(令和2年3月31日(火曜日)10時46分 於:本省会見室)

冒頭発言

感染症危険情報の引き上げ

【茂木外務大臣】私(大臣)の方から,まず感染症の危険情報の引き上げについて,発表させていただきます。
 新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数については,世界的に急激な増加が見られ,WHOは,3月11日,この感染症の拡大がパンデミックと形容されると評価をいたしました。その後も感染は世界的な広がりを見せておりまして,本日現在,感染者は累計で,176か国・地域,76万人以上となっております。
 また,感染拡大のスピードが加速しております。世界全体の感染者が,最初の10万人に達するまで60日以上かかりましたが,20万人に達するまでは11日,30万人に達するまでは4日と加速し,直近ではわずか2日間で10万人ずつ増加をしております。また,幾つかの国々では,連日,数百人規模で死者が増加しており,重症者に対する十分な医療体制が追いつかない事態も発生しています。
 我が国においては,この10日余り,海外において感染をし,国内に移入したと疑われる感染者が連日10人を超えて確認されており,これらの帰国・入国者が,国内で陽性と確認された事例に占める割合も3月下旬では4人に1人と,こういう形になっています。
 また,海外におられる邦人の方々が,世界各地で国境閉鎖や外出禁止令等の措置によって行動制限を受けたり,航空便の突然の減便,又は運航停止により影響を受ける事例も発生しております。このような事態は,邦人の現地での感染リスクを含め,邦人の安全の確保の観点から,強く懸念されるところです。
 今申し上げたような状況を総合的に勘案し,先手先手を打っていく,こういった観点から,本日,これから申し上げる2つの措置をとることとしました。
 まず第1に,1万人当たりの感染者数,海外からの移入例等を考慮し,お手元の配付資料で赤字になっている49か国・地域の感染症危険情報レベルを,新たに「レベル3(渡航は止めてください。(渡航中止勧告))」に引き上げます。この結果,これまで「レベル3」であった国・地域を含め,合計73か国・地域が「レベル3」となります。世界196か国中73か国でありますから,三分の一を若干超えると,こういう数になると思います。
第2番目に,この合計73か国・地域のレベル3の国・地域を除く全世界の感染症危険情報レベルを「レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)」に引き上げます。
 感染症危険情報レベルの引き上げを受けて,今後,法務省,厚労省を含む関係省庁の間で調整の上,国家安全保障会議,及び新型コロナウイルス感染症対策本部での議論等を経て,入国拒否対象地域の追加,検疫強化や査証制限等を含みます水際措置が講じられることになると考えております。
 今後も,新型コロナウイルスの感染の拡大の状況等を踏まえて,以下の4点,一つは感染症危険情報,危険情報の二つの情報のレベルの不断の見直し,二つ目に,関係省庁と連携した水際措置の実施,三つ目に,邦人の安全確保のために必要な情報の外務省ホームページや領事メールによる提供,そして,四点目,在外公館による在留邦人や海外渡航者のできる限りの支援,などを通じて,国民の安全確保と必要な支援に万全を期していく考えであります。
 今回,新型コロナウイルス感染症の急速な拡大と深刻化を受け,このような感染症危険情報のレベル引き上げを行わせていただきました。改めて国民の皆様におかれては,よほどの事情がない限り,よほどの事情がない限り,海外への渡航は止めていただくようお願い申し上げます。

新型コロナウイルス(感染症危険情報の引き上げ)

【NHK 山本記者】2点あります。1点目は,冒頭,大臣から説明ありましたが,念のため確認なんですけれども,今回レベル3になった地域は,今後入国拒否の対象としてそのまま追加されるという理解でよかったでしょうか。

【茂木外務大臣】これはまさに今後の関係省庁との協議,そして,先ほど申し上げたような国家安全保障会議,そしてまた,新型コロナウイルス対策本部での議論を経て決まるということになりますが,関係省庁ともこれまでも事前の協議も進めております。そして,これまでの事例を考えても,先ほど言ったような運びになるのではないかなと考えております。

【NHK 山本記者】もう1点だけ。全世界を対象に感染症危険情報レベル2ということですけれども,こうなった場合は,外務省ではビザの効力停止の措置,レベル2のところはこれまでやってこられたと思うんですけれども,基本的に全世界にビザの効力停止の措置も拡大するという理解でよかったでしょうか。

【茂木外務大臣】一次査証,そして数次査証,更には査免措置につきましても,これまでと同様な形で進めさせていただきたいと思います。

【テレビ朝日 大石記者】確認なんですけれども,大臣,今発表いただいたレベルの引き上げというのは,もう引き上げたということでよろしいでしょうか。

【茂木外務大臣】引き上げました。

新型コロナウイルス(日本への入国制限)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 日本への入国制限について追加で伺います。米国,中国及び韓国からの日本への入国を当面禁止するという報道が一部でされています。これには,在日米軍関係者や外交官も対象者に含まれるのでしょうか。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 基本的に,ちょっと待ってください。確認をとりますから。
 米軍の関係者ですね。今般の水際対策にかかわります,米国務省は3月22日以降,米軍関係者,軍人及び軍属並びにそれらの家族が,日本を含む一部の国との間を移動することを,60日間禁止をしておりまして,米側からは,日本国外から米軍関係者が日本に入国することは,例外的に許可を得た場合を除き想定されていない,こういった説明を受けているところであります。

新型コロナウイルス(中国から日本への支援)

【上海東方テレビ 宋記者】新型コロナウイルス関連で日中関係についてお伺いしたいのですが。武漢を応援する日本の様子を中国に伝えたことによって,多くの中国人の心を打ちました,今,日本が大変な時期に,中国からも日本にマスクなど物資が届けられて,日中両国が国境を越えて助け合えるような,ネットワークを構築していることについて,大臣からメッセージをいただけるでしょうか。

【茂木外務大臣】今ですね,新型コロナウイルス感染症,これが世界176の国・地域に及ぶと。そして拡大もスピードそのものも早まっている。こういった中で,それぞれの取組,それぞれの国の取組と合わせて,国際的な連携・協力というのが様々な形で極めて重要になってきていると考えております。
 そういった中で,ご案内の通り,中国で多くの感染者,当初武漢で発生した,当時日本では,そこまで感染者拡大しておりませんでしたので,不足しているマスクであったりとか防護服,提供させていただいたところでありますが,中国へ行きまして,中国の企業であったり,個人からも,マスク等多くの支援が届いてきている。そういったことを承知をいたしております。
 そういった相互の支援という中で,まず我が国の支援というものが,今お話がありましたように,中国の中で好意的に受け止められていると承知をしております。そして,このような両国間の善意のやり取り,これは新型コロナウイルス感染症という共通の課題と共に戦う上で,大変勇気付けられるものだと,このように考えておりまして,そういったお互いの協力を日中間だけではなくて,世界レベルに広げていければと,こんなふうに考えております。

新型コロナウイルス(北方領土問題への影響)

【朝日新聞 竹下記者】日露の関係でお尋ねします。コロナウイルスの感染が拡大している中ですけれども,日露で行っている北方領土へのビザ無し交流について,5月の実施を延期する方向で調整しているという報道が出ております。この事実関係と,今年のビザ無し交流の実施に向けての調整状況についてお願いします。

【茂木外務大臣】今年の四島交流等の事業について,現在,調整中でありますが,実施団体間のやり取りの中で,四島側から新型コロナウイルス感染症に関連した懸念が表明されているのは事実であります。政府としては,当該事業を円滑に行いたい,今年も実施をしたいと考えておりますが,元島民の方々,ご高齢になられているわけであります。そして,船を使った場合にどうなるかとか,様々なことも考えていかなくてはならない。参加者の健康と安全を確保する,こういう観点からも十分考慮して取り組んでいきたいと思っております。

海自護衛艦「しまかぜ」と中国漁船の衝突事案

【読売新聞 阿部記者】昨夜なんですけれども,東シナ海の公海上で,海上自衛隊の護衛艦「しまかぜ」と中国漁船の衝突事案がありましたけれども,中国政府に申し入れをされたかなど,外務省の対応についてお伺いします。

【茂木外務大臣】昨日,事実関係としては,10時28分頃,屋久島の約650kmの東シナ海の公海において,警戒監視中であった護衛艦「しまかぜ」と中国籍の漁船が衝突した,その報告はその後すぐ受けたところであります。被害状況等の詳細については確認中でありますが,双方とも船は沈没していない。「しまかぜ」に人的な被害はなく,船体に一部損傷はあるものの,航行に支障はないと承知をいたしております。また中国籍の漁船については,死者及び行方不明者はいないが,乗組員13名のうち1名が,腰を痛め負傷したと聞いております。
 事故発生を受け速やかに外交ルートを通じて,中国側と連絡を取り,引き続き緊密に意思疎通を行っていくことを確認したところであります。

新型コロナウイルス(北朝鮮等によるミサイル発射)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 2日前に複数のミサイルが発射されました。一つのミサイルは北朝鮮によって日本海に,もう一つのミサイルは,報道によればイエメンの何らかの勢力によってサウジアラビアのリヤドに向けて発射されました。これは,世界がコロナウイルスと戦うために結束している時に行われ,日本は解決策及び治療薬を見つけるための取組を率先して行おうとしています。このような世界的危機におけるミサイル発射に対する受け止めをお聞かせください。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 今週に入りまして,北朝鮮,今月で4回目となります,弾道ミサイルの発射を行ったところであります。これは,関連する国連安保理決議に違反するものでありまして,断固として非難をする,そしてこの問題,日本だけではなくて地域の平和と安全に深刻な影響を及ぼすものでありまして,強い懸念を持っているところであります。
 先週のG7の外相会談におきましても,北朝鮮のミサイル発射につきましては,どんな弾道であっても,それを看過することはできない。国際社会で,G7でしっかり連携をして,米国の取組を後押しをする。同時に,関連する安保理決議を完全に履行することによって,北朝鮮のCVID,これを実現していくと,こういったところで一致したところでありまして,その方向でしっかりと取り組んでいきたいと思っているところであります。
 また,中東,ホーシー派によるミサイル発射についてでありますが,ご指摘のミサイル攻撃を含めて,サウジアラビアに対して,継続的に越境攻撃が行われることを強く非難をいたします。また,イエメンにおいて,正統政府と反政府勢力の間での軍事行動が継続していることを懸念しておりまして,全ての関係者に,グテーレス国連事務総長による停戦の呼びかけに応じるように求めたいと思っております。
 今世界が何と戦うべきか,コロナウイルスの脅威なんです。地域には様々な状況があります。しかし,自分の国でも,コロナウイルスの感染者がたくさん出ているかもしれないと。ミサイルを打っているタイミングかと。コロナウイルスに世界全体が一致して取り組む,こういったことが私(大臣)は何より重要だと思っております。

新型コロナウイルス(米国における対中国訴訟等)

【日本経済新聞 加藤記者】新型コロナウイルスの話に戻るんですけれども,新型コロナウイルスの感染の拡大をめぐって,中国の初動の対応が,国際保健規則で定められている,WHOへのその情報提供や通報義務を怠っていて,国際法違反ではないかという指摘が一部,米国などで出てきています。こういった指摘に対して,大臣,どうお考えになるかという点と,米国内では実際にも企業や個人がですね,中国政府を相手取って訴訟を起こす動きというのも出てきていますが,この点について大臣のご見解があればお願いします。

【茂木外務大臣】中国も含めて,今回のコロナウイルス感染症に関して,透明な形で,また迅速に情報提供していくということが,国際的な蔓延の防止の観点からも,極めて重要であると考えております。情報が正しく流されない,また情報が,タイムリーに流されない,このことについては問題であると思っております。そういった中で,例えば今ご指摘のあった点も含めて,実際に今後,様々なWHO等々の機関も含めて検証がなされていくと,そういう結果を待ちたいと思っております。