れたんですけど、やっぱり個々の事業者によって全然考え方が違う、哲学が違っていて、顧問先の多い社労士さんなどは、そこにかなり寄り添っていることが多く、それで商売ができているとか、顧問先を獲得しているというのもあるので、社労士さんの活用も有効かと思いますけども、やっぱり限られた行政資源をうまく回すということを考えると、さっきの山口先生の話じゃないですけれども、やっぱりお金のインセンティブのほうが話が早いかもしれない。そういう意味では、税理士、公認会計士、それから金融ですね。こことの連携というのはあり得るかと思います。
以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。社労士さんの話は先生の調査結果にも結構な割合で出てきていたと思います。ありがとうございます。
質問に行きます。施行時期ですが、その前にパブコメの機会はありますよねという御質問です。
○植松室長補佐 あります。
○堀口氏 御確認だったかと思います。
化学物質に係る本日の管理政策について、工業協会などの参加の会社については情報が配信できますが(それでも100%とはいきませんが)、どこへも所属しない事業者への政策の徹底はどのような仕組みなのでしょうか、という御質問です。
○植松室長補佐 一つには、我々の情報発信の仕方ということですけれども、こういったリスクコミュニケーションといった場を設けることによって、いろんな工業協会に属してないような方々にも御参加いただいて、こういうふうに情報交換、情報共有できると思いますし、それ以外にも、我々としては検討会やワーキングでやっている事項については、その資料であるとか議事録であるとかも積極的に公開しているところでございますし、あらゆる機会を捉えて、そういった情報を発信しているということを丁寧にお伝えしていくのかなというふうに考えております。
○堀口氏 ありがとうございます。
それでは、次の質問に行きます。日本のGHS分類は、JIS規格を引用しておりますが、この内容を法令の中で明記する(欧州CLP規則のような内容として)ことを行っていないのは、どのような理由があるのでしょうか。企業にとっては周知のため、及び規格改定の度にJIS規格を購入するのは負担になると思いますが、いかがお考えでしょうか。
○植松室長補佐 すみません、ちょっと明確な理由を僕は承知をしてないのですが、もし事情をご存じの方がいらっしゃれば。
○堀口氏 山口さんから。
○山口氏 私が前に、以前にこのGHSが導入されたとき、あとJIS化をするときに、その中で聞いた話で、こういう官民との話合いの中で聞いた話としては、今回のGHSというのは2年に1回どんどん変わっていくんですね。法律って、そんなに2年に1回変えたりとかできないですよね。なので法には合わないねというのがもともとありました。JISの場合は、今度は4年だか5年に1回なんですかね、定期的に変えていくと。ちょっと期間が長いけれども、2年に1回ではなくて、一つ飛ばしでやっても、毎回毎回GHSが変わっていくのはそんなに大きく変わるわけではないので、第何版から第何版、第2版から第4版のように飛ばしながらやっていくのに、ちょうど見直しもJISの場合は定期的に行うのでいいのではないかということと、あと、一つの法律の中に入れられない内容であったということから、あと、いろんな省庁に関わる内容であるということから、やはりJISのほうがいいのではないかという議論があったかというふうに記憶しております。
○堀口氏 植松さん、どうぞ。
○植松室長補佐 ありがとうございます。
○堀口氏 そうですね。実際、2年に一回とかだと法律で対応というのは、ちょっと無理ですね。介護保険、3年に一回で、ひいひい言ってますし。分かります。
じゃあ、次の質問です。ばく露限界値(仮称)と比較するための測定は、一般の人はできるのでしょうか。作業環境測定士のような資格者に頼むのが確実なのでしょうが、衛生管理者でも可能と考えてよろしいのでしょうか。
○植松室長補佐 この部分は、まだちょっと整理が必要かというふうに考えています。特定の資格を有している方にお願いすることで、その実測値の信頼性を高めるということもございますけれども、他方で、測定が難しい場合には、数理モデル等の活用というものもよしとするように整理にしてございますので、そういった整理の中でどういった形が望ましいかというのは、今後整理していきたいというふうに思います。
○堀口氏 ありがとうございます。
これで今のところ質問全部出払いました。全部読み上げました。
それでは、先生方から一言ずつ頂いていこうかと思いますが。じゃあ、山口さんからお願いします。
○山口氏 このような場に呼んでいただきまして、ありがとうございました。企業というか、企業といっても一企業の人間でしかないわけなんですけれども、やはり我々としては、自律的な管理というのは非常にやっぱり難しいだろうと。何をやっていいのか分からないというところが、多分、社内にも今後出てくるのかなというふうに思いますので、こうやったらいいよねというような、そういった例みたいなものを幾つも出していただけると、そのうちどれを選ぶとうちとしてはやりやすいんだろうといったような選択もできて、法を守るだけではなくて、今後、こういう管理をしていこうという例、そういったやり方、方法が身につくということもありますので、ぜひいろんなパターンのリスクアセスメントのやり方というのを、こうすると効率的にできるよねと、お金がかからないよねと、お金をかけるんだったらこういうやり方もあるけどみたいな何パターンかの例を出してつくり上げて、それを公表していっていただきたいというふうに思いますというのが一番ですかね。
あと、最初にも言いましたけど、やはり法改正イコール厳しくなるというのが民間のイメージですので、経過措置等も当然あるかと思うんですけれども、あめの部分ですね。むちだけではなくて、あめの部分というのを、先ほど植松様のほうから幾つか説明がございましたけれども、もっと現場にアピールできるあめだけではなくて、経営側にもアピールできるあめを何かつくっていただけるとうれしいかなというふうに、すみません、今日の流れから言わせていただきます。ありがとうございました。
○堀口氏 ありがとうございます。リスクアセスメントの事例を多く紹介していただきたいということなので、例えばこういう意見交換会もちょっと幾つかの事例を発表していただいて、聞いている方からの何か取組についての苦労した点とか、工夫した点とかが双方向でできると、ちょっと理解が深まる、もっと理解が深まるかなという、事例があった上でやり取りがあれば理解が深まるかなという気が今、山口さんのお話を聞いていて思いました。まずは事例が大事、必要。
○山口氏 もともと地域のリスクアセスメントって、安全なんかではやってるんですよね。
○堀口氏 そうですよね。
○山口氏 化学物質でやってないというだけで。なので、化学物質でどういった事例を出しながら皆さんできるのかというのが、ちょっとよく分からないんです。事故が起こって、それを改善するという事例集みたいな、大体そういうパターンで作られているかと思うんですが、今回の場合はそうではなくて、こうしたら最初から粉じんの量が減らせるよとか、例えばそういったようなところになりますので、それがみんなでやり取りをしながら出てくるものなのかどうかは、ちょっと私はよく分からないんですけれども、一つの方法としてはいいかと思います。
○堀口氏 ありがとうございます。
それでは、三柴先生、お願いします。
○三柴氏 我々は、文明社会に生きていますので、法制度論者としても、化学物質とはよい付き合いをしていくしかないと思います。もっとも、今、改めて求められる認識というのは、本来はよい付き合いをしたい、この動物は、付き合い方を間違えると、かみ殺されることもあるということなんだと思うんですね。そういう意味では、単に危害防止基準を最低限守るというだけではなくて、法令をその取り組むべき措置の参考にする、教科書として見るということが、改めて求められるのかと。実際に、衛生基準で求められている措置は、さほどバリエーションがあるわけではなく、作業環境測定、折々の個人ばく露測定、特殊健診、密閉、局排、プッシュプル、保護具等々限られているので、測定や保護具を中心に、やれるところからやっていく。その際に、一種の失敗学とも言える民事裁判情報を踏まえることは、有効だろうと思います。
○堀口氏 ありがとうございます。なかなか法律の専門家が来てくださることはないので、しっかり覚えて帰りたいと思います。
それでは、植松さんから一言。
○植松室長補佐 今日も皆様、お時間頂きまして、どうもありがとうございました。我々としては、すごく大きな転換期を迎えているというふうに認識しておりまして、これまでの仕組みから新しい仕組みへと、かなりがらっと変わるんですけれども、そういった中で今日、こういうふうに皆さんに非常に高い関心を持っていただいているということを改めて認識しましたので、現場を置き去りにしないような形で、丁寧に制度設計もそうですけれども、実際の施行にまでつなげていきたいというふうに思っております。途中、いろいろ御意見をいただきましたけれども、我々としても引き続き丁寧に情報を発信していきたいと思いますので、皆様におかれましても情報収集する姿勢というものを、これまで同様に保っていただきたいというふうに思います。
本日はどうもありがとうございました。
○堀口氏 ありがとうございます。ぜひ今日出てきた御意見なども、検討会とワーキンググループのほうに情報提供していただいて、共有して、さらなる議論を深めていただければというふうに思います。
それでは、時間、もうちょっとありますけれども、本日はこれにて終了させていただきたいと思います。どうも皆さん、ありがとうございました。お疲れさまでした。
じゃあ、事務局、お願いします。
○事務局 先生方、本日はどうもありがとうございました。
御参加の皆様、御静聴くださりありがとうございました。
今後のリスクコミュニケーション活動の参考のため、事後アンケートを実施させていただきます。当会終了後の画面表示のほか、お申込み者様のメールアドレス宛にアンケート入力用のURLを送信させていただきますので、御協力くださいますようお願い申し上げます。
以上で、令和2年度第2回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを終了いたします。皆様、御参加いただき、誠にありがとうございました。
 

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