2020年12月11日(金曜日)
11時24分~11時39分
於:記者会見室

冒頭発言

特になし。

使用済核燃料対策

Q:よろしくお願いします。

2問お願いしたいのですけれども、昨日青森県むつ市の核燃料中間貯蔵施設に関して、電事連などが原発を持つ各社で共有する案を検討しているという報道がありましたけれども、これに対して大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

A:個別の報道へのコメントは差し控えたいと思っております。

一般論として、使用済燃料対策を含めた核燃料サイクルの推進は、原子力を利用する上で重要な課題であるという認識であります。政府としては、エネルギー基本計画に基づいて、六ヶ所再処理工場の竣工や使用済燃料対策の推進に取り組むよう事業者に要請をしているところであります。

その上で、今年の7月2日に使用済燃料対策推進協議会で私が要請をしました使用済燃料対策を含む四つの事項につきまして、今般電気事業連合会から報告したいとの連絡があり、来週12月17日にお会いする方向で今調整をしているところであります。まずは電気事業連合会からの説明をしっかりとお伺いをしたいと思っております。 

税制改正大綱

Q:昨日与党の税制改正大綱、これが決定しまして、デジタル化だとか脱炭素、経済産業省関連のものが盛り込まれたと、これの中身につきまして改めて大臣のお考えを。

A:昨日当省の要望を認めていただく形で、与党の税制改正大綱をまとめていただいたと思っております。

今回の税制改正では、ポストコロナの新しい社会に向けて、菅内閣の大きな柱でありますグリーン社会の実現やデジタル化を掲げております。コロナ禍でも前向きに投資する企業を後押しすることを重視をした税制になっていると思っております。

経済産業省としてのポイントは、大きく3点あると思っております。

まず、第1点、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた投資促進税制の創設ということであります。

脱炭素化の効果が大きい設備投資に対して、あらゆる業種の大企業が活用できる税制として、最高水準最大10%の税額控除を講じて、民間投資を強力に喚起をしてまいりたいと思っております。

2点目、赤字であっても脱炭素、DX投資や事業再構築、再編に挑む企業を支援する繰越欠損金の特例措置を創設をしたということでありまして、従来の50%から100%繰越欠損金ができるということの特例措置が創設をされたということであります。

第3番目、中小企業のM&Aによる規模拡大を通じた生産性向上を促進するために、新たな準備金制度を創設し、併せて設備投資減税や雇用確保を支援する税制なども一体的に措置をしてまいりたいと考えております。

このほか中小企業を下支えする法人税の軽減税率の延長も含めて、様々な要望を認めていただきました。経済産業省としては、今般の税制措置などにより、日本経済の成長を後押ししてまいりたいと考えております。

使用済核燃料対策

Q:中間貯蔵に関連してお伺いします。

地元のむつ市長が昨日知らないところで事業が変貌していくことは、あってはならないと不快感を示された上で、国に関しての認識や事実関係を確認する旨考えを示されました。

立地自治体への対応、国として大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:まずは17日で先ほども申しました調整をしているところの面会の中で、電事連の検討結果について、しっかりとお伺いし、その内容を確認したいと思っております。

むつ市長が国の見解をということでありますけれども、むつ市長から今の時点ではまだ問合せは来ておりません。もしその問合せが来た場合には、誠実にお答えをしたいと思いますし、やり取りをしてしっかり理解していただきたいと思っております。

Q:関連して、類似した報道がなされた2018年当時、世耕大臣は使用済核燃料をむつ市に集約するということを考えていないというような否定をされました。

国の方針は変わってないということでよろしいのでしょうか。

A:それは電事連のお話を聴いてから、また判断をしなくてはならないと思っております。

私が7月2日に投げかけた回答を電事連として持ってくるということですから、それらの話を聴いた上でどうするかということだと思っております。

カーボンプライシング

Q:一部報道で、電力会社が排出する温室効果ガスについて、排出枠取引制度を導入するという報道がございました。

現在の経済産業省の中で、政府の中での検討結果を教えてください。

A:一部報道でそういう記事があったことは、承知をしておりますけれども、個別の報道についての回答は差し控えさせていただきたいと思っております。

その上で一般論として申し上げれば、菅政権におけるカーボンニュートラルは成長戦略として実現するものであります。そのためには、革新的技術の開発と実証に加えて、制度整備や標準化、国際連携など、あらゆる政策を総動員することが必要だと思っております。

当然、カーボンプライシングも成長戦略に資するものであれば、検討対象になりますけれども、成長戦略に資することのない制度を導入することはないと考えております。経済産業省としては、産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながる形があり得るのか、引き続き検討してまいりたいと考えております。

世界的にもカーボンプライシングは、炭素税や排出量取引、国際的なクレジット市場、国境調整措置など、様々な制度があるわけでありまして、制度によってもその効果、評価及び課題も異なります。例えば、炭素税については、企業の現預金を活用した投資を促すという今回の成長戦略の趣旨との関係や公平性、排出抑制効果などの課題があり、日本では既に地球温暖化対策のための税が導入されているという現実もあるということであります。

排出量取引については、経済成長を踏まえた排出量の割当方法が課題となりますけれども、日本でも既に民間企業がESG投資を呼び込むためにカーボンフリー電気を調達する動きに併せて、小売電気事業者に一定比率以上の非化石電源の調達を義務付け、非化石価値の取引市場の整備を行ってきているところでもあります。

さらに国境調整措置については、温暖化対策に消極的な国とのイコールフッティングという観点から、欧米でも検討が進められており、国際的な整合性を図る観点からどのような対応があり得るのか、検討を進めていく必要があると思っております。

産業界を所管する経済産業省としては、カーボンプライシングに限らず他の制度も含めて国際的な動向を踏まえつつ、実態に即した検討を行っていく予定であります。

成長戦略に資するものであれば、既存制度の強化や対象の拡充、さらには新たな制度を含め、躊躇なく取り組んでまいりたいと思いますけれども、様々な産業とか国によって状況は違います。今の状況は。ですから、そういったものを中立公正的に透明度のある形で排出枠などを設定できるのかどうなのか、そして取引が正式に認められた上で、地球全体のCO2の排出抑制につながっていくのかどうなのか、またカーボンニュートラルに資する形になるのかどうなのかということも含めて、しっかり国際機関であるとか、またほかの国々、団体とも含めて議論を深めてまいりたいと思っております。

自動車の電動化

Q:ガソリン車ゼロの目標に関してなのですけれども、政府は2030年代半ばにゼロにするとされていますけれども、東京都の小池知事が2030年にゼロを目指すと表明しています。政府として正式に提示していない中ではありますけれども、政府の目標より早いことによって、自動車業界への影響などはどうお考えでしょうか。

A:御質問の東京都の方針については承知をしております。具体的な内容については、東京都がこれから検討していくものと聞いており、大きな目標だけ提示をしたものだと思っております。産業界への影響を私からお答えすることは、今の時点では困難だと思っております。

ただ、2050年のカーボンニュートラルを目指す場合には、他国でも宣言をしているように、2030年代、日本では半ば頃と、そういう想定がありますけれども、他国でも2035年にガソリン車の禁止というようなことも出ておりますので、電化というものが非常に大きな課題になってきているというのも事実だと思っております。

そういったことも含めて、東京都とも今後話合いをしていくということになるかと思います。

原子力発電政策

Q:改めてお聞きしたいのですが、2050年カーボンニュートラルに関して原子力なんですけれども、大臣はそれに関して原発を最大限活用するというような話をされていたと思うのですけれども、一方で現行のエネルギー計画では原発依存度を可能な限り低減すると、それは総理も国会で答弁されてたと思いますが、原発を最大限活用するというのと原発依存度を可能な限り低減するというのは、文字どおりちょっと矛盾するといいますか、そういうふうに思うのですけれども、その辺について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

A:現状ある原発を最大限活用してまいりたいという考え方が私どもの考え方であります。

そして、あの時点で原発への依存度というものを低減していくというのは、例えば60基あったものが今36基になっている。そして、現時点では新規であるとかリプレイスというものはしないということでありますから、その中で今あるものを最大限ということで、全体のエネルギーの中で最大限活用していくということではなくて、今ある原子炉をどう動かすか、そういった中で最大限活用しないと、2050年のカーボンニュートラル、今の時点では見えてこない。既存の技術の中でどうしていくかということをまずは目の前の目標として立てていくということで言わせていただいております。

Q:すなわち原発依存度を可能な限り低減するということに、矛盾しないというふうにお考えでしょうか。

A:はい。

Q:ありがとうございました。

核燃料サイクル政策

Q:核燃料サイクルの話に戻ってしまって恐縮なのですが、9日の原子力規制委員会で日本原燃のMOX燃料工場の事業変更許可が決定され、これによって青森県内にある主な核燃料サイクル施設が審査に合格したことになります。このことについての大臣の所感を伺いたいのが1点で、加えてもう一点お願いしたいのですが、核燃料サイクル施策については、大臣はこれまで基本的には国の基本的な方針ということで、推進するとの見解を述べられておりますけれども、これは現在見直し、議論が進んでいる次期エネルギー基本計画でもこの方針というのは堅持する、継続されていくお考えでしょうか。

A:まず、1点目、今月9日、原子力規制委員会で日本原燃MOX燃料加工工場が事業変更許可を取得したものと承知しております。

使用済燃料を再処理し、回収したウラン、プルトニウムを再利用することが政府の基本的方針です。今回、六ヶ所再処理工場に続いて、MOX加工工場の事業変更許可が行われたことは、核燃料サイクルの確立に向けて大きな前進であると受け止めております。

日本原燃には、引き続き原子力規制委員会の指導の下に、安全確保を最優先にMOX燃料加工工場の竣工に向けて取り組んでもらいたいと考えております。

エネルギー基本計画の話ですけども、10月からこれの議論が始まりました。そして、10月の末に国会において菅総理が2050年カーボンニュートラルという宣言をしまして、それらの条件も加えて、今総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で議論をしていただいているということでして、これは結論ありきということではなくて、2050年のカーボンニュートラルに向けて、どういう道のりを歩んでいくかも含めて、どういうエネルギーを活用していくかということも含めて、議論をしていただいているということであります。

ですから、私の思いでどうこうということはありませんでして、これは今までの方針は今までの方針として、結論ありきではなく議論していただいているということで御理解いただきたいと思います。

WTO事務局長選挙

Q:よろしくお願いします。

WTOの事務局長選が延びて、これは16か17日の一般理事会でも結論が出なくて、越年するんじゃないかという報道が今日出ているのですけれども、これだけ延びているということに対して、それによる日本の影響というのですか、この辺はどういうふうにあるとお考えですか。

A:これは事務局長が空席になってからずっとやってきているわけでして、また結論が出ないと、今までの慣例からすると、2人に絞って、1人の方が有力だということになると、片方が辞退するというような形で取ってきたと思うのですけれども、今の時点ではそれができていないということでありますから、そう遠くない時期にそういった形が取れることを望んでおります。

私からは、以上です。

質疑応答

経済対策による基金造成

Q:よろしくお願いします。
経済対策が今夕決定されます。グリーン基金2兆円も盛り込まれると思うんですが、首相は「グリーンとデジタルが成長の源泉にしたい」ということをおっしゃっておられますけれども、2050年のカーボンニュートラルに向けて基金の中身や意義について、大臣からちょっと御説明を願えますでしょうか。

A:2050年までのカーボンニュートラルの目標は、今世紀後半のなるべく早く、早期という従来の政府方針に比べて大幅な前倒しでもあります。現状の、現在の取組を大幅に加速することが必要となってまいります。この実現のためには、CO2排出の大宗を占めるエネルギー部門の変革と、製造業等の構造転換が不可欠であると考えております。

このため、従来の取組に加えて、今回の補正予算において2兆円の基金を造成をいたしました。

電化と電力のグリーン化、水素、そしてCO2固定・再利用といった重点分野における技術開発・社会実装に向けた取組を今後10年間継続して支援することが必要だと考えております。

政府の2兆円の基金を呼び水として民間企業の研究開発・設備投資を誘発し、野心的なイノベーションへ向かわせたいと考えております。

世界の環境関連資金3,000兆円も呼び込み、日本の国際競争力の強化、そして将来の所得・雇用の創出につなげてまいりたいと思っております。

このグリーンとデジタルというのは経済、これから考えるときの両輪ということだと思っております。グリーン化を進めるためにもデジタルが必要ですし、デジタルは電力が必要になる。そういった中でグリーン化というものも大変重要になると。そういったものも含めて、成長戦略の中で設備投資、また研究開発等を進めてまいりたいと考えています。

水素活用

Q:水素について伺います。
昨日、民間企業が参加する推進協議会ができましたけれども、政府として水素導入拡大にどう取り組むのか。年末の実行計画で、30年に1,000万トンを目指すという報道もありましたけれども、そこも含めてお伺いいたします。

A:水素は大変重要なテーマであると考えております。発電・輸送・産業など様々な分野の脱炭素化に貢献することが可能なエネルギーであり、カーボンニュートラル実現に不可欠と認識をしております。

このため、これまでの、例えばFCV、乗用車における活用に加えて、水素を新たな電源として位置づけるとともに、電化で対応できない製造部門において、水素による脱炭素化を追求する等、幅広い分野において水素の活用を促進していくことが重要であると考えています。

その意味で、昨日7日、電力、運輸、産業、物流等幅広い分野から約90社が参加をして、水素バリューチェーン推進協議会が設立をされたことを歓迎をいたします。私も出席をしてまいりました。

水素利用を拡大をし、水素の社会実装を加速する担い手として積極的な活動を期待をしているところであります。経済産業省としても、先般総理が発表された2兆円の基金の活用や、水素ステーションにおける規制改革等の制度整備、国際標準化なども含めた、あらゆる政策ツールの活用を検討し、それらを盛り込んだ実行計画の策定に取り組んでまいりたいと思っております。

これ、供給と需要面において両方ともやっぱり拡大をしていく。そのことによってコストが安くなる、また需要が広がるということにもつながると思いますので、そういった点について、協議会とも連携を取りながら政府としてもバックアップをしてまいりたいと考えております。

大飯原子力発電所

Q:先日、大阪地裁で大飯原発の設置許可を取り消す判決が出ましたが、それについての受け止めと、原発行政への何か影響があるのであれば、そういったことも教えてください。

A:12月4日、大阪地裁において関西電力大飯原子力発電所3・4号機に関する設置変更許可を取り消す旨の判決が出されたものと承知をしております。

本件訴訟の当事者ではないため、コメントは差し控えたいと思いますけれども、今後、関係省庁において判決内容を精査の上、的確に、適切に対応していくものと認識をしております。

その上で原子力発電所については高い独立性を有する原子力規制委員会が、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めたもののみ、その判断を尊重し、再稼働を進めるという政府の方針には変わりはないということであります。

ALPS処理水

Q:お世話になっております。よろしくお願いします。
東京電力福島第一原発のALPS処理水の関連なんですけれども、対策チーム会合からおよそ、チーム会合の開催から大体1か月半ぐらいが経過しましたけれども、その後、関係省庁間の協議の進捗というのはいかがになっているのかというのをお伺いしたいのが1点。

それから、政府方針の決定の時期について、今のところお考えというのはいかがでしょうか。

A:この前のチーム会合の各省庁のやり取りというのは、今も続けております。そして、進めるべきものは進めていくということだと思いますし、また少しでも多くの理解を得るための活動も現在しているということであります。そういった中で適切な時期に判断をしてまいりたい、責任を持って判断をしていきたいと思っております。

大飯原子力発電所

Q:大飯原発の関連で、大臣これまで何度も「原発の信頼回復に向けて取り組んでいく」とおっしゃっていましたけれども、新規制基準に基づく規制委の判断にけちがついたという。これだと、なかなか信頼回復というのは厳しくなってくると思うんですが、国としては、まあ、当事者でないとはいえ、国としてはどのように今後信頼回復に努めていきたいと思っていますか。

A:原子力発電所の安全性については、高い独立性を有する原子力規制委員会が判断を行うものということで私は考えております。私からのコメントは差し控えたいと思います。当事者が答えるべきものであって、裁判の中身について私からコメントすることはありません。

以上

最終更新日:2020年12月14日