令和2年10月22日

 10月21日(現地時間同日)、バングラデシュの首都ダッカにおいて、我が方、伊藤直樹駐バングラデシュ人民共和国日本国特命全権大使と先方アルファ・ウマル・バー国連世界食糧計画(WFP)バングラデシュ事務所副所長(Mr. Alpha Umaru Bah, Deputy Country Director of WFP Bangladesh)との間で、供与額5.28億円の対バングラデシュ無償資金協力(「コックスバザール県におけるミャンマーからの避難民及びホストコミュニティへの支援計画」(WFP連携))に関する交換公文の署名が行われました。

1 バングラデシュのコックスバザール県では、2017年のミャンマー・ラカイン州からの避難民の大量流入から約3年が経過した今でも、約90万人の避難民が食料の確保等の生活の基本的なレベルにおいて脆弱な状況に置かれており、その栄養状況と生活環境の悪化が懸念されています。また、避難民の大量流入とその滞在の長期化により周辺のホストコミュニティの負担が累積し、避難民とホストコミュニティの間のあつれきが増していることから、地域の不安定化につながることが懸念されています。このため、避難民及びホストコミュニティの生活環境を早急に改善することが必要となっています。
 このような状況において、現在、WFPが一部の避難民キャンプで展開するファーマーズ・マーケットは、ホストコミュニティの小規模農家に農作物等を直接販売する場所を提供し、小規模農家の生計向上につながっています。また、避難民は同マーケットで栄養バランスに配慮した様々な種類の食品を購入することができるため避難民の栄養状況の改善につながっています。このため、ファーマーズ・マーケットは双方のコミュニティに裨益する仕組みとして増設の需要が高まっています。また、WFPによって既に複数の避難民キャンプにおいて設置されているEバウチャー・ショップにおいても、ホストコミュニティの小規模農家が長期保存のきかない葉物野菜や魚等の地元産品を直接販売するスペースを設けることで、ファーマーズ・マーケットと同様の効果が期待できることから、同ショップの改良についても需要が高まっています。

2 この計画は、バングラデシュ南東部コックスバザール県におけるミャンマーからの避難民が滞在するキャンプにおいて、WFPと連携し、ファーマーズ・マーケットの新設、Eバウチャー・ショップの改良及びEバウチャーを通じた避難民への食料支援を行うものです。この協力により、本計画と提携したファーマーズ・マーケットの売り手として約2,400人の小規模農家が登録され、当該農家の生計向上につながること、また、新設されたファーマーズ・マーケットを利用する約10万人の避難民の食料安全保障の確保、さらに、ファーマーズ・マーケットを通じた避難民とホストコミュニティの相互理解促進に貢献し、もって同国の社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

[参考1]バングラデシュ人民共和国基礎データ
 バングラデシュ人民共和国は、面積約14.7万平方キロメートル(日本の約4割)、人口1億6,365万人(2018年、バングラデシュ統計局)、人口1人当たりの国民総所得(GNI)1,750米ドル(2018年、世界銀行)。

[参考2]

Eバウチャー 生体情報を含む裨益者の情報をカードに登録し、同カード内に月毎に定められた金額をWFPが入金し、裨益者がWFPと提携した地域小売店から特定の食材を購入することを可能にするシステム。
Eバウチャー・ショップ 仲介業者がバングラデシュ国内から作物を仕入れて販売。避難民はEバウチャーを使用して品物を購入する。
ファーマーズ・マーケット 仲介業者を挟まずに現地農家が直接販売する。なお、ファーマーズ・マーケットでもEバウチャーの使用は可能。