(令和2年12月4日(金曜日)10時48分 於:本省会見室)

冒頭発言

茂木大臣のアフリカ訪問

【茂木外務大臣】まず私(大臣)の海外出張についてでありますが、諸般の情勢が許しましたら、私(大臣)は来週からアフリカのチュニジア、モザンビーク、南アフリカ及びモーリシャスを訪問する予定であります。
 今回の訪問では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携、そしてポスト・コロナを見据えたビジネス関係の強化や、TICAD8に向けた連携を通じて、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」をアフリカで力強く推進をしていきたいと考えております。
 ご案内のとおり、チュニジアは次回のTICAD8の議長国になるわけであります。南アフリカ、そしてモザンビーク、モーリシャス、「自由で開かれたインド太平洋」の一番東側に位置する地点でありまして、そういった国々と二国間関係、そして、今申し上げた「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、様々な議論をしてきたいと思っております。

日英EPA

【NHK 山本記者】2点お願いしたいんですけれども、最初に英国との経済連携協定についてですけれども、今日の参議院の本会議で承認される見通しになっています。今国会の審議を振り返ってのご所感と、今後の課題などがあればお願いいたします。

【茂木外務大臣】今国会を振り返ってというか、日英EPA交渉自体は6月9日に開始をいたしまして、8月に私(大臣)が直接訪英をして、トラス国際貿易大臣と、丸2日にわたって膝詰めで交渉を行いまして、主要論点についてその時点で一致をし、9月11日に大筋合意、10月23日に署名に至ったと。その後、国会に提出をして、今日、参議院でご了解いただきたい、このように思っておりますが、この日英EPA交渉も、国益と国益がぶつかる非常に難しい交渉でありましたが、英国のEU離脱によりますマイナスの影響を回避しつつ、できるだけ高いレベルのルールを規定することによって、またグローバルな戦略パートナーとしての日英両国が、国際社会のルール作りを主導していく、こういったことについて日本と英国との共通認識をしっかりと確立をでき、交渉から4か月半という異例の早さで、合意・署名に達することができたのではないかなと、こんなふうに考えております。
 この日英EPAによりまして、EU離脱後の英国との間で、移行期間終了後も、つまり今年が終わってからもということでありますが、日系企業のビジネスの継続性を確保し、高い水準の規律の下で、日英間の貿易・投資が促進されることが期待されます。
 我が国は、自由で公正な経済圏を広げるべく、これまでTPP11、そして日EU・EPA、日米貿易協定の締結など、国際的な取組、これをリードしてきたわけでありますが、この我が国が、日英EPA締結することによりまして、自由貿易を更に推進していくと、こういう力強いメッセージを、国際社会に発信することができた意義は大きい。このように思っております。

香港情勢

【NHK 山本記者】別件になりますけれども、香港情勢について伺います。
 中国に批判的な論調で知られる新聞社の新聞の「りんご日報」の創業者らが詐欺の疑いで警察に逮捕されて、その後、起訴されました。一昨日には民主活動家の周庭(しゅう・てい)氏らに禁固刑の判決が言い渡されています。大臣、ご見解があればお願いいたします。

【茂木外務大臣】我が国として、昨今の香港情勢について重大な懸念を強めていることは繰り返しお伝えをしてきているところであります。今回の周庭氏、アグネス・チョウ氏をですね、含みます3名の判決であったりとか、「りんご日報」の創業者でありますジミー・ライ氏の収監等、これまでの一連の事案が、香港が享受してきた民主的、安定的な発展の基盤となる言論の自由や報道の自由、結社・集会の自由にもたらす影響等について、重大な懸念を持っているとともに、その動向を注視しているところであります。
 香港は、我が国にとりまして、緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして、「一国二制度」の下に、自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要であるというのは、我が国の一貫した立場であります。
 このような我が国の懸念と考え方については、先般の王毅(おう・き)国務委員の訪日の際に、私(大臣)からももちろん、そして総理からも伝達したほか、これまで中国側に様々な機会に伝達をしてきております。引き続き関係国とも連携しつつ、適切に対応していきたいと思います。

対面外交の重要性

【ジャパンタイムズ 杉山記者】対面外交についてお伺いします。今年はコロナで対面外交がストップしまして、オンラインで先ほどの英国との通商交渉ですとか、国際会議にも、大臣、出席されたかと思いますけれども、実際にこのオンライン外交というのを通じて、便利に思ったことだとか不便に思ったこととか、オンライン外交においてどのようなお考えをお持ちなのかということと、改めてオンラインと比べて、対面で外交することについての意義などですね、大臣のご認識をお聞かせください。

【茂木外務大臣】今年の場合、1月から中国で新型コロナが拡大をすると、そして、3月以降はそういったものがイタリアをはじめ欧州に広がっていくという中で、私(大臣)は、今年前半の海外出張の方も、ミュンヘン会議が最後になりまして、その後、例えばG7の外相会合等もオンラインで行うという形で、テレビ会議、更には電話会談、恐らく今年、90回近くやっているのではないかと思います。
 物理的に離れている中で、比較的会議そのものは持ちやすい。また、時間帯の問題、時差はありますけれど、バイの電話会談も、比較的日程というのは設定しやすいものがありますが、どうしても時間的に限られると。なかなか、電話会談を2時間も3時間もやるということになりませんから、どうしてもテーマを絞って、議論をしなければならないということであります。
 一方、対面外交については、私(大臣)の場合、8月の英国訪問、ここから再開いたしまして、各国の要人と直接会って、二国間関係の強化であったりとか、国際社会が直面する課題について、これはかなり向こうに行っていますから、時間をかけてじっくり議論をすること、そして理解を深めることの重要性、身をもって実感をしているところであります。
 相手国を訪問することによりまして、限られた時間のテレビ会議、また電話会談とは異なって、より時間をかけて突っ込んで意見交換を行うことができ、また、政府首脳を含みます直接のカウンターパート以外の要人とも、意見交換をする機会は得られると。そういった関係で、二国間関係、幅広く広めるという意味でも意義があると感じております。
 特に国益をかけた今回の日英EPAのような通商交渉であったりとか、機微にわたる外交上のやり取り、これはどうしても電話であったりとか、オンラインではなく、対面で膝詰めの話合いが必要だと思っております。実際、先ほど申し上げましたが、日英、交渉から4か月半という異例のスピードで、協定に署名することができたと、これは、私(大臣)自身が英国を訪問して、バイ会談も含めて、テタテも含めて、向こうのトラス国際貿易大臣との間で、長時間にわたる対面での交渉を行ったと。また、その過程で信頼関係を築けたと。こういったことが大きいのではないかなと思っております。
 更に、私の海外訪問だけではなくて、10月6日には、日米豪印の外相会合「QUAD(クワッド)」も開かれましたし、先日も中国の王毅国務委員、日本を訪れて日中外相会談、これも東京で開催することができたと。今、国際社会全体の中で、かなりこういった直接訪問とか、いろいろな会議を日本で開くということでは、結構、日本の外交、先頭を行っているのではないかなと思っておりまして、今後も、制約は確かにありますが、それでも対面外交を含みます、必要な外交努力は続けていきたいと思っています。

衆議院「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」(野党からの質疑要求)

【琉球新聞 安里記者】すみません、昨日ですね、衆議院の沖縄・北方特別委員会の質疑は開かれなくなったということで、野党がですね、抗議の会見をいたしました。その理由が大臣の外交日程を理由だということで、それに対する受け止めについてちょっと、お伺いできればと思います。

【茂木外務大臣】国会日程は、国会でお決めになることだと思っております。

茂木大臣のアフリカ訪問

【日本経済新聞 加藤記者】先ほど発表になった、アフリカ訪問の日程についてお伺いいたします。訪問先のモーリシャスでは、7月に日本企業が所有する船舶の重油の流出事故がありました。先日、大臣も先方の首相とお電話された際に、かつてない規模の支援を検討するという旨お伝えになられたと思います。今回の訪問で、そういった具体的な支援策についてお伝えするお考えがあるのかどうかお伺いします。

【茂木外務大臣】モーリシャス、インド洋の地政学な要衝に位置をして、「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上でも、重要な海洋・民主主義国家であると考えているところであります。訪問が実現すれば、8月の油流出事故を受けて、日本として短期で行う支援、これはすでにやっているわけでありますが、中長期的な協力の実施状況について伝達をするとともに、幅広い分野での連携、確認をしたいと思っているところであります。

【朝日新聞 佐藤記者】今日発表された、アフリカ外遊に絡んでお尋ねするんですけれども、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に果たす、この直接訪問の意義ということについて伺いたいんですけれど、大臣は欧州、東南アジアを訪問されてですね、「自由で開かれたインド太平洋」の実現ということも訴えてこられたかと思うんですけれども、それに引き続く形で今度アフリカに直接行かれてですね、このコロナ禍の下で直接訪問されると、それが「自由で開かれたインド太平洋」の実現に果たす意義について教えていただきたいと思います。

【茂木外務大臣】質問がちょっと複雑で、私には分かりません。

香港情勢

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濵本記者】香港情勢について質問ですけども、今回、実刑を下された3名の活動家のうちの1人のアグネス・チョウさんは、実刑で判決が出される前にもう一度日本に行きたいというような旨の発言をしていたと聞いております。日本政府、及び外務省は今後、今回の判決に対する、正式な非難を表明する声明を発出する予定はあるでしょうか。また、3名の保釈に向けて何か具体的な行動をとる予定はおありでしょうか。よろしくお願いします。

【茂木外務大臣】香港情勢、そして今回の3名の判決であったりとか、収監等につきましては、先ほどの質問で丁寧に答えさせていただいたとおりだと思っております。

ベルリンの慰安婦像

【共同通信 中田記者】ドイツベルリンのですね、慰安婦像の設置について伺います。日本がですね、撤去に向けた努力を進める中で、先般ミッテ区で設置継続を支持する趣旨の決議が行われました。今後その撤去に向けて、日本政府としてどのように取り組むかのお考えをお願いいたします。

【茂木外務大臣】今般、ミッテ区は10月7日付けで発出していた慰安婦像の撤去命令を撤回する判断を下したわけであります。今回の決定は、我が国政府の立場やこれまでの取組と相容れない、極めて残念なことであると考えております。引き続き、様々な関係者にアプローチをして、我が国政府の立場について説明を行うとともに、像の速やかな撤去を引き続き求めていきたいと思っております。