(令和2年4月7日(火曜日)11時15分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)新型コロナウイルス感染症の感染者が発生している国々に対する「アビガン」供与のための緊急無償資金協力

【茂木外務大臣】アビガンは,ウイルスの増殖を防ぐ薬として,海外の多くの国から関心が寄せられております。私(大臣)も電話会談等々で直接そういった要請も受けているところでありますが,我が国としては各国からの要請を踏まえ,今後,希望する国々と協力しながら,新型コロナウイルス感染症に係るアビガンの臨床研究を国際的に拡大したい,そう考えております。
 こうした観点から,4月7日,新型コロナウイルス感染症の感染者が発生している国々に対する支援を実施するため,合計100万ドルの緊急無償資金協力を行うことを決定しました。
 具体的には,国連プロジェクトサービス機関(UNOPS:ユノップス)を通じて,人道的見地から希望する国々に対してアビガンを供与し,その臨床研究を拡大していきます。現時点で,既に20か国については一定の枠内で無償供与すべく調整済みであり,更に30か国程度と調整を現在進めているところであります。
 新型コロナウイルス感染症の沈静化に向けて,治療薬の開発は極めて重要であり,治療薬の開発における官民の取組強化と国際協力をしっかり進めていきたいと思っております。

(2)緊急事態宣言が発出された場合の外務省の体制・取組

【茂木外務大臣】2点目は「緊急事態宣言が発出された場合の外務省の体制・取組」についてでありますが,今後のことになりますが,現在の我が国,特に東京での新型コロナウイルスの感染状況下において,邦人保護を始めとする外務省の責務を十分に果たせるよう,外務本省においても感染予防のために様々な対策を講じてきております。
 とりわけ在宅勤務(テレワーク)を積極的に取り入れ,現時点で,既に外務本省のほぼ全て,数えてみると96%の課室で職員を複数のチームに分け,在宅と本省での勤務を交代で行うようにしています。これにより,それぞれの課室の中で職員間の接触の機会を減らし,また,仮に感染が出ても課室全体が機能停止に陥らないようにしているところであります。
 今後,緊急事態宣言が出された後は,今申し上げた在宅勤務の取組を一層進め,本省で勤務する職員の数を更に絞り込み,まずは省内での総労働時間を,ウイルスの感染拡大前と比べて半分以下にすることに徹したいと思います。
 なお,出勤しない職員も,遊んでいるわけじゃありません。もちろん自宅で様々な業務に従事をしております。在宅勤務を進めても,邦人保護をはじめとする業務が滞ることがないように,引き続き外務省として全力で取り組んでいきたい,こんなふうに思っております。

(3)在外公館の支援によって実現した臨時商用便,民間チャーター機による邦人の出国・帰国

【茂木外務大臣】在外公館の支援によって実現をした臨時商用便,それから民間チャーター機によります邦人の出国・帰国でありますが,これまでの取組によって各国で100人を超える邦人の出国・帰国が実現をしております。在外公館におきましては現地政府であったりとか航空会社への働きかけ・調整,チャーター機の他国との共同利用,現地日本人会・商工会との協力,帰国希望者の取りまとめ,空港への移動支援等々様々な支援,在外公館を中心に実施をしてまいりました。
 その結果,出国・帰国が実現をした主な事例を紹介させていただきますと,まずご案内のペルーでありますが,ペルーにつきましては二つのルート,一つは在ペルー・台北経済文化事務所手配のチャーター機,これが3月29日にクスコ,リマを出ましてマイアミに向かったわけでありますが,これに邦人29名が搭乗いたしました。
 また,民間航空会社手配のチャーター機,3月30日にクスコ,リマを飛び立ちまして,同日メキシコシティに着きましたが,邦人104名が搭乗いたしております。
 それからポーランドについてでありますが,ポーランド航空の特別便,行きの日本に来る便に,空便に邦人を乗せるということで,邦人147名が搭乗いたしました。
 またウズベキスタンでありますが,ウズベキスタン航空の臨時便,これで邦人174名が搭乗しました。結構ウズベキスタン,大変でありまして,国際航空便の完全停止措置の発表当日から,在ウズベキスタン大使館,ハイレベルで累次にわたって,邦人の帰国分の手配,これを強く申し入れ,ウズベキスタンは日本との二国間関係の重要性を考慮して,日本に在留するウズベキスタン人の帰国に使用することも目的として,本件,臨時便の例外的な運行を決定したところであります。
 その後もウズベキスタンの大使館,搭乗希望者の取りまとめ,航空券購入時の通訳,更には空港への移動支援等々を行いまして,邦人174名,無事に搭乗できたという形であります。4月2日にタシケントを出まして,3日に成田に戻っております。
 更にはバングラデシュ,これは日本人会および商工会手配の,ビーマン・バングラデシュ航空チャーター機,2日にダッカを飛び立ちまして,同日成田に着いて,邦人295名が搭乗いたしております。
 そして,太平洋島嶼国,フィジーでありますが,フィジー航空の臨時便,4月3日にナンディを出発しまして,同日成田着で邦人195名が帰国をいたしました。
 ラオスでありますが,ラオスの航空特別便,4月6日にビエンチャンを出発しまして同日に成田着ということで,邦人113名が帰国をいたしております。
 そして最後になりますがインドですが,これはJALとANAの臨時便,3月22日から今実行中でありまして,4月8日ですから明日ですね,明日の便までありますが,これを含めましてJALが12便,ANAが5便飛ばしてもらうこととなります。これまでに邦人2,139名が搭乗帰国いたしました。

新型コロナウイルス(緊急事態宣言,外務省の対応)

【NHK 山本記者】緊急事態宣言の関係で伺いますけれども,今日にも安倍総理が緊急事態宣言を出す予定となっていますけれども,率直にここまでの事態となったことへの大臣の受けとめを伺いたいのと,宣言が出た場合なんですけれども,先ほど在宅勤務のお話がありましたけども,その他に外務省として,何か必要になる対応などがあれば教えてください。

【茂木外務大臣】緊急事態,この宣言自体は専門家の意見も踏まえて,政府として決定するものでありますが,今ご案内のとおり,各国におきまして急速に感染が拡大する,こういった現象がまずはイタリアはじめヨーロッパで見られ,そしてニューヨークはじめ米国でも進んでいると,こういった状況で,まさに日本,そういった急拡大,そしてそれによって医療提供体制が対応できない,こういう事態にもなりかねない,こういった中での判断をされたものだと,そのように承知をいたしております。
 外務省としてまずは,先ほど申し上げたようなテレワークを活用することによって,本省に来る人の数を減らす。更には各課においてもダブルシフトと,こういった形を取っていくことをまず徹底をしたいと思います。
 それから今ちょうど新しい入省者もいますけれど,できる限り大規模な研修は行わないとか,また省内においても大きな会議等々は行わない。更にはメールで済ませられる,またテレコンで済ませられる,こういったものについてはそういった手段を使っていく。できる限り直接面談でやらなくても済むような業務は,そちらにシフトしていくということであります。
 更に申し上げれば,それぞれ重要な仕事でありますが,仕事の優先順位も考えながら,ある意味,急を要さない会合等につきましては,状況を見て開催する。こういったことも検討したいと思っております。
 更にこの機会でありますから,業務の運営の仕方と実際にその業務の運営によってどれだけ時間かかるか,どれだけの人が必要かと,こういったことは出てくるわけでありまして,できるだけそういったところで効率化をしていきたい,そんなふうに思っております。
 おそらく国会周りあたりは,そういうことがあるんではないかなと考えておりまして,そういったことについても効率化できる部分は効率化をしたい,こんなふうに考えています。

新型コロナウイルス(在京米国大使館による米国人向け注意喚起情報の発出)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 浜本記者】在日米国大使館が「健康アラート」と題して,「広く検査しないという日本政府の決定は,COVID-19有病率を正確に評価することを困難にする」として,米国人に即時帰国を呼びかけています。日本政府は広く検査しないということを決定し,それを米国にだけ伝えたのでしょうか。事実でないなら米国大使館に抗議したのでしょうか。また,これまでも日本の検査数が少ないことは国内外から大きな批判を浴びています。日本は信用できない国だと同盟国に思われているのであれば,ひいては,安全保障問題にも関わると思います。直ちに検査数を諸外国並みに引き上げるべきだと思いますが,大臣のご見解をお聞かせください。

【茂木外務大臣】日本は医師が必要と判断する場合に,検査の実施を徹底し,濃厚接触者で症状のある方はもちろん,感染が疑われる方にも検査を行うなど,WHOのガイドラインに沿ってしっかりと対応しております。日本ではPCRの検査の数は少ないわけでありますが,新型コロナウイルス感染症の死者数も多くはありません。肺炎になった方は,必ずCTを撮った上で,間質性肺炎の症状が出た方は,新型コロナウイルス感染症への感染の可能性を疑い,必ずPCR検査を行っております。こういった取組につきましては,米側にもしっかりと丁寧に説明しております。

新型コロナウイルス(「アビガン」供与)

【読売新聞 阿部記者】大臣から冒頭説明があったアビガンの供与についてなんですけれども,これはいつから供与が開始できる見込みなのかということと,20か国については調整済みとのことですが,主な国について教えていただければと思います。

【茂木外務大臣】まず今,20か国と調整済みで,30か国と調整中と,こういうお話をしたところでありますが,アビガンにつきましては,副作用と,こういったものも想定されることから,希望する国に対しまして,アビガンがどういうものであるかということを丁寧に説明した上で,適正に使用してもらうこと,また免責要件,更には我が国へのデータの提供等,文書で取り付けた上で,供与を行うべく調整を行っていると。その手続きが完了した国から,順次供与を行っていくという形になります。これは,インドネシア,ミャンマー,アルバニア,ウクライナ,エストニア,キプロス,コソボ,サンマリノ,ジョージア,スロベニア,セルビア,チェコ,ハンガリー,ブルガリア,モルドバ,ルクセンブルク,アラブ首長国連邦,イラン,サウジアラビア,トルコです。

新型コロナウイルス(緊急事態宣言に関する情報発信)

【日本経済新聞 宮坂記者】緊急事態宣言に関連してなんですけども,緊急事態宣言の発出に関して,各国の邦人保護等のために情報提供はどういうふうにされるかというお考えとですね,あと在外公館についても,各国で感染が広がっていますけれども,勤務体制の更なる見直しなどを考えている部分というのはあるのかを教えていただけますでしょうか。

【茂木外務大臣】緊急事態宣言が出た場合,おそらく外交団とか外国プレスの方に集まってもらうわけにもいかないと思います。オンライン,メールなども含めて適切な方法を検討したいと思いますが,この緊急事態宣言の趣旨であったりとか,内容,これについては丁寧に,対外的にも説明したいと思っております。後者の質問については前回の記者会見でお答えした通りです。

新型コロナウイルス(世界的な食料不足の懸念)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 浜本記者】FAO,WHO,WTOの事務局長が,コロナ危機の影響で世界的な食糧不足を招く危険があると声明を発表しました。日本の食糧自給率はカロリーベースで37%ですが,TPP交渉や日米貿易交渉を通じ,米国の要求に従って,食料安全保障をないがしろにしてきた責任の一端は,外務省にもあると思いますが,大臣のご見解をお聞かせください。

【茂木外務大臣】そのように考えておりません。

新型コロナウイルス(外交への影響)

【朝日新聞 佐藤記者】昨今の外交の状況に関してなんですけれども,コロナウイルスの感染を受けてですね,各国との対面での協議っていうのはなかなかできない状況というのもあるかと思うんですが,この状況,外交に対してどういうダメージがあるとお考えになっておられるか。一方で,今回のアビガンの供与という,前向きなお話もあったんですが,コロナウイルスの感染が日本外交に与える影響についてどう考えておられて,どうしていきたいかということを教えていただけますでしょうか。

【茂木外務大臣】まず,コロナウイルス感染症の問題,何よりも人命に関わる問題でありまして,これを最優先に当たる必要があると。同時にこれは日本だけの問題ではありません。世界ほとんどの国が今,感染症が広がる,この感染症と戦っている,こういった中でそれぞれの国が外交もそうであります,そして経済も,そして人的な交流,文化活動,様々なことが滞っている部分がある。
 しかし,これはコロナウイルスの感染拡大,これを防止するという目的の下では,若干やっぱり制約が出ること,これは致し方ない。その上で,しかし外交は重要な活動でありますから,継続できる形で継続をしていくと。この2週間ぐらいでももう十数回にわたります,各国外相との電話会談,またテレビ会談等々も重ねる中で,情報の共有であったりとか知見の共有,これについて国際的に進めていくこと。更には治療薬,ワクチンの開発についても,官民の連携を強め,国際協力も進めていくこと。更には,水際対策も各国の連携が必要であること。
 そして,今後,アフリカをはじめ途上国で,感染の拡大,こういったものが懸念をされる中で,国際社会全体として,そういった途上国に対する支援を続けていくと,強化していくと,こういったことについても合意を見ているところでありまして,そういった方針に基づいて,アビガンの提供でありますが,それ以外のことについても,しっかりと対策を進めていきたいと思っているところであります。
 今回,この後,新しい経済対策,まとめるわけでありますが,そういった中で必要となる予算,こういったものもしっかり確保することによって,日本として必要な施策を進めていきたいと思っております。もちろん,一日も早くこの状況が沈静化をする,そして国民生活が普通に戻り,外交活動も普通に戻ると,こういう日が一日も早く来るように,全力を尽くしたいと思います。