(令和2年9月16日(水曜日)23時37分 於:首相官邸)

冒頭発言

【茂木外務大臣】引き続き外務大臣を務めることになりました。よろしくお願いいたします。
 総理からは、日本外交の基軸である日米同盟の強化、そして日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の実現、しっかり取り組んでほしいと、こういうご指示がありました。
 昨年の大臣就任式ではですね、「記録より記憶に残る外交」と、こういう話をさせていただきました。対外交渉、米国のライトハイザー通商代表との厳しい交渉を経て、今年の1月に日米貿易協定を発効いたしました。また日英協定の方もですね、わずか3か月、かなりのスピードだったと思いますが、大筋合意にこぎつけたと。我が国の通商政策、大きく進めることができたと考えています。
 またコロナ対応でありますが、これ、記憶に新しいところだと思いますが、今年の1月下旬、中国・武漢の封鎖を受けまして、他国に先駆けて、5機のチャーター機を武漢に派遣をすると。これまでにない帰国のオペレーション、こういったものを行いましてですね、現地にいらした日本人、そしてそのご家族828名、帰国を実現することができました。
 その後もですね、世界各地にあります日本の在外公館、フル稼働することによりまして、全体で1万2,000名を超える邦人の方の、帰国・出国とこういったことも実現ができたところであります。
 今後ですね、経済を回復軌道に乗せていく上では、感染拡大の防止と両立をする形で、国際的な人の往来を再開していくことが重要だと考えております。これまでは感染拡大防止、こういう観点から、感染症の危険情報レベルの引き上げということを行ってきましたが、これからはレベルの引き下げと、これも視野に入れてですね、国際的な人の往来の再開に向けた取組を進めていきたい、こんなふうに考えております。
 私、外務大臣就任時に、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」、これを展開していきたいとお話をいたしました。今の日本が推進しております「自由で開かれたインド太平洋」構想、これは多くの国で理解・共感・支持を得つつあります。「力による一方的な現状の変更」ではなく、民主主義、法の支配、航行の自由、こういった共通の価値感を基に、関係国との連携を更に広げていきたい、そんなふうに考えております。
 「過去と自然」は変えることはできませんが、「未来と私たちの社会」は自分たちの力で変えることができる。そんな思いでこの1年間取り組んできました。確かに、成果が上がった部分もありますが、一方で、残念ながら残された課題もあるわけであります。
 日露関係、安倍総理とプーチン大統領の間では、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉、これを加速する、このことで合意をしてですね、交渉の大きな方向性、これを打ち出したところであります。これを受けてラヴロフ外相との間では、9月のニューヨークでの会談、さらには名古屋で、そして年末にはモスクワで8時間にわたって、交渉を行いまして、今後に向けた展開が見えてきたところでありましたが、残念ながらコロナの影響もありまして、仕切り直しという形になっております。新政権の下でも、領土問題を解決して平和条約を締結する、この基本方針に沿ってですね、改めてしっかりと取り組んでいきたいと思います。
 もう一点、安倍総理は拉致問題、この手で解決できなかったこと、痛恨の極みと述べておられました。確かに、米朝協議は米国の大統領選挙を控える中でですね、停滞していますけれど、日本としても、水面下を含め、あらゆるチャンネルを活用して拉致問題の解決を目指してきました。引き続き、米朝協議を後押ししつつ、拉致問題の解決を最重要課題として取り組んでいきたいと思います。
 最後に、ポスト・コロナの新たな国際秩序についてでありますが、グローバル化の中で、感染防止対策とですね、人やモノの自由な移動をどう両立をさせていくか。またデジタル化を進める中で、この分野の新しいルール作りをどう進めていくか。更に自由貿易体制を維持、強化していくのにはどうしたらいいのか。これはまさに日本がTPP11以来進めてきた通商政策であり、また昨年のG20大阪サミットで打ち出した、データ流通に関する「大阪トラック」であります。人の移動につきましても、他国に先駆けて様々な交渉と、今、様々な措置、検討に入っているところであります。こういったポスト・コロナのルール作り、国際秩序作りに、日本として、また私自身もですね、主導的な立場、主導的な役割を担っていきたい。このように考えております。私からは以上です。

【事務方】それでは質問のある方は挙手をお願いいたします。大臣にご指名いただきます。

【茂木外務大臣】どうぞ。

日露平和条約交渉

【NHK 渡辺記者】大臣、再任おめでとうございます。
 最初の方に、ちょっと日露外交のことでお伺いしたいんですけれども、これまでの安倍政権における日露外交というのは安倍総理とプーチン大統領の関係でもありました。今後は菅総理がどういうふうにやっていくかというのが課題としてあると思いますが、茂木大臣におかれましては、ラヴロフ外相との関係というのはこれまでも進めてきている。その関係を踏まえてですね、安倍総理も積み残してきた課題だと大臣も今、言及されましたけれども、今後、平和条約締結、つまり領土問題解決に向けて、どういった姿勢で新たに取り組んでいかれるのか。首脳同士の関係、たくさんありましたけども、それがない中で新たに今度やはり、そういった意味でラヴロフ外相との茂木大臣の関係は重要性を増してくると思いますけども、そういった関係性も踏まえた上で、どうやって取り組んでいくか、その点もう少しお話いただければと思います。

【茂木外務大臣】はい。日露平和条約交渉、これは1956年の日ソ共同宣言、これに基づいて行う、基本的に両国間で合意をしているわけであります。それに基づいてラヴロフ外相との間では、4回にわたってこれまでも協議を行ってきたところであります。このところなかなか対面での交渉と、コロナの影響もあって、できてない部分もありますけれど、これからまた機会をしっかり捉えて、モスクワでも8時間、いろいろな議論もしてきました。お互いの立場は、それについての理解は進んでいると思いますので、もう1回、基本方針に沿って、領土問題を解決して平和条約を締結する、こういう方針の下、しっかり交渉に取り組んでいきたい、このように考えております。

感染症危険情報の引き下げ

【日経新聞 加藤記者】冒頭発言ありました、感染症危険情報の引き下げなんですけれども、今後、引き下げを始める目処ですとか、時期の目処ですとか、対象とする地域、現状で念頭にあるものがあれば教えてください。

【茂木外務大臣】これは感染がどう収束していくかと、こういったことについて考えていかなくてはいけないと思っております。今回の新型コロナ、中国・武漢から発生して、第1フェーズでは中国全体に、そして2月の下旬以降はイタリアをはじめとするヨーロッパに広がり、そして4月になりますと、感染の中心がアメリカになると、そして現在でいいますと、そのアメリカに加えて、ブラジルであったりインドと、新興国での感染が広がる、こういう状況の中で、世界での感染の状況であったりとか、様々な動き、外務省としても毎日分析を行っておるところでありまして、そういった状況も見ながら今後考えていきたい。確かに収まりつつある地域もあります。ただ、それも1週間単位、2週間単位、更には1か月ぐらいの単位で見ていかないと、確実な方向性見えない部分もありまして、そういったものを見ながら、今後検討していきたいと、こんなふうに考えております。

【事務方】会見が続きますので、次で最後にさせていただきます。

日韓関係

【共同通信 高尾記者】日韓関係について伺います。菅総理大臣の就任を受け、韓国の文大統領が、「いつでも向き合い、対話する準備はできている。日本が積極的に応じることを期待する」などと記した書簡を送りました。菅新政権の発足で、いわゆる徴用の問題を懸案事項として抱えている日韓関係が、今後改善の方向に進むかどうかについて、大臣のご見解をお願いします。

【茂木外務大臣】韓国は重要な隣国でありまして、北朝鮮問題を始めとして、アジア地域の安定には、日韓であったりとか、日米韓の連携、極めて重要だと考えております。ただ隣国でありますから、懸案というのはつきものだと思っておりまして、特に旧朝鮮半島労働者問題、これは大きな課題であると思っております。率直に申し上げて、国際法違反しているのは韓国の側である、これは間違いないと、そんなふうに考えております。ただ、しっかりした会話の中でですね、物事を解決していく、こういう方向で考えたいと思います。