令和2年3月31日(火)

 今朝の閣議において法務省案件はありませんでした。続いて,私から4件報告がございます。
 この度,省内に設置した「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」において,これまでの調査結果を取りまとめましたので,御報告いたします。
 ワーキンググループでは,平成29年の刑法一部改正法附則第9条に基づく性犯罪に関する総合的な施策検討に資するよう,これまで14回の会合を開催し,様々な立場の方からのヒアリング,各種調査・研究を実施してまいりました。このうち,性犯罪者処遇プログラムの効果検証結果については,先週別途公表したところですが,この度,その内容も含め,調査結果を取りまとめました。この件については,私からなるべく春の早いうちに取りまとめるよう指示を出しており,事務方にも頑張っていただきまして,本日の取りまとめとなりました。
 この取りまとめ結果を踏まえ,法務省として,性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための刑事法の在り方を検討するため,本日,「性犯罪に関する刑事法検討会」を立ち上げることといたしました。この検討会の構成員は,性被害当事者,被害者心理・被害者支援関係者,刑事法研究者,実務家であり,全17名の方々です。今後,この検討会において,法改正の要否・当否について幅広く意見を伺って論点を抽出・整理し,議論を行っていただきます。
 法務省としては,皆さまの御意見を踏まえながら,性犯罪に対し厳正かつ適切に対処できるよう,迅速に検討を進めたいと考えております。
 次に,2件目は,国際仲裁の活性化に向けた取組についてです。
 法務省では,国際仲裁の活性化に向けて,本年度から,一般社団法人日本国際紛争解決センターを受託者とする調査委託業務を開始しております。その取組の一環として,今般,東京・虎ノ門の「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」の一画が確保され,昨日から国際仲裁の専用施設として利用が開始されました。本施設は,仲裁手続における審問等の実施に必要な設備を備えており,国内外の企業を始めとするユーザーの方々に,広く御利用いただくことが可能となっております。
 法務省としては,引き続き,関係省庁・関係機関と連携し,国際仲裁の活性化に向けた基盤整備に取り組んでまいります。
 続いて,3件目は,4月1日に施行を迎える改正民事執行法についてです。
 本年4月1日に,民事基本法の4つの改正法が施行されます。
 まず,平成29年に成立した民法の一部改正法は,民法の債権関係の諸規定の全般的な見直しをするものです。また,令和元年5月に成立した民事執行法等一部改正法は,債務者の財産状況の調査に関する規定を整備したものであり,養育費の支払確保にも資するものです。
 このほか,養子年齢の引上げなど特別養子制度に関する改正法や,相続法改正のうち配偶者居住権の創設に関する規定も,本年4月1日に施行されます。これらの法改正は,社会経済情勢の変化に対応し,国民の皆様の生活にも密接に関連するものであり,いずれも重要な意義を有するものです。
 法務省では,これらの見直しの内容を国民の皆様に十分に周知する観点から,各種パンフレットや法務省のホームページ,YouTube等を通じて周知活動を行ってまいりました。
 法務省としては,これらの改正法が円滑に施行され,それぞれの見直しの目的が適切に達成されることを期待しつつ,今後も引き続き,適切な周知活動を行ってまいります。
 また,本日から,法令外国語訳の専用ホームページにおいて,債権関係の諸規定の全般的な見直しを反映した民法の英語訳を公開いたします。重要な日本の法令を翻訳して国際発信することは,国際化に対応したインフラ整備として,日本の国益に資する取組であると考えております。
 法務省としては,今後も,関係府省庁とも協力の上,日本法令の国際発信について,しっかり取り組んでまいります。
 最後に,4件目は,児童虐待根絶に向けた「法務省児童虐待防止対策強化プラン」に基づく取組についてです。
 児童虐待の根絶に向け,児童相談所等が円滑に法務省関係機関に相談できるよう,本年2月に策定した「法務省児童虐待防止対策強化プラン」に基づき,明日4月1日付けで,全国各地の法務省関係機関に児童虐待担当窓口を設置いたします。
 この担当窓口では,児童相談所等からの求めに応じて,例えば,法務少年支援センターでは,心理に関する専門的知見を活用し,親や児童の心理分析に協力するなど,法務省関係機関が有する資源・ノウハウを活用しながら児童相談所等に協力していくこととしています。
 法務省としては,こうした取組を通じて,児童相談所等とより一層緊密に連携しながら,児童虐待防止対策に,全力で取り組んでまいります。

性犯罪に関する刑事法検討会に関する質疑について

【記者】
 「性犯罪に関する刑事法検討会」の構成員に,性犯罪被害当事者である山本潤委員が選ばれていますが,山本委員が構成員に選ばれた理由についてお聞かせください。

【大臣】
 山本潤委員には,性犯罪被害の当事者の代表として,委員に入っていただきました。性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための刑事法の在り方についての検討に当たっては,性犯罪の被害当事者の御経験も踏まえることが必要であり,また山本委員がこれまで被害者支援に携わって,様々な性犯罪被害の実態についての見識をお持ちであることから,その御意見を伺うことが重要であると考えました。前回の検討会等には,被害者の方が委員に入っておらず,検討会でヒアリングを行うのみでありましたが,今回は委員に入っていただき,毎回出席をしていただくこととしました。
 また,山本委員は,私の大臣室直轄の勉強会のメンバーでもあるところ,その中で多数回議論をする中で,御自分の被害体験だけではなく,本当に多くの方の被害体験を知見として積み重ねていらっしゃる,そして冷静に法改正についても議論できる方とお見受けして,委員になっていただいたところです。

(以上)