日時 令和2年5月19日(火曜日)10時44分~11時00分 於: 本省7階講堂
主な質疑事項
  • 種苗法改正案について
  • 日英貿易交渉について
  • 農家向け持続化補助金の必要性について

 

記者

  間もなく審議入りする種苗法の改正法案についてお伺いします。登録品種の海外流出に歯止めをかけるためのものだということですけれども、一部では自家増殖ができなくなるとか、外資による寡占化が進むのではないかという懸念が聞かれます。そうした声に大臣としてどう説明されるのかよろしくお願いします。

大臣

  まず申し上げるのはですね、審議入りが決まったわけではまずない、これは私の方からですね、もう既に審議入りが決まったということは適当でないので、与野党間の筆頭間協議もまだ行われておりませんので、今後の国会日程については予断を持った発言は避けさせていただきます。その上でですね、種苗法についてはいろいろな御議論がありますので、国会審議に先立って、多少お答えできることについてはお答えさせていただきます。
  まずですね、自家増殖については、随分注目が集まっているようでありますけれども、市場に流通している品種のほぼほぼ大宗を占めるものが一般品種、登録品種ではもう現状ではありません。一般品種については何の制限もありませんし、種苗法が改正されてもですね、もちろん何も変わるものではありません。そしてですね、例えばコメであれば84パーセントが一般品種、みかんであれば98パーセントが一般品種、りんごなんかもですね、96パーセントが一般品種です。ですから、何かですね、すごく制限がキュッとかかるようなイメージの報道がありますけれども、実は一般品種が多くてですね、こんなに登録品種は多くないのか、ということを御理解いただきたいと思います。登録品種であってもですね、一定の期間が過ぎれば、昔は18年だったんですが、今は30年に延びてますけれども、期間が過ぎればですね、登録品種も一般品種になりますので、一般品種と同等にですね、かつて登録品種だったものも使うことができる、そしてですね、世間で登録品種についてどういう扱いがされているかについて、ちょっと話が長くなるけどいいですか、御説明をさせていただきますとですね、例えばですね、私の宮崎県ではですね、さがほのかというイチゴを作っています、佐賀のイチゴ。さがほのかはブランド力があるのでですね、正直、宮崎としては宮崎イチゴとして売りたいんですけれども、やはりブランドを守らなければならない。作らせていただく限りにおいてはですね、やはり宮崎で作ってもさがほのかという名前で売っています。それについてはですね、今の種苗法の括りの中で、宮崎県は佐賀県に対してですね、許諾料を払っています。そしてこれについてもですね、宮崎県バイオテクノロジー種苗増殖センターというのがありまして、そこが一括してですね、お金をお支払いするということをさせていただいていて、農家からはこの料金を徴収していません。ですから今の状況においても、例えば静岡県の紅ほっぺもそうです、今の状況の中においてもですね、そういう優良なのもの、市場で高付加価値なものを他県で作るとあればですね、許諾料を支払うことはですね、大変普通のことであって、今回の種苗法を改正することによって、農家の方々の経営とか、そういったものがですね、許諾料をいっぱい払わなければいけないとか、制限がキュッとかかるとか、一般品種が多い訳ですから、そういうような状況は、今のところ私は想定されないのではないかというふうに思っています。
  そして海外ベースの話をしますと、UPOV条約という条約がございます。海外にですね、流通するのはまずいと、皆思っていると思います。一昨年行われた平昌オリンピック、あの時にですね、カーリング女子の皆さんが、あの女性達がイチゴを食べてですね、ああ、美味しそうなイチゴだなあと、日本産かなと思ったらどうも韓国産らしいと。まあ平昌オリンピックだから、まあしょうがないかなあと思っていたら、どうもそれの元々の種苗は日本から渡ったものらしいということがですね、随分話題になりました。国会でも委員会で取り上げられたことが度々ございます。そして、どうしてそんなことが起こったのかという議論になりまして、そうしているとシャインマスカットだとか、いろんなものがですね、しっかりと保護されていないということであってですね、海外に流出してしまったと。UPOVはですね、76か国加盟と先ほど申し上げましたが、植物の権利を保護しようという国際条約です。今の条約の下ではですね、その条約に加盟している、中国も韓国もこの条約には加盟しておりますけれども、この国に対してですね、登録品種であっても、今の法制度の下では海外流出を止められません。これは大きな問題です。これがしっかり守られて、日本の国から農家が生産して、海外に輸出しているという状況であればですね、農家にはもっと大きなメリット、利益がですね、還元されているはずです。それが、海外に種苗そのものが流出したことによってですね、海外で作られてしまう。紅秀峰にいたってはですね、オーストラリアに流出をして、そして、全く同じ品質のものがですね、今日本に逆輸入されています。今、山形県ではですね、加温して育てているさくらんぼが市場に出回っています。しかしこのコロナの影響で大変な影響を受けてですね、価格的にも苦戦をしております。そんな中でですね、本来、日本の固有で守られても然るべきだったものが、かつて自家増殖によって海外に持ち出されてしまった、こういったことは、私はあってはならないことだと思います。そして昨日の決算委員会でも申し上げましたけれども、和牛の遺伝子の保護に関して、三つの法律を通していただきました。家畜伝染予防法と家畜改良増殖法と家畜資源に係る不正競争防止法、この三つを通していただきました。特に三番目の不正競争防止に関わるものについてはですね、非常に立法事実の積み上げに苦労してます。というのは、畜産というものはですね、植物よりもより均一性だとかですね、同じものができる、それとか安定性ですね、そういうものが継続して生まれていく、というのが担保できないので、立法事実の積み上げが難しいんじゃないかという議論が与野党通じてありました。それは法律の専門家の方々の間でもありました。それから特許権だとか、そういったものの専門家の間でも難しいという判断ともありました。しかし、何が何でも、やはり和牛の、先人が築いてきた遺伝資源というものは、日本の強みだから、何としても守らなければならない、という強い意思が国会で働いてですね、野党の先生方にも活発な御議論をいただいて、そして具体的な御提言もいただいてですね、この三法は全会一致で国会を通過させていただきました。私はですね、これはもう、法律の専門家の方にもし良かったら聞いていただきたいと思いますけれども、画期的な事なんですよ、法律の内容からしてみて。しかしそこにはですね、国会に全てがですね、農家が苦労して作り上げたものが海外に取られることが断じてあってはならないことだという強い意思が働いた結果だと私は思っています。
  それが今回のいわゆる和牛の世界の話で、今度は植物の話をしようじゃないかという話でございます。ですからUPOVに入っている国にも一定の歯止めがきっちりと掛かります。この改正をさせていただければですね。そして国内の方々についてもですね。一部申し上げますけれども、例えばですね、イネの場合ですね、許諾料の例で今払っているやつですけれども、例えばある県のですね、イネ、10a当たりの種苗代がですね、1,600円なんですね。そのうちの許諾料が2円56銭です、2円56銭。1,600円のうち。そしてある県のブドウはですね、一本当たりの種苗代が4,000円ですけども許諾料が60円です、60円。国の農研機構はですね、日本の農業に優秀な種苗を供給することを目的としている公的機関ですから、この法律が改正されたからといって料金を上げるということはまずありえない。それから各県のですね、農業試験場の県間競争がありますから、それぞれ一生懸命、いろんな例えば新しいコメ、新しいブドウ、例えば1個で5,000円するようなイチゴも生まれているじゃないですか。そういったものをいったん手に入れたらですよ、いくらでも自家増殖していいということであればですね、これを作り上げた人の5年10年の努力というものは全くただと変わらないじゃないですか。ということであればもう新しいものに、お金も時間も労力もかけて開発したってすぐに自家増殖されてしまうし、そして、その先には海外流出という非常に悲しい事実が待っているということであればですね、これは農家の競争力を私は下げるものだと思っています。私がですね、この職に就かせていただいて、農業の生産基盤の強化、農業所得の向上、皆さん方にも度々申し上げさせていただいております。本来、農家が得られるべき利益がですね、第三者によって棄損されるということを防ぐために、私は今回の種苗法の改正をですね、是非しっかりですね、私は農林水産委員会というところは良いところで、党は違ってもですね、皆さん、日本の農林水産業を良い方に進めたいというベクトルはみんな同じ方向を向いてますよ、それはもちろん党が違いますから、対決することもありますけれども、ただ根底にあるところは同じだと思います。ですからその、お互い、私がお伺いできるところは力をお借りさせていただき、国会の場でですね、議論の点はですね、国民の代表としてしっかり問うていただければですね、国民の不安も私は解消することができ、農家の方々もですね、しっかり、このことについては御議論いただければいいんだろうなと私は思っております。昨日もですね、不要不急の法案なのではないかというふうに言われましたが、私はですね、権利を守るということについてはですね、一刻の猶予もならないのではないか、と逆に思っています。これを先延ばしにしているうちにですね、UPOV条約には中国も韓国も入っています。ですからこういった国々に対して歯止めをかけていかないとですね、日本の農家の努力、それから得られる利益も守れないのではないか、ということを考えてですね、これをぜひ国会で審議をさせていただければありがたいなと思っております。まだ言いたいことは山のようにありますけれども、まだ話すとあと30分くらいになりますので、もうこれくらいで止めせていただきます。

記者

  先日イギリス政府が、日本との自由貿易協定の交渉を始めるというふうに発表しました。農産物の扱いも焦点になると思うんですけども、大臣はどのような姿勢で臨んでいくとお考えでしょうか。あと、交渉のスタートがいつ頃なのかというのも教えてください。

大臣

  交渉についてはですね、これは勿論外務省のやることでありますので、進展状況についてはですね、直接お会いになったこともありませんし、内容についてはよく存じ上げませんけれども、交渉開始時期も含めてですね、進め方についてはですね、外交ルートで適宜調整されることだと思います。
  常に私が申し上げておりますけれども、相手がイギリスだからということではなくてですね、過去の経済連携協定の枠を超えるというようなことはですね、農林水産省としては考えてはおりませんし、認めるつもりもないというのが基本的な考え方です。

記者

  2次補正に向けてなんですけれども、自民党内でもですね、持続化補助金についてですね、いわゆる農業版を求める声が上がっています。一方で、農家の方に向けては持続化給付金でですね、ある程度補填されていると言いますか、救われる農家の方も多いかと思います。その二つ、もちろん制度の趣旨は違うかと思うんですけれども、持続化給付金がある中で、新たな持続化補助金の制度の必要性、どういうふうにお考えか教えてください。

大臣

  党内でですね、離農阻止、これは大変大事なことだと思います。そして、経営を持続する。私が常に申し上げている生産基盤の強化の手前にですね、このコロナが起こったからですね、生産基盤をまず維持しなければならないということでありますから、これを維持するために、補助金はですね、ある事業を農家の方が主体的に行っていただいて、それに対して国が補助をするという趣旨でありますので、給付金についてはですね、いわゆる使途は定めません、農家の方々でどうぞと、ある意味決まった金額をですね、お渡しして、それを自由に使っていただくというものでありますので、この二つの制度自体はですね、重複するものではないと、趣旨が違うと、目的が違うというものだと思います。確かにこの持続化給付金もありですね、その上に補助金もということになればですね、様々な御議論もあるかもしれませんが、農家の方々はですね、このコロナの最中にあってもですね、現場で生産の努力を続けてくれていますから、そしてその中では、生産したものがしっかりと市場に出すことができない、中にはすき込まなければならない、廃棄しなければならない、そういった行き場を失ったものがたくさんありました。そういった方々の御苦労とか御努力を考えるとですね、今後も農林水産業を、国民に対して安定的に食料を供給するということを考えるとですね、こういったことが党内で御議論されていることは、私はあり得ることだと思っております。これについてどう扱うかについては、党内での御議論をいただきながらですね、今、農林水産省の中でもどうするべきか検討を進めているところでありますので、今日のところでどうするかについてのお答えは、控えさせていただきたいと思います。

報道官

  他に御質問ございますでしょうか。では、以上で終了します。ありがとうございました。

以上