(令和2年4月28日(火曜日)14時47分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)邦人の出国・帰国

【茂木外務大臣】3点ほどご報告申し上げます。まず国際線の運航停止によります帰国が困難となっている邦人,その出国・帰国の状況でありますが,これまでに8,040名の方が出国・帰国をされております。引き続き出国・帰国を希望されている方,約40か国で640名となっておりまして,これらの方々のうち,出国・帰国日の目途が立っている方,450名という形でありまして,かなり出国・帰国のオペレーションといいますか,進んできたな,こんなふうに考えております。
 特に本日は,サウジアラビアから,サウジアラビア航空の民間特別機によりまして,約120名の方が出国する予定であります。また4月30日には,バングラデシュからビーマン・バングラデシュ航空の民間チャーター機によりまして,150名の方々が出国する予定であります。
 2週間ぐらい前はですね,アフリカでもまた中南米等におきましても,かなりな方が出国手段を模索をするという状況でありましたが,アフリカ等々の国を見ましても,もう本当にそれぞれの国で,だいたい残られている方もひと桁の,それも小さい方とこういう形になってきておりまして,これからもそういったそれぞれの地域におけます邦人の皆さんのニーズと,こういったものを踏まえながら,できる限りの支援,これを行っていきたいと思っているところであります。

(2)水際措置

【茂木外務大臣】2点目でありますが,水際措置に関連しまして,先週の金曜日,24日に,外務省として14か国の感染症危険情報を「レベル3」に引き上げたところであります。その上で,昨日,国家安全保障会議の決定によりまして,これら14か国を上陸拒否対象地域に指定しました。
 また,昨日の国家安全保障会議の決定では,これまでの決定で4月末日までの間の実施としておりました措置,査証の効力停止,査証免除措置の停止,APEC・ビジネス・トラベル・カードによります査証免除措置の適用停止につきまして,実施期間を更新して,5月末日までの間,実施することも決定いたしました。

(3)「アビガン」供与の最新の調整状況

【茂木外務大臣】最後3点目でありますが,「アビガン」の供与に関して,「アビガン」については,人道的見地から希望する国々に対して「アビガン」を無償供与するため,合計100万ドルの緊急無償資金協力を行い,新型コロナウイルス感染症に係る臨床研究を拡大することとしております。これまで70か国以上から外交ルートで「アビガン」の提供要請を受けておりまして,すでに38か国については,一定の枠内で無償供与すべく,調整済みとなりました。
 調達機関であります国連プロジェクトサービス機関からは,手続きが完了した国から,連休前後に輸送を開始できるよう調整中であると聞いておりまして,供与先そしてその時期につきましては,供与の実施後に改めて発表させていただきたいと思っております。
 新型コロナウイルス感染症の沈静化に向けて,治療薬の開発,極めて重要でありまして,治療薬の開発におけます官民の取組強化と,国際協力を一層進めていきたいと思っております。

新型コロナウイルス(邦人の出国・帰国)

【NHK 山本記者】出国困難地域からの邦人の帰国状況なんですけど,冒頭大臣の方からご紹介ありましたけども,国別とかですね,地域別で言いますと,サウジアラビアとバングラデシュをご紹介いただきましたけれども,その他に希望者が多く残っているような国っていうのはどういったところがありますでしょうか。

【茂木外務大臣】そんなに多く今のところ残っている国はありません。三桁で残っているところはありません。かなりですね,アルジェリアもこの後3回のオペレーションで,多分希望される方,特定の企業の関係者でありますけれど,それは全員出るという形になりますし,かなり目途がついてきたというところであります。
 一方で,また新たに出国を希望されるという方が出てくる可能性もありますので,例えばどこかの国に,民間の航空会社がチャーター便を出すと,こういう予定等がありましたら,改めてそういった国に滞在している邦人の方にも,こういう便が出る予定ですけれど,改めて帰国の希望はありますかと,こういったことをお尋ねをしたりと。国によっては,2回3回とそういう希望をとったりして,丁寧に対応しながら,帰国を希望される方が全員帰国できるように,できる限りの支援を行っていきたいと思っています。

新型コロナウイルス(中国の透明性への評価)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 新型コロナウイルスをめぐって米中間の対立が深まっているようです。ペンス副大統領を含む複数の米国政府関係者は,中国が発表するデータの信ぴょう性についてや,中国がウイルスに関する情報についてどの程度透明性を有しているかにつき,懐疑的な態度を示しています。日本は中国の新型コロナウイルスに関する公式のデータを信頼しているでしょうか。また,中国において十分な透明性が確保されているとお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 新型コロナに関します中国政府の発表等については,ご指摘のように様々な声がありまして,そういった声については,中国自身も認識をしているんだろうと思っております。
 私からコメントすることは差し控えたいと思いますが,その上で,目下の課題というのは新型コロナウイルスの感染の世界的な拡大に対処するために,国際的な協調と連携を進めることであると考えております。
 こういった観点からも,自分としても数次にわたる王毅(おう・き)国務委員との日中外相電話会談に加えて,日中韓の外相テレビ会議等の場を通じても,中国に対して,透明性を持った情報共有を含む協力と連携の重要性を強調してきておりまして,引き続き緊密に意思疎通を続けていきたいと思っております。
 透明性を持った迅速な情報共有の重要性については,中国との関係だけではなくて,国際社会全体でそれを認識する必要がある。G7のテレビ会議,さらには私(大臣)も連日のように各国の外相と電話会談を行っておりますが,その際に透明性を持った迅速な情報共有を進めていくと,このことはコロナに打ち勝つ上でも極めて重要だという点を,それぞれ確認をしているところであります。

新型コロナウイルス(ジョンソン英首相の公務復帰)

【朝日新聞 佐藤記者】昨日からですね,英国のジョンソン首相が公務に復帰されましたけれども,ジョンソン首相への何かメッセージがありましたらお伺いしたいというのと,日本政府から何かメッセージなりを送られた事実がありましたら,お聞かせいただけますでしょうか。

【茂木外務大臣】日本政府としてメッセージを送ったかどうかの確認をしたいと思いますが,一時,集中治療室に入られたジョンソン首相が職務に復帰をされた,心からお祝い申し上げたいと思っております。
 今,英国においても,まだ感染者,非常に高いレベルにとどまっている。英国民がジョンソン首相の下,一体になって,このコロナの感染拡大を防止していくと,こういったことに取り組んでもらうことを期待したいと思います。

日米貿易交渉

【共同通信 小野塚記者】日米貿易協定についてお伺いします。貿易協定の交渉第2弾で扱う分野を決めるための協議というのが,20年4月末までに終了する目標というのを設定されていたかと思うんですけれども,この目標設定についての見通しをお願いします。

【茂木外務大臣】目標設定ではないんですね。実際に昨年9月の日米共同声明のパラグラフ3においては,そういった意図があると,intend toという言葉を使っておりますけれど,意図があるということを申し上げております。
 日米間では昨年9月の共同声明に沿って,今,協議をまさに行っているところでありまして,米国とこれまでやりとりを行っておりますが,その詳細,また見通しにつきましては,今後の交渉もあることでありますから,それを明らかにすることは差し控えたいと思いますが,いずれにしても国益に反するような交渉,そして国益に反するような合意を行うつもりはございません。

【共同通信 小野塚記者】重ねてお伺いします。というと,この4月末にですね,何らかアウトプットというのが出てくるというわけではないということでよろしいでしょうか。

【茂木外務大臣】まだ4月末になっておりませんから,今は,まだネゴシエーションの段階ではないわけです。コンサルテーションを行っている段階であるということです。

新型コロナウイルス(危機管理対応の課題)

【日本経済新聞 加藤記者】政府の新型コロナウイルス対策,ちょっと全般についてお伺いしたいんですけれども,昨日,補正予算の審議が始まりまして,各国見ると,もう既に予算の執行が始まっている国もあったりして,若干そのスピード感が遅いんじゃないかという指摘が一部にあります。大臣,内閣の一員として,いろいろ危機対応にあたっている中で,若干このスピード感が遅いというご認識がおありなのかという点と,いろいろ施策を打って進める上で,その課題として感じられている点があればお伺いします。

【茂木外務大臣】今回の新型コロナウイルスの感染の拡大と,恐らく大方の予測以上のスピードで,欧州であったりとか,また米国においても感染の拡大というのが進んでいると,こういう状況であった。そこの中で,どこまで大胆な規模と言いますか,大きな規模の施策を一気に打っていくかということについては,それぞれの国の事情もあるんだろうと思っております。
 日本の対応について,対応が遅い部分があるのではないかなと,こういうご指摘については謙虚に受け止めたいと。その上で,実行するということが何しろ重要でありますから,一日も早く補正予算,成立をさせ,そして,全ての家庭に給付をさせていただく10万円の給付金をはじめ,そういった様々な支援策が,家計や事業所,様々なところにしっかりと届くということを,一日も早く行っていくことが極めて重要なのではないかなと,こんなふうに思っているところであります。
 その上で,私の役職,外務大臣としての仕事ということで言いますと,やはり海外にいらっしゃる邦人の皆さん,また旅行されている渡航者の皆さんの安全確保を図っていく,このコロナ対策上は,コロナが世界的に拡大する中で,これが,最も重要な仕事でありまして,ご案内のとおり,1月28日の武漢からの第1便のチャーター便を含め,5機のチャーター便派遣を致しまして,邦人720名,そして関連する方,828名の帰国が実現した。武漢,湖北省にいらっしゃる帰国を希望される方,全員が帰国できた。恐らく,どの国よりも早かったと思います。間違いなく,どの国よりも早かった。
 今,冒頭申し上げたように,様々な形の,これは途上国をはじめ,出国が困難になっている国,他からの帰国につきましても,かなり常にアップデートしておりますけれど,状況というのは進んできているのではないかなと。決して,他の国と比べても遅いということはないと。早め早めに手を打って,そういった措置も取っていると。そのように考えております。もちろん,まだ残っていらっしゃる方,いるわけですから,最後の一人まで帰国できるように,全力を尽くしていきたいと思っています。

北朝鮮情勢(金正恩委員長の動静)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 複数の報道によると,金正恩(キム・ジョンウン)委員長は深刻な健康状態にあるとされています。この点について日本政府の立場をお聞かせください。また,日朝関係の今後についての日本の戦略は,北朝鮮において誰が指導者となっているかということと関連しているのでしょうか。それとも別の要素と関連しているのでしょうか。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 前回,前々回と,お答えをさせていただきましたが,北朝鮮をめぐる情勢については平素から高い関心を持って,注視・分析をしてきておりますし,様々なインテリジェンスを含め情報にも接してきているところであります。
 そういった中で,今,確たることを申し上げるという段階ではないのかもしれませんが,政府の立場として,日朝平壌宣言に基づいて,拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して,不幸な過去を清算して,国交正常化を目指すと,この考えには全く変わりありません。

日露関係(ロシアにおける戦勝記念日の日程変更)

【読売新聞 大藪記者】日露関係に関してお伺いいたします。ロシアが第二次世界大戦の終結日を,対日戦勝記念日であった9月3日に変更いたしました。この受け止めと,あと,延期された対独戦勝記念式典がこの9月3日に行われる場合,安倍首相の出席は難しいと,日本からロシア側に伝えたという報道がありますが,その事実関係も含めてお願いいたします。

【茂木外務大臣】まず5月9日の式典についてでありますが,延期をされたと,そしてロシア側としては,これを年内に行いたいという考えであると,このことは承知をしておりますが,新たな日程が決まったとは聞いておりません。日程が決まっていないのに,日程調整をするということはないと,これは当然のことになってくるのではないかなと,そんなふうに思っております。
 また,ロシアの内政,そして対外政策の動向については,日頃から関心を持って注視しておりますが,その一つひとつについてコメントすることは差し控えたいと思っておりますが,政府として,領土問題を解決して平和条約を締結すると,この基本方針の下,引き続き粘り強く交渉していくと,こういう方針に変わりありませんし,コロナの問題がやはりですね,ある程度収束を見るということにならないと,なかなか膝詰めで実際の交渉を進めるということは,率直に言って難しい側面があると思いますが,そういう状況が訪れましたら,既にラヴロフ外相との間でも,相当突っ込んだ議論をこれまでも重ねてきておりますので,それらを踏まえた交渉の加速と,こういったことを進めていきたいと思っています。

新型コロナウイルス(「アビガン」供与の最新の調整状況)

【朝日新聞 大石記者】冒頭大臣からご発言があった「アビガン」についてなんですけれども,38か国に対して既に調整済みということですが,改めてになりますが,治療薬の承認が期待される中,今回の無償提供の意義についてどのようにお考えでしょうか,お聞かせください。

【茂木外務大臣】やはり,この新型コロナ,これを収束させるという意味では,治療の方法というのは極めて重要になってくる。確かに,接触を防止したりということで拡大を防止していくことも重要でありますが,結局,治していくということが重要になるわけでありまして,そうなりますと,短期的には恐らく治療薬,そして中長期的にはワクチンの開発,これが極めて重要になってくるのではないかなと。
 そういった中で,「アビガン」につきましては,治療に効果があるのではないかと,こういういくつかの事例も出てきているわけでありまして,こういった臨床研究,日本ももちろんでありますけれども,国際的にも拡大をしていきたい。それに対しまして,先ほど申し上げたように,70以上の国から関心が示され,すでに38か国については,その供与というものも決まっているわけでありまして,また,そこで供与をして,海外で行われました臨床のデータについては,日本にも提供してもらうと,こういうことになっておりますので,国際協力の下で,有効な治療薬,こういったものが早急に開発されていく,こういうことは極めて重要だと,こういう思いで取り組んでいきたいと思っています。

【読売新聞 大藪記者】今の「アビガン」の件で追加で確認をさせていただきたいのですが,先日,大臣が「アビガン」の海外への供与を発表されたときに,インドネシア,ウクライナ,イランという供与先は紹介されていたと思いますが,今回の38か国で,主だったところを,もし可能でしたら,二つ,三つあげていただければと思います。

【茂木外務大臣】事務方に聞いてもらえます。