2020年12月25日(金曜日)
11時00分~11時20分
於:記者会見室

冒頭発言

静かな年末年始

初めに私から3点申し上げます。

まず、1点目、先ほど開催されました閣僚懇談会において西村大臣から、コロナ禍において命と暮らしを守るために、国民の皆様には「静かな年末年始」を過ごしていただくことが求められること、そのために内閣官房として特設ホームページを公開するなど、静かな年末年始を徹底していただくための情報発信を強化していること、関係閣僚にも協力をお願いしたいことの御発言がありました。

この大変難しい問題に、国を挙げて取り組んでいく必要があると考えており、これまで経済産業省としても産業界に対して忘年会、新年会、成人式、帰省などの留意事項について周知してきたところであります。

改めて年末年始の飲食時の対策徹底や帰省の慎重な検討など、静かな年末年始の徹底に御協力いただけますよう、私からもお願いいたします。

特定復興再生拠点区域外における新たな避難指示解除の仕組み

2点目、本日原子力災害対策本部において、帰還困難区域の特定復興再生拠点区域外における新たな避難指示解除の仕組みを決定しました。この仕組みは、居住を想定しない土地活用において、地元自治体に強い意向がある場合に限って特例的に適用されるものであります。来年で震災から10年を迎えることも踏まえて、居住に向けた避難指示解除を求める地元の声にどのように対応していくかについても、今後しっかり検討してまいりたいと考えております。

詳細は、事務方から説明させます。

英EU通商交渉

3点目、昨日英国政府とEUは、通商交渉について合意を発表しました。我が国としては、これまであらゆる場面で交渉の早期妥結を英国・EU双方に働き掛けてきたところであり、今回の発表を歓迎いたします。また、今後英国・EU双方における議会承認等の必要な手続が速やかに行われることを期待しております。

合意内容の詳細や具体的な運用については、引き続き情報収集中でありますけれども、年末年始も含めブレグジット対応サービスデスクにおいて、企業からの相談や情報提供に対応できる体制を整えるよう、事務方に指示しました。引き続き日系企業への影響が最小限となるよう、しっかりと支援してまいりたいと考えております。

私からは以上です。

質疑応答

1年の振り返り

Q:今年最後の閣議後大臣会見となりますけれども、改めて今年1年を振り返られて、御感想をいただけたらと思います。

A:この1年間、多岐にわたる経済産業行政、一つ一つ着実に前進させるべく全力を尽くしてきたという思いであります。

まずは新型コロナウイルス感染症の対応ということで、年初来この対応に追われてきたということでありますけれども、国民の皆様が安心できる生活を一日も早く取り戻すためには、まずは国民生活や事業と雇用を守り抜くことに専念しつつ、新たな日常をつくり上げるための政策にも取り組んでまいりました。

具体的には、緊急事態宣言の下で、マスク、消毒液、人工呼吸器など、感染予防に必要な物資の増産を支援したほか、持続化給付金や無利子・無担保融資を実行するとともに、ダメージを受けたイベントや商店街を支援するためのGo Toイベント、そしてGo To商店街事業を実施いたしました。

今なおコロナ禍は収束しておらず、引き続き安全、安心な社会経済活動の早期の実現のために、全力を尽くしてまいりたいと思っております。

次に、2番目として福島の復興に関して言えば、ALPS処理水の取扱いについて、今年2月に有識者会議の報告書が取りまとめられて以降、御意見を伺う場などを通じて様々な方の御意見を頂戴してまいりました。引き続き復興と廃炉の両立に向けて、福島第一原発の廃炉、被災者の生活支援、なりわい再建に向けた取組を着実に進めてまいりたいと思っております。

また、六ヶ所再処理工場の事業変更許可、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定に向けた文献調査の開始など、原子力のバックエンドという課題への対応も一歩ずつではありますけれども、前進したと考えております。

女川原発2号機の再稼働について、地元の御理解の表明をいただいたことも大変ありがたいことでありました。原子力への理解を回復する活動に終わりはありませんが、引き続き原子力発電の重要性や必要性について、丁寧に説明を尽くしてまいりたいと思っております。

そして、9月(※)には菅内閣が発足いたしました。総理が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明されました。これを受け、私のところでグリーン成長戦略を取りまとめ、本日の成長戦略会議で御報告することとしております。2025年カーボンニュートラルは、制約やコストではなく、成長戦略そのものであります。省を挙げてしっかりと実行してまいりたいと考えております。

通商政策に目を転じれば、実際15年間ぐらい議論から言えばしてきたわけでありますけれども、8年にわたる交渉が妥結して、RCEP協定の署名に至ったということであります。これにより、世界全体のGDP及び貿易総額の約3割を占める巨大な自由貿易圏が成立することになりました。引き続き自由で公正なルールに基づく国際経済体制を主導してまいりたいと考えております。

今年も大規模な災害があり、多くの方がお亡くなりになり、改めて御冥福をお祈りしたいと思っております。
各所で冠水等の被害をもたらした7月の九州豪雨からの早急な復興のために、なりわい再建支援補助金を創設いたしました。これまでもこの手の補助金はあったのですけれども、地域の特性、また被害規模に合わせて、さらにまた直近の過去にほかの被害もあったということも加えて、新たな制度をつくらせていただいたということであります。

9月の台風10号の上陸に際しては、多くの職員を現地に派遣するなど、万全を期して対応を行ってまいりました。いずれもコロナ禍での高い緊張感を持って対応することを迫られる状況であったと思っております。避難所への物資の供給なども、そういった中でさせていただいたということであります。

私自身、菅内閣で再び経済産業大臣を拝命したということになりますけれども、経済産業大臣を1年2か月務める中で、経済産業行政の重要性は日増しに高まっていると感じております。今後も日本経済のさらなる発展に向けて、全身全霊で取り組んでまいりたいと思いますし、今目の前にある課題をしっかりとこなしていくこと、そのことによって、しっかりと私の職責を果たしてまいりたいと思っております。

ALPS処理水

Q:先ほども少し言及がありましたけれども、福島のALPS処理水の関係でお伺いいたします。
昨日、経済産業省の担当の方が年内の方針決定は非常に厳しいという見方を示されておりました。これについての大臣の見解を改めてお伺いしたいのが1点と、越年ということになりますと、タンクの容量の部分で影響がないのかというのが懸念されるわけですけれども、そのあたりの今後の見通しと政府決定の時期の見通しについてもお伺いいたします。

A:政府方針の決定の時期につきましては、これまでも繰り返し申し上げてきたとおりでありまして、敷地が逼迫する中でいつまでも方針を決めずに先送りすることのできない課題であるという認識に変わりはありません。

現在、これまでの議論を踏まえて、関係省庁において風評対策を含めて、さらに検討を深めるとともに、消費者団体を始め、様々な方と意見交換を継続しているところであります。時間がたつにつれ、タンクの容量に余裕がなくなることは考慮しなければなりませんけれども、丁寧な議論とのバランスを取りつつ、適切なタイミングで政府として責任を持って結論を出してまいりたいと思っております。

タンクの件につきましては、今年東日本に上陸した台風がなかったということもあって、少し余裕がある状況の中で調整をしながら、精査をしながら対応しているということであります。職員が発表したというのは、物理的に今日で大体の仕事が終わるという中で、ほかの方との連携も含めて、なかなか難しいという事実を申し上げたのだと私は思っております。

政治資金規正法

Q:安倍前総理が桜を見る会の前日に開いた夕食会において、東京地検が政治資金規正法違反の罪で秘書を略式起訴しましした。安倍前総理は道義的責任を痛感していると陳謝し、自身が国会で答弁してきた内容が事実に反していたこともお認めになりました。

この夕食会についての安倍さんの国会答弁は、領収書の有無だとか会費の金額だとか、当初から不自然だという指摘が多くあったわけですけれども、梶山大臣御自身は一連の安倍さんの御説明に不自然さをお感じにならなかったのかというところと、閣僚のお一人として踏み込んだ調査等をするように御進言なさるようなことはできなかったのか、その点をお伺いします。

A:これは総理だからということ、閣僚だからということではなくて、政治家個人として襟を正していかなければいけないことだと思っております。特に政治資金規正法と公職選挙法というのは、我々は常に意識をしながら活動していかなければならないものだと私は常々思っているところであります。

そういったことも含めて、事実が判明をしてきたということであれば、その答弁に至る経緯も含めて、当事者がしっかりと説明をするべきことだと思っております。

Q:安倍前総理は、100回以上も事実と異なる答弁をして通常国会を乗り切ったと、その後バトンタッチをしたのは、この誤った答弁を官房長官という立場で擁護していた菅さんでいらっしゃると、現在の菅政権というのは、国民からの正当な信認を受けているというふうにお受け止めになりますか。

A:その答弁に関しては、先ほど申しましたように、総理大臣として政府を巻き込んでということではなくて、政治家個人としてどういう根拠で答弁をされたのかということの説明が大切なことだと私自身は思っております。

今おっしゃったように、通常国会の中での答弁というのは、本人しか知り得ない部分、本人の事務所しか知り得ない部分があろうかと思っております。そういったことまで含めて、私どもが疑問に思ったかどうかということに関しては、本人がおっしゃることが政治資金規正法、そして公職選挙法に照らしておっしゃっているということであり、その責任においては、今度は政治家本人が、個人本人が負っていくものだと思っております。

Q:吉川前農林水産大臣が広島の業者から500万円を受け取った疑いがある問題で、東京地検が先ほど衆議院議員会館や札幌市の事務所に家宅捜索に入りました。お受け止めを教えてください。

A:事実関係はまだ明確ではないと思いますけれども、検察当局が捜査に入る、国会休会中といえでも、そういう議員会館等に入るということは大変大事な、大きなことだと思っておりますので、我々はしっかり襟を正して対応していくということになりますし、真相究明のために、当事者の皆様はしっかりと対応していくということだと思っております。

Q:政治家や政府への信頼性というのが揺らいでいるというふう、に改めてお感じになりますか。

A:これは自らの政治姿勢をどうするかということ、政治家個人の部分と、あとは国民の方がどう思うか、これはアンケート等で世論調査等が新聞社各社、また放送局等でもやっておりますが、そういうものに表れるものだと思っておりまして、その数字が表しているものだと思っております。

ALPS処理水

Q:1点目は、処理水についてなのですけれども、経済産業省として20年度3次補正で処理水の広報に特化した予算ということで5億円を今回計上されております。いまだに理解が得られていない状況の中で、こちらの広報費をどのように活用して処理水の国民的理解につなげていくお考えでいらっしゃいますか。

A:これは、処理水そのものが陸上に敷地サイト内にたくさん置かれているという状況もあります。そういった状況について情報発信をしていくこと、さらにまた処理水自体について、トリチウムについて、トリチウムの処理水について、ALPS処理水ですね、についての御理解を得るための広報活動、また理解活動をしていくということに使われるものだと思っております。

それにつきましては、先ほど申し上げたとおり、適切なタイミングで政府として責任を持って結論を出していくということでありまして、そのための準備作業を休んでいるのではなくて、今も行っているところだということで御理解をいただきたいと思います。

デブリの取り出し

Q:もう一点お伺いします。
東京電力が福島第一原発2号機で来年予定していた溶融燃料、デブリの取り出しがコロナの影響でイギリスでの試験ができず、1年以上遅らせるということになりましたけれども、大臣おっしゃるように廃炉と復興の両立の上では、第一原発の廃炉の工程を予定どおり進めていくことが重要かと思いますが、今回の事態についての受け止めをお聞かせください。

A:燃料デブリの取り出しの開始に向けて、使用するロボットアームの開発を英国で進めているということ、そしてコロナの影響の下に、その開発作業に影響が出ているということでもあります。

今後遅延を最小限にして、1年にとどめられるように努めていくと聞いておりますけれども、これが全体の遅れにはならないように、今工程等を見直しをしっかりとさせているところであります。廃炉全体のスケジュールに、この一つのことで影響が出ないような形で対応してまいりたいと思っております。

競輪グランプリ

Q:話題が変わって恐縮なのですけれども、大臣は今ふだんと違うマスクをされているのですが、何か理由等あればお聞かせください。

A:これは河野大臣に先ほどいただいたのですけれども、私どもで所管しております競輪のグランプリについて、年間6回開催されるG1の優勝者及び獲得賞金上位者で真の競輪王者を決めるものが開かれます。昭和60年から開催されて、今年で36回目になるということなのですけれども、昨年は立川競輪場で開催され、今年は河野さんの地元である平塚競輪場で開かれるということで、28日から30日までの3日間行われるということでありますけれども、コロナ対策を十分にした上で開かれるということで、マスクをつけてほしいということを言われまして、私が所管ということでもあり、平塚市長からいただいたものを今日はつけさせていただいております。

エネルギー基本計画

Q:よろしくお願いします。
エネルギー基本計画の見直し作業が始まっておりまして、基本政策分科会でも恐らく来年から具体的な電源構成などのシナリオの検討というのが始まると思うのですけれども、2050年という断面で見ると、残る原発の基数などを考えると、2050年に原子力発電がゼロというシナリオのオプションとして、経済産業省として国民に提示をしていくということも考えられるのかなと思っていますけれども、そこら辺大臣、いかがお考えでしょうか。

A:2050年のカーボンニュートラルへの挑戦ということで、簡単なものではなく、あらゆるリソースを最大限投入していくということは、いつも大前提になることであります。

2050年80%削減を前提としていた現在のエネルギー計画においても、再生可能エネルギーや水素、CCS、原子力など、あらゆる選択肢を追求するとの方針が明記されております。2050年カーボンニュートラルに向けては、再生可能エネルギーはもちろん、安全性が確認された原子力を含め、使えるものは最大限活用し、水素、アンモニアなどの新たな選択肢も追求していくという方針であります。

現在エネルギー基本計画の見直しに向けた議論を行っているところでありまして、総合資源エネルギー調査会においても、2050年に向けて原子力を活用していくことが必要との御指摘もあったと踏まえております。

今後、どのようなシナリオ分析を行っていくかを含め、検討してまいりたいと思いますが、前回提示した資料のことをおっしゃっていると思うのですけれども、40年の更新をしないと、20年の更新をしないという前提でいくと2050年の段階で3基が残る。そして、60年という20年の1回に限り延長ができますねということをやると、これが大体23基残るというような想定の資料も出させていただいております。それらも含めて、今後総合資源エネルギー調査会の中で議論をしていくということになろうと思います。

Q:そうしますと、60年運転延長で23基ということなのですが、そうすると原子炉等規制法の改正というか、見直しというか、委員の中には80年運転延長という御意見も出ているようなので、ここは原子炉等規制法の見直しというのを環境大臣の方に求めていくという可能性も出てくるのでしょうか。

A:将来の可能性については、私が今申し上げることはないと思っております。現行法上の中で、何ができるかという中で議論していただいているということであります。

そして、原子力の2011年の事故で失った信頼をどう技術的に取り戻すか、まずはそれが規制委員会の下の新しい規制基準、これをクリアするということ、そして国民の信頼も取り戻すということは、国民の原子力に対する考え方というものも前向きに考えていただくということ、そして地域住民の方々の信頼を取り戻すということは、実効性のある避難計画をつくっていくということだと思いますし、それぞれの役割を果たしていくという中で、現行法上の中での議論を今させていただいているということで御理解いただきたいと思います。

※事実関係に即し上記のとおり修正しました。

以上

最終更新日:2020年12月28日