(令和2年9月4日(金曜日)11時20分 於:本省会見室)

安田純平氏の旅券発給

【ラジオフランス 西村記者】フリージャーナリスト安田純平さんについて質問させていただきます。3年以上シリアで人質にされた安田さんは、釈放され、帰国したのは、まもなく2年になります。ただ、今も自由に記者として活動できない理由の一つは、国が旅券を発給しないことです。改めて、安田さんに旅券を発給しない理由を教えてください。また、どの条件で旅券を発給するのでしょうか。

【茂木外務大臣】今年の1月9日、山本純平さん、旧姓が安田純平さんということになりますが、旅券発給の拒否処分の取消し、そして一般旅券の発給を求める訴訟というものを提起しておりまして、本件につきましては、係争中の案件でありますので、外務省としてコメントは差し控えたいと思います。

香港における邦人フリージャーナリストの拘束

【読売新聞 大薮記者】香港で日本人が一時拘束された件についてお伺いいたします。その後、どういった理由で拘束されたのかといった、日本政府として確認された事実関係がありましたら、対応とともにお願いいたします。

【茂木外務大臣】香港現地当局より、在香港日本国総領事館に対しまして、8月31日に邦人1名を拘束し、翌9月1日に保釈した旨の説明があったことに関しまして、その後、現地の総領事館が現地当局等に対して、人定事項の確認を進めたところ、当該人物は日本国籍を有してない方である、このように判明をいたしました。当該人物は香港の方であると、このように承知いたしております。
 ただ、日本として、昨今の香港情勢については重大な懸念を強めておりますし、邦人の保護含め、今後も香港の情勢については注視をしていきたいと思っております。

日露関係

【NHK 渡辺記者】日露関係でお伺いしたいと思います。先日8月31日に、安倍総理大臣とプーチン大統領の電話会談がございまして、二人の間の合意も踏まえて、平和条約交渉を締結していくことを確認したとなっております。今後、総裁選とかがありまして、政権の移行期になるとは思いますけれども、大臣としまして、現時点での北方領土問題、平和条約交渉についての考え方を述べていただきたいということと、あともう一点ですが、安倍総理大臣とプーチン大統領の下で、交渉担当者ということで、外務大臣、それぞれ両国の外務大臣が交渉担当者になっております。あと一方で大統領特別代表、首相特別代表ということで、政務担当外務審議官と、ロシアのモルグロフ次官、この体制というのは今後どういうふうに、政権の移行期でありますけれども、どのようにしてこの継続されていくのか、そのへんも含めてお願いします。

【茂木外務大臣】安倍総理、7年8か月の間で、合計81回外遊するなど、「地球儀を俯瞰する外交」を積極的に展開されまして、米国のトランプ大統領とも、そしてロシアのプーチン大統領とも非常に良好な関係を築かれた。プーチン大統領とは27回の首脳会談等々も行っているところでありまして、日露関係につきまして、両首脳は1956年の日ソ共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させることで合意をして、交渉の大きな方向性を打ち出したところであります。同時に、日露間の経済分野での協力といったものも進んでいるところであります。
 今週月曜日、安倍総理がトランプ大統領とも、更にはプーチン大統領とも首脳の電話会談を行っておりますが、プーチン大統領との間では、両首脳間の合意も踏まえて、平和条約交渉を継続することが確認をされました。引き続き平和条約交渉をはじめとする取組をしっかりと進めていきたい、こんなふうに思っております。
 外交、いろいろな交渉をする上で、首脳間で大きな方向性を出す、そして閣僚間でより具体的な交渉を進める、更に詳細にわたる分野につきましては、担当、それも政務級といいますか、次官級の担当が担当するということは、自然といいますかよくあることでありまして、この役割分担、日露の交渉においては機能してきた、こんなふうに思っております。
 もちろん今後の新体制ができた上で、どういった形で日露の平和条約交渉であったりとか、また経済協力を進めていくか、新たな体制の下で考えられると思いますけれども、これまでの体制がこうであった、こういったものを踏まえながら、検討がされるものだと思っております。

8月28日のジャパンタイムズ記者の質問(外務省の説明責任/外国人記者への対応)

【週刊金曜日 植松記者】先週28日の記者会見におけるジャパンタイムズ大住記者との応答に関して、いくつか報道が出ておりますが、それに関して2点質問させてください。
 一点目が内容面です。その日の議事録と録画を見た限りでは、大臣は大住記者の質問に結局お答えになられていないので、私からもお尋ねします。お尋ねしたいのは、外国籍ですが永住者の在留資格を持った者、日本が生活の拠点になっている外国籍の者に、長期間再入国を認めてこなかった根拠です。言い換えますと、国籍の有無で在留資格を、再入国を認める・認めないの線を引いた合理的根拠について、これについてお尋ねしたい。
 なおこの再入国規制については、外務省のホームページにも掲載されていますので、当然この件については出入国管理庁だけではなく、外務省においても説明責任があると私は思います。
あと二点目が、日本語の問題で、その問題について大臣からの謝罪が今ないと思いますが、ということは、28日の大住記者に対する態度は、大臣としては問題がなかったという認識でしょうか。
 そして、今後も日本語で質問した記者には、いきなり英語で応答するということがあり得るのでしょうか。そこだけちょっと確認させてください。

【茂木外務大臣】まず前者の質問でありますが、その前の部分で、人の往来の再開、これに関する質問がありまして、そこの中で外国籍の方の在留資格保持者につきましては、感染の再拡大の防止と両立する形で、そういった在留資格を持っている方の入国を認めていく方向で検討していると、このようにお答えをしておりますし、実際に9月1日から、本邦在留中の在留資格の保持者及び入国拒否対象地域指定後に出国した在留資格保持者の再入国を認めることといたしました。これによりまして、在留資格を保持する全ての外国人の再入国が可能となったと、そのように考えております。
 そういった意味におきまして、この在留資格を持っていらっしゃる外国の方に対する対応をどうしていくかと。9月1日以前の段階では決まっておりませんでしたが、そこにつきましてはきちんとお答えをしている、このように思っております。
 同時にこの記者会見、日本の方もいらっしゃいます。そして海外の記者の方もいらっしゃいます。日本語で質問されることもあります。英語で質問される方もいらっしゃいます。それらに対して、自分なりにできる限り丁寧にお答えする、そのように努めてきたつもりであります。
 ご指摘いただきましたやり取りにつきましては、これまでこの1年間、一般的にいろいろな案件とか問題について、外交上の観点からどうかと、更には経済への影響はどうかと、こういう質問を受けることはよくあったことでありますが、「科学的な根拠」と聞かれたのは、この1年で初めてであります。
 あまり外務大臣に、科学的な根拠ということを聞かれることは少ないと思っておりまして、したがって記者からの質問の意図と、これを正確に把握したいということでお聞きしたものでありまして、他意はございません。単純に科学的根拠というものを、どういうことなのかということでお聞きをしたと。その上で、科学的根拠についてもう一度聞きたいということでありましたので、これはまさに出入国管理の関係から最終的には出入国管理庁が決定をするという、こういう問題でありますから、所管の出入国管理庁にお尋ねくださいと、このように申し上げたところであります。

次期政権の外交課題

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 安倍総理の辞任を受け、近く政権交代が行われます。貴大臣も言及されたとおり、安倍総理は非常に積極的な外交活動に取り組まれましたが、ロシア及び北朝鮮に関する分野では、成果をあげることができませんでした。貴大臣は、新政権がこれら及び他の分野において成果をあげるためにとるべき最善のアプローチはどのようなものであるとお考えでしょうか。また、新政権に引き継がれる主要な外交課題は何であるとお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 若干、先ほどお答えしたロシアの部分とかぶる部分もあるのですけれども、安倍総理、この7年8か月の間で、合計81回以上外遊するなど、「地球儀を俯瞰する外交」を積極的に展開されまして、各国の首脳とも良好な関係を築き、大きな実績を残されたと考えております。トランプ大統領、プーチン大統領、グテーレス国連事務総長をはじめ、多くの首脳等から申し出がありまして、今、連日、安倍総理との間で電話会談が行われていること、更には50以上の国・地域の首脳等が、安倍総理の貢献を高く評価する声明等を発していることも、安倍総理の外交が国際社会で高く評価されたことを示していると思っております。
 私もこの1年間、様々な国を訪問したり、また様々な外相そしてカウンターパートと、電話会談そして直接の会談等々を行っておりますが、この間、国際社会での日本のプレゼンス、大きく高まったのは間違いないと思いますし、同時に通商政策であったりとか、新たなルール作りでの日本のイニシアティブに対する国際社会の期待、これも大きく高まっているとそんなふうに感じております。
 当然、総理も記者会見の中で、日露の平和条約の問題そして拉致の問題、特に取り上げておりましたが、日露関係につきましては、先ほど申し上げたとおりでありますが、先日の月曜日の首脳会談におきましても、両首脳間の合意も踏まえて平和条約交渉を継続するということが、安倍総理そしてプーチン大統領との間で確認をされたところでありまして、引き続き平和条約交渉をはじめとする諸課題、これまでの実績等々も踏まえながら、しっかりと進めていきたいと思っております。
 また北朝鮮問題、安倍総理は、拉致・核・ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案の解決に向けて、誰よりも真剣に取り組んできたのは間違いないと考えております。総理は先週の会見で「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極み」と、このように述べられました。しかし、安倍政権の取組を通じて、拉致問題の国際的な認識は格段に高まった、これは間違いない、そんなふうに思います。
 トランプ大統領が拉致被害者のご家族と2度にわたって面会をされると。また金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談で、拉致問題を直接提起した。これらは重要な成果だと考えております。政府として引き続き拉致問題の解決を、最重要課題として、あらゆるチャンスを逃がさずにこの問題に取り組んでいきたいと思っております。
 更に「自由で開かれたインド太平洋」をはじめ、安倍総理が進めてきた首脳外交の実績、今後の我が国の外交にとって、これは安倍総理の実績でありますが、日本としてのアセットだと思っております。こういったアセットを生かして更に外交というものを前に進めていきたいと、こう考えています。

8月28日のジャパンタイムズ記者の質問

【週刊金曜日 植松記者】すみません。先ほどのお答えに対してですが、まず日本語の問題ですが、「科学的根拠は何ですか」と聞くこと自体は問題はないと思うのですが、それを、いきなり英語で記者の方に質問し返したことが問題になっていると思います。
 こういう、日本語で質問している記者に対して、いきなり英語で再質問するというのはかなり問題だと思いますし、これ、企業等においてはハラスメントの案件として検討されるくらいの問題だと思いますが、それは問題がなかったと、大臣はお考えでしょうか。これが1点。
 それから最初の問題についてなんですが、さっきのご説明では、そもそも国籍の有無で線引きした合理的根拠は何だったのか、結局ご説明はありませんでした。合意的根拠がなしにそんなことがあると、ちょっと考えられないのですが、もちろんあると思いますので、国籍の有無で線引きした合理的根拠についてですね、つまり永住者の在留資格を持った者、それから日本が生活の拠点になっている者の再入国というのは、日本国籍を持っている人間が外国に出て帰国するのと、条件的に変わらないと思うんです。にもかかわらず、外国籍のそういった者たちへの再入国を認めてこなかった。それが適正だと、前回の記者会見で大臣おっしゃいましたが、それが適正だと判断するに足る合理的根拠を教えてください。

【茂木外務大臣】前回もお答えしているのですが、新型コロナ感染症が世界的に拡大する中で、各国様々な形で入国拒否、そして防疫体制の強化、そういった水際措置の強化を行っております。全ての国とは言いませんが、大半の国において、海外からの方について入国を拒否する、一方で、その国籍を持つ方が帰国するということについて拒否をしている国というのはない、このように今考えておりまして、そういったやり方をほとんどの国がとっていると。そしてそれは、それぞれの国がとっている水際対策であったりとか、主権の問題である、このようにお答えをしたと思います。
 それから、もう一つの質問でありますが、先ほどとも重なるところはあるのですが、科学的な根拠ということを聞かれることがあまりないもので、科学的な根拠についてどうなのかと、私なりにコミュニケーションのとり方として、そちらの方がいいと、そう考えたので、記者からの質問に対して、私として科学的根拠というのはどういうものですかということをお聞きしたまでであります。英語が通じると思って、善意で私なりにお聞きしたことでありますけれど、その後、日本語でも科学的根拠はどういうことですかということは、お聞きをいたしております。

【週刊金曜日 植松記者】日本語の問題についてはちょっともう水掛け論になりそうなのでやめます。内容面なのですが、今のご説明だと、外国籍で永住者の在留資格を持った者等と、外国に住んでいて旅行等でやってくる人間が、両方がいっしょくたに海外国籍ということで、入国あるいは再入国が規制されてきたことになってしまうわけですが、外国籍であれば、つまり旅行でやってくる者も永住者で在留資格を持った者も同じ扱いであるということは、それは合理的なのかどうかです。そこだけ最後確認させてください。

【茂木外務大臣】先ほどもお答えしたとおりでありますけれど、水際措置を行うにあたって、それはいろいろな考え方というのはあると思います。国内での感染拡大を防がなければいけない、こういう観点から、国内でほとんど感染が起こっていない国においても、日本以上に厳格な措置をとっている国というのは多々ございます。別に国名を私がここで一つひとつ挙げて説明する必要はないと思いますけれども、基本的な分け方としては、自国民であるかもしくは自国民でないかと、こういう基準をとっている国が多いと考えておりまして、日本が他国と比べて特異な行為、これを行っているとは考えておりません。

日露関係(ロシアの改正憲法における北方領土問題)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 納谷記者】先ごろ、2日に、ロシアのメドベージェフ前首相が政治的な催しの中で、現在のロシアの改正憲法について触れて、領土の割譲はない、それから北方領土の日本への返還はないというような意見を表明したという報道がありますけれども、こちらについてのご意見、お受け止めをお聞かせください。

【茂木外務大臣】海外において、様々な方がいろいろな立場から発言をされると。これまでの記者会見でもそうでありますが、そういった一つひとつの発言についてコメントすることは控えております。これまでもそうしてまいりました。
 その上で、今週月曜日のプーチン大統領と安倍総理の首脳電話会談が行われて、両首脳間の合意も踏まえて、平和条約交渉を継続すること、これが確認されたわけでありますから、その確認に沿って、合意に沿って、今後も平和条約、鋭意進めていきたいと、このように思っております、交渉を。