(令和2年7月3日(金曜日)10時43分 於:本省会見室)

ロシアの憲法改正(日露平和条約交渉へ与える影響)

【NHK 山本記者】ロシアとの平和条約交渉に関連して伺います。ロシアで全国投票が行われまして、憲法改正されることになりました。これを受けてですけれども、北方領土の国後島では憲法改正を記念する石碑が、島の行政当局などによって新たに設置されたそうです。ここには、改正憲法に盛り込まれました領土の割譲を禁止する項目、この文言なども盛り込まれているそうです。こうした一連のロシア側の動きをどう見ていらっしゃるのかということ、実際にその交渉にどのような影響をおよぼすのか、そのあたりをお願いいたします。

【茂木外務大臣】様々な動きについては承知をしております。その上で、まさに平和条約交渉、これは政府と政府の間で進められる交渉であります。安倍総理、プーチン大統領、両首脳の合意に基づいて、領土問題を解決して、平和条約を締結するとの基本方針の下、引き続き粘り強く交渉に取り組んでいきたい、これに尽きるところです。

香港国家安全法(香港市民への支援)

【AFP通信 長谷川記者】香港に関して中国が国家安全法を成立させたことを受けまして、英国政府等は香港からの移住の希望者を受け入れると表明をしていますが、日本政府として同様の措置について検討される方針はありますでしょうか。

【茂木外務大臣】まず今般、全人代の常務委員会におきまして、国際社会や香港市民の強い懸念にも拘わらず、香港における「国家安全法」が制定されたことは遺憾であります。
 香港は、我が国にとって緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして、「一国二制度」の下に、自由で開かれた体制が維持をされ、民主的、安定的に発展していくことが重要であるというのが、我が国の一貫した立場であります。
 現時点で、今般の法律に関連して、日本企業であったりとか、在留邦人に関する何らかの被害が発生したと、こういった報告を受けておりませんが、現在、香港には2万6,000人の在留邦人、そして、1,400社の日本企業が活動しておりまして、「一国二制度」の将来、これは香港と緊密な経済関係と人的交流を有する我が国にとっても、極めて重要であります。邦人保護の観点も含め、今般の法律をめぐる今後の影響はしっかり注視をしていきたいと思っております。
 更に、今後、香港の国際金融センターとしての地位というものがどうなっていくのか、そこに集まっている優秀な人材がどういうことを考えているのか、こういったこともよく分析した上で、適切に対応していきたいと思っております。

新型コロナに関する国連安保理休戦決議(対ISIL作戦の継続)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 報道によると、国連安保理は新型コロナウイルスによるパンデミックに対応するため、世界的に休戦を要請する決議を採択したとのことですが、例外もあるようであり、ISILとの闘いは継続すべきとされています。これについての日本の立場および(その立場をとる)理由をお教えください。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 1日の日に国連安保理におきまして、新型コロナウイルス感染症に関する決議、これが全会一致で採択されたことを、まず歓迎をしたいと思います。ご指摘の過激主義との闘いにつきましては、ISILの再興及び過激主義の国際的な拡散を防ぐべく、国際社会全体で今後とも努力を継続していく必要がある、そのように考えております。
 また、シリア、イラク等中東地域の平和と安定のためにも、引き続き国際的努力が必要でありまして、我が国としては、過激主義の温床を根絶するためにも、引き続き国際社会と連携しつつ、中東地域の平和と安定に取り組んでいきたいと思います。

香港国家安全法(米国の対応)

【共同通信 高尾記者】香港情勢についてお伺いします。先般成立した、「香港国家安全維持法」について、米国のポンペオ国務長官は、これは米中の課題ではなく自由主義と独裁主義の課題だとして、関係国と地球規模の連携を目指す考えを表明しました。ポンペオ長官の発言を、大臣としてどのように受け止めて、日本としてどう対応するか教えてください。

【茂木外務大臣】日本の基本的な立場につきましては、先日、外相の談話も発表いたしましたし、今、質問にもお答えしたところでありますが、香港における国家安全法をめぐっては、これまでも米国を含めます関係国と連携して対応してきておりまして、先日は、G7外相声明も発出して、本件に対する重大な懸念を示したところであります。引き続き関係国と連携しつつ、中国側の適切な対応を求めていく考えに変わりありません。

【共同通信 高尾記者】関連でお伺いします。米国議会が中国への制裁を盛り込んだ「香港自治法」を全会一致で成立させております。制裁は中国高官と取引がある金融機関を対象としていると伝えられていますが、日本としても今後何らかの制裁を講じる必要があるかどうか、大臣のご見解をお聞かせください。

【茂木外務大臣】米国におきます個別の政策についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、それ以降の部分につきましては先ほどお答えしたとおりです。

新型コロナウイルス(新興国への感染症対策支援)

【読売新聞 後藤記者】新興国への新型コロナ感染症対策の支援についてお伺いします。日本政府は、東南アジアやアフリカに無償資金協力を行っています。最終的には100か国程度に支援を行う方針だと思いますけれども、現時点でのその進捗状況をお聞かせください。また、かつてないスピードでの支援ということですけれども、供与決定の完了を目指す時期について教えてください。

【茂木外務大臣】率直に言って、今回相当早いスピード、これまでにないスピードで、実際の閣議決定等進んでいると考えております。まずですね、新型コロナの対処のためには、国際的な連携が極めて重要でありまして、とりわけ保健システム、そして医療提供体制が脆弱な途上国を支援して感染拡大を抑えることは、国際社会全体にとって喫緊の課題でありまして、我が国としても、そういった支援を提唱して、また率先してそういった支援を行ってきているところであります。
 第一次補正で、途上国の医療関連機材等の供与を目的とする無償資金協力、これを盛り込みまして、約100か国に供与すべく、私(大臣)自身も相当具体的な議論にも加わりまして、かつてないスピードで、今、調整等を行っているところでありまして、今日までに81か国に対する閣議決定を終えまして、30か国と交換公文を締結して、順次調達の手続きと、これも進めているところであります。
 おそらく、これまでのODAのペースから言ったら、相当、かつてないペースではないかなと考えておりますが、残りの国につきましても、速やかにこういった手続きを進めていきたいと思っております。

日韓輸出管理

【読売新聞 後藤記者】日本から韓国に対する輸出管理についてお伺いします。日本が半導体関連品目の韓国への輸出規制を強化してから1年経ちました。韓国政府がWTOに提訴するという動きもありましたけれども、改めて日本の立場をご説明願います。

【茂木外務大臣】日韓両国で、これまで輸出管理当局間で懸案を解決するために対話を重ねてきているわけでありますが、それにも拘わらず、先般、韓国側がWTO紛争解決機関にパネル設置を要請したことは、極めて遺憾であると考えております。我が国としては、WTO協定の手続に従って、引き続き適切に対応していく考えであります。