2020年9月23日

国際電気標準会議(IEC)において、日本から提案した「災害時の都市サービスの継続性に資する電気継続の仕組み」に関する国際規格が発行されました。

今後、本国際規格が事業継続計画ガイドラインに引用されることなどにより、当該ガイドラインを踏まえて開発される都市・まちの防災力が強化されること(災害時に、重要性の高い都市サービス事業(例;医療、公共交通等)を提供する事業者用における必要最低限の電気の確保)が期待されます。

1.提案の目的・背景

大規模な災害等により、送配電設備等が故障し、電力系統から都市機能の維持に必要な電力供給が停止する非常事態に陥った場合でも、その影響を最小限に抑え、重要性の高い都市サービスを継続する仕組みを構築することは、災害復旧活動を迅速かつ円滑に進めるためにも不可欠です。

近年、自然災害等での被害が甚大化しつつある中、特に、東日本大震災など未曾有の災害を経験した我が国は、2015年に国連で採択された「仙台防災枠組み」を提唱するなど、様々な場面で防災の重要性を訴え、取組を進めています。その中で、標準化分野においても、我が国の過去の教訓や復旧・復興のノウハウを活かして、災害の影響を最小限に抑える仕組みの国際規格化を積極的に進めています。

具体的には、経済産業省からの委託を受けた日本規格協会が、各種都市サービスを継続する上で、中心的な役割を果たす電気の継続性に着目した「都市サービス継続性の向上に資する電気継続計画(Electricity Continuity Plan:ECP)及び電気継続システム(Electricity Continuity System:ECS)」についての国際規格案を策定し、2017年9月以降、IECにおいて関係国と審議を重ねてまいりました。その結果、同規格は本年7月に正式に国際規格として承認・発行されました。

なお、本規格は、2016年に日本が主導して設立したIECスマートシティシステム委員会(IEC SyC Smart Cities)が制定した、初の国際規格となります。

2.国際規格の内容

今回発行された国際規格1では、地震・洪水・サイバーテロ等が発生した際に、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の観点から、重要性の高い都市サービス提供事業者(例:医療機関、公共交通機関、物流事業者等)が必要最低限の電気を確保できるよう、都市サービス運用者(例:企業の施設管理部門、商業施設等の管理会社、自治体の公共施設管理部門等)に対し、BCPに基づいて通常時・災害時、それぞれの電気継続計画(ECP)を定めること、及び、ECPを実行するための電気継続システム(ECS)の機器要求仕様を定めることを求めています。また、災害フェーズ毎にECSのマネジメントや各エリアで交換すべき情報の種類(例:電力系統との接続情報、停電時間、予備電源の動作・残存状況)などの基本事項をガイドラインとして提示しています。

IEC 63152 : 2020 Smart Cities – City service continuity against disasters – The role of the electrical supply

ECP、ECSでの具体的な記載事項(具体例)

ECP:必要な電源容量の算出方法、電力系統からの分離・接続手順、自家発電装置の燃料補充手順 等

ECS:自家発電装置、蓄電池、災害情報共有システム(Lアラート等)、エネルギーマネジメント 等

図1 電気継続システム(ECS)基本モデル              図2 複数の電気継続システム(ECS)連携モデル

図の解説

図1:事業継続計画(BCP)に基づいた電気継続計画(ECP)。本モデルでは、医療、交通等の重要な都市サービスにおいてBCPに基づくECPを策定し、これに必要な仕様をECSに実装することを規定。

図2:複数のECSを連携させることにより、広域でのBCP達成を目指すもの。本モデルでは、様々な都市において各種脅威に汎用的に活用出来るように、以下の3つのタイプのECS連携を規定。

  • タイプ1:災害情報をトリガーとして、1つのECSが独立に対応。
  • タイプ2:各ECS間で電源使用状況を共有し、必要に応じて、自家発電の燃料の融通等を実施。
  • タイプ3:自家発電の使用状況を基にして各ECSを通じて、各都市サービス分野間で電力融通を実施。

3.期待される効果

本国際規格が、例えば国内外のBCPガイドラインに引用されたり、リスクファイナンスを背景とした金融機関による融資条件に採用されたりすること等により、自治体または企業に対して、BCPに従ったインフラ設備やシステムへの投資を促し、今後各地で開発される都市・まちの防災力が強化されること(災害時に、重要性の高い都市サービス事業を提供する事業者用に必要最低限の電気の確保)が期待されます。

また、本規格は、日本の設備・システム仕様に親和性の高い規格となっていることから、世界各地での都市開発でガイドラインに同規格の採用・引用が進むことで、海外における我が国の関連設備・システムの導入が促進されることが期待されます。

担当

産業技術環境局国際電気標準課長 柳澤
担当者:佐藤(貴)、吉田

電話:03-3501-1511(内線3428)
03-3501-9287(直通)
03₋3580-8631(FAX)