財務省・新着情報

  1. 開会
  2. 最近の関税政策と税関行政を巡る状況
  3. スマート税関構想2020について
  4. とん税及び特別とん税の特例措置について
  5. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 田島関税局長
委員 伊藤 恵子 源新審議官
浦田 秀次郎 小宮審議官
金原 壽秀 渡部総務課長
河野 真理子 中澤関税課長
工藤 操 河西参事官
古城 佳子 加藤参事官
坂元 龍三 福田監視課長
佐藤 英明 奈良井業務課長
清水 順子 米山調査課長
杉山 晶子 鈴木事務管理室長
根本 敏則 松田原産地規則室長
野原 佐和子 鈴木税関調査室長
春田 雄一 井田経済連携室長
古谷 由紀子 石川知的財産調査室長
三石 誠司 外務省 安部経済局国際貿易課長
山西 健一郎 農林水産省 福島大臣官房国際部国際経済課長
専門委員 阿部 克則 経済産業省 福永通商政策局経済連携課長
大橋 弘 国土交通省 谷口港湾局港湾経済課長
国松 麻季
佐々木 伸彦
末冨 純子
藤岡 博
宮島 香澄
村上 秀徳

 

午前10時00分開会

森田分科会長 皆様、おはようございます。時間が参りましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様には、御多用のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 まず、事務局の構成につきましては、本年7月に人事異動がございましたところ、お手元の座席表をもちまして御紹介に代えたいと思います。

 続きまして、7月に着任されました田島関税局長から一言御挨拶をお願いいたします。

田島関税局長 皆様、おはようございます。

7月の人事異動で関税局長を拝命した田島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 委員の皆様方におかれましては、本日、御多忙中のところ御参加を賜りまして誠にありがとうございます。また、日頃から関税政策、税関行政につきまして格別の御指導、御協力を賜りまして、改めて感謝申し上げる次第でございます。

 さて、本日は、キックオフと申しましょうか、今後の審議の参考といたしまして、最近の関税行政、税関行政を巡る状況について担当から順次御説明させていただきますが、その前に一言申し上げたいと思います。

 財務省は経済政策を担当する役所の一つでございますが、言うまでもなく、経済は金融と物流の両輪で成り立っているという中で、私ども関税局・税関は財務省で唯一物流を担当する部局であります。その役割を果たすに当たって、私としては、厳格な水際取締り、これはもちろん必要でございますけれども、そうしたことを行いながら、世界と日々熾烈な競争を行っている民間の方々の取組に対応して、より迅速かつ円滑な通関を実現する、それに寄与するということは、貿易の円滑化を通じて日本の国益にかなうものという考えを持っております。

 その意味からしますと、産業界や物流をはじめとする関係業界の方々からもっと忌憚のない意見を伺えるような関係を作っていくことが重要ではないかと考えておりまして、そういった関係を通じて、日々お互い本音で議論しながら、物流をはじめとして貿易手続の円滑化について改善を図っていくことが大変重要だと思っております。この夏から各経済団体や物流団体、関係団体を回り今のようなお話をさせていただいているところでございますが、賛同を頂いておりまして、具体的にどういうやり方でやるかという取組を始めているところでございます。

 そうした中で、制度面に関しましてはまさにこの関税分科会の場でしっかり御議論を頂くことが何よりも大事だと思っておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 本日はこういった形で、実際御参加いただく方とリモートでの御参加の方のハイブリッド形式の会議でございまして、私が着任してからこういう形は2回目でございます。本日もいろいろ御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、どうぞ御容赦いただきまして、積極的な御審議を賜りますようお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

森田分科会長 どうもありがとうございました。

 それでは、早速ですが、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。

 本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。

 まず、今後の審議の参考といたしまして、「最近の関税政策と税関行政を巡る状況」について、小宮審議官と源新審議官より御説明をお願いいたします。

 それでは、よろしくお願いいたします。

小宮審議官 小宮でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速でございますけれども、私からは税関を巡る状況及び税関行政について御説明いたします。

 まず、税関を巡る状況についてでございますけれども、新型コロナウイルス感染症の影響等もございまして大きく変化しているところもございます。その辺も加味しながら御説明をさせていただきます。

 資料1の3ページ及び4ページを御覧ください。日本の貿易額の推移、日本の輸出入の最近の動向でございます。まず、貿易額の推移でございますが、中長期で見れば右肩上がりで推移しており、近年は堅調な回復基調をたどっているかと思います。4ページの直近の動向でございますが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響が輸出入の動向にも現れたものと考えられます。輸出額の対前年同月比の伸び率に注目いたしますと、対世界は5月を底に徐々に回復してきており、9月にはマイナス幅も縮小してマイナス4.9%となっております。また、対中国は7月からプラスに転じ、9月にはプラス14.0%となっており、対米国は9月でプラスに転じ、プラス0.7%となっているところでございます。

 次に、5ページ、6ページを御覧下さい、税関における主要業務量の推移でございます。観光立国の推進や電子商取引の進展を受け、近年では、グラフのとおり、右肩上がりで推移しておりました。6ページを御覧いただきますと、直近の推移では、新型コロナウイルス感染症の影響もございまして、入国者数及び船舶・航空機入港数は大幅に減少しております。他方で、小口も含めて航空貨物の輸入許可件数はこれまで以上に大幅に増加しているところでございます。

 7ページから9ページを御覧いただきたいと思います。新型コロナウイルス感染症等への対応でございますけれども、税関におけるこの感染症の対応を御紹介いたしますと、発生初期には、武漢からの政府チャーター機による帰国者への対応をはじめ、さらには横浜、長崎のクルーズ船での陽性者を含む旅客の下船対応を行いました。特に横浜でのダイヤモンド・プリンセス号の事案につきましては、夜間や休日も含めて対応したほか、検疫所からの協力依頼により監視艇を使用した検疫業務物品の運搬を実施するなど、関係機関と連携して適切に対応しております。また、9ページにもございますとおり、サテライトオフィスの設置や業務量の変化に対応するための職員の配置転換等、柔軟な対応も併せて行っているところでございます。

 続きまして、10ページを御覧ください。関税局の感染症等への対応でございますけれども、優先通関及び簡易通関、さらには押印の省略等、通関手続等に係る柔軟な対応に加えまして、新型コロナウイルス感染症及びその蔓延防止のための措置の影響について、関税法に基づき特定災害として指定をいたしまして、納付期限の延長等の措置を講じてきたところでございます。

 続きまして、税関行政について最近の状況を御説明させていただきます。12ページは皆さんよく御案内の税関の3つの使命でございますけれども、この使命3本柱に沿って以降説明させていただきます。

 14ページを御覧いただきたいと思います。まず、安全・安心な社会の実現に関連して、迅速と厳格を両立した取締りでございます。先に御紹介いたしました3つの使命のうち、安全・安心な社会の実現と貿易円滑化の推進を両立するため、税関では先進技術を積極的に活用しているところでございます。資料の左側に紹介しておりますEゲートは、2019年より導入を開始したもので、現在6大空港に配備をしております。電子申告端末による携帯品申告の電子的提出が可能となったことにより、当該申告を行った旅客は、税関検査場電子ゲートを通過することができるようになり、より速い通関が実現いたします。一方で、同時に取締り水準についてもレベルアップさせていくことが重要でございます。資料にございますとおり、X線CTスキャン検査装置は自動識別・画像解析機能を搭載してございまして、要注意貨物の悉皆的・効率的な検査を可能としております。

 15ページを御覧ください。この左下のグラフにございますとおり、電子商取引の拡大により輸入貨物の小口化が進展しており、SP貨物の輸入も急増しております。SP貨物や国際郵便物は一般貨物に比べてより速い配達が求められるため、迅速な通関も求められております。他方で、右下のグラフのとおり、不正薬物の昨年の摘発件数の約6割がSPや国際郵便物から摘発されている状況になっておりまして、取締りの強化が必要となっております。

 16ページを御覧ください。このような中、限られたマンパワーの下、取締りを強化するため、税関ではX線検査についての機械化・自動化、さらにはAIを活用した検査効率化の検討を進めております。

 17ページを御覧ください。令和元年における不正取引の押収量でございますけれども、史上初めて3トンを超えてしまいました。令和2年1月から6月における摘発件数、押収量は、コロナ等の影響もございまして減少いたしましたけれども、コカイン、MDMA等の麻薬及び大麻リキッド等を含む大麻樹脂等の押収量は増加してしまっているところでございます。また、国連薬物犯罪事務所の報告書によりますと、今後の世界経済の落ち込みにより長期的には麻薬生産や密輸、使用を拡大するおそれがあるとの懸念も示されておりまして、引き続き厳格な取締りを実施してまいります。

 18ページを御覧ください。金密輸入取締りに関してでございます。平成30年の罰則の強化もございまして、金密輸の摘発件数及び押収量はともに大幅に減少いたしました。昨年10月の消費税引上げ後も大幅な増加は認められておりませんが、他方、大口事案の摘発もございまして、価格も高止まりしていることから、引き続き厳格に対応する必要があると考えております。

 19ページを御覧ください。知財でございます。税関における知的財産侵害物品に該当するか否かを認定する手続におきましては、大半は輸入が差し止められているところでございますけれども、一部輸入者がその認定手続きの過程におきまして争う旨の申出をしており、その件数が増加しているところがございます。そして、その多くは個人使用目的の主張となっているところでございます。商標法上は、個人使用目的での輸入は商標権の侵害とはならず、税関では個人使用目的で輸入される模倣品を差し止めることが制度上難しい状況でございます。こうした状況に対応するため、知財推進計画2020に基づきまして、現在、制度改正に向けて特許庁と検討を進めているところでございます。

 続きまして、大きな柱の2つ目、適正かつ公平な関税等の賦課・徴収に関連して御説明します。

 21ページを御覧ください。収納額の推移でございますけれども、令和元年度に税関が収納した税額は約9兆2,000億円、これは国税の税収の約14.9%に相当する規模になっております。

 22ページを御覧ください。関税の改正要望でございます。税率関係の改正要望につきまして、令和3年度の改正の主な要望を御紹介させていただきます。まず、個別品目の関税率見直しにつきましては、医療・介護等において使用されているポリ塩化ビニール製使い捨て手袋の無税化の要望等を頂いております。また、開発途上国等の産品に対して適用する特恵税率の適用期限の延長、さらには暫定税率の適用期限の延長などの要望も頂いているところでございます。これらにつきましては次回以降の当分科会におきまして御審議いただく予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 23ページを御覧ください。HS2022への対応でございます。我が国の関税率表はHS条約附属書の品目表に基づいて作成されておりまして、技術革新による新規商品の登場等に対応するため、WCOにおいておおむね5年ごとに見直しがなされております。次期のHS2022につきましては2022年1月1日に発効することが確定しておりまして、締約国として我が国の関税率表等をそれに適合させる義務がございます。具体的には、次の改正におきましては、電子たばこや食用の昆虫類、ドローンといった商品に係る新しいHSコードが設けられることになっておりまして、これらに対応すべく関税率表を改正する必要がございます。これも次回以降の審議会、当分科会で取り上げさせていただく予定でございます。

 最後に、3つ目の柱についてでございます。25ページを御覧ください。輸出入申告官署の自由化についてでございます。平成29年10月に自由化が実施されて今月で3年が経過いたしました。特に平成30年、台風21号の際には関西地域の空港や港湾が大規模な浸水等の被害を受けたことがございましたけれども、この自由化制度によりまして申告先の税関や通関業務を行う営業所を柔軟に変更して輸出入申告を行うことができたという声も頂いているところでございます。今後も引き続き利便性の向上に努めてまいりたいと考えております。

 そして、26ページ、最後でございますけれども、AEO制度についてでございます。AEO制度は、貨物のセキュリティ管理と法令遵守体制が整備された事業者に対して手続上の迅速化・簡素化の措置を提供することで、物流の一層の円滑化とセキュリティ確保の両立を図る制度でございます。現在、事業者数は、申告官署の自由化の実施前後で拡大しておりまして、本年9月時点で708者となってございます。

 私からの説明は以上となります。

源新審議官 続きまして、源新でございます。私からは大きな変化が続いております最近の国際関係の動向について、今年1月以降の動きを中心に御説明させていただきます。

 初めに、日英EPAなど経済連携協定の関係であります。資料、28ページを御覧ください。英国のEU離脱に際して、本年末までは移行期間といたしまして日英間には日EU・EPAが適用されております。移行期間後も日英間でビジネス環境の継続性を確保するためには日英EPAが来年1月1日に発効することが必要で、さもなくばEPA特恵税率が適用されなくなるという事態が迫っておりました。

 そこで、次の29ページのとおり、本年6月から日英EPA交渉が開始され、3か月という短期間での交渉を経て9月11日に大筋合意となりました。そして、本日、茂木外務大臣とトラス国際貿易担当大臣により東京で署名が行われる予定でございます。政府としては、来年1月1日の協定発効に向けて、この秋の臨時国会で承認を頂くことを目指して必要な作業を進めております。ちなみに、この協定発効に際して、関税関係の法律改正は不要となっております。

 なお、英国とEUとの間では現在も交渉が続いております。交渉結果は日本にも影響を及ぼしますので、動向を注視しておりますが、その行方は予断を許さない状況であります。自動車業界をはじめ英国進出の日本企業は、交渉が決裂して関税引上げとなることに大きな懸念を有しておりまして、英国EU間の交渉妥結が期待されているところであります。

 30ページで日英EPAの概要を御紹介いたします。物品貿易では、輸出入ともに日EU・EPAの関税率などが現行のまま移行することに加えまして、日本から英国への輸出については鉄道車両などの即時撤廃が追加的に確保されます。輸入については、農産品で新たな関税割当ては設けられておりません。ルール分野では、原産地規則で、EUで生産されたものを日英の原産材料として認める「拡張累積」が導入されます。電子商取引、競争政策、ジェンダーにつきましては、日EU・EPAより先進的な内容となっております。

 次の31ページのRCEP交渉につきましては、昨年11月の首脳会議で2020年の署名を目指すことが合意されております。本年8月の後、今月14日にも閣僚会合が行われまして、我が国からは梶山経済産業大臣が出席いたしました。今回の会合では、残された論点に関する交渉状況が報告されたほか、今後の進め方等について議論されました。

 32ページを御覧いただきたいと思います。日本は現在21か国・地域と18の経済連携協定を署名または発効済みで、貿易総額に占めるEPAあるいはFTAなどが発効済み・署名済みの国との貿易額の割合は52.4%となっております。交渉中のRCEPが署名に至った場合、この比率は79%になると試算されているところであります。

 そして、33ページのとおり、EPAの発効だけでなく、EPAが一層利用されるようにすることが重要と認識しております。関税局・税関では、原産地規則、原産地の証明制度の理解促進を目的といたしまして、新規EPA発効時を含む説明会の開催やEPAに関する情報の提供、締約国への働きかけを積極的に行っておりまして、今後もこの取組を続けてまいります。

 次に、新型コロナウイルス感染症と世界貿易との関係について御紹介いたします。34ページは、今月、世界貿易機関(WTO)が公表した世界貿易の見通しの概要です。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年第2四半期の世界貿易は、実績額ベースで前年同期比21%の減少、貿易量ベースでは前期比14.3%減と史上最大の落ち込みとなりました。一方、2020年全体の見通しは、貿易量が前年比マイナス9.2%減と4月の見通しから上方修正されております。2021年は貿易量ベースで前年比プラス7.2%と増加に転じるものの、依然としてコロナ危機前のトレンドを下回って推移するという見通しとなっております。

 こうした状況の下、35ページでありますが、世界税関機構(WCO)におきましても、新型コロナウイルス感染症への対応を行っております。例えば途上国を含む各国税関における医療物資の迅速な通関などの対応事例を取りまとめて紹介するほか、WTOとの共同声明を発表するなど、関係国際機関との連携を強化しながらコロナ禍の下での円滑な貿易に向けた取組が行われております。なお、このWCOは現在日本人がトップを務めている唯一のグローバルな国際機関であります。

 続いて、38ページから我が国の関税技術協力について簡単に御紹介いたします。我が国が実施する関税技術協力の実施形態や昨年度の実績は次の39ページのとおりでありますが、本年3月以降は、新型コロナウイルス感染症の影響により、対面方式ではなく、オンラインで実施しているところであります。

 次の40ページ、NACCS型通関システムの導入とそれによる税関の近代化をベトナムとミャンマーに対して支援してきているところであります。なお、日本のNACCSは、税関手続、貿易管理手続などといった国に対する手続だけではなく、民間業務を含め貿易手続全般に係る総合物流情報プラットフォームとして機能しておりまして、シングルウィンドウ化を実現しているものであります。

 43ページからWTOの動向について御紹介いたします。現在WTO事務局長の選出プロセスが進行中で、ナイジェリアと韓国の候補が最終ラウンドに進出しております。早ければ今月中に新事務局長が決定される可能性があります。

 44ページのとおり、新事務局長にはWTO改革の着実な前進が求められます。WTOの機能の改善は喫緊の課題でありまして、現在、主に3つの論点について議論が行われております。1つ目は紛争解決制度の改革です。上級委員会は新規案件の審議を開始できない状況が続いております。日本は、共同提案を行うなど、米国を含む幅広い国々と連携し、上級委員会を含む恒久的なWTO制度改革に向けて取り組んでおります。

 2つ目は協定履行監視機能の強化であります。各国によるWTO協定の通報義務の履行を確保する観点から、日本は米国、EU等と共同提案した具体的な通報強化策を基に議論を重ねております。

 3つ目は、45ページ、ルールの現代化であります。急速に進むデジタル化を踏まえ、日本はオーストラリア、シンガポールとともに共同議長となり、電子商取引の貿易関連の側面に関する新たなルール作りを進めております。また、産業補助金ルールの強化などについても議論されております。

 次の46ページは米中貿易摩擦の動向です。繰り返されてきた米中の関税引上げ措置ですが、本年1月に両国は第1段階の合意に署名いたしました。なお、本年9月、WTOは、米国の対中追加関税がWTO協定に整合しないとするパネル報告書を発表いたしましたが、これに対して、米国側は、報告書は第1段階の合意には何ら影響しないとの声明を発表しておりまして、今後も米中両国の動向から目が離せないところであります。

 国際関係は以上ですが、全体を通じて言えることは、WTOを取り巻く状況は依然として厳しく、世界的に保護主義への懸念が高まる中、日本は一貫して自由貿易主義を掲げ、経済連携協定交渉の成果を着実に積み重ねてきているほか、WCOや途上国の国際協力面でも取組を続けてきているということであります。

 最後、48ページで税関の広報活動について一言触れさせていただきます。御説明してきたとおり、税関の役割が多岐にわたりまして、その重要性はますます高まってきております。こうした取組を国民に広く知っていただけるよう、関税局・税関は広報活動に力を入れております。最近は、手前みそで恐縮ですけれども、多くのテレビ番組で取り上げられるなど成果を上げてきていると考えておりますが、決して現状に甘んじることなく、より効果的な広報を心がけてまいりたいと思っております。委員の皆様におかれましても、税関行政への引き続きの御理解と御協力をお願い申し上げまして、私からの説明は以上とさせていただきます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 続きまして、スマート税関構想につきまして、鈴木税関調査室長より御説明をお願いいたします。議題(1)に関します御質問、御意見等は、この説明後にまとめて頂きたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、鈴木室長、お願いいたします。

鈴木税関調査室長 税関調査室長の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。

 スマート税関構想の検討におきましては、森田分科会長をはじめ数人の委員との勉強会で案を取りまとめ、他の委員の皆様から頂いた貴重な御意見も参考にしつつ、本年6月、関税局作成の中長期ビジョンとして公表させていただきました。皆様の御協力に改めて御礼申し上げます。

 それでは、資料2-1「スマート税関構想2020の概要」の18ページを御覧ください。本構想は、貿易の健全な発展と安全な社会、そして豊かな未来を実現するために、世界最先端の税関を目指すとしております。中長期ビジョンを4つのキーワードで整理しました。1つ目のキーワードはSolution、貿易関係事業者の利便性向上のため、チャットボットなどの活用や検査のオートメーション化などに取り組んでまいります。2つ目はMultiple-Access、関係する機関や事業者などとの情報連携を拡大・強化し、取締強化と貿易円滑化のさらなる両立に向け、具体的には事前情報について一層迅速かつ適切な入手などに取り組んでまいります。3つ目はResilience、社会構造の変化や災害リスクなどに備え、税関行政を維持・発展させるため、ドローンなども活用してまいります。4つ目はTechnology&Talent、業務の高度化のため、先端技術を積極的に活用してまいります。この頭文字を合わせるとSMARTとなっております。また、新型コロナウイルス感染症流行を踏まえ、例えば旅客と職員との非接触を実現するEゲートの利用促進やテレワーク環境の強化、テレビ番組でも紹介されました非接触で体内の覚醒剤を探知する装置の開発なども盛り込んでおります。また、今事務年度からは経済界、産業界からも御意見を頂き、可能なものについては取り込んでいきたいと考えております。

 各施策につきましては工程表に沿って進めてまいりますが、前倒しできるものについては前倒しできるように努力していきたいと思います。進捗につきましては、今後、委員の皆様にも御紹介してまいります。本構想に掲げた施策については毎年フォローアップするとともに、構想全体について3年ごとをめどに見直しを行う予定でございます。

 私たち関税局・税関は、一層安全で豊かな社会を実現させ、国民一人一人の幸せな未来を守るよう努めてまいります。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明に限らず、関税政策、税関行政につきまして幅広く御質問、御意見等を頂ければと思っております。清水委員、どうぞ。

清水委員 御説明、ありがとうございました。

 2つございまして、まずはAEO制度についてです。こちらを見ますと、輸出者、輸入者の申請はこの制度が始まってすぐは増えたのですが、あとは頭打ち状態ということが分かります。で、その中身を見ますと、ほぼ大企業、それから商社といったところがこの制度を使っているわけで、それ以外の中小企業はこのAEOを申請してはいない状況かと思います。AEO制度による円滑な貿易というのは非常に役立っている一方で、大企業だけではなくて、中小も申請して利用できるような、AEOを補佐するような制度というのがあってもいいのではないかと思っております。そういったことに対して何か構想などはございますでしょうか、ということが最初の質問です。

 第2の質問は、先ほど御説明いただいたように、FTA、EPAでのカバー率も近年急速に上がってきたということですが、再三この関税分科会でもその利用率がどの程度なのかということが話題になってきたかと思います。今回の資料では、EPA、FTAの利用率を計算するのはすごく難しいので、そういった資料ではなく、利用者を全体で100%としたときにどういったEPAが使われているかという資料をお示しいただいております。しかし、過去5年間でどの程度利用数が増えているのか、どのような企業、どのような産業がどのように利用しているのか、そしてこの制度がどのように役に立っているのか、あるいは、何がまだ足りないのかというのを明らかにする上では、データを使って緻密に分析していくことが今後非常に重要になっていくかと思います。その点につきましては、専門家の方にお願いする、あるいは税関のデータを使うといったことで、今後より詳細な分析を基に、何が足りないのか、どういったことを今後進めていけばいいのか考えていくということをぜひ御提案させていただきたいと思います。

奈良井業務課長 業務課長の奈良井でございます。

 AEOについて、中小企業の利用というところで御指摘を頂きました。AEO制度は事業者の規模に関わらず利用可能な形にはなっており、私どもは国際的なサプライチェーンの中で中小企業は非常に重要だと考えております。一層の利用促進のための運用上の工夫といたしまして、例えば中小企業では社内教育とか内部監査を自前でやるのはなかなか難しいところもあろうかと思いますので、こういうものは外部委託でもできるようにしたり、あるいは、承認とか認定要件のところにつきましても、規模ということではありませんけれども、その取り扱う貨物でありますとか、業務の実態に即した形で運用するような工夫をしてきているところでございます。

 今後も中小企業の参加、利用拡大は重要だと思っておりますので、引き続きいろいろ工夫を重ねまして、貿易円滑化とセキュリティの確保の両立を図っていくことを工夫してまいりたいというふうに考えております。

井田経済連携室長 経済連携室長の井田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

御質問を頂いておりますEPA利用率の把握というのは非常に重要であることは我々も十分認識しているところでございまして、まさに清水委員の御指摘のとおりというふうに考えております。一方で、清水委員からすごく難しいというお話もございました。これは何かといいますと、EPAというのは、当然、貿易ですので、輸出と輸入、両方を把握する必要があるところでございます。EPAは、一般的に日本とほかの外国、もしくはマルチのものもございますけれども、お互いに約束事として協定、合意をしているものでございますので、双方の貿易のデータを把握する必要があるところが1つのポイントでございます。今までのEPAでこういうところに着目したものはなかなかございませんでしたが、清水委員も御存じのとおり、去年2月に発効した日EUでは、その協定の中で貿易データの交換について規定がございます。これに基づきまして1回目の貿易データの交換が行われまして、それぞれ日本側、EU側のEPAの利用状況についてのデータは、今年6月に公表され、外務省のホームページに掲載されているところでございます。

 今申し上げたとおり、EPAの利用率を分析するには輸出輸入両面が必要でございますので、ただいま政府として、外務省を中心に、財務省、その他関係省庁でEPA利用率の把握を何とかできないかという検討をまさに始めているところでございます。技術的な事項も含めて外務省を中心に検討を進めておりまして、財務省としてもその検討に積極的に貢献しているところでございます。早期に利用率の把握ができるようにということで検討を進めてまいりたいと思いますので、また御報告できるかと思います。

 ありがとうございます。

森田分科会長 清水委員、よろしいですね。

 リモートも含め多くの方が挙手されておりますので、リモートでご参加の伊藤委員、春田委員、宮島委員、古谷委員、それから会場にいらっしゃる大橋委員、そしてその後またリモートでご参加の野原委員、最後に会場の河野委員の順番で御発言を頂きたいと思います。

伊藤委員 中央大学の伊藤です。非常に詳細かつ包括的な御報告、ありがとうございます。

 清水委員がおっしゃったこととほとんど同じなので簡潔にコメントさせていただきます。RCEPが発効となるとFTAカバー率自体も8割ぐらいになって、今後、どれだけの国とFTAを結んだかという情報より、やはりどれだけの企業がFTAを利用できているかというのをしっかり見ていくほうが重要になってくるかと思います。ついては、どのような要因がFTAの利用を妨げているのか、どういった企業がFTAを利用できていないのかというところを十分に分析していく必要があるということをコメントさせていただきます。

 先ほど、輸出側と輸入側と両方必要なので外国とも連携して進めていくというお話があって、もちろんそれはぜひお願いしたいのですが、どうも最近のタイ等のデータを使った研究によりますと、特に多国籍企業などは、既に向こうで外資系企業誘致の一環でいろいろな税の優遇措置を受けているので、逆に、既にほかで税の優遇を受けているから、わざわざFTA、EPAの税率を使って輸出入しないという話も出てきたりしています。ほかの様々な制度との整合性、かつ、他にどういう制度があるかということも含めて、より使いやすい制度を考えていく必要があると思いますので、そういった詳細な分析を行って、科学的な証拠に基づいた政策立案ができるような形のデータの整備、公開、利用をぜひ進めていただくようにお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

森田分科会長 ありがとうございました。御意見ということでよろしいですね。

 それでは、続きまして春田委員、お願いいたします。

春田委員 連合の春田でございます。丁寧な御説明、ありがとうございます。

 私のほうからは、働く者の立場からということで御意見、質問をさせていただければと思います。新型コロナウイルス感染症による税関業務への影響に関し、入国者数や船舶・航空機入港数はコロナの影響でかなり減っている一方、輸入許可件数は航空貨物の影響で伸びており、様々な税関業務の中で配置転換等を行いながら進めているというご説明がありました。その状況の詳細と、配置転換による税関業務への影響が気になるところです。

 加えて、コロナ禍において、税関業務に従事されている方にもかなりの負担や、業務量の増加があると思います。こうした点を含めて今の税関業務への影響はどのような状況か、もう少し詳細に教えていただきたいところであります。

 もう1点、AIなどを活用した様々な設備の新たな導入について、広報活動などを通じ、理解・浸透に取り組んでいるとのことですが、それらがどのような効果を及ぼしていると考えているのか、また現時点で認識されている課題などがありましたら教えていただきたいと思います。加えて、それらに関わる人材育成等々の状況、また、現在の税関業務が要は人手不足なのか、それとも、入国者数や船舶・航空機の入港が減っている中、人手余りになのかについても、状況を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

小宮審議官 審議官の小宮でございます。私からお答えさせていただきます。

 まず、コロナの影響に伴う人員の配置の状況についてでございますけれども、資料で御説明したとおり、コロナの影響もありまして小口、SP貨物の輸入申告件数が非常に増えております。したがいまして、小口を中心とした航空貨物検査の必要量が急増しております。他方で、御案内のとおり、旅客は減っているということで、現状では、旅客の旅具検査をする職員を航空貨物検査のほうに応援という形で派遣して対応を行っているところでございます。

 また、全体といたしましても、コロナ禍でございますので、もちろん行政部内もしかりですけれども、税関の手続等を利用する事業者、それから個々の旅客等々、非接触型の行政というものを求めていかなければいけない状況にございまして、その分、いろいろ気を使うところも含めて業務量は増えているというふうに認識しております。分野毎で人を機動的に配置することによって対応しておりますけれども、これが徐々にコロナ禍でも経済が復活してまいりますと、人員の数も含めてより強力な体制を構築していかなければいけないのではないかと感じているところでございます。

鈴木税関調査室長 税関調査室長の鈴木でございます。AI関連につきましてお答えいたします。

 まず一番大きいものとしてデータ分析がございます。税関には申告情報等のビッグデータがありますので、それを分析することによりまして、輸入の申告時のリスクを判定し、職員の審査・検査のサポートをしてもらうことや、税関で事後調査に入るときの会社の選定などの支援をしてもらうことを、今実際にデータをどんどん分析して始めているところです。これにより、よりリスクの高いところに効率的に調査なり審査をしていくことが望まれています。

 教育につきましては大きく3つありまして、1つ目として内部の研修を今進めております。研修は2段階としており、第1段階としてリテラシー、基本的なものは全職員に対してもう始めていますし、第2段階の専門の研修も始めようとしています。2つ目としましては、先端技術に係る知識について素養のある人材を積極的に採用していこうということ。3つ目としましては、業務とシステムの橋渡しができるような人材を確保していきたいということで進めています。

宮島委員 日本テレビの宮島です。

 海外からのネットの取引が増えましたし、人材の取り合いが今後、人口減で激しくなっていく中で、先端技術をどんどん投入していくことが重要だと思います。その中で、14ページにありましたEゲート、これは実際私も空港へ行って顔パスで済んで楽だなと思っているのですけれども、申告書に関してはアプリを入れてやるという形で進んでいると思います。一般国民の感覚からして、今いろいろなところでアプリを入れることが求められて、様々なアプリをスマホに入れて、いろいろな銀行とか観光地とかも全部アプリを入れてスマホの中がごちゃごちゃになっている状況の中で、恐らく普通の人にとっては1年に1回か2回の海外からの帰国のときのために別のアプリを入れるというのはどうなのかなと思うところがあります。デジタル庁も今後設置されまして、政府全体でいろいろなことを進めていくのだと思うのですけれども、こうしたことも政府として1つのアプリで済むよう、全体一括で処理できるような形で考えていただいて、それぞれが別のアプリ、別の形で進んでしまうことがないようにお願いしたいと思います。

 それから、2~3年前にここでも話し合われました金の密輸に関しましては、取組を変えたことで一気に効果が出たなと思っておりまして、これは本当によかったなと思います。

 それから、模倣品に関してですけれども、これは今、個人で売買するサイトなどがありまして、管理者もちゃんと管理しているとはいうものの、明らかに組織的に模倣品を売買しているなというのが普通に見ても分かるような状況が見受けられると思います。ですので、そのあたりは、個人だから問題ないということではなくて、具体的な対策を非常にしっかりと考えていく必要があると思います。

福田監視課長 監視課長の福田でございます。よろしくお願いいたします。

 まさに今御質問を頂きました電子申告、Eゲートに関してでございますが、入国に関しまして税関申告アプリ、こちらは、飛行機の中はネットがつながらないので、そうした中でも使えたり、再度申告する場合には以前の入力の内容が使えるようにということで、入力利便性を高めるものとして税関アプリを採用しております。

 ただ、今お話しいただきましたように、税関申告アプリに関しましてはスマホへのインストールが必要になるということでございます。こちらに関しましては、利用者の皆様のニーズに合わせて、インストールせずとも使えるような形で、ウェブベースでの税関申告も可能となるように現在検討しておりまして、こういったことを実現していきたいと考えております。

 また、入国に関しましては税関の申告がメインとなるわけですけれども、コロナの下では検疫所におきましてコロナに関する質問も電子的に受け付けようとしているシステムを今準備中となっております。こちらに関しましても税関の申告と合わせて電子的に一体で行えるようにしたいと思って、併せて検討しております。いずれにいたしましても、今後とも、CIQにおける連携も含めまして、より使いやすい電子申告、Eゲートに努めてまいりたいと考えております。

奈良井業務課長 業務課長でございます。

 知財の個人使用のところの御指摘でございましたけれども、これまでも個人使用目的を仮装していることが分かるものについては厳格な取締りをやってきているところでございますけれども、そうではないところも含めまして、個人使用ということで持ち込まれているものにつきまして、今、特許庁と具体的な対応について検討を進めているところでございます。次回以降の審議会の中でも御議論いただけるよう、今検討を行っているところでございます。

古谷委員 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の古谷と申します。4点ほどございます。

 まず1点目ですけれども、19枚目のスライドの知的財産権の差止実績が非常に増えていると伺ったのですけれども、実際の市場での実態との関係性を知りたくて、教えていただきたく質問させていただきました。

 2点目ですが、30枚目の日英EPAに関して、ルール分野で新しいルールなども入ったということですが、日EU・EPAについてはサステーナビリティに関わる市民対話というのが項目として入っております。この項目についても日英EPAに入っているかということを質問させて下さい。

 3点めですが、49枚目のスライドで、広報活動ということで御努力されていると伺いましたが、その主な内容を教えていただきたくお願いいたします。

 最後になりますが、スマート税関に関して、先ほどビッグデータのAI解析というお話しいただきまして、今後それが効率化であるとか公正な関税であるとかに寄与するということは分かるのですけれども、プライバシー等、人権の配慮に関して、人権方針あるいはプライバシー方針といった方針を定めていらっしゃるのかどうか教えていただきたくお願いいたします。

奈良井業務課長 業務課長の奈良井でございます。

 知財侵害物品の差止めの状況と国内の模倣品の状況との関係についてのご質問でございました。特許庁にも確認をしておるのですけれども、御質問に直接のお答えになるような数字としては把握できているものがないということでございました。このあたりの実態もよく調べていく必要があるという問題意識として御指摘を受け止めたいと思います。

井田経済連携室長 経済連携室長の井田でございます。

 古谷委員から日英EPAの市民対話について御質問を頂いております。委員の御指摘のとおり、日EU・EPAには16章に貿易及び持続可能な開発という章がございまして、その中に市民社会との共同対話という規定が盛り込まれておりました。先ほど審議官から御説明申し上げましたとおり、この日英EPAといいますのは、イギリスがEUから離脱した後に、それまでと変わらないようにビジネス等の継続性を維持するというのが主な目的のEPAでございます。今おっしゃった市民社会との共同対話という規定につきましても、これはそのまま維持される方向で今署名に向けて調整が進められているところでございます。

鈴木税関調査室長 税関調査室長の鈴木でございます。広報についてとスマート税関構想について御説明いたします。

 広報につきましては、例えば雑学を題材とした番組などで成田空港の検査機器を紹介していただいたり、動物を取り上げた番組などで麻薬探知犬がどうやって訓練をし、見つけていったかというような話を特集していただいたり、税関を身近に感じていただけるような広報を進めているところでございます。また、ニュース番組などで最先端技術として、現在、税関で開発中の体内に隠匿した覚醒剤を見つける装置を取り上げていただく等、多方面に取材協力をさせていただこうと思っております。そのほか動画サイトやSNSも今後より広げていきたいと思っております。

 そのほか、ここの資料でも紹介させていただきましたけれども、鉄拳さんにパラパラ漫画を描いていただきまして、幅広く見ていただけるように税関以外の企業のチャンネルにも展開するなどの工夫もしております。

 次に、スマート税関構想における人権への配慮につきましては、スマート税関構想の本文にきちんと明記させていただいております。AIを適正に利用する上で留意すべき事項として、人間中心のAI社会原則として政府が定めておりますので、スマート税関構想につきましてもこの原則に十分留意して進めていきたいと考えております。

大橋委員 今回のコロナ禍は、明らかに一過性のものではなくて、WTOの見通しも頂きましたけれども、大きな構造変化を今後伴うものだと思います。ポストコロナを見据えても、今回のコロナでも、世界経済がいかに深くつながっていて、1つの地域あるいは1つのセクターのショックがいかに我が国経済に大きな影響を与えているのかということを考えてみると、今後も経済の不確実性なり経済の振幅というのはポストコロナで収まるものなのかということがあると思います。

 そうした中で、局長からもあったのですけれども、今後の税関行政なり、あるいは関税行政というものを考えるときに、民との距離を縮めて対話を深めていくことは非常に重要なことだと思います。民間がどうなってくるかというと、リアルタイム性が非常に経営の中に取り込まれていくようなことが今後起きてくるだろうと思われます。そうしたことを考えてみると、税関の行政というのはスマートであるべきです。スマート税関とおっしゃいましたけれども、きちっとDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れていく姿勢、これは本質的に取り入れていくということなので、紙を電子にするという話ではなくて、電子をほかの業務にどうつなげて、その業務全体を改革していくのかという視点でのスマート税関をしっかり取り入れる必要があるということが1つあると思います。

 また、税関における業務データについても、これまで月とか四半期とか年とか、そういうレベルで出していたのだと思いますけれども、そういうふうな頻度ではもはや民との連携を深めることはなかなか難しくて、もう少し別の切り口、頻度で考えていく必要が恐らくあるのだろうと思います。一つに物の流れといったって、中間財なのか最終消費財なのか、取引企業がどうなのか。あるいは、その物品の別も含めて、実は様々な切り口があると思います。そうしたものを、業務データを広く――広くというのは、行政間で使う、あるいは、まずはアカデミックだと思いますけれども、公益に資する形をとりながら使っていくようなことをしつつ、行政の中にまず知見を蓄えていく必要があるのかなと思います。丸投げしてしまうと行政に知見が蓄積されないので、自分が一体何を持っているのかというのを行政職員としても学ぶ機会にならないと思うんですね。そういう取組をやり始めていただきながら、これが結局EBPMという話に実はつながっていくのだと思うのですけれども、そうしたものの取組をしっかり推進していくような機会にしていくべきなのかなと思っています。

 以上2点申し上げました、ありがとうございます。

森田分科会長 積極的な御意見だと思います。お答えはいかがでしょうか。

中澤関税課長 関税課長、中澤でございます。

 1点、データの活用についてお答えさせていただきたいと思います。政府の大きな流れといたしまして、業務データをオープンデータ化していくことがあると我々は認識をしているところでございます。毎月、貿易統計という形で貿易のデータを公表しておりますが、同時に、アカデミックの分野でどう活用していただけるか、さらには、より広く使っていただけるか。こういう点をしっかり検討していく必要があると我々は認識をしているところでございます。

 一方で、貿易データでございますと、企業のかなり個別のデータも入っているところでございますので、匿名性の確保等も検討が必要でございます。いずれにしましても、しっかり活用いただけるような方法と環境整備について取り組んでいく重要性を認識しつつやってまいりたいと考えております。

野原委員 野原です。私からは2点コメントおよび質問をさせていただきたいと思います。

 まず1点目は、資料1で御説明いただいた税関行政のうち、デジタル技術に関連する施策についてです。菅新政権では、デジタル庁の設置を含め、デジタル化推進が重要施策として取り組まれています。しかし一方で、デジタル化、デジタル技術というのはツールであって、ゴールではないことに注意する必要があります。

 そこで、私からの提案として、実施施策をご説明いただくだけでなく、個々の施策の進捗度合いや効果等の評価をご報告いただく、フォローアップの仕方をしっかり考えていただきたい。例えば、資料1でご説明のあったEゲートや、エックス線CTスキャン検査装置について、また、SP貨物や国際郵便物の取締りの強化策のために導入したAIによるX線画像識別機能、およびX線検査装置等について、個々の導入の進捗度合い、導入による効率化の度合い、今後に向けての課題および改善策等もご説明いただきたいということです。

例えば、Eゲートを導入したというだけでなく、どの空港に取り何台導入したか、今後いつまでに何台導入予定か、それによって何%ぐらいの税関業務をEゲートにシフトさせたのか、というようなEゲートの導入度合いについてです。現在はコロナ禍で利用頻度は低いかもしれませんが、今後利用率が高まった際にEゲートによる効率化の度合い。また、ユーザーの満足度はどうかといったことも御報告いただきたいと思います。

 そして、さらに長期的な観点で、税関業務の改善や利用者の利便性の向上、そして税関職員の方の働き方改革等がどれくらい進んだのかということについてもフォローアップしていただきたいと思います。以上が1点目のご提案です。

 2点目はスマート税関構想についてです。こちらについては、勉強会にも参加させていただいて、大変長期的なスマート税関構想がしっかりまとめられたと思っています。この構想は、長期的なプランですばらしいビジョンですけれども、一方で、足元から基本的な事務手続の改善がどうやって図られていくのかといった部分はわかりにくいところがあります。スマート税関構想では、大きなテーマ、方向性はしっかりまとめられているのですが、それらが全体の業務でどうつながっていくのかはイメージしにくいところがあるかと思います。そういう意味で、足元からの業務のデジタル化というか、先ほど述べた業務改善の状況、利便性の向上の状況等をスマート税関構想のフォローアップの中でも関連付けてチェックしていただきたいと思います。

 さらにもう1点ですが、スマート税関構想については、18ページの4つ目で体制整備の話や人材育成のことが書かれています。この資料の中で、「AI等先端技術導入のための」と条件付けられていますが、それだけに限らず幅広く、スマート税関構想全体を推進していくためのマネジメントをできるような人材も必要だということを感じております。それは人材にとどまらず、体制としても、スマート税関構想を進めていく上で必要な技術的な知見もあり、そして税関業務のことについてもしっかり分かった方が組織に横串をしっかり刺して進めていけるような体制の整備に力を入れていただきたいということと、その場合に、内部の人材だけでは足りないことも多々あると思いますので、外部人材をしっかりと獲得していくような施策も積極的に考えていただきたいと思っています。

 以上3点です。よろしくお願いします。

福田監視課長 監視課長の福田です。

 まず、Eゲートについてお答え申し上げます。Eゲートにつきましては、有人の一般の検査台よりもスッと旅客の方が通れる。また、たくさんの旅客を一気にぱっとさばけるというメリットがございます。そういった意味で、現在このゲートで待ち時間の短縮が非常に重要な課題となっておりますので、その効果といたしましては、待ち時間がどういう状況にあるのか、こういったことも見ながら今後チェックをしていきたいと思っております。さらに、設置台数ですが、一般の検査台とゲートの設置率は現在約2割を上回ることを目標として整備を進めてまいりましたが、今後さらなる利便性の向上につながるように、より整備を進めていくとともに利用率も高めてまいりたいと考えております。

鈴木税関調査室長 税関調査室長の鈴木です。ありがとうございます。

 スマート税関構想につきましては、足元の改善も含め、フォローアップの際には御報告したいと思っております。

 AI導入につきましては、業務とシステムの橋渡しができるような人材を確保していきたいと考えております。また、部外の専門家も参加するAI等先端技術導入推進会議というものも創設し、体制のことも考えていきながら、先生の御指摘のとおり、AIなどの先端技術が実際に動いていくように今後進めていきたいと考えております。

田島関税局長 田島でございます。

 今、大変重要な御指摘を幾つか頂いたと思っております。私と問題意識も共通しているなと思ってお聞きしていたのですけれども、例えばスマート税関構想については、私が着任の前に皆様方の御協力を得てまとめていただいておりましたが、御指摘のとおり、キャッチフレーズ的なところにとどまっている部分も多いと思います。今3点部内で議論しているのは、どういう状態になることがゴールなのかを明確にすること。次に、今、足元の状況から見て、そのゴールに向かってどういう工程表でいくのか、時間軸も含めて具体的にどういうスケジュールでいくのか。その中で、進捗度合いを測り、職員全体として共有できるよう、目標の達成度合いについてのKPIを可能な限り設けるよう、一つ一つの項目について検討をしております。3点目が、先ほども申し上げたとおり、大橋先生からも御指摘がありましたように、官だけで進めても、よかれと思ってやっていても、民間の方々のニーズに合っていなければ元も子もありませんので、そこの具体化に当たっては各業界の方々の御意見をしっかりお聞きしながら進めていくこと。

 この3点について、税関調査室をコントロールタワーにしながら、今のところ関税局全体で取り組んでおります。そういう中で、先ほどの様々な作業を局長室で侃々諤々議論することをやっております。議論の中で、足元とスマート構想で描いている目標との間に距離があって、目標へ行く前に足元から少しずつやっていこうといった議論もございます。

 これは、一例で申し上げますとドローンですね。ドローンの活用は重要な話です。ただ、スマート税関構想の中では、最先端のドローン技術を活用するんだという頭でおりますけれども、実はドローンは10年近く、いわば一つの道具として実用化されているわけでございます。そういったものをどうやって生かしていくのかという点も含めて、しっかり工程表を作ろうという話をしてございます。

 それと、Eゲートについて申し上げますと、さっき監視課長が説明をしていましたけれども、CIQのインバウンド対策、観光対策の1つとして、国際観光旅客税という税金をつくって、その財源でしっかりCIQも充実させるということで、入管部門の顔認証ゲートは一気に進みました。その中で税関をどうするかという議論の中で、入管部門の人の流れのスピードはどう変わったかを分析させました。そうしますと、昔の人の流れを前提にした税関手続のままでは税関で人の流れが滞ってしまい、円滑なCIQはそこで止まってしまいます。しっかり入管部門のスピードの向上度合い、それを踏まえた税関部門でのスピード化も図ろうということで、今まだ検討中でございますが、数値的なものも設けてみて、それとEゲートの設置台数を組み合わせる。極力全面的なEゲートの配備を最終目標にして、そこに向けてどううまく円滑に進められるかということで計画を立てさせているところでございます。

 いずれにしても大変重要な御指摘だと思っておりますので、引き続き御支援のほどよろしくお願いします。

森田分科会長 ありがとうございました。

 最後になりますけれども、河野委員、どうぞ。

河野委員 最後に、ありがとうございます。3点、短く伺いたいと思います。

 まず1点目は、資料1の31ページ、32ページのRCEPに関わる質問です。現在、日本がEPAを締結している諸国に関しては、特にASEANの国々の場合、二国間の協定があり、ASEANとの協定があり、そしてさらにそこにTPP、RCEPがかぶってくるという形で重層的な条約関係が生まれていると思います。もちろん、その中でどれが一番有利か、例えば原産地証明の制度についてどの条約の下での制度を選択するのは、実際に経済活動をする個人にとってとても重要なことだと思います。今後こういうふうに様々な条約が重層的に重なっていくことを、政策的な観点からどのようにお考えなのかをできれば少し伺いたいと思います。例えば何か紛争が起こったときに、複数の条約の下での手続を使うことが可能な状態が生まれてくると思います。そのような場合の条約の選択のあり方を、どのようにお考えなのかということを少し伺わせていただければと思います。

 2番目の点は、資料1の22ページの関税改正要望についてです。コロナ対策との関係で、ビニール手袋に触れておられました。輸入されるものとして、他のものもあるのではないでしょうか。例えばマスク、それからビニール製品などの包装材のようなものもたくさん輸入されるようになっていると思うのですけれども、特に手袋だけに限っておられるのはなぜなのかを伺わせてください。

 それから、3点目は、最後のスマート税関構想についてです。今、局長と室長がおっしゃいましたが、大事なことは、ここで止まるのではなく、今後きちんとフォローアップをし、掲げた目標にどれだけ近づいていっているか、また目標が達成できているかということを検証していくことが必要だと思います。こうしたフォローアップをよろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

井田経済連携室長 御指摘、ありがとうございます。経済連携室長、井田でございます。

 今の委員の御指摘は、EPAの締結がどんどん進んでいって、1つの国に対してバイのものがあり、マルチのものがありと重層的になっていくことの効果をどのように考えているかという御質問と承りました。我々通関手続を持っている財務省関税局という立場のお答えと、それから例えば経済連携協定全体を見ている外務省もしくは関係省庁とそれぞれ立場は違うかと思います。今日は事情があって、担当の外務省の経済連携に関する職員が残念ながらここに来ておりませんので、私が知る範囲で申し上げつつ、それから財務省の立場も申し上げたいと思います。

 経済連携協定というのは、もちろん、協定を結んでいる相手国との経済的なつながり、また国と国としての関係のつながりを強化する意図を持って協定を結んできているものと思います。これまでそういう戦略に乗りまして、日本としてはシンガポールを最初として経済連携協定を進めてきて、今18本締結できてきていることになっております。それぞれの協定の狙いもあろうかと思います。また、交渉も相手によって変わってきますので、バイのもの、マルチのものと当然中身の状況が変わってくる。結果として仕上がりが違ってくることになろうかと思います。例えば1つの国に対してバイとマルチで2つ3つある場合、これをどういうふうに使っていただくかということを考えますと、貿易関係者の方は、この貿易に関してはどの協定を使ったら自分のビジネスにとって一番有利だろうかとお考えになる。特恵税率とか、その手続の容易さ、煩雑さ等々を全て加味した上で、ビジネスにとって一番効率的なものを選ばれるという意味では、経済連携協定が多くあるということは選択肢が増えることであろうかと思います。他方で、御指摘のとおり、煩雑さといいますか、状況をなかなか把握し切れないところもあろうかと思います。

 先ほど申し上げました財務省としての立場ということでお答えいたしますと、我々は通関手続を所管している立場でありまして、また、交渉の場にも実際に出向いて、その場におります。ですから、交渉の手続もしくは原産地規則等の成り立ちについては、交渉に携わった人間として相当程度の知見を持っているところでございますので、まずは貿易関係者の方に必要な情報を、このEPAはこういう成り立ちになっていますということを全てお示しした上で、貿易関係者の方が一番ふさわしいものを使っていただけるように、情報提供、御相談への対応に税関としては力を尽くしていく方針でやっております。

 その他、全体の戦略については、外務省を中心として、政府全体としてそれぞれ連携しながら進めてまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

中澤関税課長 続きまして、関税課長の中澤でございます。マスク、またビニール袋について御質問いただきましたのでお答えさせていただきたいと思います。

 今回、マスクまたビニール袋につきましては、物資所管省から要望が出ていないところが出発点でございます。事情を確認してみますと、マスクにつきましては、2019年実績でございますけれども、国内流通量の2割、月約1億枚でございますが、国内産が占めている状況です。また、今、国内企業の生産設備導入に対して補助金の配付手続に入っている、そういったところを理由として要望していないと聞いておるところでございます。実際マスクは国内生産が伸びてきているようでございまして、現在は国内流通の5割程度を国産が占めている状況になっていると聞いております。

 また、レジ袋、ビニール袋につきましては、レジ袋有料化の影響もありまして、需給が逼迫した状況にないというふうに聞いておるところでございます。

 一方で、新型コロナ感染症におきまして、マスクはまさに必需品、感染予防に欠かせないものだと我々としても認識しておりまして、仮にマスク等で需給が逼迫して一時的に価格が高騰してしまうようなことがあった場合には、消費者の手に少しでも届きやすくすることを考えていく必要があると思います。その際にも当然、国内産業への影響を確認していくことも必要だと思いますが、それらを考慮しつつ緊急的に関税を引き下げていくといったことも検討していく必要があるのではないかと考えております。

 現在、関税定率法第12条第2項におきまして、緊急時に、国内産業に相当の損害を与えるおそれがないなど幾つか条件を付しながら、生活関連物資の関税を弾力的に減免できる規定がございます。そういう規定などの発動要件なり、そういうものをしっかり我々としても検討を詰めていきたいと考えているところでございます。

森田分科会長 ありがとうございました。もう御質問の御要望はないようでございますので、そろそろ次に入らせていただきたいと思います。

 続きましては、国土交通省より、「とん税及び特別とん税の特例措置」につきまして御報告を受けたいと思いますので、お願いいたします。

谷口港湾局港湾経済課長(国土交通省) 国土交通省の港湾経済課長をしております谷口と申します。資料3に基づきまして御説明させていただきます。本件は、令和2年度の税制改正要望でお認めいただきました、とん税・特別とん税の特例措置の創設に係る過程の御説明でございます。今年10月から適用が開始されておりまして、新型コロナウイルス感染症の影響で国際物流量が急変化する中で、国際基幹航路の維持・拡充の大きな助けとなっているものと考えております。昨年御審議いただきまして、創設をお認めいただきまして、ありがとうございました。この場をかりて御礼申し上げます。

 昨年、分科会の答申を頂いた以降、国土交通省において、この特例措置の背景となっております国際コンテナ戦略港湾政策の検証、フォローアップを行っております。その状況を毎年度御説明させていただくことになっておりますので、これから御説明をさせていただきたいと思います。

 では、1ページを御覧ください。コンテナの物流量ですが、昨年御説明を差し上げた頃からさらに増えており、世界で1年間に4,000万TEUほど増加しております。日本も53万TEUほど増えたということで、日本についても引き続き増加している状況でございます。

 2ページを御覧ください。コンテナ船の大型化の推移でございます。世界で今一番大きい船は2万4,000TEUクラスでありまして、20フィートコンテナでは2万4,000個積めるサイズでございます。昨年御説明したときは2万3,500TEUでしたので、500TEUですが、地道に大きくなってきているということでございます。

 その次のページを御覧ください。船社間アライアンスの再編でございます。国際的にもパナマ運河とかスエズ運河など、だんだん深く広くなってきて、より大きな船が航行できるようになってきており、船舶需要も進んだということで、輸送効率を上げるために船がどんどん大きくなってきております。その中で基本的に1週間に1回ウイークリーのサービスをするためには結構な隻数のコンテナ船が必要になります。巨額の投資も要るし、荷物もたくさん集めなければいけないということで、どんどん合従連衡が進んできていまして、現時点では3大アライアンスによる運航になっております。一番右のザ・アライアンスが日本関連で動きがあるところでして、日本の日本郵船、商船三井、川崎汽船などがつくったONEという会社が入っているわけですけれども、最近、韓国の現代(Hyundai)も入ってきまして、ザ・アライアンスとしてサービス、輸送量を増やしているところでございます。

 4ページを御覧ください。国際コンテナ戦略港湾政策の取組であります。この政策は、国際的な港湾間の競争が激しい中で、日本の国民生活、産業活動に必要な国際基幹航路――欧州、北米、中南米、アフリカなどの距離が長い航路ですけれども、こういうものの寄港を維持・拡大することを目的としている施策でございます。施策としては、集荷、創貨、競争力強化ということで、荷物を増やして、利便性を上げて、競争力を上げていくということでやっているわけでありますが、赤く囲ませていただいているところが昨年から今年にかけて拡充を図ってきた部分でございます。一番左は、国際基幹航路の維持・拡大に関する取組の強化ということで、昨年秋の臨時国会で港湾法を改正して、港湾運営会社のポートセールスなどの取組に国としてより深くタッチして一緒にやっていく形になってきております。また、右下のところで、とん税・特別とん税等の入出港コストの軽減で、今年10月から特例措置がスタートしたということであります。

 次のページを御覧ください。昨年お認めいただいた特例措置の内容の確認であります。もともと欧州、北米など遠くに行く船が日本に寄港する回数は、同じ一つの船としては回数がせいぜい年に数回程度だったわけですが、近海航路、近い距離の航路ですと結構頻繁に入港してくるということで、3回以上入港すると安くなるという一時納付の制度がありますので、結果として長距離航路にちょっと不利であったところがございます。そして、大きい船になるほど、右上のグラフにありますように、入出港コストにおけるとん税・特別とん税が占める割合が増えていくことを改善したいということで、昨年御議論いただきまして、欧州航路と北米航路につきましてとん税・特別とん税の税額を半分にしていただいたということでございます。

 6ページを御覧ください。実際にどういう形で執行しているかということであります。まず左のほう、船会社というところを御覧いただきたいのですが、船会社は、実際には船舶代理店さんがやっている場合が通常でありますけれども、NACCSによって入出港関連の手続をする際に、特例措置の実施のために必要な情報を入力していただいております。例えば信号符字、いわゆるコールサインとか、課税標準である純トン数、こういうものを入れていただいていることに加えて、欧州や北米に実際に行っている船かどうかを確認するためのデータを入れていただいたり、そして、真ん中の入港届ですが、軽減措置を受けた場合に国際基幹航路を必ず選択していただくことをしております。

 一方で、申告されている内容が事実か確認する必要がありますので、今度は右側のほうですけれども、国際基幹航路が就航しております対象となっている港には港湾運営会社という、国や自治体が出資している会社がコンテナターミナルの運営をしております。そこに船会社さんからいろいろな情報を日常的に頂きまして、最新の情報を常に持つようにしております。そして、その情報を国土交通省に報告していただいて、国際基幹航路情報をNACCSのほうに入れさせていただいております。その国土交通省として把握している情報と比較、対査した上で、適切だということであれば軽減措置が受けられる仕組みになっております。

 右下のところですけれども、法案成立以降、施行までに船社や港湾運営会社に説明を行い、実際の施行に御協力をお願いしてまいりました。船社さんの反応ですが、当然、軽減措置が実現して、ぜひ活用したいというふうな反応で、その手続面についても問題なく御対応いただいているところでございます。港湾運営会社についても、港の寄港便数の維持・拡大につながる取組でございますので、積極的に御協力を頂いているところでございます。

 次のページを御覧ください。7ページでございます。10月から特例措置が適用されておりまして、実際に適用を受ける船が出てきています。写真の船はマースクという世界で一番大きいコンテナ船社の船で、航路名AE1/TP6という、欧州と北米の間を行ったり来たりするような航路の船でございます。横浜に入港した船ですけれども、マースク社のコメントでありますが、とん税等の特例措置によりAE1航路においての試算では年間で約2,000万円から2,500万円の港費の節約を見込んでおりますと。今年はコロナの影響により日本でも貨物が減少傾向にありましたが、この措置が航路維持の大きな支えになると存じますというふうなコメントを頂戴しているところでございます。

 次に、8ページを御覧ください。国際コンテナ戦略港湾政策推進ワーキングについてでございます。これは、国土交通省が取り組んでおります国際コンテナ戦略港湾政策が予定どおりうまくいっているか、あるいは、さらなる改善点はないかということを実務的に御議論いただくために設けたものでございまして、今年度から具体的な議論をスタートさせているところであります。構成でありますが、学識経験者の皆様や業界の皆様、荷主企業の方々、あるいは港湾運営会社、港湾管理者等のメンバーとなっております。第1回を8月に開催いたしまして、第2回を来月中旬ぐらいに行う予定ですけれども、いろいろなアイデア、あるいは問題意識を頂戴しながら政策の磨き上げをしていこうということで取り組んでいるところでございます。

 具体的には、9ページを御覧いただきますと、どんな意見が出てきているかということであります。まず、これまでに実施した政策についてどういう効果があったか。寄港回数や寄港した船の大きさについて検証していくことが重要ではないかということ。次の項目ですけれども、アメリカに行くときには、アジアから日本付近を通って、それから北米に行くわけでありますが、東アジアの港湾などと比較した場合に、場所的には北米に行く前に最後に寄れる大きな港があるところであります。こういうのを生かすためにも、積替えのコストが障害にならないような政策の検討が必要ではないか。つまり、東アジアから、例えば日本の港に持ってきて、そして日本の港で北米航路に積み替える。こういうふうなトランシップ貨物をもっと取っていくために取組が要るのではないかという御指摘であります。3点目に、とん税・特別とん税の特例措置はいい取組であるが、このほかの入出港コストについてももっと頑張っていくべきではないかという御指摘。それと、港も労働者不足の状態が深刻になってきております。屋外で暑いとき寒いときも結構重労働であったり、あるいは高いところでの作業だったりで、人手が今後不足していくことが見込まれておりますので、AI等の活用を含めて港湾サービスの維持・向上を検討していく必要があるのではないかということでございます。こういう御指摘を踏まえまして、今いろいろな検討、検証作業などをしておりまして、しっかりと施策に反映してまいりたいと考えております。

 10ページを御覧ください。その後、去年以降どういうふうな成果があったかということです。京浜港、横浜港に欧州航路のサービスが増えました。今年5月、コロナの中ですが、ザ・アライアンスによって欧州-北米の振り子航路――欧州と北米を行ったり来たりします。昔の掛け時計に振り子とかありますけれども、あのような感じで行ったり来たりする振り子航路と言われているのですが、新しく開設していただきました。これで京浜港は3サービス目ですが、実は2018年に1サービスまで減っておりましたので、何とか3サービスまで盛り返してきたということでございます。初寄港した船とか描いてありますけれども、1万4,000TEU級の船で、やはり大型の船が利用されているということでございます。

 次のページを御覧ください。昨年、施策の御説明をさせていただいたときに、船会社が重視する要素とは何だろうかということで3つのCを御説明申し上げました。Cargo volume(貨物量)、Cost(費用)、Convenience(利便性)でございます。この3つのCをいかに改善し、向上させていくかということが施策の柱となっておるわけですけれども、11ページはこのうちのConvenience(利便性)に関する取組でございます。横浜港の南本牧ふ頭MC4コンテナターミナルの暫定供用を8月に発表しております。MC1、MC2、MC3、MC4とそれぞればらばらにもともと貸しているものですけれども、これを一体的に利用していこうという取組をしております。MC1とMC2の間あるいはMC3とMC4の間は、ガントリークレーンというコンテナを持ち上げる大きなクレーンがあるのですが、実はレールで横に移動できるようになっております。ばらばらに運用するとそれぞれのガントリークレーンになってしまいますので、レール上をせっかく移動できるのであるから、空いている時間帯はほかのターミナルでも使う形で相互融通しましょうということであります。あと、船はすごく早く着くことはあまりないのですけれども、遅く着くことはございます。海が荒れましたとか病人が出ましたとか。そうすると、前の船の荷役作業が終わっていない状態で次の船が来るとスケジュールがどんどん遅れていったりする場合がございます。これは船にとっても困りますし、港の労働者にとっても待機することになって困るということで、非効率である。そういう場合、例えばもともとMC1に着く予定の船だけれども、MC4が空いていればMC4に泊まろうかということを認めることで、岸壁の一体利用をするということでございます。こういう取組を通じまして、利便性、そしてこれはコストにも効いてくる部分もあるかと思いますが、こういうふうなターミナルをこれから増やしてまいりたいと考えております。

 次、12ページを御覧ください。日本発着のトランシップ貨物の現状でございます。これは3つのCのCargo volumeに関することでございます。国土交通省では、数年置きに全国のコンテナの動きを、海外の港から日本のどこで発生したコンテナかを含めて分析をしております。その結果で分かったことですが、平成30年は、日本発着貨物のうち、8割は日本からの直航ルートで行っているのですが、2割が海外のトランシップ航路を利用しているというデータが分かっております。三大湾(京浜、伊勢湾、大阪湾)、こういうところの港湾で5割、それ以外の地域の港湾で5割程度になっております。海外での利用港は釜山港がやはり最も多い。特に西日本の港湾などが釜山港の利用が多いわけです。そして、ヨーロッパに行く途中にあるシンガポール港、こういうふうなところで利用されている状況でございます。ここをいかに日本の直航航路へ持っていくかということが課題でございまして、今それぞれのデータをより詳しく分析を進めております。

 13ページを御覧ください。これは北米方面のトランシップ貨物について分析したものでありますが、三大湾以外の港湾は北米に行く直接のルートを持っていませんので、そのときに釜山とかを使っているということであります。そういうのが6割程度を占めておりますが、三大湾発の貨物も残念ながら増加しております。1つは、ヨーロッパなどに行く便だと、例えば京浜港から3サービスしかないものですから、曜日によっては直航サービスを利用するとリードタイム的に不利になるケースもあることなどいろいろな要因がございます。コストによる場合とリードタイムによる場合、いろいろあるのですけれども、それを一つ一つ押さえながら改善していこうということでございます。

 14ページを御覧ください。3つのうちコストの部分ですけれども、とん税・特別とん税の特例措置を適用していただきました結果、この点線であるような部分のコストが改善したということで、釜山などと比べて同等程度の入出港コストとなっております。

 同等よりさらに改善していこうということで、15ページでございますが、入出港コストのさらなる引下げということで、今、横浜港で具体的に進めている取組でございます。タグボートという、ゴムタイヤみたいなのがいっぱいついている船を御覧になられたことがあるかもしれません。大きな船は急に止まったり急に方向転換するのが難しいので、港の岸壁に着く前にタグボートなどで引っ張ったり押したりしながら着岸させます。そういうふうなときのコストがそれなりにあるということです。そこの部分のコストに関してですけれども、タグボートの基地からお迎えに行くわけです。お迎えに行くとタクシーの迎車料金みたいなのがかかりまして、そのお値段も含めてコストになるものですから、タグボートの基地をそういう大型船などの比較的近いところに整備することによって、その時間の迎車料金的なコストが下がっていくことがございます。現在、山下ふ頭あたりにいるタグボートを移転させるために、本牧ふ頭A突堤という、コンテナターミナルの近くに移動させることをやろうとしております。仮に所要2時間のタグボート利用のとき、30分短縮した場合、25%程度の低減が期待できるということでございまして、こういう取組を実施できそうな港に順次やっていきたいと考えております。

 私からの御説明は以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたら挙手をお願いいたしたいと思います。

古城委員 御説明、どうもありがとうございました。

 9ページのワーキンググループのところで、これまでの施策に対して検証することが重要ではないかという御意見が出たということですけれども、この分科会でもそういう意見が出ておりましたので、ぜひこれはやっていただきたいと思います。

 それで質問ですけれども、その次の10ページにあります、ザ・アライアンスによって今年5月に新しい航路が開設されたということですが、これは、とん税の今回の措置の効果と考えてよろしいのでしょうか。

谷口港湾局港湾経済課長(国土交通省) まず、頂きました検証についてはしっかりワーキングでやってまいりたいと思います。

 また、10ページのザ・アライアンスの航路の開設でございますけれども、船社といろいろお話ししている中で、航路の開設とか大型化については非常にやりやすくなるという話は船会社さんから頂いていますので、当然、今回のとん税・特別とん税の特例措置を踏まえての御判断だというふうに理解しております。

末冨委員 この申告手続について御説明いただいたのですけれども、この特例措置については申告ベースという理解でよろしいでしょうか。データを入れれば自動的にこの特例措置になるというふうに考えてよいのか、それとも申告というものが必要だという理解でよいのか、どちらでしょうか。

福田監視課長 監視課長の福田です。

 この特例措置の適用に当たりましては、税関に提出する書面において国際基幹航路届を追加で出していただいていることになります。

末冨委員 その登録をすることによって自動的にこの措置も適用されるということでございますね。

福田監視課長 おっしゃるとおりです。実務上、NACCSでその登録をしていただければこの特例措置が適用されることになっております。

森田分科会長 では、ほかに御発言の御希望の方はいらっしゃいませんでしょうか。

 ございませんようですので、それでは、今日の審議はこれくらいにいたしまして、最後に事務局から連絡事項がございますので、中澤関税課長から御説明をお願いいたします。

中澤関税課長 本分科会における議事録の取扱いにつきましては、当審議会議事規則第5条の規定によりまして、原則公開とされているところでございます。本日、御発言いただきました委員の皆様には、議事録案がまとまりました段階で御発言部分を事務局のほうから送付させていただきます。送付後1週間程度の間に御意見などがない場合には、恐縮でございますが、御了解いただいたものとさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 また、議事録の取扱いにつきましては、今後ともこの扱いで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございます。

 以上をもちまして、本日の関税分科会を終了いたしたいと存じます。

 次回の関税分科会の開催につきましては、11月上旬を予定しております。詳細につきましては、事務局と調整の上、また改めて別途御連絡を差し上げたいと思います。

 それでは、本日は御多用のところ御出席賜りまして誠にありがとうございました。これで終了いたします。

午前11時50分閉会

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