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国の債務管理の在り方に関する懇談会(第52回)議事要旨

.日時 令和2年6月22日(月)13:30~15:00

.場所 財務省 国際会議室

.内容

1.国債発行の現状と今後

2.COVID-19と我が国の中長期的課題

(SMBC日興証券 末澤 豪謙委員)

3.国債先物市場の現状と今後の取組み

(大阪取引所 市本 博康常務)

まず、理財局より「国債発行の現状と今後」 (資料1(PDF:1873KB))について、説明が行われた。

▶ 当局からの説明概要は以下の通り。

(日本における国債発行の現状)

・補正予算が4月、5月の2回にわたり編成されたことに伴い、令和2年度の国債発行総額は、当初153兆円から100兆円程度増加し、253兆円と過去最大の発行総額となっている。カレンダーベース市中発行額についても200兆円を上回る規模であり、こちらについても過去最大の額となっている。

・カレンダーベース市中発行額の年限構成については、PD会合、投資家懇をそれぞれ4月、5月に開催して、マーケットの方々の意見を伺いながら、各ゾーンにどれぐらいの増額の余地があるのかを確認の上、変更している。幅広いゾーンで増額はしているが、相対的に短期ゾーンを厚めに増額したというところが今回の計画変更の特徴である。なお、発行計画の補正変更の前後で大きな金利の変動は生じていない。

・国債の発行の増発は7月からになるが、国庫の資金繰りのために政府短期証券の発行を4月、5月から増額しており、国債の増発に先行する形で短期ゾーンにおいて増額は既に始まっている。

(海外における国債発行の状況)

・各国ともに、コロナ対応のために大規模な対策が講じられており、これに伴い、国債の増発・発行計画の変更が行われている状況である。日本でもかなり割引債の発行が先行して進んでいて、7月から利付債の増額が始まるといった構図になっているが、アメリカ、ドイツ、フランスに関しても、相対的に多額の割引債の発行が行われている。利付債の増額部分については、各国、おおむね短期の1~7年ゾーンを相対的に厚く増額している。

(今後の課題)

・今後も高い水準での国債発行が継続していくことが見込まれる中、引き続き、マーケット参加者の方々と意見交換を十分に行い、ニーズを踏まえた発行を行うことにより、まず、確実かつ円滑な発行を行うというのが重要である。あわせて、中長期的なコストの抑制についても考えていく必要がある。

・今後の課題として3点挙げており、1つ目は、必要な財政資金を確実に調達するために、実際の発行の状況に応じて機動的に対応していくことである。

・ 2つ目が中長期的な調達コストの抑制という観点から、中長期的な投資家のニーズを見極めて、引き続き、安定的で透明性の高い発行を行うことや、あわせて、今後の国債の発行の見通しやコスト・アット・リスク分析といった債務管理の観点からの検討も行う必要がある。

・3つ目は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の下、緊急事態宣言が出て、オフィスの分散や在宅勤務という勤務体制が行われており、こうした事態が今後も続いていく可能性を念頭に置いておき、業務体制の整備を検討することである。今回の経験や反省を踏まえて、入札も含め、セカンダリーマーケットにおいても、国債の取引をより確実に行う体制づくりが当局側でも検討が必要であるとともに、市場参加者の方におかれても必要な検討を行っていただきたい。

・国債発行計画における最近の取組みとして、割引短期国債の柔軟な発行がある。2次補正後の発行計画において、割引短期国債を大幅に増額していることから、今後、発行に当たって、年限区分や回数、発行額を柔軟に調整するということを計画の中に明記しているところであり、これに基づいて、割引短期国債の柔軟な発行をしていきたいと考えている。

・ 2つ目の取組みは、国債発行計画の年度途中の変更である。従来は、予見可能性を重視して、基本的に国債発行計画は年度中に変更しないということでやってきたが、昨年、当初計画を議論する中で、マーケットの状況や発行状況を踏まえて、年度の後半における国債発行計画の変更の可能性について言及したところ。当時は、減額の方向への変更を念頭に置いていたが、今後、追加財政需要の発生や計画と実績の乖離等を踏まえて、必要に応じて変更していく必要がある。その際には、予見可能性の確保やマーケットへの影響の抑制という観点から、PD会合、投資家懇を開き市場参加者の意見を聞いた上で変更していくことを引き続き考えている。

・ マーケットの環境も大きく変化しており、投資家の行動変化をしっかり把握していくことも課題の一つと考えている。とりわけ海外投資家の動向をさらに把握するために、今後どういった対応が必要なのかということを考えていく必要があると考えている。海外投資家の動向把握という観点から、IRは引き続き重要であるが、2月上旬に開催したのを最後にその後IRは行えていない。今後も海外出張ができない状況が続くと考えられるため、ウェブ会議等を活用したIRの実施も検討していきたい。

続いて、SMBC日興証券 末澤委員より「COVID-19と我が国の中長期的課題」(資料2(PDF:2137KB))について説明が行われた。その後、自由に意見交換が行われた。

▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。

・今回の1次補正及び2次補正による国債増発については、極めて多額なものになっている中で、短期債を中心とした発行計画というのは、調達を確実に行う観点から非常に望ましい対応であったと考えている。

・ 10年、30年のJGBのスプレッドは、30bps割れていた3月13日以降、スティープニングを継続しており、足元、先週金曜日時点では50bps程度までに拡大している。仮に、利付債を重点に置いた発行計画だった場合は、現在の水準以上の金利上昇や、イールドカーブのスティープ化が進んでいたのではないかと思うし、その結果、経済対策の効果を一部減退させてしまうおそれもあったのではないかと考えている。ただし、実際の増発分は来月以降であり、投資家需要や今月末発表される日本銀行の長期国債の買入スケジュール及び金額等を市場参加者は非常に注目しているということは申し添えさせていただきたい。

・今回、これだけ大きな、100年に一度というか、10年に一度来るようなコロナショックの中で、大変な危機が来ているわけだが、こういう中での危機というのは、過去を見ても基本的には、民間の企業や家計の負担などがいろいろな対策によって、だんだんと政府債務に置き換えられていくというプロセスだろうと思う。

・今回もかつてない規模で補正予算が編成されており、政策的に国債が大量増発される。そうなってくると、今度は、各国の国債がグローバルに市場で生き残れるか、選別されるかという段階になってくる。各国の国債の選別は、基本的に経常収支と財政規律によって、市場の中における信頼というものが、維持されたり、また、場合によっては棄損されたりするものと考える。

・日本の場合は、これまで経常収支というか、いわゆる国力もしくは競争力というようなものがマクロ的にも保たれていたということ、それから、一定の財政規律への配慮が残っていたが、当然のことながら、これから、こうしたようなものがいかに維持できるのかというところが問われるということになろうかと思う。そういう意味では、市場参加者としても、こうした状況というものを、市場の目からいかにチェックできるかというところがやっぱり重要であり、特に、今回のこれだけの状況であるから、財政の拡張というものは必要であるとしても、例えば、今回10兆円の予備費あたりのところというのは、財政規律の面でのチェックが必要となる。海外に対しても、例えば、最近も格付動向みたいなところも、多少変化というか、悪化の兆しが現れているところもあるわけであるため、そうした点については、今後も注力して、市場の立場としても見ていかなければいけない、と考えている。

・ グリーンボンドの発行は日本では非常に少ない一方、海外では非常に多くなっているが、その中にも、「90%グリーン10%グレー」「80%グリーン20%グレー」もグリーンボンドと呼ばれる。こういうのも全てグリーンボンドとして、北欧などでは国債、あるいは地方債として発行されており、これを購入した企業なり金融機関が、グリーン投資をしているとみなされるようになっている。グリーンボンド原則では、(いい加減な)グリーンボンドの発行も可能であり、それを買うことによって各金融機関の評価が高まるという、変なことが起こってきている。そういう意味で、日本は、今後、グリーンボンドを発行するようにするのか、それとも真面目に、きちんとしたグリーンボンドの発行ができるようになるまで待つのか考えないと、日本の金融業なり企業が悪いランキングにされてしまうような気がしている。

・普通、教科書でいけば、マネーサプライがこれだけ増えれば、必ずいつかインフレが来て、名目金利が上がっていく。そのときの利払費というのが、また大変なものになると思うが、市場参加者の受け止めはどうなのか。

・足元では、運用難と、COVID-19のパンデミックによるデフレ的な影響があって、結果的に、リスクオフ的にも国債を買わざるを得ない。特に短期債のほうが好都合だという面があって、実はアメリカの場合でも、ここもと2兆ドルほど既に急発行しているが、大半、8割から9割は短期債で、結果的に、短期債の増発によって長期金利の上昇が抑えられているといういい面が足元である。足元はパンデミックというFly to qualityを以て短期債が選好されているが、中長期的には、まだこれは不透明だと思う。

・最近、危機が増えており、危機が起こるたびに必要な資金調達というのは国債に頼らざるを得ない状況に日本はあると、何となく危機感を覚えていて、もちろん世界的には低金利、低インフレだが、日本においては、やはり借換債の発行額も大きいため、名目の長期金利が低くても、それによって増発しても構わないということにならず、その内訳をもうちょっときちんと見ていくべきではないか。例えば長期金利も、リスクのタームプレミアムのところと期待のところに分けることができ、コロナ禍では長期のタームプレミアムが上がり、コロナショック時では上がるリスクがリーマンに比べて少し高いみたいな分析結果が出ている。そうすると、今回、コロナ禍での国債の追加発行において短期化するというのは納得できるところだと思っている。

・こういった危機では、やはり、機動的に国債発行を考えていくということが大事だと思うが、例えば、事務局の4ページの図を見てみると、日本というのは、毎年度の国債発行は、その前の年の12月に予算と一緒に出していて、その計画を見てみると、すごくきめ細かく、各年度は幾ら発行するというのをあらかじめ出している。ドイツ、フランス、イギリスも、もちろん年間の計画はあらかじめ出しているが、イギリスを見ると、もう少し大ざっぱで、ショート、ミディアム、ロングだけ決めて、詳細は調整していくといったように日本より機動的であると思い、危機のときには、特に機動性という観点も考えていったほうがいいのではないかと感じている。

・足元の環境においては、財政政策と金融政策が密接な連携が、大量発行されている国債の安定消化ができている要因と考える。ただし、今後の財政拡張による更なる増発の可能性、及び既存の短期債の借換え需要を想定すると、ホームバイアスが強い本邦発の金利上昇は想定していないが、海外発の金利上昇、特にかつてない規模の財政出動を実施しダイナミックな市場変動がある米国発の金利上昇には、懸念が残る。そうした環境下での大量の国債消化が必要な場合は、債券発行に加えて、借入(民間からの貸出)による調達も検討に値すると考える。民間サイドにとっては、会計上マーク・トゥ・マーケットの対象外でもあり、保有しやすいと思われることも、その理由である。

・日本経済に対しての一番のリスク要因は、少子高齢化と考える。ただし、これはリスクというよりも必然であり、見て見ぬ振りをしたことによる結果と捉えている。今後、経済成長率の低下、貯蓄率の低下、経常赤字の進展などが予想されるが、早めに手を打ち、その影響を緩和することが必要と考える。

・国の一般会計はゆがんだ会計だと思う。円滑な国債発行を確保したいなら、国民経済計算等の数字を用い、日本の財政の実情を示したほうがよい。

・今は歳出の3分の2が社会保障関連であるが、日本政府、世界を一番脅しているのは、温暖化だと思う。予算の使い方を見直して、より全ての方を脅かしている温暖化問題に取り組むべきではないか。

・国債の円滑発行は金利次第であり、金利は日銀次第、日銀はインフレ次第、インフレは、やはり総需要と総供給次第である。総需要については、いろいろな国が財政出動をしているが、これは民間への需要が大きく減ったからである。これから、民間の需要がどういうペースで回復するか、それに対して公的歳出をどういうペースで減らしていくのかというバランスが1つのポイント。供給サイドについては、幾つかの市場において独占により技術革新のペースが低下しており、これまでどおり新しい技術の普及が起こるかどうかということは分からない。また、今、米中の貿易悪化の進行や、新型コロナウイルスの感染拡大による貿易の縮小の可能性もあるため、供給サイドがどちらかといえば悪化する。需要が増えながら供給が悪化するということであれば、インフレになってしまうため、これを少し深く考えていく必要がある。

・今回大幅な補正予算に対応するために大規模な国債発行計画の変更が必要となったが、市場での円滑な消化の観点から短期債中心の増額となったことは非常によくわかる。

・この先を少し考えていくと、コロナがまだ完全に終息しないという状況が長く続く中で、日本だけに限らず、世界経済も前の水準に戻るまでに数年を要する可能性がある。そういう中では、マクロインパクトを考えると、財政の崖が生じないように、どこの国もかなり大量な国債発行が求められる状況が続くのではないか。

・そういったことを考えると、今後も何年かは国債の大量発行を避けようがないことを踏まえて、どういった発行が望ましいかについて国債発行計画を考えていくことが重要ではないか。

・過去のパンデミックについての実証分析で、パンデミックはそれ自体ではデフレ的に働くということが示されている。今回は米中対立もあり、サプライチェーンがそう簡単に修復するかというリスクもある。

・スペイン風邪の後に関東大震災、世界大恐慌となったように危機が立て続けに発生するリスクもあり、平時に財政の健全化が必要。これは誰しも思っていることだが、これまで実現できなかった。内閣府の試算で、成長実現ケースというのは名目成長率で3.5%、ベースラインシナリオは1.1から1.5%ぐらいであるが、平時の景気について、やはりベースラインケースがメインシナリオとなるような形で、我々はコロナ終息後を考え、その下でも財政健全化を着実に進める必要があると思う。

・アメリカで選挙がある。債権国の我が国への影響ということで、対外純資産が非常に大きいので、円ドルレートは、単に貿易面だけではなしに、対外資産がもたらす収益に非常に大きい影響を与えるわけで、円がどう振れるかは大きな注目点だと思う。

・今回、感染症の経済に与える影響は、既に国際機関等が発表しているとおり、当社としてもかなり大きなマイナス影響を予想している。したがって、大規模な財政出動は、危機対応としてやむを得ないと考えている。

・同じパンデミックが世界的に広がる中で、国債の発行額を各国比較で見ると、日本は他国の2倍に達している。また、債務残高はもともと日本が飛び抜けて高い。そういう状況にあって、今回の危機を迎えており、危機時においても市場の信認を維持するということが改めて大切であるとともに、平時になった時に、いかに財政の健全化を着実に進めていくことができるかがますます重要になると思う。

・長期金利がすぐに跳ね上がるということは、様々な状況を考えると、想定はしにくい。ただ、少子高齢化のような構造問題は、日本の場合、確実に深刻化していることに加え、短期的にも感染症が収まらないうちに国際的な金融危機が起きる可能性や、首都直下型地震など別の災難が同時に起きる可能性いわゆるブラック・スワンも起きないとは言い切れないことを、しっかり念頭に置いておく必要があるのではないか。

・したがって、本懇談会では、これまで議論してきたようなリスク分析の枠組み等も活用し、その点はしっかり、今後もモニタリングしていく必要があると思っているところ。

・海外IRの件は、確かに、直接訪問するというのは難しくなったと思っているが、逆にオンラインでは、コスト面でも時間的制約という面でも、複数先と面談が可能になると思う。ピンチをチャンスに変えるという視点で、今回をきっかけに、ぜひ、新規開拓に取り組んでいただけるとよいのではないか。

・現状の大きな環境変化で、例えば原油価額も大きく下がり、中東諸国の経済情勢も変わってきている。やはり、感染症拡大によるグローバルな大きな変化が出てきており、投資家の動向をつかむということは大事になっている。さらに米中対立をはじめ、いろいろな政治的な対立、地政学リスクも高まっているため、こういった意味からも、国際的に、どういう投資家がどういう行動をしているのかということを把握していくことは、とても大事だと思う。

・また、効果的にIRをしていく上でも、海外投資家の動向をつかんでいくことは、とても大事だと思っている。特に、カストディアンベースでは、やはり、本当の投資家が誰なのかということがしっかりつかめない株式市場では、むしろ、それをビジネスにして、真の株主を把握するということをやっている事業者もいる。海外の発行当局はどういう対応をしているのかも調べるなどして、できるだけ、これから海外投資家の動向しっかりつかめるような体制で進んでほしい。

・国債発行の構成について、短期国債で発行増額ということだが、今の時点で、非常にうまいこと発行計画を立てられたと思う。当面インフレが起こらないということ、あるいは経常収支の黒字が中期的に続いていくということが前提になっていると思う。一方、海外を見ていくと、貯蓄超過の要因である富の一部の者への偏りが、政治的な問題となってきている。そうすると、いつまでも貯蓄超過がグローバルに続くのかというような問題や、再配分によりある程度富が平準化していく可能性があるとすれば、それは将来的にはインフレの芽にもなってくると思う。

・また、アメリカがドルをどんどん供給していくようなオペレーションを続けていけば、ベーシスが下がっていき、短期債に対する魅力も落ちていく可能性があると思う。中長期の構成を考えていく際には、こうしたマーケットの動向や、中長期的なコスト・アット・リスクのところのリスクのところの再検討をしていくべきと思う。

続いて、大阪取引所 市本常務より、「国債先物市場の現状と今後の取組み」(資料3(PDF:1463KB))について説明が行われた。その後、自由に意見交換が行われた。

▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。

・実際、現物の売買高は、今回の一連のコロナの話で見ていても減少している。テレワークの増加で、セカンダリーでの購入、売買がやはりプライマリーに流れてしまっているということがあると思う。自宅での情報というのは限定されており、その中で、情報が入ってこないというのを前提にすると、1つのプライスでオーダーができるというプライマリーのマーケットというのは有効で、プライマリーにある意味集中してしまっている。これが長く続くようだと、セカンダリーの流動性が低下してきて、マーケットで持っているものが売却できないとか、そういうふうになってくると、売りたいものを売れないため、当然、皆買わないようにする、プライマリーのマーケットがちょっと不安定な状態になる、といった影響が出てくるということになると思う。

・ その中で、セカンダリーのマーケットというものを一番支えているのが先物市場であるが、この先物のマーケットというのをいかに円滑に、スムーズに、大きなマーケットで場として支えていくかというのはすごく大切。

・今マーケットが、以前ベンチマークが長期国債10年債だったのに対して、20年の超長期のほうに移ってきているが、先物のマーケットにおいては、実際は長期国債先物は年限で言えば7年債を売買しているような状態で、超長期国債の先物も中期国債の先物も出来高がほとんどないため、イールドカーブ全体をこの7年の1本でヘッジして売買して支えているだけであり、そういう意味では脆弱なマーケットである。以前よりも何回かトライしているが、超長期国債先物の売買が旺盛に活発にできていくことを、こういうところでサポート、協力して発展させていくのが必要だなというふうに思う。

・アウトライト売買するという人が少ないのだとしたら、例えば長期国債先物・超長期国債先物スプレッド取引というのをやるとか、いろいろなことを考えていかないといけないと思っており、新しいことを組み合わせてできるマーケットを提案していきたいと思う。

・政府債務を考える上で、市場機能と財政規律が両輪だと認識しているが、前者の市場機能のところは、今現物がこういう状況なので、先物市場が大きな役割を担っていると思っている。

・例えば香港が政治的にも非常に不安定で、人材リスクが出てきている。あるいはシンガポールも今ちょっとコロナで苦戦しているという中で、日本市場は、先物に関しては取引所のメニューが総合取引所という形でリスタートすることで商品のラインナップも拡充されるし、良いチャンスにあるなというふうに認識している。

・高速取引についても、一部メディアでは非常に警戒的に取り上げる記事もあったが、今回のウェブ会議もしかり、新しいテクノロジーが出てくると、慣れないインフラというのは出てくるため、いろんな意味でちょっとまだ黎明期かなとは思う。実際には、我々も日本国債先物については、大体4分の1とか5分の1ぐらいのシェアを結果的に持つ状況になっており、その多くが高速取引だが、流動性の必要条件になってきたなというのは実感する。

・留意点もお話しさせていただくと、アルゴリズムが判断する場合、一方向に振れるリスクであるとか、あるいは、今まで伝わっていなかった情報が出ると大きく反応する傾向というのは出てくるため、例えばその対処法としては、こうしたウェブ会議が浸透することでIRのチャネルも随分変わっていくので、今まで以上に透明度に留意して、幅広いチャネルで日本の財政の状況を発信していくというのがポイントかなと思う。

・ヨーロッパでは、グリーンボンドというのは随分浸透していて、確かにルールや定義は、まだ黎明期なので曖昧なところがあるが、資金仲介のチャネルで役割が少し変わってきたのかなと思う。情報の伝達速度が速くなってきたことで、例えばマイノリティーだとかサステーナビリティーとか、今まで見えなかったことに対する配慮が必要になってきている。例えばエクイティーに関して言うと、必要なものは成長するという考え方があるだろうし、デットに関して言うと、必要なものはその分サステーナビリティーがあるというように、調達者にも投資家にも本来メリットが出るチャネルとして期待している。確かにまだ黎明期なところがあるので、これは業界を含めてまだ努力は必要だなと思っている。

・現実問題としても償還年限が10年近くまでの国債の金利がほとんど水没したような状況になっている中で、イールドカーブ上金利がある世界というのは10年以上という超長期のゾーンだけになっている。そうすると、投資家のほうとしても、現実的にインカムでもって投資をするということでいうと、10年以上でないと、いわゆる実需としての世界の中でなかなか投資がしづらいという世界に入ってしまっていて、10年以内のところというのはキャピタルの世界になっているような状況になっている。そういう意味からすると、この実需の20年債なり、超長期のゾーンのところが増えているということを鑑みると、やはり先物世界のところでも重要になってきているのではないか。

・世界的に言っても超長期債の発行が民間のところも含めて増えている。現物債ということも、超長期が増えているということを考えると、超長期の先物が育成できないというのはなかなか難しい問題ではあるが、やはりそういう中でのヘッジ機能の必然性、必要性が高まっているということは認識する必要があるのではないか。

・生命保険業界の視点からだと、まだ資産のデュレーションが負債に対して圧倒的に足りないという状況であり、プライマリーで20年、30年、40年の現物債を買いに行くという投資行動がまだ続いている。ICSという保険会社に対する国際的な規制が2025年に導入されるが、日本でも同様の規制が導入される可能性が高いということで、各生保とも資産・負債のデュレーション・ギャップを縮めようとしている。そうすると、2025年にはある程度、この超長期国債を買うという行動に達成感が出てくる可能性もあると思っている。その後、どのようなトレードが発生してくるかというと、カーブを使ったトレード、20年の先物と、10年、30年の現物を組み合わせて超過収益を獲得していくようなトレードがでてくる可能性があると思っている。5年ほど先ではあるが、そういった意味で超長期の先物の将来というのには期待できるものがあると考えている。

(以上)

連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
 電話 代表 03(3581)4111 内線 2565

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