財務省・新着情報

令和3年1月18日

 

令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

 

(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)

日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあります。令和二年度第一次補正予算及び第二次補正予算の政策効果等もあり、持ち直しの動きがみられますが、新型コロナウイルス感染症が内外経済を下振れさせるリスクに十分注意する必要があります。

このような状況の下、昨年十二月八日に、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を閣議決定いたしました。総合経済対策を通じて、雇用と事業を支えながら新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するとともに、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図り、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を進めてまいります。

先般、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発出されました。今後も感染状況や経済・国民生活への影響を注意深く見極め、引き続き、新型コロナウイルス感染症対策予備費を含めた累次の補正予算、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の着実な執行により、適切に対応してまいりたいと考えております。

日本の財政は、少子高齢化に伴う構造的な課題にも直面しております。「経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇」等を踏まえ、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、引き続き、これまでの歳出改革の取組を継続し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。

 

(令和二年度第三次補正予算の大要)

次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出いたしました令和二年度第三次補正予算の大要について申し述べます。

一般会計につきましては、歳出面において、総合経済対策に基づき、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止策」に係る経費に約四兆三千六百億円、「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」に係る経費に約十一兆六千八百億円、「防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保」に係る経費に約三兆千四百億円の合計約十九兆千八百億円を計上しております。

このほか、国税の減収に伴う地方交付税交付金原資の減額の補塡等を行うとともに、既定経費の減額を行うこととしております。

歳入面においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して約八兆三千九百億円の減収を見込んでおります。また、税外収入について、約七千三百億円の増収を見込むほか、前年度剰余金約六千九百億円を計上することとしております。

以上によってなお不足する歳入について、公債を約二十二兆四千億円発行することとしております。

なお、剰余金の処理につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。

この結果、令和二年度一般会計第三次補正後予算の総額は、一般会計第二次補正後予算に対して歳入歳出ともに約十五兆四千三百億円増加し、約百七十五兆六千九百億円となります。

また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。

財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、現下の低金利状況を活かして、生産性向上や防災・減災、国土強靱化対策を加速するとともに、ポストコロナ時代の社会・経済構造変化に対応した民間投資を促進するため、約一兆四千三百億円を追加しております。

 

(令和三年度予算及び税制改正の大要)

続いて、令和三年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 

令和三年度予算は、令和二年度第三次補正予算と合わせ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている国民の命と生活を守るため、感染拡大防止に万全を期すとともに、将来を切り拓くため、中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めていく予算としております。

具体的には、感染症危機管理体制や保健所体制の整備等によって感染拡大防止に万全を期すとともに、予期せぬ状況変化への備えとして、五兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置することとしております。また、デジタル社会・グリーン社会の実現や、全世代型社会保障の構築など、中長期的な課題にもしっかり対応するものとしております。

同時に、歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、「新経済・財政再生計画」の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続しております。

 

一般歳出につきましては、約六十六兆九千億円であり、これに地方交付税交付金等約十五兆九千五百億円及び国債費約二十三兆七千六百億円を加えた一般会計総額は、約百六兆六千百億円となっております。

 

一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約五十七兆四千五百億円、その他収入は、約五兆五千六百億円を見込んでおります。また、公債金は、約四十三兆六千億円となっております。

なお、特例公債の発行につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。

 

次に、主要な経費について申し述べます。

 

社会保障関係費につきましては、職員の処遇改善にも配慮した介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定の実施に必要な経費を確保しつつ、毎年薬価改定の実現等、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成しております。

 

文教及び科学振興費につきましては、小学校三十五人以下学級の実施に向けて必要な教職員定数の措置及び合理化等を図るほか、大学改革、安全・安心な学校の施設整備等を推進するとともに、科学技術基盤を充実し、イノベーションを促進することとしております。

 

地方財政につきましては、国税及び地方税の税収の落ち込みに対し、地方の一般財源総額を適切に確保し、地方に最大限配慮することとしております。

 

防衛関係費につきましては、安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づき、調達の効率化を徹底しつつ、宇宙やサイバーといった新領域を含め防衛力を着実に強化することとしております。

 

公共事業関係費につきましては、ハード・ソフトが一体となった防災・減災対策と維持更新コストの増加抑制の観点を踏まえつつ、国土強靱化の取組への重点化を図るほか、生産性向上のためのインフラ整備等を推進することとしております。

 

経済協力費につきましては、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束に向け、保健分野での途上国支援を強化しつつ、ODAは予算・事業量ともに必要な額を確保することとしております。

 

中小企業対策費につきましては、生産性向上を促進するための設備投資や、事業再生・事業承継に対する支援を充実するほか、資金繰り対策にも万全を期すこととしております。

 

エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの主力電源化やカーボンリサイクルの推進など、イノベーションによる脱炭素化を推進するほか、災害等に強いエネルギー供給網の整備に取り組むこととしております。

 

農林水産関係予算につきましては、農林水産物・食品の輸出拡大、農業経営の生産性向上を進めるほか、グリーン社会実現に向けた森林資源管理や、改正漁業法を踏まえた適切な水産資源管理に取り組むこととしております。

 

東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間の初年度において復興のステージに応じたきめ細やかな取組を着実に実施するため、令和三年度東日本大震災復興特別会計の総額を約九千三百億円としております。

 

令和三年度財政投融資計画につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業・事業者及び地方公共団体への強力な支援、イノベーションの大胆な加速と事業再生・構造転換、低金利を活用した、生産性向上や防災・減災、国土強靱化等につながるインフラ整備の加速等のため、総額約四十兆九千百億円としております。

 

国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約二百三十六兆円と、過去に類のない規模となる中で、引き続き市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。

 

令和三年度税制改正につきましては、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることとしております。また、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促す措置を創設することとしております。さらに、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除の特例の延長等を行うこととしております。

このほか、日本の金融資本市場を国際金融センターの一つとして発展させ、海外から金融事業者・高度人材を呼び込むことは、重要な課題です。政府一体となってこの課題に取り組み、所要の税制上の措置を講ずることとしております。

 

(むすび)

以上、財政政策の基本的な考え方と、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の大要について御説明申し上げました。

次の世代に未来をつないでいくためには、今回の危機を乗り越えるとともに、構造的な課題に着実に取り組むことで、経済再生と財政健全化の両立を進めていく必要があります。そのため、これらの予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。

何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

 

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