2020年6月22日

ISO/IEC合同専門委員会(JTC1)において、日本から提案した「持続可能な情報配線システムの施工と運用」について、国際規格の審議が開始されることになりました。
この国際規格が成立・発行されれば、持続可能性の観点から情報配線システムの各種構築技術・技能を適正に評価するための国際的な基準が整います。これが国内外での調達基準等に採用されることで、我が国関連業界が強みとする“施工品質の高さ“を活かした形で、海外市場における情報配線システムに関するビジネス機会の創出・拡大に向けた取組の進展が期待されます。

1.提案の目的・背景

情報配線システムは、オフィス、学校、病院などのビル、工場、データセンタ、及び住宅内などで使用されるLAN(構内情報配線網)、電話・インターネット回線など、日常使用する様々なネットワークアプリケーションをサポートする設備インフラのひとつです(図参照)。Wi-Fiなどの無線通信、ストレージのクラウド化や動画配信サービスなど、近年、ますます通信の高速化、容量の増大化が求められるネットワークアプリケーションを確実にサポートするための基盤であり、そこに生じる様々な問題はますます無視のできないものとなっています。

ネットワークアプリケーションを快適に利用するためには、情報配線システムが正常に稼働することが前提ですが、国際的な統計によれば、通信速度の低下や接続不良といったネットワーク障害の約50%が情報配線システムの施工で発生しています1。この要因として、対応する規格が存在しないため、施工業者が独自のノウハウ等で施工することが多く、施工不良につながっていることが指摘されています。

我が国の関連業界は、長期間にわたり高い通信品質を確保しながら必要な箇所を短時間で保守できる“施工品質の高さ“を強みとしていますが、反面、初期コストが高くなる傾向にあり、特に、品質よりも初期コストが重視される海外案件では不利にはたらくため、日本の関連企業が海外で受注しにくい構造があります。

  • 図 情報配線システムの概念図の画像図 情報配線システムの概念図
【資料提供】JTC1/SC25国内委員会(委員長:菊池拓男(職業能力開発総合大学校))

このような背景のもと、経済産業省からの委託2を受けた一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が、情報配線システムの施工と運用について規格を開発し、その成果をもとに、JTC1の専門委員会(JTC1/SC25;情報機器間の相互接続)に国際規格案を提案したところ、2020年1月に承認され、今後、国際規格の検討が開始されることになりました3

1 日本製線株式会社;NICSys認定セミナー資料(2019)
2 戦略的国際標準化加速事業(政府戦略分野に係る国際標準開発活動:持続可能かつ高品質な情報通信サービスを提供する情報配線システムの構築法と品質保証に関する国際標準化)。平成30~令和2年度に実施。
3 プロジェクトリーダー(とりまとめ役)に、特定非営利活動法人 高度情報通信推進協議会の宮島 義昭氏が就任。

2.提案の内容

今回、日本から提案した国際規格案は、環境負荷が小さく長寿命な情報配線システムについて、設計、資材選択、施工品質、運用と保守管理、廃棄物の処理、必要となる技能・技術や人材育成などの各項目に対して、「持続可能性」の観点から新しい価値軸(評価項目)を規定したものであり、具体的には以下のような技術的基準を定めることを提案しています。

  1. 配線設計
  2. 環境に配慮した情報配線システム材料の選択、包装及び輸送
  3. 運用と保守管理
  4. 関連材料の廃棄処理
  5. 必要となる技能・技術と人材育成

3.期待される効果

当該国際標準が発行されることにより、持続可能性の観点から情報配線システムの各種構築技術・技能を適正に評価するための国際的な基準が整います。この基準が国内外での関連の入札や調達における評価に採用されることで、ネットワークの品質や信頼性を維持しつつ、環境負荷が小さく長寿命な情報配線システムの普及促進と適正な市場形成への道が開かれます。我が国関連業界が強みとする“施工品質の高さ“を活かし、この規格を足がかりに海外市場での情報配線システムのビジネス機会の創出・拡大に向けた取組の進展が期待されます。

担当

産業技術環境局国際電気標準課長 中野
担当者:佐藤(貴)、大平、木村

電話:03-3501-1511(内線 3428)
03-3501-9287(直通)
03-3580-8631(FAX)