令和2年8月12日

 8月12日(現地時間同日)、バングラデシュ人民共和国の首都ダッカにおいて、我が方、伊藤直樹駐バングラデシュ日本国特命全権大使と先方ファティマ・ヤスミン財務省経済関係局次官(Ms. Fatima Yasmin, Secretary, Economic Relations Division, Ministry of Finance)との間で総額3,382億4,700万円を限度とする円借款7件に関する書簡の交換が行われました。

1 対象案件の概要

(1)バングラデシュにおける鉄道専用橋建設に対する融資(円借款「ジャムナ鉄道専用橋建設計画(第二期)」(供与限度額890億1,600万円))
 近年のバングラデシュや近隣諸国の経済発展に伴い急増することが想定される鉄道によるコンテナ輸送の需要に対応するため、ジャムナ川流域において既存のジャムナ多目的橋と並行して新たに鉄道専用橋を建設するための資金を融資します。これまで、2018年6月に第一期(供与限度額372億1,700万円)として円借款を供与し、今回はこれに続く第二期の融資となります。
 鉄道専用橋の建設により、2026年時点で整備区間の鉄道貨物輸送量を2019年時点の約11.6倍にまで増加させることが想定され、同国内及び近隣諸国との輸送ネットワークの効率化により、同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与することが期待されます。

(2)バングラデシュにおける都市高速鉄道(MRT5号線北路線)建設に対する融資(円借款「ダッカ都市交通整備計画(5号線北路線)(第一期)」(供与限度額556億9,600万円))
 近年の人口増や経済発展により交通需要が増大し、慢性的な交通渋滞が生じているバングラデシュの首都ダッカにおいて、東西に接続する都市高速鉄道(MRT5号線北路線)を建設するための資金を融資します。
 MRT5号線北路線の整備により、2030年には、現在バスで約2時間以上かかっているヘマヤプール駅からバタラ駅までの区間(約20Km)の移動に係る所要時間が約30分に短縮されることが見込まれる等、ダッカの輸送需要に対応し、もって交通混雑の緩和を通じた経済の発展及び都市環境の改善を図り、同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

(3)バングラデシュにおける都市高速鉄道(MRT6号線)建設に対する融資(円借款「ダッカ都市交通整備計画(IV)」(供与限度額721億9,400万円))
 近年の人口増や経済発展により交通需要が増大し、慢性的な交通渋滞が生じているバングラデシュの首都ダッカにおいて、南北に接続する都市高速鉄道(MRT6号線)を建設するための資金を融資します。これまで、a href=”https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/25/2/0220_05.html”>2013年2月に第一期(供与限度額104億7,700万円)、2016年6月に第二期(供与限度額755億7,100万円)2018年6月に第三期(供与限度額792億7,100万円)として円借款を供与し、今回はこれに続く第四期の融資となります。
 MRT6号線の整備により、2024年には、現在、バスで約2時間かかっているウットラ北駅からモティジール駅までの区間(約20Km)の移動に係る所要時間が約36分に短縮されることが見込まれる等、ダッカの輸送需要に対応し、もって交通混雑の緩和を通じた経済の発展及び都市環境の改善を図り、同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

(4)バングラデシュにおける首都空港の国際線第三旅客ターミナル及び貨物ターミナルの整備等に対する融資(円借款「ハズラット・シャージャラール国際空港拡張計画(第二期)」(供与限度額800億円))
 近年のバングラデシュの経済成長を背景に急速に拡大する航空需要に対応するため、首都ダッカのハズラット・シャージャラール国際空港において、国際線第三旅客ターミナル及び貨物ターミナルの整備等を行うための資金を融資します。これまで、2017年6月に第一期(供与限度額768億2,500万円)として円借款を供与し、今回はこれに続く第二期の融資となります。
 国際線第三旅客ターミナルや貨物ターミナルの整備等により、2015年に年間557万人だった同空港における国際線年間旅客数が2026年には年間1,281万人に増加するとともに、2015年に年間25万8,010トンだった国際線貨物取扱量が2026年に年間50万7,440トンに増加することが見込まれる等、急増する航空需要に対応し、空港の容量拡大、利便性及び安全性の向上を図り、もって同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

(5)バングラデシュにおける国道1号線上のチョットグラム-コックスバザール間の主要市街地におけるフライオーバー及びバイパス道路等の建設に対する融資(円借款「チョットグラム-コックスバザール幹線道路整備計画(調査・設計のための役務)」(供与限度額19億600万円))
 現在円借款にて建設支援中のバングラデシュ南東部のマタバリ港への主要ルートとして、同港と商工業の中心地である首都ダッカやチョットグラム(旧チッタゴン)を繋ぐ貨物輸送の基幹路線となることが今後見込まれる国道1号線のチョットグラム-コックスバザール間の主要市街地において、フライオーバー及びバイパス道路等を建設するための詳細設計等エンジニアリングサービスを実施するための資金を融資します。
 フライオーバー及びバイパス道路等の建設により、同区間の交通の円滑化とマタバリ港へのアクセス向上を通じて、沿線地域の経済開発及び同国の物流促進を図り、もって同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

(6)バングラデシュの農業・食品加工関連企業へのツーステップローンによる譲許的融資を通じた資金供給及び経営管理、食品加工・食品安全管理等に係る技術支援に対する融資(円借款「フードバリューチェーン改善計画」(供与限度額112億1,800万円))
 バングラデシュの今後の持続的な成長に重要とされる加工食品の輸出産業の成長のため、農業・食品加工関連企業向けのツーステップローンによる譲許的資金供給及び経営管理、食品加工・食品安全管理等に係る技術支援を行うための資金を融資します。
 ツーステップローンによる譲許的融資等を通じ、融資対象企業における売り上げ増加、食品安全管理の改善や製品の多様化等が見込まれる等、農業・食品加工産業の金融アクセス改善及び能力強化を図り、もって同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化及び社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

(注)ツーステップローンとは、借入国の金融機関(開発銀行等)を通じ、民間企業に一定の政策実施のために必要な資金を供与するもの。2つ以上の金融機関を経由して、最終受益者である企業に対する融資が実行される。

(7)バングラデシュの対象4都市におけるインフラ整備及び都市開発に係る行財政能力強化に対する融資(円借款「都市開発及び都市行政強化計画」(供与限度額282億1,700万円))
 産業の集積地としてバングラデシュの経済発展を牽引する役割を担う一方で、急速な人口増加に道路、給水、排水、廃棄物処理等のインフラ整備が追いついていない中核都市や地方都市のうち、ガジプール市、コミラ市、ナラヤンガンジ市、コックスバザール市の4都市において、インフラ整備と都市開発にかかる行財政能力強化を行うための資金を融資します。
 インフラ整備と都市開発にかかる行財政能力強化により、対象4都市の経済発展及び住民の生活環境向上を図り、もって同国の中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化と社会脆弱性の克服に寄与することが期待されます。

2 供与条件

(1)上記2(1)から(4)、(6)及び(7)

(ア) 金利 年0.65%(コンサルティングサービス部分は年0.01%)
(イ) 償還期間 30年(10年の据置期間を含む。)
(ウ) 調達条件 一般アンタイド

(2)上記2(5)

(ア) 金利 年0.01%(コンサルティングサービスのみ)
(イ) 償還期間 30年(10年の据置期間を含む。)
(ウ) 調達条件 一般アンタイド

[参考]バングラデシュ人民共和国基礎データ
 バングラデシュ人民共和国は、面積約14.7万平方キロメートル(日本の約4割)、人口1.61億人(2018年、世界銀行)、人口1人当たりの国民総所得(GNI)1,750米ドル(2018年、世界銀行)。