2021年2月24日(水曜日)
9時48分~10時07分
於:記者会見室

冒頭発言

特になし。

質疑応答

福島第一原発

Q:東京電力が、福島第一原発3号機に設置した地震計について、故障を把握しながらも修理せず放置していたため、今月13日の地震データが記録できなかったと、地震後1週間以上たってから明らかにしました。東電は信頼の揺らぐ事案の発覚が続いていますが、この現状をどうお考えでしょうか。

A:事故炉であります1号機から4号機において、地震の事故炉への影響を把握するために試験的に地震計を設置することとし、昨年3月に比較的線量の低かった3号機に無線型の簡易地震計2台を設置をしていました。しかしながら、事故炉のこれら2台の地震計は、1台は昨年7月の大雨の際に水没により故障したということ。もう1台は昨年10月にノイズが入るようになっており、ノイズの原因究明や代替機の調達に向けた検討に時間を要していたところ、2月13日当日には稼働していなかったと聞いております。

これらの地震計は、計測、報告を義務づけられているものではありませんけれども、原子炉建屋への地震の影響を丁寧に把握することは重要であり、早急に復旧すべきであったと考えておりまして、誠に遺憾であると思っております。

これまでも繰り返し申し上げていますが、地震の発生後、時々刻々と状況が変化していく中で、地元を初めとする国民の皆様を不安にさせることのないように対策に万全を期し、作業を安全に進めるとともに、それに伴う情報発信をしっかりと行っていくことが非常に重要だと思っております。この地震後の一連の情報発信につきましても、なかなかそういった点に至っていない部分もあると思い、私どもも注意をしているところであります。

こうした点を踏まえて、東京電力に対して不十分な対応の改善と地元への丁寧な説明や情報発信について不断の見直しを行うよう改めて指示をいたしました。今後東京電力がしっかり対応していくよう、原子力事業、そして福島の復興を所管する経済産業省として指導をしてまいりたいと思っております。

なお、福島第一原発における揺れを観測する地震計は、事故炉ではない5号機と6号機にも設置をされております。これらは今回の地震においても正常に作動していたと承知をしているところであります。私からは以上です。

原子力事業者

Q:幹事社さんの質問に関連してなんですけれども、大臣はこれまで原発の再稼働を加速することで失われた原子力の信頼回復を進めていくというような姿勢を示されていますけれども、一方で関西電力の幹部の巨額の金品受領問題であったりとか、先般の東京電力柏崎刈羽原発の中央制御室への社員の不正入構だとか、原子力事業者自らが国民の信頼を裏切るような行為を重ねている現状があると思います。

大臣の目から御覧になって、今の原子力事業者は信頼に足るとお考えでしょうか。
今の現状のまま原発の活用を進めていくことに、現実に国民から理解や支持を得られるとお考えでしょうか、お考えをお願いいたします。

A: 冒頭お話のありました再稼働を進めること、加速することによって信頼を得ていくということは、一つとしては正解なんですけれども、それは技術的な面でという意味で私はいつも申し上げております。そして、あとは国民の信頼、立地地域住民の信頼を取り戻すために事業者にはしっかり努力をしていただきたいという、この三つの信頼が戻って、初めて原子力の信頼が戻ると私は思っております。

そういった中での今回の事案ということでありまして、原子力の事業の運営は御地元や国民の理解が不可欠であるということは言うまでもありません。御心配をおかけすることが続くようでは、信頼を得ることはできないということであります。様々な問題が生じる中で信頼を獲得するためには、事業者として再発防止に徹底して取り組む姿を示していくほかに道はないと思っております。こうした認識の下、どの事業者においても一層の緊張感を持ち、事業の運営に当たっていただきたいと思っております。

特にやっぱり立地地域の皆さんとは、例えば今までも事業を続けてきた、休止しているものもある、動いているものもある、そういった中で地元との信頼関係というのは情報をしっかり透明化すること、オープンにして出すこと、そしてリスクコミュニケーションもしっかりとすることだと思っておりますので、さらに関西電力、また東電、また不祥事があったり、またこういう報告の不備があったようなところについてはしっかりと指導をしてまいりたいと思っております。

脱炭素電源

Q:大臣は22日の衆院予算委員会で、自民党の額賀委員の質問に対して、脱炭素電源の投資促進に向けて投資を行う事業者に長期的な予見可能性を付与する制度の在り方について、スピード感を持って検討してまいりたいと答弁されました。現在、経産省の持続可能な電源システム構築小委員会で議論されている電力投資の確保に関する制度のことでよろしいでしょうか。

また、現状で実用化されている脱炭素電源というと、支援の対象になる可能性があるのは原発ぐらいかと思いますけれども、今後検討される新制度の支援対象に原発を含める考えはありますでしょうか。

A:安定供給と、そして2050年のカーボンニュートラルを目指して進めていくということです。特にやっぱりこの途上で安定供給が損なわれるようなことがあってはよくないという中で様々検討をしているわけであります。

脱炭素電源の投資促進とは、2050年のカーボンニュートラルを実現していくためには電源の脱炭素化が大前提だということなんですね。ですから、そのためには再エネ、原子力も入ります。CCS付きの火力も入ります。水素・アンモニアを活用した発電というものも入ってまいります。あらゆる選択肢を追求することが重要ということで、イノベーションをしていく、そしてそれを実用、実装化していく中で、そういった制度が必要だということで、そういう認識に基づくもので発言をさせていただきました。

今般の電力需給逼迫では火力発電所等が活躍したものの、発電所の設備年齢は高経年化しているということであります。新規投資も停滞をしている。持続的な電力の安定供給を確保しつつ、2050年カーボンニュートラルを実現していくためには、老朽電源に依存し続けることは困難であることから、脱炭素化を前提として電源の新規投資を促進していく必要があるという背景があるということですね。

そして、過去においては電力自由化前は、料金規制の下、安定的に料金の回収が可能であったために、巨額の設備投資を行うに足るだけの長期的な予見可能性が発電事業者には確保されていたということでありますけれども、電力市場が自由化された中では、発電事業者にとって長期的な予見可能性が低下をし、電源投資が進まない可能性があるということであります。そういったときに調整力であるとか、ブラックアウトにならないような慣性力であるとか、そういったものを実施するためにはどうしたらいいのかということ。制度面も含めてしっかり考えていかなくちゃならないという中で、投資ができやすいような環境作りも制度面と併せてしっかり考えていかなくちゃならないと思っております。

そういったことを含めて、事務方に私は指示をしておりますので、資源エネルギー庁の審議会、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会の持続可能な電力システム構築小委員会、それとあと併せて電力・ガス事業分科会、電力・ガス基本政策小委員会等で議論をしているところでありまして、御指摘のあった月曜日の衆議院の予算委員会での額賀委員の質問に対して、私からは制度の在り方について検討していくとお答えしたものであって、具体的な制度内容については何らまだ決まっていないということでありますけれども、今言ったような大きな枠でどうしたらいいのか。とは言っても、そう時間もありませんから、こういったものも含めて、大胆な政策も含めて検討していかなくちゃならないと思っています。

自動車電動化

Q:EVの導入推進に伴う雇用について伺います。構成部品が減るために、30万人程度雇用が減るのではないかという試算も報道されていますけれども、これに関しての受け止めと、雇用維持の必要性についてどうお考えか。

A:同じ目的のものを作るにしても、その中身が変わっていくということで、工程も変わっていくということになりますから、そういう試算が出ているんだと思います。

2050年のカーボンニュートラルの実現を目指すとともに、我が国の自動車産業が引き続き国際的な競争力を維持するために、政府として、2035年までに新車販売で電動車100%を実現する方針、それに対応して、先般そういった報道がされたと思っております。

これを進めるに当たっては、自動車部品などの関係業界にも一定程度の影響が生じることが想定をされます。政府としては、例えばこれまでガソリンエンジンの変速ギアを製造していた中堅・中小サプライヤーが電動車用のモーター部品の製造に新たに挑戦するといった取組を積極的に支援をしてまいりたいと思っておりますし、このカーボンニュートラルを実現するに当たって、この宣言前にも各産業界と、また個社とも対話をしてまいりました。特に、また自動車業界ともそういう対話をしてきているということであります。

自動車業界も世界の市場に競争力を持って臨むためには、こういう方針というのはやっぱり採らざるを得ないということでありますが、企業も、産業界も、やはり雇用というものを物すごく気にしています。そういったものの労働移動をどうするのか、対策をどうするのか。また、ほかの産業での吸収をどうするのかっていうことも含めて考えていかなくちゃならないと思いますし、これまで以上に産業界、自動車業界であるとか、または個社とも対話を重ねながらそういったものを考えていきたい。ただ技術の進展だけを考えるのではなくて、この国の経済・雇用というものを考えていくということも非常に重要な要素でありますから、そういったこともしっかりと対応してまいりたいと思っています。

福島第一原発

Q:冒頭の質問のところにちょっと関連なんですけれども、福島沖の地震の影響で第一原発の方では、地震計のほかに1、3号機の原子炉格納容器の水位が低下するといった事象も起きていて、一連の地震計の問題も含めて、東京電力の方が事故後の大規模な地震に対してどれだけの備えを本気で行っていたのかというところが非常に会見の中でもなかなか見えてこない部分があるんですけれども、その辺に対しての大臣の御所感と、あと経産省とエネ庁としてどのような指導を事故後されてきたのか、そこについて教えてください。

A:地震計については先ほど申し述べたとおりであります。

もう一つ、水位計、水位の低下という事象もあったということでありますが、原子炉格納容器内の水位低下については現在のところ注水機能に異常はなく、燃料デブリの冷却は継続できていると、そして外部への影響も生じていないと承知しておりまして、安全性は確保できていますけれども、今後とも状況を確認していく必要があると思っております。

先週も申し上げたんですけれども、例えば使用済燃料プールが地震の揺れによって溢水があったと、溢水があったけれども、影響はないというような会社側の発表ですけれども、どう対応したか、なぜ影響がないのか、ということまでしっかりと住民に分かりやすく、特にやっぱり近隣の住民には分かりやすく説明をしてほしいというお願いをしております。

この件についても同じだと思います。なぜ水位低下が生じたのか。今心配ないっていうのはどういう対策、対応をして、なぜ心配がないのかということも含めて私も聞き取りをしていますし、そういったものをしっかりと広報をしてほしい、リスクコミュニケーションもしっかりと自治体ともしてほしいというお願いをしております。お願いというか、これは指導ですね。それをしないと駄目だと。自分たちの範囲で分かるようなことの発表では駄目なので、この原子力に関する知識が、それほど現場にいる人たちとは違いますから、そういった方々に分かりやすいような説明をするということが必要だと思っております。

これ、水位計も数十センチ置きに張りついているという中で、ある程度のところまでは水位はないというのは分かっているんですけれども、次の水位計は減らずにあるということと、それでこれは安全な水準での温度も上がっていないということでの確認はしています。さらにまた、注水も先ほど申しましたように今までどおりで、今までどおりの注水でそれが安全が保たれているということも確認をしているんですけれども、そういったことを分かりやすく説明するというのが東電の広報の在り方だと思います。

規制庁に対する報告、経産省に対する報告はこれでいいかもしれません。でも、一般に対する、また報道の皆さんに対する、報道の皆さんがさらにまた分かりやすく伝えていただくことが期待できるような報告、また現状というものをプレスの皆さんに発するように、ということで指導をしているところでありますので、また足りないところは私どもで指導をしてまいりたいと思っています。

Q:水位低下の原因として、事故の損傷部が拡大した可能性も否定できないというふうに東電は言っているんですけれども、その辺に対する事前の対策というのはやはりちょっと限界があるのでしょうか。

A:やはり事故を起こしていますので、どういう可能性があるかということはやっている。ただ、安全基準というのは、どこまで、例えば格納容器内の水温を計って、変化がなければこれは安全だということにはなるけれども、二重三重の対策というものは考えております。例えば損傷部分が、まだはっきりとした原因は分かりませんけれども、そこから水が漏れたんじゃないか、水が漏れると、今度はその圧力は大丈夫なのかということに対する対策もしていると聞いておりますし、そういったものはできていると思っております。
 

皆さんへの説明の仕方、一般への説明の仕方というところで足りないところが私はあると思っておりますので、そういったことも含めて直していかなければならないと思いますし、皆さんもプレス発表のときにとことん聞いていただきたいと思いますし、私どももやっぱりそういった姿勢でやらなければならない、規制庁も経産省もそういった姿勢で対応しなければならないと思っています。

RCEP

Q:今日の閣議で、RCEPの協定案がかかったかと思うんですけれども、早期の発効に向けて御所見をお願いします。

A:本日、RCEP協定の締結についての国会承認案が閣議決定をされました。RCEPはGDP、貿易総額、人口のいずれも世界全体の約3割を占める世界最大級の経済連携協定であり、日本からアジア圏への輸出促進、地域的なサプライチェーンの効率化・活性化、投資、知的財産、電子商取引といった規律の導入等を通じた地域における自由で公正な経済秩序の構築に寄与するものと確信をしております。

加えて、今のコロナ禍において、ポストコロナ、ウィズコロナ、アフターコロナ、いろいろな表現がありますけれども、そういった中でみんな各国がいろいろなことを考えていますので、しっかりとしたそういう貿易ができるような体制をしていかなくちゃならない。また権利をしっかり守れるような体制をしいていかなくちゃならない。また、貿易の原則として、しっかり自国主義的な貿易制限を与えるようなものは、やはり一時的なものを除いて許さないような方向でやっていかなくちゃならない。ルール遵守も含めてやらなくちゃならない。そういったもので大変意義のあるものだと思っておりますし、これからのアジアにおける貿易の基礎となるものだと思っております。

本協定の着実な履行を通じて、地域の望ましい経済秩序の構築につなげていくためにも、まずは早期に国会で承認をいただけることを期待するところであります。

 

以上

最終更新日:2021年3月2日