(令和2年6月16日(火曜日)14時59分 於:本省会見室)

イージス・アショア配備計画停止が日米関係等に与える影響

【朝日新聞 佐藤記者】昨日夕方に河野防衛大臣から発表されました,イージス・アショアの配備プロセスの停止について2点ございまして,私を含めて一般の方というのは,日米関係と日本の防衛力に,これがどのような影響があるのかというのが,気になるところではないかなというふうに思うのですが。
 一つは午前中,安保委員会の答弁で大臣がおっしゃったですね,米国との協力に影響を与えるということは,考えていらっしゃらないというような答弁でありましたけれども,その具体的な理由についてと,もう一つは日本の防衛力について,この件が影響を与えるかどうかということについて,ご所見をお伺いできましたらと思います。

【茂木外務大臣】現在の日米関係,日米同盟,安倍総理,そしてトランプ大統領の個人的な信頼関係を含め,かつてなく強固であると,今年の1月には日米安保も60周年を迎えると,こういう節目の年であります。
 そういった中で我が国を取り巻きます安全保障環境,一層厳しさを増している中で,国民の生命・財産を守ること,これは政府の重大な責務でありまして,これまで同盟国であります米国との様々な協力によりまして,切れ目のない体制を構築してきました。そしてその体制が維持をされていると,そのように考えております。
 今回の決定が,このような米国との協力に影響を与えるとは考えておりませんが,我が国として引き続き米国と緊密に連携をし,冒頭申し上げた,かつてなく強力な日米同盟の抑止力,対処力を一層強化していきたいと思います。

【朝日新聞 佐藤記者】防衛力についての影響については,今おっしゃった内容に含まれているということで。

【茂木外務大臣】今答えたとおりです。

【朝日新聞 佐藤記者】ありがとうございました。

新型コロナウイルス(入国規制の緩和)

【韓国YTN 李記者】最近東京を含め,ソウルや北京などでコロナ患者の数が増えている状況であります。夏以降にですね,韓国と中国からのビジネス関連の入国は制限を緩和すると見込まれていますが,今の拡大状況がどんな影響を与えると思われますか。
 それと,日本政府は,今,ベトナムなど四つの国を優先して入国制限を緩和する方針であると,日本メディアからの報道がありましたが,韓国はその次の枠に入れるのでしょうか。
 最後にですね,今,韓国の留学生などが持っているビザは停止されていますが,いつ頃になったら有効になるのでしょうか。以上です。

【茂木外務大臣】人の往来の再開については,何度もこの記者会見の場でも,それから国会においても答弁をしているところでありますが,実際にいかなる国・地域,これは韓国,中国も含めてでありますが,との間で,この人の往来を再開するかについて,現時点では決まっておらず,まさに検討を進めている段階であります。
 そして人の往来の再開に当たっては,日本での感染の拡大の収束,これは一時期と比べると,かなり落ち着いている状況であると,このように考えております。そして海外の感染状況と。感染状況から言いますと,世界全体を見ると,日々12万人を超える感染者の数の確認があるわけでありますが,現在は,ブラジルを始めとする南米,そしてインド,パキスタン,バングラデシュ,こういった南アジア,さらにはサウジであったり,中東の一部,さらには南ア,エジプトを始めとするアフリカの一部,ここでの感染,これが感染の拡大,これが目立つ,こういうところでありますが,いずれにしても,そういった各国別も含めた海外の感染状況であったりとか,主要国・地域の対応を,しっかり見極めたいと思っております。その上で,相手国地域における感染状況と様々な情報を総合的に勘案して,段階的な緩和,これを考えております。
 そしてこの段階的な緩和の中には,国についても一遍に全世界ということではなくて,まずは限られた感染が収束しつつある国から始めて,順次広げるというプロセスであります。
 人につきましても,ビジネスであったりとか,専門家という,必要不可欠な人材から始めて,その次ぐらいに恐らく今お話のあった留学生等々のカテゴリーが入ってきて,最終的には観光客も含めて一般の方と,こういう段階になるのではないかなと考えております。
 そういった中で,今,世界各地においても,こういった移動制限,この緩和の動きがあるところでありまして,シェンゲンの加盟国,一時,各国間の行き来も制限をしたわけでありますが,域内の移動を緩和いたしまして,欧州連合,これも域外との移動緩和を提案するなど,制限措置の緩和に向けた動きが始まっているところであります。
 私もこれまでに,40か国を超えます国の外相と様々な意見交換・会談を行っておりますが,そういった中で,ベトナムであったり,ニュージーランド,さらにはオーストラリアの外相との電話会談におきまして,新型コロナの感染防止対策をとりつつ,必要な人材の往来を再開する可能性について,協議を進めていくことで一致したところでありまして,今申し上げたような国も含めて,現在事務レベルで鋭意協議が行われておりまして,国によって若干の違いはありますが,一定の進展が見られていると,このように考えております。今日時点で申し上げられるのはそこまでです。

産業遺産情報センターの一般公開

【東亜日報 キム記者】産業遺産情報センターについて伺いたいのですが,韓国を含む当時強制動員された人の犠牲について説明するという約束を破って,センターを設置した理由で,韓国政府はこれをユネスコに正式に問題を提起すると明らかにしました。
 これについてどう受けとめているのですか,お聞きしたいです。
 そして日本政府はこの件について,誠実に履行してきたとだけ言っていますけれども,具体的に何を誠実に履行したのか,また韓国政府の抗議についてどう受け止めているのか,お聞きしたいです。

【茂木外務大臣】我が国はこれまでの世界遺産委員会におけます決議・勧告を真摯に受け止め,我が国政府が約束した措置を含めて,それらを誠実に履行してきました。この産業遺産情報センターについても,世界遺産委員会における約束どおり,2019年度中に開所をし,世界遺産登録時,これは2015年になりますが,に日本政府が国際社会に約束したステートメントも,同センター内にパネルとして展示をいたしております。
 いずれにしても,世界遺産に登録された資産の保全管理については,登録した国の判断で行うものでありまして,産業遺産情報センターの展示内容については,世界遺産委員会の決議・勧告を踏まえ,専門家の助言を得つつ,適切に判断をしております。
 これ以上の詳細につきましては,所管は外務省でなく内閣官房でありますから,そちらにお聞きください。

【共同通信 高尾記者】今の質問の関連でお伺いします。産業遺産情報センターで公開された元島民の証言では,朝鮮半島出身者への差別的対応がなかったということですけれども,大臣ご自身は,日韓併合時代に差別的な対応が,実際にあったかどうかについてはどうお考えでしょうか,ご見解をお聞かせください。

【茂木外務大臣】内閣官房の所管だと申し上げたとおりです。

新型コロナウイルス(これからの日本の国際協力)

【朝日新聞 佐藤記者】全く別のことでお尋ねになるんですけれども,コロナ後における日本の国際協力の在り方について,ご所見をお伺いできればと思うんですが。海外にいた青年海外協力隊2千人全員が一時帰国であったりとか,現場で地元の人々とともに汗を流す日本の国際協力に影響が出ていてですね,今後も,途上国で感染が広がる中で,現場に人を送り込みにくいという状況は続いていくのではないかなと思うんですが,そんな状況でですね,現場での人と人との協力ということに力を入れてきた日本の国際協力は,今後どうあるべきかということで,ご所見をお伺いできたらと思います。

【茂木外務大臣】すみません,コロナ後というのはどういう定義ですか。

【朝日新聞 佐藤記者】コロナの感染拡大後,今現在,またこれからということで,お伺いできたらと思うんですが。

【茂木外務大臣】ごめんなさい。ちょっと意味が分かりません。

【朝日新聞 佐藤記者】そうですね,感染が完全に終息した後というよりは,コロナが広がった状況で,途上国の現場に人がなかなか送り込みにくいというような状況がある中で,日本の国際協力。

【茂木外務大臣】それは,コロナ後ではないと思います。

【朝日新聞 佐藤記者】そうですね,はい。今現在,ということになると思うんですけれど。

【茂木外務大臣】それは,例えば先ほど申し上げたように,国によってはまだ感染の確認が拡大している国もありますし,一方で収束している国もあるわけであります。そういう漠とした中で,全体のと言われても,非常に答えられないと思います。逆にどう答えますか。

【朝日新聞 佐藤記者】ちょっと国によって状況が異なってくるかなとは思うんですけれども。例えば途上国に対してオンライン診療とかですね,オンライン教育の普及とか,人を送り込みにくい中でも,努力の余地っていうのはあるかなと思うんですが,どういった国際協力のあり方があり得るかなっていう。

【茂木外務大臣】極めて答えにくい質問をしているということを,よく後で考えていただきたいと思いますが,その上でお答えをあえて申し上げたいと思いますけれど,今,世界全体で言いますと,まだ感染が収まっている状況ではない,警戒が必要な状況でありますが,特に感染が拡大している国,新興国,それから途上国において顕著である。こういった状況でこれらの国というのは,医療提供体制であったりとか,保健衛生面で課題も抱えているところでありまして,こういった国に対する支援策というのは,すでに一次補正等々で行ってきているところでありますし,また無償協力を含め,前回も申し上げましたが,かつてないスピードで,こういったものも進めているという形であります。
 しかも,日本の今のそういった支援,これは世界それぞれの支援策,これは違っていて,またそれが補完できればいいことだと思っておりますが,単品のマスクとかそういうものよりも,例えば病院に不可欠なシステムであったりとか,そういうものを提供することによって,それぞれの国の医療提供体制,こういうものを強化していく,こういった取組を進めておりまして,それらについては,各国から高い評価がなされていると,このように考えております。
 また,そういった物やシステムの提供,それだけではなくて,やはり人的な貢献,こういうものも重要だと思っておりまして,そういった国におけるキャパシティ・ビルディング,こういったものを進めるためには,リモートでできる部分もありますが,やはり実際に人が現地に行って様々な指導をするとか,支援をする,こういったことが必要になってくる。
 また,そういった支援を,これまで高い崇高な使命感の下でやってきた,JICAの青年協力隊であったりとか,そういった人たちも,一刻も早くそういった状況が訪れることを待ち望んでいると考えておりまして,そういった状況になった国,また地域におきましては,実際に現地に出向いていって,支援ができるような状況を作ることについて,最大限の支援をしていきたいと思っております。

【朝日新聞 佐藤記者】分かりました。ありがとうございます。