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第29回欧州復興開発銀行年次総会における中西副大臣総務演説
(2020(令和2)年10月7日(水)バーチャル形式)

1.はじめに

 議長、総裁代行、各国総務、並びにご列席の皆様、

 第29回欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して、ご挨拶申し上げることを光栄に思います。

 コロナ禍により、本年の年次総会は前例のないバーチャル形式での開催となりますが、これはEBRDにとっても加盟国政府にとっても大きな挑戦です。リグタリンク総裁代行のリーダーシップの下、バーチャル総会の開催準備を行ってきたEBRDスタッフのご尽力に、心から感謝申し上げます。

2.EBRDのオペレーション

 EBRDは、1991年に設立されてから今日まで、旧共産圏諸国や新たに拡大した南・東地中海地域(SEMED: Southern and Eastern Mediterranean)における民主化・市場経済化の進展に大きく貢献してきています。

 足元では、新型コロナウイルス感染拡大によりEBRDの支援対象国も深刻な打撃を受けていますが、EBRDは本年3月に速やかに対応策(COVID-19 Solidarity Package)を決定し、それを精力的に進め、その役割を十分に果たしてきています。

 限られたリソースを効果的かつ効率的に活用する観点から、日本としては、EBRDは引き続き、最大の移行効果(トランジション・インパクト)が見込まれる地域・分野での支援に重点的に取り組むべきと考えています。具体的には、中央アジアやモンゴルを始めとする市場経済化の遅れている初期段階移行国(ETCs: Early Transition Countries)に対する支援を十分に行い、これらの国々が移行過程の初期段階から早期に脱することを強く期待します。本年上半期における、ETCsに対する業務量が前年同期比で大幅増となるなど、実績を上げている点を高く評価します。

3.次期戦略・資本枠組み(SCF: Strategic and Capital Framework 2021-2025)

 本年の年次総会では、2021年以降5年間の「戦略・資本枠組み(SCF: Strategic and Capital Framework)」の議論が行われます。2年以上にわたる議論を経て、加盟メンバー間の異なる意見を取りまとめ、SCFに反映したEBRD事務局の努力を多とするとともに、日本としては本SCFの採択を支持します。

 日本としては、今後、SCFの中間レビュー(Mid-Term Review)に向けて、理事会・総務会での更なる議論を進めていくべきと考えています。この機会に、日本として特に重視している2つの論点(①EBRD支援対象国からの卒業、②EBRD支援対象国のサブサハラへの拡大)について、日本の考え方を申し上げます。

 まず、所得水準が高く、移行が進んだ国(ATCs: Advanced Transition Countries)の卒業に関しては、現段階では新型コロナウイルス感染拡大への対応に集中する必要があることは理解しています。また、EBRDの支援対象国の中に、卒業後に今回のような危機が生じることを懸念している国があることを承知しています。しかしながら、これについては、EBRDの支援対象国を卒業したとしても、危機時にはEBRDの支援を一時的に再開できるようにするなど、卒業する国の懸念に応えるアプローチを導入することが可能です。その上で、コロナ危機後の国別戦略において、段階的な卒業に向けた道筋を確保すべきです。

 次に、サブサハラへの拡大の必要性については、加盟メンバー間の合意が必要であり、EBRDの付加価値(アディショナリティ)が認められる分野はどこか、他の国際機関等による支援と補完的な関係が成立するのか、など、更なる議論が必要です。

4.EBRDへの期待

 EBRDは非欧州諸国も含むグローバルな機関であり、その組織運営においては、非欧州諸国の声が十分に反映されるべきと考えます。日本は第2位のシェアホルダーとして、積極的にEBRDのガバナンスに参画していく所存です。

 EBRDが支援対象国における多種多様・複雑なニーズに対して、柔軟かつ効果的に対応していくためには、EBRD職員の国籍を含む多様性を推進する必要があります。EBRDには、あらゆるレベルにおける人材面での多様化を更に積極的に推し進め、優秀な人材が適材適所で活躍できることを期待します。日本としても、人材を通じたEBRDへの貢献に更に力を入れてまいりたいと考えています。

 2016年3月に、EBRD代表事務所が東京に開設されて以来、同事務所は日本の企業関係者等を対象としたビジネス展開や日本国内におけるEBRDの更なる知名度向上に向けたアウトリーチ、リクルートミッションへのサポートなど、大きな貢献をしております。今後も、同事務所を通じて、日本の技術・知見がEBRDの支援に一層活用されることを強く期待します。

5.おわりに

 今般の総会において選出される新総裁のリーダーシップの下、EBRDが新たに採択される予定のSCFに沿って、目の前のコロナ危機への対応をはじめとする足元の課題に積極的に取り組み、これまで培ってきた市場経済化の蓄積が後退することがないよう、ポスト・コロナ時代に向けて、引き続き主導的な役割を果たすことを期待しております。

(以上)

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