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本稿は、令和2年9月8日の関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会の議事録です。

 

午前10時00分開会

佐藤部会長 ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会特殊関税部会を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、御多用のところお集まりくださいまして誠にありがとうございます。なお、本日は13名の委員の方にオンラインで御参加を頂いております。

 本日の議事に入ります前に、まず、事務局の構成につきまして本年7月に人事異動がありました。新たに関税局長に就任された田島関税局長より御挨拶を頂戴したいと存じます。よろしくお願いいたします。

田島関税局長 ただ今、部会長から御紹介いただきました、7月から関税局長を拝命しております田島でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 皆様方におかれましては、本日御多忙中のところ御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、日頃から関税政策、税関行政につきまして御指導、御協力を頂いておりますことにこの場をお借りして御礼を申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けまして、前回の特殊関税部会は持ち回りにて開催させていただきました。今回はオンラインで御出席の方と実際に御出席いただいている方がいらっしゃる、ハイブリッド形式にて開催させていただいております。初めての試みということで、試行錯誤しながらやらせていただくことになりますので、途中いろいろ御不便をおかけすることがあろうかと思いますが、何とぞ御容赦いただきたいと思います。

 本日は、中国産のトリス(クロロプロピル)ホスフェートに対する不当廉売関税の課税について御審議を頂く予定にしてございます。何とぞ御審議を賜りますよう、よろしくお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

佐藤部会長 田島局長、どうもありがとうございました。

 その他の事務局の異動につきましては、お手元の座席表をもって御紹介に代えたいと存じます。

 また、本日は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点を踏まえた対応を行うこととしておりまして、委員の皆様には大変御不便をおかけしております。どうぞ御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日の議題はお手元の議事日程のとおりで、議題の⑴から⑷までございます。

 まず、最初の議題である中華人民共和国産トリス(クロロプロピル)ホスフェートに対する暫定的な不当廉売関税の課税の決定に係る御報告を申し上げます。

 この暫定的な課税については、緊急に議決を経る必要がありましたことから、先ほど局長の御挨拶にもありましたように、本年5月下旬から6月上旬にかけて、持ち回りにより委員の皆様に御審議を頂きました。

 審議の結果、原案のとおり決定することとなりました。

 関税・外国為替等審議会議事規則第3条第2項及び同第8条第2項によりますと、部会長が本件を部会に報告することとされておりますので、改めてこの場で御報告をさせていただきます。

 この議題⑴につきましては、次の議題とも関連いたしますので、御質問、御意見等がございましたら、次の議題の説明後に併せて頂戴したいと存じます。

 以上が議題⑴となります。

 次に、議題⑵「中華人民共和国産トリス(クロロプロピル)ホスフェートに対する不当廉売関税の課税」に移ります。

 本件につきましては、お手元の資料1のとおり、不当廉売関税の課税について、財務大臣から当審議会に諮問がなされております。これを受けて、本件が当部会に付託されております。したがいまして、本件については、委員の皆様方に御審議いただいた後に答申の取りまとめを行いたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 まず、トリス(クロロプロピル)ホスフェート産業の現状につきまして、経済産業省製造産業局素材産業課、小林企画調査官より御説明を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

小林製造産業局素材産業課企画調査官(経済産業省) 業界を所管する立場である経済産業省素材産業課企画調査官の小林でございます。私からはTCPPという物質について御説明申し上げます。

 まず、資料2-1の1ページを御覧いただければと思います。TCPPは無色から淡黄色透明の液体でございまして、リン系の難燃剤として使用されております。

 具体的には、資料の下段にございますけれども、建築用のウレタン断熱ボードを製造する際に難燃剤として添加するほか、現場施工の吹きつけ発泡ウレタンに難燃剤として添加するもので、建築現場で広く使われております。建築以外にも自動車、電気電子用ウレタン系素材の部品などに添加する難燃剤としても使用されております。

 そもそも難燃剤とは、通常、石油由来で燃えやすいプラスチックに添加することで、そのプラスチックを燃えにくくするためのものでございます。住宅建材をはじめ、自動車、家電、家具等、プラスチックの用途は幅広いですけれども、これらのあらゆる分野で耐火基準を担保するためにも難燃剤は不可欠な素材でございます。この難燃剤は、その構成成分に応じて、リン系、臭素、ハロゲン系、無機系などに区分できます。世界的にはハロゲン系は規制傾向にありますけれども、本物質をはじめとしたリン系難燃剤の重要性は高まっているものでございます。

 次に、資料の上段でTCPPの製法について御説明申し上げます。TCPPは、まず黄リンに塩素を反応させて三塩化リンとした後、酸素と反応させてオキシ塩化リンといたします。これを原材料として、オキシ塩化リンと酸化プロピレンを一定条件下で反応させることでTCPPとなります。我が国では、申請者である大八化学工業が国内唯一のTCPPの生産者となっております。このTCPPの生産にとってキーポイントとなるのが黄リンです。

 資料の2ページ目に移っていただければと思います。黄リンの生産には多量の電気が必要になることもあり、現状、生産国は主に中国、アメリカ、ベトナム、カザフスタンの4か国に限られます。特に中国は最大の生産・需要を占めておりまして、圧倒的な優位性を持っております。このような背景の中で、TCPPを含むリン系の難燃剤の市場は世界的にも世界優位性を持つ中国系による寡占が進み、我が国ではTCPPを生産するのは大八化学、ただ1社となっております。

 仮に中国による不当廉売により国産TCPPがなくなれば、住宅、自動車等の生産に不可欠であるTCPPが中国のみに依存することとなることが懸念され、サプライチェーン上のリスクを有することにもなりかねません。実際に中国産の安価なTCPPにより申請者である大八化学工業は原価割れの生産を余儀なくされていることから、幅広く産業用途に不可欠なリン系難燃剤の国内生産へのこれ以上の悪影響を防ぐためにも、確定措置の発動による保護の必要があるものと考えております。

 以上でございます。

佐藤部会長 ありがとうございました。

 引き続き、「中華人民共和国産トリス(クロロプロピル)ホスフェートに対する不当廉売関税の課税」につきまして、加藤特殊関税調査室長より御説明をお願いいたします。

加藤特殊関税調査室長 財務省、特殊関税調査室長の加藤でございます。

 私からは資料2-2に基づいて説明をさせていただきます。

 表紙をおめくりいただきまして、1ページ目になります。こちらには調査の概要等を記載しております。この調査対象貨物につきましては、先ほど経済産業省から説明があったとおりでございます。

 確認となりますが、不当廉売関税の課税要件は、不当廉売された貨物の輸入の事実が認められること、当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が認められること、及び本邦の産業を保護するため必要があると認められることとなっております。

 次に、2ページ目を御覧ください。こちらは調査の経緯を整理したフロー図となります。昨年8月に課税の求めがなされたことを受けまして、昨年9月に調査を開始しております。調査を進め、本年5月に不当廉売輸入の事実と不当廉売輸入による本邦産業の実質的な損害の事実が推定されるに至りましたので、仮の決定を行い、先ほど佐藤部会長から御報告いただきましたとおり、暫定措置の発動について特殊関税部会において持ち回りで御審議、御決定いただいたところでございます。その後、政令の閣議決定・公布を経て、6月27日から暫定的な不当廉売関税の課税が行われているところです。

 本日は、前回の御審議以降、所要の手続を経まして、資料2-3のとおり、調査結果報告書の取りまとめに至りましたところ、暫定措置から確定措置に切り替えることについてお諮りさせていただいております。フロー図の薄い黄色で囲っている部分になりますが、仮の決定以降の手続について次に御説明させていただきます。

 3ページ目を御覧ください。こちらには、仮の決定に対して利害関係者から提出された反論と、それに対する調査当局の見解を整理しております。反論は輸入者からのものでございまして、1つ目から3つ目は不当廉売輸入に関するもの、4つ目は不当廉売輸入と損害との因果関係に関するものとなってございます。

 初めに、1つ目及び2つ目につきましては、正常価格として、中国ではなく、代替国の価格を採用したことについての反論でございますが、本調査におきましては、中国の供給者から質問状への回答がなく、中国の価格を正常価格として採用するための前提であります市場経済の条件が浸透している事実を確認できなかったことから、代替国の価格を正常価格として採用したものであり、反論は当たらないと判断しております。

 次に、仮の決定に対する反論の3つ目の部分に移らせていただきます。3つ目の輸出価格でございますけれども、こちらにつきましても、中国の供給者からデータを入手すべきであったとの主張となってございますけれども、本調査におきましては中国の供給者から質問状への回答がなかったことから、調査当局として知ることができた事実に基づいて、具体的には輸入者から入手した輸入価格のデータから国際輸送にかかる経費などを控除して適正に輸出価格を算出しており、やはり反論は当たらないと判断しております。

 最後に、4つ目でございますが、こちらは国内生産者の供給能力が国内需要を賄うには不十分であるから中国からの輸入が行われているのであり、中国からの輸入が国内産業の損害の原因ではないという主張と思われますが、国内生産者は、国内需要の全てを賄うに足る生産能力を有していないとしても、現状において十分な供給余力を残している一方で、産業上の使用者は安価な輸入貨物を選好して購入しており、中国からの不当廉売輸入品の販売により、国内生産品の販売価格の引下げまたは引上げの抑制を余儀なくされ、それによって実質的な損害が生じているものであり、主張は当たらないと判断しております。

 以上のとおり、調査当局としては仮の決定における判断を変更する必要はないと判断し、次の段階の手続であります重要事実の開示を行いました。

 重要事実の開示につきましては、4ページ目になりますが、7月15日に全ての利害関係者に対しまして、最終決定の基礎となる重要な事実、具体的には、仮の決定において通知した事項に先ほど御説明した仮の決定に対する反論等及びそれらに対する調査当局の見解を加えたものを通知いたしまして、改めて反論等の機会を与えました。

 これに対しまして、5ページ目になりますが、仮の決定に対する反論を行った輸入者とは別の輸入者から、産業上の使用者への影響に鑑み不当廉売関税の課税に反対する内容の反論の提出がございました。

 しかしながら、こちらの反論は今回の調査の対象であります不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入が本邦産業に与える実質的な損害等の事実の認定に関する調査当局の判断に関するものではないことから、重要事実の内容を変更する必要はないと判断し、これらの事実認定は確定されるに至りました。

 6ページ目を御覧ください。こちらは、前回、暫定措置について御審議、御決定いただいた際の資料と基本的に同じものになりますが、確認されました不当廉売された貨物の輸入に関する事実を示しております。日本への輸出価格が正常価格よりも低くなっており、算出された不当廉売差額率は40.73%となっております。

 次に、7ページ目を御覧ください。こちらも前回の資料と基本的に同じものになりますが、確認されました不当廉売輸入による本邦産業の実質的な損害に関する事実を示しております。

 8ページ目を御覧ください。結論といたしまして、調査の結果、不当廉売関税の課税要件であります不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入が本邦産業に与える実質的な損害等の事実が認められ、先ほど経済産業省から説明のありましたとおり、本邦の産業を保護する必要性も認められると考えております。

 なお、先ほど重要事実の開示に対しまして、輸入者1者から、産業上の使用者への影響に鑑み不当廉売関税の課税に反対する内容の反論の提出があったことを御紹介いたしましたが、不当廉売関税の課税によって課税対象物品を産業上使用する者に影響が及ぶことは制度上当然のことであり、単に影響が及ぶおそれがあるということのみをもって不当廉売関税による本邦産業保護の必要性を否定すべき特別な事情があるとは認められません。

 したがいまして、下段になりますが、不当廉売関税の課税要件を満たしていることから、暫定税率と同率の37.2%の不当廉売関税を確定措置として5年間課することが適当であると判断し、今般お諮りさせていただいたものでございます。

 以上でございます。

佐藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明、それから、実質的に内容が重複します⑴の議題の持ち回り審議の件につきまして、御質問、御意見等がおありでしたら、どうぞお願いいたします。 特に御質問、御意見、御発言はありませんでしょうか。>/p>

 特に御発言がありませんようでしたら、答申の取りまとめを行いたいと存じます。よろしいですか。

 それでは、答申案の配布をお願いいたします。

(答申案配付)

佐藤部会長 答申案はオンラインの御参加の皆様にも内容が表示されておりますでしょうか。――表示されておりますね。ありがとうございます。

 それでは、配付された、ないしは、この画面に表示されております答申案を御覧ください。内容の御確認をお願いいたします。

 内容を御確認いただけましたでしょうか。お手元の答申案につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。

特に御質問、御意見等はございませんか。よろしいでしょうか。

 それでは、特に御質問、御意見等ございませんようでしたら、本部会として答申案のとおり決定することといたしたいと存じます。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

佐藤部会長 ありがとうございます。

 それでは、御異議がございませんようですので、中華人民共和国産トリス(クロロプロピル)ホスフェートに対する不当廉売関税の課税につきまして、当部会といたしまして、答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 以上が議題⑵となります。

 続きまして、議題⑶「大韓民国産炭酸カリウムに対する不当廉売関税の課税に関する調査の開始」及び議題⑷「大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間延長に関する調査の開始」につきまして、加藤特殊関税調査室長より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

加藤特殊関税調査室長 それでは、前回の特殊関税部会以降に調査を開始いたしました2件の事案につきまして説明をさせていただきます。これは、不当廉売関税に関する手続等を定めましたガイドラインに従い、調査開始に至った事情を説明させていただくもので、本日何らかの御判断をお願いするというものではございません。

 初めに、資料3によりまして「大韓民国産炭酸カリウムに対する不当廉売関税の課税に関する調査の開始」について説明させていただきます。

 表紙をおめくりいただき、1ページ目を御覧ください。本件の課税申請は、本年4月30日に日本国内で塩化カリウムの電解事業を行う企業が加盟する業界団体でありますカリ電解工業会からなされたものでございます。カリ電解工業会の加盟企業は4社ございますが、そのうちの2社が炭酸カリウムの生産を行っており、この2社で国内生産量の100%を占めているということでございます。

 炭酸カリウムは白色の粉末または無色の液体でありまして、多種多様な用途に使用されておりますが、主な用途といたしましては液晶パネルなどのガラス類の原料や中華麺に添加するかんすいの原料が挙げられます。

 下段になりますが、韓国からの炭酸カリウムの輸入状況を見ますと、近年、輸入量、輸入金額ともに増加傾向にあり、総輸入量に占める韓国からの輸入量の割合も令和元年には8割を超える状況となっております。

 2ページ目を御覧ください。不当廉売関税の課税の求めを受けて調査を開始するに当たりましては、不当廉売された貨物が本邦に輸入されている事実及び当該輸入が本邦の産業に実質的な損害を与えている事実という2つの要件について、申請者において、合理的に入手可能な情報に基づく証拠が示されていることが必要となります。

 まず、不当廉売された貨物が本邦に輸入されている事実につきましては、申請書によりますと、韓国から本邦への炭酸カリウムの輸出価格は比較対象となる正常価格よりも低くなっていることが示されており、正常価格と輸出価格との差額を輸出価格で割って算出する不当廉売差額率は10%から40%の間となっておりますので、不当廉売された貨物が本邦に輸入されている事実が認められます。

 次に、当該輸入が本邦の産業に実質的な損害を与えている事実につきましては、申請書において、韓国産炭酸カリウムの輸入量が平成29年の4,918トンから令和元年には5,293トンに増加しており国内需要量に占める市場占拠率を拡大したこと、さらに、韓国産炭酸カリウムの国内販売価格が国産品の国内販売価格を常に下回り続け、その結果、申請者の加盟企業は国内販売価格の引下げを余儀なくされた、または十分な引上げを妨げられたことが示されており、そのために申請者の加盟企業の利潤は著しく悪化するなど損害を被っている状況が示されていることが認められました。

 以上のことから、調査を開始する要件が満たされていると判断されましたので、大韓民国産の炭酸カリウムに対する不当廉売関税の課税に関する調査を6月29日に開始することとし、その旨を官報において告示いたしました。

 3ページ目を御覧ください。こちらは調査手続の大まかな流れをお示ししております。調査は原則として1年以内に終了することとされておりまして、調査開始と同時に韓国の生産者及び日本の生産者等に質問状等を送付し、期限を設けて質問状への回答や証拠の提出等を求めているところでございます。

 続きまして、資料4により「大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間延長に関する調査の開始」について説明させていただきます。

 1ページ目を御覧ください。韓国及び中国産の水酸化カリウムに対しましては、平成28年8月9日から不当廉売関税が課されており、課税期間は令和3年8月8日までとなっております。

 水酸化カリウムは無色の液体品または白色片状の固形品であり、主な用途としては液体石鹸や洗剤の原料、化学肥料の原料、アルカリ電池の電解液、写真の現像液が挙げられます。

 2ページ目を御覧ください。不当廉売関税につきましては、課税期間が満了する1年前までに延長の申請を行うことが可能となっておりますところ、本年7月7日にカリ電解工業会から課税期間の延長申請がなされました。カリ電解工業会は先ほどの炭酸カリウムの課税申請者でもありますが、水酸化カリウムについては加盟企業4社全てが生産を行っており、この4社で国内生産量の100%を占めているということでございます。

 不当廉売関税の課税期間の延長の求めを受けて調査を開始するに当たりましては、課税期間満了後に不当廉売された貨物の輸入が継続または再発するおそれ及び当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害が継続または再発するおそれという2つの要件につきまして、申請者において合理的に入手可能な情報に基づく証拠が示されていることが必要となっております。

 まず、不当廉売された貨物の輸入が継続または再発するおそれにつきましては、申請書によりますと、韓国から日本への水酸化カリウムの輸出は不当廉売関税の課税によって減少したものの現在も継続しており、輸出価格は比較対象となる正常価格よりも低くなっていることが示されております。また、中国から日本への輸出は不当廉売関税の課税後は行われておりませんが、中国から第三国への輸出価格を見ると比較対象となる正常価格よりも低くなっていることが示されております。

 さらに、両国の供給者は余剰生産能力を有しており、両国内及び海外においてその追加的な供給を吸収できる市場は存在しないということでございます。

 したがいまして、課税期間満了により不当廉売関税が課されなくなった場合には、韓国については不当廉売輸入が継続するおそれが、中国については不当廉売輸入が再発するおそれが示されていると認められます。

 次に、当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害が継続または再発するおそれにつきましては、申請書において、不当廉売関税の課税後も本邦の産業は不当廉売された貨物の価格を引き合いに出されて製造原価の上昇分を販売価格に転嫁できず、価格の押し下げまたは価格の上昇の妨げを受けていること、その結果として、本邦産業は営業利益が平成29年以降下降を続けているなど、不当廉売された貨物の輸入により生じていた実質的な損害から回復していないことが示されており、課税期間満了によって不当廉売関税が課されなくなり、不当廉売輸入が継続、再発した場合には実質的な損害についても継続、再発するおそれがあることが示されていると認められます。

 以上のことから調査を開始する要件が満たされていると判断されましたので、大韓民国及び中華人民共和国産の水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間延長に関する調査を8月31日に開始することとし、その旨を官報において告示しております。

 3ページ目を御覧ください。こちらは先ほどと同様の調査手続の今後の流れを示したものとなっております。

 4ページ目を御覧ください。こちらは水酸化カリウムの輸入量及び本邦産業の営業利益の動向を参考までにお示ししております。

 上段ですが、水酸化カリウムの輸入量は、不当廉売関税の課税開始後、減少傾向となっておりましたが、令和元年には対前年比で増加に転じております。

 なお、韓国からの輸入動向については全体と同じでございますが、中国からの輸入は平成29年以降は止まっている状況でございます。

 下段に移りまして、本邦産業の営業利益については、不当廉売関税の課税開始後、改善が見られましたが、平成29年をピークに減少してきている状況となっております。

 説明は以上となります。

佐藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等はございませんでしょうか。

末冨委員 1点だけ教えて下さい。正常価格よりも低いという場合の正常価格について、韓国のものについては韓国の国内販売価格を、中国のものについては第三国の国内販売価格を用いて正常価格とし、比較をされたとの説明でしたが、そのデータを申請者がどのように取られたかという点を教えていただいてもよろしいでしょうか。

加藤特殊関税調査室長 こちらは申請書に記載されていた内容という形になりますけれども、韓国の国内販売価格につきましては、申請者が独自に第三者の調査機関を利用し、当該調査機関が調べた結果という形になってございます。

 また、中国について採用した代替国の価格につきましても、申請者が調査した結果の数字という形になってございます。

末冨委員 分かりました。ありがとうございました。理解いたしました。

佐藤部会長 申請者から数字が出てきているので、それを含めて、本当かどうかを今から調べるということ、そういう手続を今から進めていくという御報告と存じました。よろしいですか。

末冨委員 はい、ありがとうございます。

佐藤部会長 ほかには御発言の御希望はありませんか。よろしいですか。

 他に御質問等ございませんようですので、以上をもちまして、本日の特殊関税部会を終了いたしたいと存じます。

 本日は、御多用中のところこのように御出席を下さいまして、誠にありがとうございました。

午前10時33分閉会

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