2020年9月2日

同時発表:国立研究開発法人 産業技術総合研究所

少子高齢化による労働力不足や新たな感染症のまん延によるソーシャルディスタンスの確保などの課題を解決するため、駅や商業施設などの一般の人がいる場所で、ロボットを用いて案内や飲食物の配膳、清掃、警備などを行うロボットサービスの実用化が始まっています。その際、人とロボットが安全に共存できることが必要となります。
今般、ロボットサービスプロバイダ(ロボットサービスの提供者)がロボットを安全に運用するための規格案を国際標準化機構(ISO)に提案したところ、日本を議長職として新しく作業グループ(WG)を設立し、審議を開始することが決定しました。
本規格案が国際標準化されることにより、日本のみならず諸外国での安全・安心なロボットサービスの普及につながるとともに、市場の創出・拡大による産業競争力の強化に寄与することが期待されます。

1.国際規格提案の背景

少子高齢化による労働力不足は、あらゆる産業において大きな課題になっています。加えて新たな感染症のまん延により、サービス業におけるソーシャルディスタンスの確保が課題となっています。その解決策のひとつとして期待されるのがサービスロボットと呼ばれるロボットの導入です。例えば、案内ロボットや搬送ロボット、介護ロボット、アシストロボットなど様々なロボットが駅や空港、商業施設、介護施設などの一般の人と共存する場で用いられ始めています。その際、ロボットが人に危害を与えない安全性の確保が必須となります。

  • サービスロボットの画像人と共存するサービスロボットの例(東日本旅客鉄道株式会社 提供)

2.国際規格案のポイント

サービスロボットの安全性を確保するために、まずロボットの製造者に対する要求事項として2014年に日本提案によるサービスロボットの安全性に関する国際規格ISO 13482が発行され、普及が進んできました。さらに、それらのロボットを用いてサービスを提供するロボットサービスプロバイダに対して、日本では令和元年に施行された新JIS法(産業標準化法)におけるサービス分野規格第1号として「JIS Y1001 サービスロボットを活用したロボットサービスの安全マネジメントシステムに関する要求事項」を制定し、ロボットの安全な管理や運用に関する要求事項を体系化、標準化してきました*1

しかし、日本以外でのロボットサービスに適用できる国際規格はこれまでありませんでした。そのためJIS Y1001を基に規格案を国際標準化機構(ISO)に提案したところ、今般、ロボットの安全に関する技術委員会ISO/TC299(ロボティクス)において、新たな作業グループWG 7を設立し、日本を議長職として審議を開始することが決定しました。

今回提案する国際規格案では、公共の場所等で、一般の人を対象にしたロボットサービスを提供する際の安全性を確保したり、周囲の第三者への影響を考慮する必要がある場合を想定し、ロボットサービスプロバイダが実施すべきリスクアセスメントや安全管理、教育、運用体制、マネジメントシステムなどについて規定します。

3.期待される効果

本規格案が国際標準化されることにより、日本のみならず諸外国での安全・安心なロボットサービスの普及につながるとともに、市場の創出・拡大による産業競争力の強化に寄与することが期待されます。

参考

*1 2019年5月20日ニュースリリース参照
ロボットサービスの安全規格(JIS)を制定しました -ロボットサービスの安全・安心な普及のために–

※国立研究開発法人産業技術総合研究所の同時報道発表(2020年9月2日)
「ロボットサービスの安全に関する国際規格案の審議が開始」外部リンク

担当

産業技術環境局国際標準課長 黒田
担当者:藤澤、堀坂、佐竹

電話:03-3501-1511(内線 3423~3427)
03-3501-9277(直通)
03-3580-8625(FAX)