令和2年6月5日

1 6月5日(現地時間同日),カンボジア王国の首都プノンペンにおいて,我が方三上正裕駐カンボジア特命全権大使と先方プラック・ソコン・カンボジア王国副首相兼外務国際協力大臣(H.E. Mr. PRAK Sokhonn, Deputy Prime Minister, Minister of Foreign Affairs and International Cooperation of the Kingdom of Cambodia)との間で,カンボジアに対する計3件の無償資金協力(合計45億100万円)に関する書簡の交換が行われました。

2 対象案件の概要

(1)病院の施設及び機材の整備を通じた地方における保健医療サービスの改善に向けた支援(無償資金協力「シェムリアップ州病院改善計画」)
  【供与額21.53億円】

 シェムリアップ州病院は,同州及び周辺州から患者が集まるカンボジア北部の拠点病院です。しかし,1970年代に建設された施設の老朽化や機材不足により,現在の医療ニーズに十分に対応できていません。また,州内のその他の病院においても機材や人材が不足しているため,拠点病院である州病院に患者が集中してしまっている状況です。
 本計画は,シェムリアップ州病院及び同州のその他4病院の施設及び機材を整備することにより,シェムリアップ州病院の年間手術件数を2018年実績の3,306件から,事業完成3年後(2026年)には4,732件に増加させるなど,シェムリアップ州の保健システムを強化し,基本的な保健医療サービスへのアクセス改善を図るものです。

(2)医療関係機材の供与を通じた新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた支援(無償資金協力「経済社会開発計画」)
  【供与額20億円】

 新型コロナウイルス感染症の世界規模での感染拡大は,人の往来やモノの流通がグローバルに進展している今日,日本を含む全ての国の経済・社会にとっても大きな脅威であり,国際社会全体が一致して取り組むべき課題です。とりわけ,保健・医療体制が脆弱な途上国における感染拡大防止は,在留邦人の健康・安全に直結するのみならず,我が国への更なる感染拡大を予防・緩和する観点からも極めて重要であり,我が国の経済・社会にも大きく影響し得る喫緊の課題です。
 カンボジアにおいては,現時点では大規模な感染拡大には至っていないものの,同国内の医療体制は極めて脆弱であり,今後感染が拡大した場合にはカンボジア国内のみならずメコン域内への急激な感染拡大に繋がる危険もあります。本計画は,カンボジアに対し,救急車,ICUベッド等の保健・医療関連機材を供与するものであり,同国の保健・医療体制の強化を通じて,同国及び国際社会全体における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に寄与することが期待されます。
 我が国としては,新型コロナウイルス感染症の1日も早い沈静化に向けて,引き続き,国際社会の先頭に立って保健・医療体制が脆弱な国々を支援していきます。

(3)若手行政官の我が国大学院への留学支援(無償資金協力「人材育成奨学計画」)
  【供与限度額3.48億円】

 カンボジアでは,1970年代から約20年にわたる内戦により多くの有能な人材が失われ,高等教育機関の整備も不十分であるため,良質な人材の育成が喫緊の課題となっています。我が国は,カンボジアに対し,経済社会基盤の更なる強化を促す取組を行っており,今回の協力は,その一環として,カンボジアの若手行政官等が日本の大学院において学位(修士・博士)を取得することを支援するものです。
 同協力により,最大26名のカンボジアの若手行政官が我が国の大学に留学できます。この協力により育成された人材が,将来カンボジアの各分野の開発課題の解決に貢献することが期待されるとともに,我が国とカンボジアの友好関係の更なる強化に寄与することが期待されます。

[参考]カンボジア王国基礎データ
 カンボジア王国は,面積約18万平方キロメートル(日本の約0.48倍)を有し,人口約1,529万人(2019年,人口センサス),人口1人当たりの国民総所得(GNI)は1,485ドル(2018年,世界銀行)。